中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第16期「紬きもの塾25」受講生募集のお知らせ

2025年03月17日 | 紬塾’21~’25
第16期「紬きもの塾25」の受講生を募集します。
日程、詳細はHPの「紬きもの塾」に公開しました。

申込受付は3/20(木・祝)午前8時から。
定員になり次第締め切ります。
※定員は5名(定員に達しない場合は開催を見送ることがあります)。

参加希望の方は、当ブログ「紬塾」のカテゴリーから、過去の塾の様子をよくお読みいただき、趣旨、内容をご理解の上お申し込みください。

不明な点は遠慮なくお問合せ下さい。

お申込みの際はメールにお名前、郵便番号、ご住所、電話番号を明記してください。
お申込み受付後、一両日中に空き状況や詳細をお知らせします。
一両日中の返信が無い場合は電話でご連絡ください。

毎年、熱心に通ってくださる受講生の方々ですが、
「着物の知識や先入観などは一旦置いてください。無垢な目で素直にものを観察するところから紬塾は始まります。」と、初回にお伝えしています。

これから始めたい方も、着物に慣れている方も、素直なピュアな気持ちで参加して下さる方をお待ちしています。(*^-^*)

トップ画像は昨年度の2回目の糸のワークショップの様子。
ブログに塾の様子の画像を上げる場合、受講生の許可を得て使っています。写さないで欲しい方には配慮しています。




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工房展「紬の会’25春――取り合わせ 」

2025年03月10日 | 紬の会
梅の花咲く季節となりました。

さて、早速ながら下記の通り櫻工房で「紬の会’25春」、を週末2週にわたり下記の通り開催いたします。

::::::::::::::::::::::

◆工房展「紬の会’25春――取り合わせ」

「取り合わせ」は日本の文化です。一緒に取り合わせをしてみませんか?

・日時
3/7(金)―3/9(日)、3/13(木)-3/15(土)
10:00~16:30 ※要予約

*ご希望の時間帯を下記からお選びください。
お申し込み受付時に、バス時刻など詳細はお知らせいたします。
お車の方はその旨お書き添えください。

① 10時~11時半 ②13時半~15時 ③15時~16時半

・出品内容:着尺、帯、ショール、帯揚げ、帯締め他

※工房割引5%offがご利用いただけます。

ご予約、詳細はHPのこちらから。

::::::::::::::::::::::

取り合わせとは——。
日本の取り合わせは、揃えることではなく、異なる性質のものを組み合わせ、調和を取るもの。

「取り合わせ」は日本の文化です。
組み合わせや西洋的コーディネートとは少し意味や使い方が違います。
茶席の床の間も、軸や花や香炉、香合など、素材も形も色も異なるものを合わせます。
和食懐石の料理も同じ素材を使いません。海のもの、山のもの。器も磁器もの、土もの、ガラス、木工、 金属など。それでいて調和する。
また、俳句の世界でも「取り合わせ」と言って、季語と異なる世界の言葉を持ってきて、詩を生み出すことがよくあります。

洒落着の着物の世界は統一やお揃いではないほうが、完成度は高いと思います。
ワントーンのコーディネートもありますが、その場合もただ揃えるだけではなく、まず上質同士を合わせなければならないし、素材感の違いやどこかにメリハリ添えることは必要です。簡単ではないです。

取り合わせは「絶対これ!」というような狭いものではなく、多様性を持っています。自分の今、この時に着るならどうすればいいかは変化するし人によって違います。柔らかな感性の中にその感覚を育てたいです。

例えばトップ画像の、同じベージュ系の取り合わせの場合、差し色の小物で世界を広げることもできます。季節や心情、自分の似合う色など、多様な展開ができます。

詳しくここに書ききれませんが、少し外しつつ、調和をはかることは、高度な美意識が自分になければなりません。

そこで、工房内に中野の着物、帯、小物を取り合わせて展示いたします。

また、合わせる帯がない、合わせる着物がないなど…、ご相談も承ります。
機械織の冷たい感触の着物に、風合いのある紬の帯はよく合います。
また、お手持ちの帯や着物、小物の取り合わせの相談をお受けしながら、個別に取り合わせの奥義をお話ししたいと思います。

帯揚げもたくさん染めましたので、ぜひお手持ちの着物や帯と合わせてご覧ください。

気軽にお問合せ、ご予約下さい。
HPのこちらから。


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第15期 紬きもの塾24の受講生のレポート

2025年01月25日 | 紬塾’21~’25
昨年4月にスタートして1月まで、8回の講座を1セットとし、「紬基礎コース」として開催しました。
今期は関西方面から3名、埼玉、東京など、6名の方の参加となりました。

