「安倍マンセー」の元大蔵役人・高橋洋一が以下の文で「断言」しているが、多分それは違うと思うな。
まず、森友問題が「シャビ―」だなんてとんでもない。森友問題は「序論」にすぎず、実は、もっと「大きな問題」が本筋としてあると考えたほうがいい。例え安倍が森友問題にかかわっていなかったとしても、「第二森友」(加計学園問題)は「そうはいかない」可能性が高い。
次に、「森友学園の件では、売買記録が1年で廃棄された」と書いているが、高橋、お前は大蔵役人だったんだから、それが「ウソ」だってことぐらい分かるだろ。その点に触れないのは「おかしい」。実際に、産経の記事で、「廃棄されていなかった」ことが明るみになっている。
さらに、これもお前が大蔵役人だったから「分かる」話だと思うが、森友問題は財務省の資産売却に不熱心がどうとかいう問題じゃないだろ。大阪音楽大学が7億円で買いたいといっても、「9億でないとダメだ」と突っぱねたくせして、なぜ森友学園には1億3000万円程度(実質的には200万円)で売却することを認めたのか?そこが一番の問題だろ。
要するに、役人の一存では決めることができない、「大きな圧力」があると考えざるを得ない、ということなんだよ。
でないと、お前自身が、「ブーメラン」扱いされちゃうよ。
森友学園問題では資産売却に不熱心な財務省を追及すべきだ(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース
ダイヤモンド・オンライン 3/9(木) 6:00配信
森友学園問題で国会は持ちきりだ。マスコミも、連日テレビのワイドショーでこの問題を取り上げている。森友学園の理事長のキャラが立っているので視聴率が取れるのだろう。国会の野党質問もテレビのワイドショーの流れに乗っている。
● 弱みを握られることはしない 首相の「政治関与」の公算は薄い
そのパターンは、(1)安倍首相夫人が問題の小学校の名誉校長であった。(2)森友学園は右傾化している教育をしている。(3)近畿財務局(財務省の地方機関)は安価で国有地を売却した。これらを同時に見せることで、安倍首相の関与があったかのようにイメージ操作している。
この問題については、(1)政治関与、(2)森友学園の教育方針、(3)国有地の低価での売却、の三つに分けて整理する必要がある。
(1)政治関与については、まず、朝日新聞が、国有地を近隣地より安く売却しているがその相手先の名誉校長には安倍首相夫人がなっており、安倍首相の関与の疑惑があるというトーンで報じた。一部のマスコミは確たる証拠のないまま、安倍首相の政治関与で突っ走った。
ところが、安倍首相は政治関与を否定し、もしあれば「首相を辞める」とまで明言した。ちょっと考えてみれば、安倍首相が政治関与してまで財務省に弱みを握られるはずがないとわかりそうなものである。財務省は消費増税をしない安倍政権を内心よく思っていない。もし安倍首相が財務省に頼んでいたら、今頃は財務省からリークされて、安倍政権が崩壊していたはずだ。記者にはこうした政治常識はないらしい。
今のところ鴻池祥肇・元防災担当相の地元秘書らが用地取得交渉に関わっており、いわば「鴻池案件」である。頻繁に財務局と接触があったようで、これほど頻繁になると、国会議員レベルで他の人が関与している可能性は低いと考えるのが妥当だ。となると、昭恵夫人が森友学園の名誉校長になっていたのは脇が甘かったが、安倍首相が公言しているようにこの問題に首相が関与していない公算はほぼ確実といえよう。
ここの「政治関与」のところで、めぼしいネタが出てこないと、森友学園問題はメディアが伝えているほどのことにはならず、かなりシャビーになる。今のテレビの盛り上がりはそのうち消えていくだろう。
(2)教育方針については、基本的に趣味の問題であり、イヤなら親が入学させなければいい。教育基本法違反などにでもなれば問題だが、現状ではそこまでの違法行為は出ていない。ただし、大阪府教育委員会への小学校認可申請の段階では、虚偽記載もあるようなので、小学校認可は行われないだろう。ただし、これは教育方針の問題ではなく、手続きのミスである。
● 文書の保存は民主党時代に変更 用地は競争入札すべきだった
(3)国有地の低価売却では、売買経緯で保存記録なしを含め財務省(財務局)の事務ミスが大きい。森友学園に随意契約で売却しているが、本来であれば入札すべき案件である。地中ゴミについて減額しているが、これも入札または第三者の鑑定評価に委ねるべきだった。かなりずさんな事務ミスであるので、会計検査院が調べるのは当然である。
国有地の売却に限らず、国の売買や賃貸などの契約では、原則競争入札になっている(会計法第二十九条の三)。これは価格の妥当性や透明性を確保するためである。
今回採用された随意契約は、「緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合」に限定されている(会計法第二十九条の三第四項)。ここで、「緊急の必要」というのは人命に係わる場合、国の外交問題に関連する場合などの国の事情であり、相手側の事情は二の次である。その他、会計法より下位の法律でなく政令に基づくものもある。
随意契約にした理由について、財務省の佐川理財局長は「府、市からの要望がないなか、森友学園から要望があり、適正に随意契約を始めた」と答弁し、会計法より下位の政令に依存したようであるが、会計法で認めている随意契約の理由は、上に書いたように「緊急性」がポイントである。この答弁は、会計法の観点から適切でなく、結果として問題になつたので、法律論の観点から、どこまで政令に妥当性があるのかを含めて、さらに立法府である国会での追及が必要である。
