前回は第17条、第18条をを取り上げて自民党新旧改憲案と現行日本国憲法を比較した。
17条は公務員の不法行為により、損害の保証を国公共団体に求める規定で、18条は奴隷的拘束及び苦役からの自由を規定している。
特に、改憲案の18条は、奴隷的拘束を身体拘束だけに焦点を当て、精神的拘束が抜れており、法制化の上で条文不備をついて人権を侵すものが作られる危険性を懸念する。
現行日本国憲法を青字で示す。改憲案の変化点を赤字で示す。
自民党__新憲法草案 | 自民党_憲法改正草案 |
日本国憲法
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(平成十七年十月二十八日(発表)) |
(平成二十四年四月二十七日(決定)) 2012年 |
(昭和二十一年十一月三日憲法) 1946年 |
(思想及び良心の自由) 第19条 思想及び良心の自由は、侵してはならない。 |
(思想及び良心の自由) 第十九条 思想及び良心の自由は、保障する。 |
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 |
(個人情報の保護等) 第19条の2 ① 何人も、自己に関する情報を不当に取得され、保有され、又は利用されない。 ② 通信の秘密は、侵してはならない。第21条から移設される。 |
(個人情報の不当取得の禁止等) 第十九条の二 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。 注)*2 2005年案から通信の秘密を削除 第21条に戻す*1 |
・ 現行憲法では、国に対して思想及び良心の自由を守るように着ているように対し、自民党改憲案決定版(2012)では、
国が補償するという上からの目線となっている。国に対して守るようにしろというのを国が保障するとの変化がある。ずいぶん国民の立場が低なり、国優先になっている。
(本来*1、憲法は国が暴走しないように定めているのに対し、自民党案は国が国民を管理し、施してやることになり、本末転倒である。
民主主義の憲法としては国が上位で優先されているので不可思議である。)*1
・ 自民党の改憲案では二項が新設される。2005年は追加条項となっており、個人情報の保護と通信の秘密を追加している。
一方、2005年では第21条の「通信の秘密」が本条に移されたが*2、2012年の決定版では2目の通信の秘密が削除されている。
1目の自己→個人へ替えているのも意図があるかのように見えてくる。*1
公務員その他公の役職についているものの、汚職、不正、違法行為を明かし糾弾すると個人情報の侵害になり逆に罰せられることが懸念される。*2
2目で通信の秘密を規定していたのに、2012年案で排除しているわけは、国が通信の秘密を侵しても良いことになる。つまり、盗聴、メールの検閲等が許されることになり、ますます国民一人一人への侵害が懸念される。*2
自民党改憲案を訳した本条文が無いので現日本国憲法の英訳を記載する。*1
article 19. Freedom of thought and conscience shall not be violated.*1
え、これだけの文が改憲案では何て長くなるのだろう.簡潔こそ間違いが少ないと覆うのだが。*1
(繰り返すが国民主権で、国に対し、主権者の権利を守らせるのが民主憲法なのに対し、国が国民の権利を保障するのでは大日本帝国憲法と同じである。「国に対して要求し守らせる」のと「国が保障する」のでは似て非なるものである。
本末転倒した憲法案になっていることを懸念するやじさん
*1 20160331 追記、加筆、訂正を含む手直し。
*2 20160402 追記、加筆、削除
自民党のQ&Aを読むと条文の通りに読めないためにここでは記載しない。