時間は2時間半ですが、内容は盛りだくさんで、全てを吸収することは無理だとは思います。
ただ、何か大事なことを感じ取っていただければそれでいいと思います。

知識も大切ですが、私は感性を目覚めさせることのほうがもっと大事だと思っています。刷り込まれた情報を一度捨てて、無垢な目、こころで臨んでもらいたいと初回にもお伝えしました。
こちらもなるべく五感に働きかけるような、実際に見てもらう、触れてもらう、植物の匂いをかいでもらう、機の音を聴いてもらう、指先を動かしてもらうなどの内容にしています。

私たち日々の暮らしの中、ものを作ることも、文字を書くことも、歩くことも、自然に触れることも少なくなり、ネットや、SNSの自分の好みの情報、あるいは行動データに基づいたアルゴリズムに導かれ、多数へ流れ、流される。
ものを浪費し、使い捨て、目の前のゴミが無くなればきれいになったと勘違いし、考えたり、工夫したり、汗をかくこと、苦労したりすることもない。
簡単、便利、安いが人を幸せにするのでしょうか?

そんな中、手仕事だの、草木染だの、紬の着物だのと、優雅なこと(!?)を学びに来る人はよほど恵まれた人たちと思われてしまいそうですが、紬塾の内容は紬織の知識だけではなく、私たちはどう生きればいいのか―、着物とどう向き合へばよいのか―、というところまで辿りつきたいと、それを学ぶ講座です。
それは紬の着物を始め、善く着ること、着ると言うことは何か、までつながることです。

初回に、最後に学びのレポート提出をお願いしておりました。
文字数など制約を設けず、自由に書いていただきました。
長文が多いですが、自分で感じたことを自分で考え、自分の言葉で綴って下さっています。
表現はそれぞれ違いますが、講座の熱気、真剣さが伝わってくる内容だと思います。紬塾のエッセンスだけでも共有していただければ幸いです。
25年度も前向きに検討中です。
インスタグラム、当ブログでお知らせします。

以下、6名の方のレポートです。
お時間あります時に最後まで、じっくりお読みいただきたいです。
*******************

紬のこと、着物のことだけでなく、日々の暮らしの中での大切なことをたくさん学ばせていただきました。それは昔から日本人が大切にしてきた物事、生活の知恵、自然や環境を守ることなど多岐にわたり、その根幹にはそれらを作り出し大切に受け継がれてきた日本人の心があること。私たちはそれを大切にして未来に繋げていくために、今の自分の便利さを基準にせずに何が大切かを考え選び取っていく知恵と力を身につけることが大切であることを強く感じました。

『糸、色、織』では、繭から紡いだ糸を見せていただき、糸を取る体験させていただきました。繭から引く一本の糸の儚い細さ。けれど糸を引くときに感じる繭の重さは、蚕が命をかけて吐き出した貴重な糸であることを実感させてくれましたし、貴重な真綿と長年積み重ねられた人の技で紡がれ織られる着物の価値について改めて実感しました。

『とことん着つくす』は、先生が大切に使っていらっしゃる布を見せていただき、物を大切に使うための様々な工夫を知りました。運針で直線に縫われた古い布が生活の中で大切に引き継がれ使い込まれて力強く生き続けていることと、子どもが好きな服や柄を生活の中で使える形で残したお母様の愛情も大切に伝わっている素晴らしさにも感動しました。

『帯揚げを染める』
草木染めを初めて体験。工程は意外と簡単で楽しく、自宅の庭の木や葉を使って自分でもやってみたいと思いました。けれど作品作りとなると、色や濃さなどを素材に合わせて調整し思う通りに染め上げることは、とても神経を使う繊細な作業であり、作品として世に出せるまでに先生が重ねたご苦労を考えると、先生が作られた着物それぞれがどんなに貴重な一枚かを改めて考える貴重な体験になりました。

『運針で何かを縫う』
正しい運針を身に着けることが大切であることを教えていただきました。糸の使い方や縫う姿勢にも、日本の手仕事の知恵からくる美しさや無駄なく物を大切にする心が生きていることを学びました。

『日本の取り合わせ』
これはもう目から鱗。今までなんとなく同系色を合わせて安心していた私は、第7回以後、小物合わせが難しく頭を抱えてしまっていますが、それがまた楽しい! 自分のコーディネートに自信が持てないのですが、先生のブログや本も参考にセンスを磨いていきたいと思います。

『自然で楽な着方とは』
自然で楽な着付けについてのお話も聞くことができたこと、着物や帯の寸法や半幅帯の結び方のお話もありがたかったです。毎回、先生の素敵な着姿を拝見させていただけるのもうれしい時間でした。

