サイクリングの想い出

2009-10-23 23:32:15 | 日記・エッセイ・コラム

hanabo回想記より。


兵庫県南部を南に貫く武庫川は、河口付近から10キロほど上流まで河川敷にサイクリング道があり
ジョギングやサイクリングで毎日にぎわっている。
オレ達は小学生の分際でサイクリング道の終点までいく計画をたてた。
非常に魅力的な計画だったのか、噂を聞きつけた違うクラスのやつまで参加し、
結局10名近くが名乗りをあげた。

当日集まってみるとなかなかの距離のサイクリングなのにママチャリにのってる者が多数いた。
その中でも錆びた小さなママチャリに乗った舟橋君がこころもとなかった。
発起人のオレはもちろんナショナル製12段変速のドロップハンドル「ランディオーネ」だ。
いけてるぜ。

天気にも恵まれ、サイクリングはすこぶる快調にすすみ
誰も見たことがなかった武庫川サイクリング道の終点にあっけなくついた。
しかもそこはサイクリング道がぐるっと一周回ってるだけで、そのままいくと勝手に帰路についてしまう。
あまりにあっけないので、とりあえず休憩。
しかしよく考えてみると、サイクリング道は終わっているが河川敷はまだ続いてるし、川沿いを走る車道もある。
よしさらに海にむかって南下しよう。

車道は危険が大きいため、いけるところまで河川敷を進もうということになり舗装されていない道を進んだ。
車道に乗り換えさらに進むと、海の匂いがしはじめ、
やがて消波ブロックやテトラポットのある海が見渡せる岸へとたどりついたのだった。
ここが本当の終点だね。

幼心にも満足感と達成感に包まれながら、みんなで並んで海を眺めていた。

「ええちゃりんこのっとるのぉ」

だみ声にオレ達は現実へと引き戻された。

「うん」

浮浪だ。あんまり相手にしちゃいけない。と思ったが
どこからきた?、なんさいだ?とやたら話しかけてきた。
はじめは警戒したが話してるうちに、この浮浪は久々に人と話して喜んでるのはないかと思うようになってきた。
そのうち話すネタも切れたらしく、やっと解放してくれるかと思ったら
ポケットから有り金をとりだし

「そこの駄菓子屋で雪見だいふくこーてきてくれここでまっとるから」

とオレ達に150円を渡した。わかった。と
オレ達はぞろぞろと自転車で買いに行ったが、店の前でこのままトンずらするかちゃんと雪見だいふくを買って渡すかで
もめることになった。鈴木君はトンずらの急先鋒だったが、結局あの浮浪は悪い人じゃないという結論になり、
雪見だいふくを一つ買って浮浪に渡した。
浮浪の喜びようといったらなく、とても旨そうにあっという間に雪見だいふくをたいらげた。
さぁこれでと帰ろうとしたオレ達を浮浪は呼び止め

「お礼にええもん食わしたる」

オレ達に防波堤に降りるように言うと、浮浪は先に降りていった。
防波堤に降りると、そこらへんに流れ着いて乾燥した木や雑誌を集めてきて火をたき出し、
さらに鳥かごの壊れた金網をもってきた。何かを焼こうとしてるらしい。
何を焼くのかと思いきや、防波堤やテトラポットに引っ付いた貝を剥いで焼き始めたのだ。
貝といってもなんとなく牡蠣のような感じで浮浪も牡蠣と言っていた。
オレ達を牡蠣でもてなしてくれるらしい。
最初に焼けたのは浮浪が食べ、2個目は鈴木君が受け取った。
次にオレが受け取って、オレの牡蠣をみんなでおそるおそるつまんだ。

「・・・・・」

独特の匂いもあり、とても食えたもんじゃない。

「うまいやろ」

浮浪にとってはご馳走のようだ。
ふと鈴木君をみると手にしていた牡蠣のほとんどが無くなっている。

「え?たべたん?」

浮浪も食べてくれたので喜んだが

「ううん、下に吐いてんねん」

かれは少し口のなかに入れてはすぐつばといっしょに下に吐き出すという動作を誰にもばれずに繰り返していたのだった。

そろそろ帰るというオレ達に浮浪はまたくるんか?と少し寂しそうに言う。
鈴木君の心よりも、この小汚い浮浪の心の方がピュアだとオレは思った。

帰路。ミニママチャリでがんばっていた舟橋君の膝は限界に達し鈴木君はおかまいなく先へ進んでいる。
舟橋君は、オレはゆっくり行くから先にいってくれというので、オレ達も鈴木君を追うようなかたちになったが
オレのちゃりは途中践んでしまった小石が悪かったのか後輪がパンクしてしまった。急減速。
皆は先へと進み、ついに舟橋君にも追い越された。12段変速のランディオーネが錆びたママチャリに負けた瞬間だった。

翌日以降、筋肉痛でカチコチになってた舟橋君の膝が治るころには
あの浮浪の話題はだれもしなくなった。
彼はまだオレ達をまってるかもしれないのに。



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夢の狭間

2009-10-23 23:27:02 | 日記・エッセイ・コラム

火事の跡。



木造住宅が燃えた後。細くなった柱が突き出てて、盛者必衰の理っぽくて
そんな気分で、まだうっすら煙の出ている火事の跡を歩いている。



見たんですよ。夜、店の外の壁を照らすライトに、ビニールのホースがかぶっているのを。



それはライトの熱で焦げて煙がでていて、なぜにホース?だって壁の下の植木は模造だし。



私がライトの上に乗っかっているホースを凝視したのはわずかな時間だったはず。その先に店の壁、大きな窓があって、中の客が私を怪訝そうに見返していて、、、おまえを見てんちゃうし。



そんなことより、このホース火がでるよ。



寿司屋さん。



繁盛してるからというわけでなく。





さて、どうすっかと躊躇して。



入り口すぐそばに店員がいたら言ってたかも。気を付けてって。



言いませんでした。店の人ぱっと見いないし。



言ったところで、寿司食いたいんちゃう?と思われるのでは?
その後を歩いたのでしょうか?火事の跡を。



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