「誰かいい人いないかなあ」
と甘ったれた女の声が聞こえてきた。
みると45歳ぐらいのおばさんではないか。顔は地黒なのか茶色っぽく、さらに茶色のワンピースを着ているが、ウエストが太いので悲しいくらいに似合わない。あえて言うなら、太くなってしまったチワワであろうか。hidoi。
話し相手になっている背の低い男性は私から見ると背を向けているため、顔は見えない。何となく横顔から50歳前ぐらいだろうか??。何か話してるようだが、電車の連結近くだったので音がうるさく、ボソボソとほとんど聞こえない。
酒を飲んだ帰りのようで、おばさんはあきらかに酔っぱらっている。この歳で未婚。近寄ってくる男もいない。酔っぱらった勢いの先は誰もいない真っ暗な家でしかない。いい人とはもちろん男が欲しいというわけだ。tabun
金は有るので昨年開き直って家を買った。ずっと一人でもいいもんって・・・。でも酔って口走るのは
「だれかいい人いないかなあ」。
一人でいるその広い家がただ虚しい。そんな夜は犬か猫を飼おうかといつも思う。今年彼氏ができなければ、40代後半の記念にマルチーズを飼おうかと心半分決めてる。もちろんオスを。なんちゃって(;´_`;) hidosugi
おっと妄想モードに突入していた。
くだらない。
我に返って、
読みかけの小説へと意識をむけた。
*
駅に降りようとしたとき、
若干二人の距離の縮まったおばちゃんとスーツの男の二人も降りた。まだのっとったんか、こいつら。。。
って、まさか、
このおやじ『お持ち帰り』ちゃうやろな(笑 hidoi
駅から少し歩くとホテルもあるしね。
私は買い物のためスーパーへ。
スーパーで買い物やら本屋やらによっての帰り道。
なんと~。
暗がりの道の前を歩いてるのはあの二人であった。声でわかった。その坂道を降りて、県道を少し行けば、ホテルがある。
これはマジや。
しかし私の予想は有る意味あたり、有る意味外れることとなった。なんとスーツの男は、ためらってみせたおばちゃんを
「いいよ」と
自分の家に招き入れたのだった。行き先はホテルではなく、自分の家だったのだ!まさにその決定的瞬間に私は横を通り過ぎた。
通勤で通る道沿いの家。坂の途中にあるけっこう大きな一軒家で、安物のBMが車庫にあるところだ。20歳ぐらいの娘さんが出てくるところを見たこともあるのだが、なにより朝、そのご主人が出勤するところをたまに見かけもする。
じつは奥さんいなかったんやなぁ。
奥さんがいない理由は・・・
妄想チャンスだがやめた。
以来毎日その家の前を通るたびに、いやでも思い出す「いいよ」と誘い入れる光景。さらには先日。見かけたのだ。昼間に。その家の前で。おばちゃんを。。。。
なんと、一夜どころか、続いてたんや関係が。
それはそれは口紅も真っ赤に、髪も夏っぽくアップにしつつ。太めの腰はそのままだったが・・・。ただ皮膚がなんだか艶やかに見えていたのは、彼氏誕生にホルモンバランスが整った証拠だと一人納得した。
(お前らあれからつきあっとんか!?
オレは知っている。おまえらを知っているのだ!)
まさか家の前の一通行人が、あの晩のことを知ってるとは思うまい(笑 ちょっと変な優越感をもちつつ蝉のやかましい坂道を上ったのだった。