手つむぎの糸を使い、染液を作り、染め、織りあげる。それを一人でされて作品を作られる先生の、紬に対する愛情を感じた9か月間でした。
作り手の人となりや、作品にかける思いも知って、良いものを見極められる目を持ちたいと思いました。
先生をはじめ、皆様にも心から感謝申し上げます。 (Y)

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茶道をきっかけに着物を着始めて、12年になります。きれいなかたちに着たいとがんばって着付けてきましたが、外側だけ整える着物との付き合い方に物足りなさを感じていました。仕事で疲れて心に余裕がないときほど「着物が着たい!」という叫びが体から響いてきて、もっと自分に根ざした着物との付き合い方を模索したくて、紬塾に申し込みました。

特に楽しかったのは、着物の更生の回です。先生のお父様の絣の泥大島が、先生の雨ゴートに変身した姿がとても新鮮でした。着物の更生とは、かたちを変えることで着物が前よりいっそうかがやくこと! と気づきました。
 
繭や植物、本当に上質な織物にふれたのも貴重なことでした。夜空に向かって深呼吸するような、見せていただいたお母様の古い弓浜絣の反物、深い藍色。また、桜で染めた先生の単衣紬の血のかよったピンクのうつくしさ。
着物は、体とたましいが帰る所、やすらぐ所と思いました。

「着物の寿命は自分の寿命より長い」という先生の言葉も大事な事実を含んでいます。いろいろなデザインの着物や反物に目移りしそうになっても、同じ着物をいつまでも飽きずに、心地よく着つづけることが本当の豊かさです。長く私の人生により添い、こなれるほど肌触りがよくなって、さいごは他のだれかに手渡したくなるような一着をもつ方が、ずっとぜいたくで幸せな着物との付き合い方だと思います。それは自分や着物と対話し、それらを知りつづける過程でもあります。

幸田文著「きもの」も、先生や他の受講者の気づきの話から、たくさん考えるヒントをもらい、良い織物を見て、みずみずしい植物からどんな色が出るかの冒険があって、そしてさいごの打ち上げは美味しくて! 
本当に良い機会をありがとうございました。 (S)

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綿から糸を紡いで草木染をし、機織りした布を着尺に仕立てるということを学んでいた頃に、先生の紬織りのインスタグラムに出会いました。様々な色合いの着尺や帯に心惹かれ拝見している中で、紬塾のことを知り滑り込みセーフで塾生になりました。

昔の生活では誰もがしていた手仕事。確かに非効率的だけど、素材から携わり一つ一つの工程をへて布や着物になる。時間はかかるけれどもとても心豊かなひとときで、手間暇かけるというのは贅沢な宝もののような時間。

その大事な布を、形を変えてでも最後まで使い切る、無駄にしない。生活全般において言えること。
紬塾で書ききれない大切なことを沢山教えて頂きました。なんでも工夫して少しずつでも生活に取り入れたいです。
先生、皆様とても楽しい時間をありがとうございました。 (D)

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一つ一つの講座が本当に充実していて、時間が経つのがあっという間でした。加えて、夏休みを過ぎた当たりから、その一つ一つが一本の線で結ばれて着物を着ることに向かって行くような感覚を実感し、どんどん楽しくなって張り切って出席しました。

①東洋的と西洋的
私は、第一回の自己紹介の時に、「決心しないとなんとなく着物を着て出掛けられない」、ということを話しました。この講座に参加するうちに、それは、もしかしたら洋服を着る心で和服を着ようとしていたからではないか、と思うようになりました。先生のお言葉の中に、キーワードがありました。再生、ありあわせ、着崩れることを恐れずに楽に着る、野暮と粋の取り合わせの違い、季節感、自然の色、植物の色など…。先生は俳句もされるそうで、そういう日本の伝統文化を通して、そのキーワードのことを学んでいきたいと切に思います。

②副読本「きもの」幸田文著
本を購入したのは、随分前ですが、小説としての読み方しかしておらず、どうやって読むのか不安でしたが、毎回、一人ずつ順番で読んで感想を言う中、先生がご指摘してくださることを頼りに、なんとなく着物を着ることの教則本のような読み方が出来るようになりました。色々なヒントが詰まった本だ、と改めて感じました。
るつ子にとってのおばあさんのような人が、私にも身近にいたら良いのに、と思いました。
衣替えのことが書いてある箇所があり、それはその家の主婦の家政技術を示すとのことで、「衣」がとても重要な時代だったと感じました。この本の時代設定は関東大震災前後なので今から100年位前、運針で家庭の女が着物を縫っていたことが、もう、日本昔話のようです。何だか、この100年の間に、大切な手仕事、手技を忘れて失ってしまったのだと悲しい気持ちになりました。