なお、アメリカの大統領令では、今話題になっているが、司法からのチェックを受けるもので、決まっているからといって絶対的なものでない。
また、国会審議の中で、財務省が交渉記録を廃棄したと答弁した。今の文書管理規定上はそれでもいいのだろうが、OBとして、入省した当時の旧大蔵省の情報管理は霞ヶ関随一であったことを知る筆者としては釈然としない。
かつての財務省はどのように情報を集めて管理し、どのように利用していたのか。現在はどうなっているのか。筆者の個人的なことから始めよう。筆者は大学までノートをほとんどとったことがなかったので、入省して一番困ったのは紙(メモ)がうまく書けないことだった。会議に出席して会議内容を口頭で報告できるが、その後ですべて紙に書かねばならず、はじめはそれができなかったので酷く叱られたものだ。どのような些細な話でも紙に書き上司に報告することがシステム化されていたのだ。
各部署で作られた情報メモがその重要度に応じて幹部・関係先に配布されていた。配布先を決めるのは書いた人ではなく各局の企画担当だ。重要度に応じて「取扱注意」、「秘」、「極秘」のハンコが押されている。入省したばかりの若手は、その情報メモを持って、各局の企画担当に届けていた。メモを持って廊下を駆けるので、「廊下トンビ」と呼ばれた。情報内容は廊下を走っている内に読んで頭に入れておけと指導を受けた。その情報管理システムでは、旧大蔵省から他省庁に出向した人からも情報が入っていた。某政治家は、霞ヶ関に張り巡らされた旧大蔵省の情報網を知り、驚愕し絶句していた。
今はどうなっているのか、正直なところ知らない。筆者が役人を辞めた直後、2008年6月に国家公務員改革基本法が成立した。その後、2009年7月に公文書管理法も成立。2009年9月に民主党政権に交代後、2010年12月に公文書管理法施行令により具体的な文書保存期間が決められた。
森友学園の件では、売買記録が1年で廃棄されたが、法令上の問題はないという。本来ならこれは法令がおかしいとすぐに気がつく話だが、野党民進党の追及は甘い。その法令は民主党政権の時に作られたので、政府を追及しても自らの責任を逆に問われるブーメランになってしまうからだろう。
いまの法令では、記録・保存義務のあるものはかつて旧大蔵省で行われていたものの一部でしかないようだ。しかし、その程度の記録・保存しか行われていないとすれば、行政の継続性など今の仕事の質は間違いなく落ちているのだろう。公務員にきちんと仕事をさせるために、現行の文書の記録・保存規定は見直すべきだろう。
このカードを切れば、民進党に、民主党政権の運営がいかにダメだったのかというダメージを与えられる。安倍政権はこのカードを持っているために、国会では余裕をもって答弁しているように見える。
いずれにしても、結果としては、(1)の首相の「政治関与」の可能性が今の段階ではかなり低いので、マスコミ報道はミスリーディングだった。政治関与がなければ単なる財務省の出先機関である近畿財務局での事務ミスに終わる。その解明は、文書保存の指摘もできないような国会より、会計検査院のほうが適切である。だが別の見方をすれば森友学園問題は、国有財産売却についての財務省の姿勢を問う好機でもある。
● 資産売却に不熱心な財務省 増税ありきは許されない
国会で改めて、財務省の国有財産売却体制を再検討するというのは、野党側の政府追及のネタとしてどうだろうか。
2月21日の衆議院予算委員会公聴会で、筆者が公述人として意見陳述したことは、前回の本コラムでも書いた(「日本の財政再建は「統合政府」で見ればもう達成されている」 http://diamond.jp/articles/-/119006 )。そこで述べたのは、財務省が国債残高など、政府バランスシート右側の負債額の大きさばかりを強調する異常さである。資産は売却できないというが、天下り先への資金提供なので売却したくないという官僚心理が働いていることも指摘した。その延長線で、天下りに関係のない国有財産までも売却に熱心でなかったように、役所にいた当時から筆者には思えた。
国有財産の売却の実務担当者である地方財務局の管財部長は財務省キャリアのポストでない。財務省本省で国有財産を担当するのは理財局の局長はキャリアだが、。ただし、担当課長になるとそうでないこともある。キャリアであっても主流ではなく、端パイ扱いだ。
要するに、国有財産売却について財務省として力が入っていないのだ。
それは財務省が、政府バランスシートの右の負債だけを強調し、左の資産を無視することにもつながっている。それにもかかわらず、財務省は増税の必要性をことさら強調するが、その一方で税外収入として重要な国有財産売却で事務ミスをして、結果として税外収入を少なくしているのはあまりにちぐはぐである。
こうした観点から、政府が保有する天下り先への出資金、貸付金を含めた資産の売却を政府として真剣に検討すべきである。また、その検討を増税する前に行うべきである。あれだけ増税に熱心な財務省が、増税と同じ効果があるはずの国有地売却で事務ミスをするというのは、あまりにちぐはぐだし、「売却できないから増税」では国民が許さない。
なお、本稿を書き編集部に提出したあと、3月8日にテレビ朝日のワイドスクランブルに出演し、財務省の事務ミスの話をした。番組放送後、財務省からテレビ局に抗議があったという。
筆者は、会計法の原則を説明し、例外に照らして財務省の国会答弁には疑問があったから、国会でさらに議論をすべきだと言ったまでだ。それに抗議とは情けない。財務省は国会の議論までも封殺したいのか、それとも、あまりにも図星の指摘だったからなのか。
(嘉悦大学教授 高橋洋一)