③運針
今回、受講するに当たり、運針は絶対にできるようになりたいことでした(過去に何度も挫折しているので)。実際に教えていただき、家でも動画を見ながら練習して、また針の長さを短いものに変えて、何とか型のようなものが出来るようになりました。とても嬉しいです。これからも、忘れないように日課にします。
私は運針というと、衿つけとか和裁に関係するものを縫うと思い込んでいましたが、先生が「布巾でも袋でも、なんでも縫えば良いのよ。」と言われて、目から鱗でした。それから、先生が、昔の着物は解くことを前提に縫われているとおっしゃって、それも縫い直してモノをトコトン使うことの表れだなと感じました。
 私も、色々工夫して作り替えて、ものを大切にしたいです。 (Mk)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

偶然(きっと必然)辿り着いた紬塾のブログ。その中で目にした先生のお着物の画像に、なんて素敵なんだろう、、、と心を奪われ「中野先生のお話が聴きたい!」と思い立ったのが紬塾参加のきっかけでした。

関西からいざ上京。
初めて先生の紬に袖を通した時の高揚した気持ちが思い出されます。初回の緊張感も吹っ飛んで舞い上がるような気持ちを皆さんと共有した瞬間だったように思います。着物を自然光で見るということ、光や角度でも色が違って見えることをこの時に教わりました。

草木染めでは、お庭で蚊と格闘しながら皆でチップを作ったり、キッチンで染液を煮だしたり、全ての工程が新鮮で楽しい経験でした。

取り合わせのワークショップでは、(帯揚げや帯締めの)微妙な色の違いでこんなにも雰囲気が変わるものかと、取り合わせの妙に驚いたり感心したり。そして素晴らしい紬のお着物や帯を前にうっとり、ため息の連続でした。

私が紬塾の中で特に印象深かったのは意外にも「着物の更生・運針」の回でした。「意外にも」と言うのは、私は取り合わせやワークショップの回をとても楽しみにしていたからです。
更生の回に見せていただいた写真集「襤褸の美」(額田晃作)は圧巻でした。ボロと美、貧しさと豊かさ、一針一針に込められただろう想いに感性が揺さぶられました。運針の回では、先生のお母様がてんとう虫のワンポイントを活かして作られた傘袋がとてもチャーミングでその後の創作意欲が刺激されました。
自分で縫った、端切れを利用した花瓶敷は不揃いながらも赤い糸の縫い目が気に入っています。
ものを大切に使い切ることは、買わずに我慢するといったマイナスの行為ではなく、とてもクリエイティブなことだと感じることが出来ました。

今回、紬塾を通じて着物文化や紬の奥深い美しさの「入り口」に立つことが出来ました。同時に創意工夫して日々の暮らしを楽しむこと、先人の知恵を受け継ぎ、人や物や自然を慈しむこと、といった大切な気づきを得て、着物を着ること、日本文化や手仕事文化に触れることがますます楽しみになっています。これからは鈍った五感をフル稼働させて毎日を豊かに過ごしたいと思います。
中野先生、素晴らしい学びの時間をありがとうございました。 (K)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<受講の目的>
きもの雑誌に5年籍を置き、逸品に触れ基本的な染織知識も得られましたが、そこから自分の目指す「きも
ののおばあさん」になるまでに、見えない壁を感じました。
取材でお目にかかって、密かにあこがれた中野先生にヒントをいただければと、「今年で最後(かも)」と
いう言葉が一押しとなりました。

<各講義の感想>
■第1回 オリエンテーション
週末の楽しみとして比較的軽い気持ちで参加したため、先生の厳粛な雰囲気、受講生の生真面目な態度に緊張してしまいました。これは〝本気のやつ〟だと遅ればせながら気づいた次第。
■第2回 糸、色、織について
早くも欠席を申し出て皆様にご迷惑をお掛けしました。この頃は「全編通じてひとつの体系に触れられる」講座の特性が理解できておりませんでした。無事参加でき、ひとつの繭から皆がお土産の糸をいただき、ありがたみを感じました。いまも出窓にいるカバの置物にリボンとして飾っています。あのか細い糸が代々人間を守ってきたとは神秘的ですし、あのか細い糸から衣類を作りだした人間も驚異的です。
■第3回 とことん着尽くす
長年衣類が好きで、だからこそ和洋問わず次々と欲しいものが現れ、欲望に従い入れ替えてきましたが、その習慣を見直すことになりました。1度手に入れた布は最後まで生かし続ける責任がある。襤褸の迫力からそんな戒めを受け止めました。
■第4回 半衿、帯揚げを染める
わいわいと楽しかった思い出。意のままにならない植物染料を前に、慣れない生徒を抱え、手慣れた先生も焦り気味でいらしたのが面白かったです。半面、何度経験していても一回ごと真剣な先生のすごさもちゃんと感じました。
■第5回 運針で何かを縫う
第3回に続き、日々の生活へ戒めを感じた回です。「布目を通す」概念を初めて知りました。縫う前に真っ直ぐ整える姿勢が、思いのまま裁断する洋裁と対照的に感じます。
裁縫は下手でも嫌いではないので、よい暇つぶしとなり無事職場の先輩への贈り物が完成しました。
■第6回 日本の取り合せ
取り合せの前提として季節やシーンを明確にする教えに、きものは自己主張より調和のために着るとよいと感じました。
日頃「場に馴染むように」「同席の方に揃えて」という教えには共感しませんが、もっと広く「景色、自然、地球の一部である自分」を意識すると素敵だなあと。
■第7回 自然で楽な着方
紐を使わないお太鼓結びの方法にびっくり。現場では締められましたがそれ以降はうまくいきません。
しかし、補整具やプラスチックの衿芯やコーリンベルトなど、何となく違和感をもっていた道具を先生はやはりお使いにならず心強く感じました。
■第8回 上質の半幅帯を愉しむ・仕立について
半幅帯をキュッと結んで出る着慣れた感じに憧れますが、何度習っても、覚えられないのです。
そんなことより最終回は、打ち上げでの情感豊かな歌声とほろ酔いの会話が心に残りました。
<全体>
仕事上どうしても「新たにきものを買うこと」に興味が向いていましたが、それよりも「いまある布と向き合う姿勢」「きものが寿命を全うするまで共に生きる覚悟」が大切と感じました。
きものを着ることは、布の来た道を知り、着た後(自分が死んだ後まで)の処置を考える、そういう地味な責任を果たすことと一体なのだと思います。
しかし性懲りもなく、先生の美しい作品がやっぱり欲しい私です。 (My)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・THE END


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第8回 紬塾「上質の半幅帯を愉しむ・仕立について」(最終回)

2025年01月22日 | 紬塾’21~’25
紬きもの塾24も、最終回を迎えました。

内容は、前回の名古屋帯の続きで、寸法のことなどを詳しくやりました。
ポイント柄の場合の位置の確認や、体形によっては寸法を加減することなど。
柄がうまく出ないと思っている帯も、結び方で改善されることもあります。

半巾帯の結び方は動画が沢山ありますし、私は着付けの先生ではないので割愛しようと思っていましたが、意外と、普段はお太鼓ばかりで、みなさんからの切なるリクエストもあり、数種類実際にやってみました。
6人のお世話は大変でした。。^_^;

結び方はたくさんありますが、帯の生地の固さや、柄によって、着こなしによって選ぶと良いと思います。
生地感と結び方がちぐはぐにならないように・・。

お太鼓結びと違って、慣れるまで、手先の長さをどれくらいとればよいか、長すぎる、あるいは短すぎる帯の場合はどうすればよいのかなど、扱いが難しい点があります。時間をかけて研究するしかありません。
機械織の固い織りのものは結びにくいので、半巾帯には避けた方がいいです。
最初は2種類くらい決めて、慣れていくのが良いと思います。
半巾帯は簡単ではなく、むしろその人の布に対する見識など、技量が問われます。上質な生地を選びましょう。まずはそこからです!

洋服の上から練習する場合でも、長襦袢だけは着てやるか、伊達締めだけでも結んで、後ろへ回すときの滑りをよくしておくことが大事です。

トップの画像、この半巾帯はとても締めやすく、どれだけ使っているかわかりません。
いつも使うたびに新しさを感じるのはなぜでしょう・・。
仕立ててくださった方は亡くなられたのですが、芯の具合もとても良いのです。芯を入れて仕立てる場合は、仕立ての方の感覚も問われます。

そして、最終回は、副読本とした、幸田文著「きもの」の感想の締めとして、私からは、るつ子の母親が亡くなって、形見分けの話が出てきますが、この箇所を紹介しました。ここもとても大切な、多くのことを内包したところです。
着物を着ることは、次の代へバトンを繋ぐこと。そう思って着物を選び、着ていく。そして、何を遺せるかだと思います。

また、各回のまとめもしましたが、
1.布を見る力つける
2.自然な色をまとう
3.日本の取合せ文化
4.自分らしい自然な着姿
5.とことん着る
6.着物文化後進に繋ぐ
7.手仕事を大事にする
8.プロの仕事を尊重する
9.自然を大切にする
等をおさらいしました。

さて、次期紬塾に関しましては3月初旬にははっきりさせますので、しばらくお待ちください。

次回のブログで受講者6名の感想をアップします。





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新春のお慶びを申し上げます

2025年01月07日 | こぼれ話
新春のお慶びを申し上げます。
本年も宜しくお願いいたします。

今日は七草。松もとれる頃となりましたが・・。




毎年のことですが、お正月はゆっくり朝酒、手作りお節で過ごしました。
おせち作って50年。(*^^)v
今年も16種類ほど手作りのおせちと、生活クラブで購入7種の伝統的おせちで、蟹も海老も数の子もない、質素だけれど安心の食材を味わいました。いつまで手作りできるのか…。
トップ画像は大根、人参、小松菜だけの雑煮。昆布と鰹出汁。
お餅も一緒に煮ます。
料理学校へ行った頃はいろいろ海のものや鶏肉やら使いましたが、お雑煮は野菜だけで十分おいしいことを悟りました。山暮らしの母の故郷の味でもあります。そして三日目は、連れ合いの故郷の白みそ仕立ての雑煮も作ります。

お節は2日目の盛り付け。日替わりで少し違えます。
去年より種類も量も減らしました。カウントダウンの体制に入ったようです。
最後に残るのは何か私も興味津々です。(*^-^*)

作っていて思ったのは、レシピは見ないでも覚えていますが、以前のように、買い出し、下ごしらえを含め、段取りがもたつく感じがありました。年だな・・と実感しました。

あれを買い忘れたとか、先にこれからかかれば後がスムーズだったとか・・。
体力が衰えると、集中力も落ちます。
愛媛の栗の甘露煮をどこへしまったのか…、注文を忘れたのか…わからなくなり往生しました。
いつもと違う場所にしまって、それを忘れていたのです。(?_?)
仕方のないこととはいえ、染色の仕事も料理と重なる点が多々あります。
徐々に縮小して、無理なくできるようにしなければいけないと思いました。

自家用を織るだけなら、元気なうちは続ければよいことですが、一人で何もかも責任をもち、お客様からお代を頂戴するのですから、ゆるい仕事はできません。
その辺のことと向き合いながら静かにフェイドアウトしていきます。

さて、ご注文もいただきながら遅くなりましたが、帯揚げの新色も染めあがりました。湯のし屋さんからもとどきました。
すぐに販売の用意ができませんが、整いましたらインスタでお知らせします。

また、25年度の紬塾も今のところ前向きに考えておりますが、流動的なことが続いており、正式には3月初旬に、HP、ブログ、インスタでお知らせします。

24年度の紬塾は12日が最終回です。



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到達点としての紬

2024年12月26日 | 着姿・作品
今年も残り少なくなってまいりました。
今月は染の仕事に集中しています。あと少し続きます。

さて、春に紬のセミオーダーの会をいたしましたが、その折に網代格子のご注文を頂き、お打ち合わせ後に下記のようなメールをいただきました。
足掛け48年紬の着物を織り続けてきましたが、作り手として大変うれしいメールでしたので、ご本人の了解も得て、一部ご紹介させてもらいます。

「きものを着るようになって10数年が経ちました。これから先、どんなきものを着ていきたいかと考えた時、私の中での到達点が先生の網代格子でした。頭のどこかで、いつかは着てみたいとも思っていました。
これから先も、出来ることならきものと共にありたいと思います。その時々に、先生のそれぞれのきものが寄り添ってくれることでしょう。気負わず自然体で、年齢を重ねるにつれてさらりと纏えるようになれればと思います。(中略)
近頃は、思うようにきものにそでを通す時間が持てませんが‥。
長い人生の中ではいろいろな時期があるのだと、その時その時出来ることを精一杯やっていけば、自ずと道は開かれていくのだと思うようになりました。」

10数年にわたりますが、個展の折に一反ずつ「清水の舞台から…」と、お求めいただき、今回のご注文で四反目となりました。
リピートしてくださるお客様は何人もいらっしゃるのですが、二人目の"四反目"の方となります。

落ち着いた何気ない着こなしを好まれる方で、古布の帯やナチュラルな素材の帯などと取り合わせてお召しになられています。

人生の伴走者となれるような紬を織れたらいいと思ってスタートしたこの道ですので、このように着ることを大事に思っていただけるのは本当にうれしいです。
特に網代のような太、細のある真綿紬糸の良さを生かせる織物を到達点とされたのもさすがだと思います。
いろいろご家族のことなどでお忙しいようですが、来年はもっと着る機会を持ちたいとおっしゃられていました。

私も自然でありながら、今まで出会ったことのない現代的な網代を織ってみたいと気合が入りました。変則的な網代です。
仕立ての方も柄合わせにぎりぎりまで、最善を尽くしてくださいました。
私にとっても網代や崩し縞系は真綿紬の原点だと思います。

着心地の良い、それでいて堅牢な紬のことだけを考えて精進してきました。
紬の味わいや堅牢性は節のある経糸が大事なのです。それは糸巻きにも、整経にも織るにも生糸系より何倍も手間がかかるのです。
このことは評価されにくく、ほぼ無償の行為のように続けてきました。

一見報われない仕事です。
でもそれは着た人には良くわかるものなのです(私は着なくても一目見ただけでその紬の良しあしはわかりますが・・)。

残念ながら作家ものの紬の未来は方向を間違えているように思います。
原点に返って、人が織物を織るようになった時のことに思いを馳せなければならないでしょう。
まずは織物の基本技術を身につけてほしい。着尺を織ることは簡単ではありません。
不完全なものが販売されたり、公募展で入選しています。

作り手も、売り手も、着る人も善いものは何か、自覚を持たなければならないと思います。

洗うほどに風合いを増し、美しくなる紬をあと少し織っていきたいと思います。

今年もお陰様で無事に仕事をさせてもらいました。
工房は12/28~1/5まで冬季休業になります。

戦争のない、核なき世界を心から願いつつ、
良いお年をお迎えください。





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第7回 紬きもの塾「自然で楽な着方」― 半衿の付け方・着物の仕立寸法

2024年12月13日 | 紬塾’21~’25
楽で時間のかからない着物の着方や、着物の寸法、また、下着類の素材についてもお話ししました。
私は、着付け教室は行ったことはありませんが、1回だけ公的機関での、無料の講習を受けたことがあります。
その方のやり方は、長襦袢に伊達締め1本、着物のおはしょりに腰紐1本、着物の合わせを抑えるための胸紐か伊達締め1本。補正タオルも使いません。帯も仮紐もクリップも使わないで締めます。

そのシンプルな着方は、紬塾で今まで見ている限りでも、着付けのできる方でも目からウロコのようでした。ポイントさえつかめばあとは自分で徐々に上手く着られるようになると思います。

あと早く着るために大事なのは、自分の着物サイズかどうかという事、また、滑りにくい紬や木綿と平絹のような滑りやすい生地、普段着とフォーマルなどでも違ってくると思います。
自分で着易さを探求することだと思います。


紬塾でも当日着ていらした着姿を拝見して、裄や身幅、身丈の確認を一人一人いたしました。


いつもそうですが、裄が長く、身幅も広い方が多いように思います。
裄丈を、洋服の袖丈を測るようにしていることがそもそも間違いだと思います。

この日着ていた藍の着物は太っていた時のサイズで、今度洗い張りの時には身巾を少し直したいと思っています。

衿芯に半衿を先に付けてから襦袢に取り付ける、自然な衿の形を作る方法もお話しました。差し込み式が多い昨近ですが、衿のカーブが不自然で、なぜこんな変なことになってしまったのでしょう・・?
私は三河芯の角っとしたのがいいと思います。

着物は絶対的な寸法もない代わりに、着方や年齢や体形や人となりなど、洋服以上に着姿に現れますね。奥が深いです。

次回1月の最終回は、半巾帯のことや、名古屋帯の寸法のことをやって、締めくくりになります。


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第6回 紬塾「日本の取り合せ」― 帯や小物の取り合せのコツ

2024年11月11日 | 紬塾’21~’25
紬塾、前半は素材のことや着物文化の普遍性などについて学び、後半3回で実際に「着る」ということについて学びます。
何もわからずにいきなり着方だけ学ぶのではなく、糸や色、織、布をとことん使う事などの上に成り立つ「着る」なのです。

さあ、何をどう合わせればよいのでしょう?
私のルールはこれだけは避けたい、という1点だけです。
基本自由な取り合わせが紬(洒落着)というものです。
自由というのは楽しいけれど、決まりごとがなさ過ぎて困ってしまうと思う方もあるかもしれません。
T.P.O.を守り、異なる色や素材を合わせればいいのです。
季節や時間帯、着ていく場所、場面(場合)を考慮するということです。

みなさんに紬と帯と小物の取り合わせを2パターン考えてもらうワークショップをしましたが、今期のみなさん素晴らしかったです!ブログで予習してきたのかな?というぐらい。
昨今よく見かける”お揃い”の合わせ方のような野暮な人はいませんでした。

日本の取り合わせは、着物はもちろん、庭園にしても、和食文化にしても素材や形、色、味覚、の違うものを合わせて一つの世界を作るセンスなのです。
Oneトーンにするなら、それぞれが吟味された特別な何かでなければ単調なだけです。
着物から一色とった帯締めとか野暮の極みです。

さて、話は変わりますが、今年の夏に、以前お世話になった板橋の瑞玉ギャラリー、オーナーが90歳で亡くなられ、お仏壇にお参りさせてもらいました。

いつも伺うと温かく迎えてくださり、手仕事を愛する方でした。
車椅子になっても店に出ていらしたそうで、息子さんが後を継いでらっしゃいますが、「とても寂しい」とおっしゃられていました。

そして、20数年前、私の紬の縞帯を結城紬に合わせたいとお求めいただいたりもしました。沢山の作り手、使い手を支えてきた方だと思います。 
ご冥福を心よりお祈りいたします。 合掌

トップ画像は、弔意を表したく、紬にシックな陶画更紗の帯、紫の帯揚げ、灰白に滅紫ぼかしの帯締めで伺いました。襦袢もグレージュにしました。

帯締め一つで悲しみも表せる着物の取り合わせ、奥が深いです。
着姿詳細はこちら


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第5回紬塾「運針で何かを縫う」

2024年10月11日 | 紬塾’21~’25

現代社会においては「運針」のできる方もわずかになりました。
その運針を身につけ、家にある古布から何かを縫っていただくという課題を出しました。

古い服も着物も、古布というものが家にない方がほとんどで、かなり悩まれたように思います。
どう見てもこの回は乗り気ではなかったと思います。。(-“-)

こちらで新しい布を用意して、麻の伊達締めを縫うほうが私も楽と言えば楽なのですが、今回はじっと我慢で各自に考え抜いてもらいました。

結果、いただきものの手ぬぐい2本を接ぎ合わせ、バッグ用の保管袋を縫う人、晒の布巾の端を三つ折りにして縫う人、草木染の小さな麻生地で花瓶敷のようなものを縫う人、七五三で使った「しごき」を使って腰紐を縫う方、ショートパンツの形を生かして袋物にリメイクする方、家にあった麻生地を丈を接いで伊達締めを縫う方、様々でした。

運針も完璧ではないものの、なんとか形になったと思います。  
でも終わって感想を聞くとみなさん工夫することや、運針の楽しみも発見してくれたようで、家でまたやりたいとおっしゃる方もあり、やってよかったです。

大きな裂から何かを縫うという発想だけではなく、接ぐことの良さを知ってもらいたいのです。
同じ布が足りなければ、異なる布を接ぎ合わせれば、そこから「取り合わせ」、というものが始まります。「継ぎの美」です。

買えばいくらでも良いものがある時代ですが、自分で手縫いしたものを身近で使うのはこころも安らぎ良いものです。
今まで紬塾の方々を見てきて、かなり頭が固くなっているように思いました。
創意工夫は着物を着るうえでも、とても大事なのではないでしょうか?

布の思い出というものがあります。赤ちゃんのおしめに始まり、布なしに人は生きられません。たくさんの布を纏ってきました。
布への関心、布を大切にすることを深めたいですね。
紬塾の「とことん着る」と、この「運針で…」の回はセットなのです。

そして、運針の針目は不思議に魅力のあるものです。
今後も続けてもらえたら嬉しいです。

この日の私の着姿は、崩し縞の単衣紬(初期の作品)に壺の文様のジャワ更紗、鉄納戸色の帯締めを合わせました。

更紗は、ずっと以前に更紗の展示会で生地を見つけたのですが、接ぎ合わせ、足し布をしても、長さ9尺2寸しか取れませんでした。


でもこんな結びならできました。



受講生からお庭の秋草をいただきました。
塾終了後に、サクッと床の間に活けました。


イトススキ、シラハギ、ミズヒキソウ、フジバカマ・・。
花器は升たか作です。


小さな草花は棚の上にも飾りました。

写真がピンボケですが…、野草は大好きです!
お庭に草花が沢山あっていいですね、うれしい贈り物でした。

次回は11月の「日本の取り合わせ」です。


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紬織着物「野辺の垣」

2024年10月04日 | 着姿・作品
ようやく秋らしくなり、紬の話もできるくらいの涼しさになってきました。

少し前の作品ですが、ブログに書きたいと思いながら雑事に追われ、書けないでいました。
「野辺の垣」と題したとても好きな作品で、すでにお客様のもとにお納めしたものです。



2016年、北鎌倉にあった東慶寺ギャラリーでの個展で、ポスターにも使った作品です。
境内に設置された掲示板のこのポスターの前で、参詣に来られた方が足を止め、長いことじっと見てくださる方も多かったのです。

仮絵羽仕立てで撮影していますので、衿肩明きを切っておらず、着姿の衣紋が抜けていません。それで肩回りが不自然なのですが…。
インスタのアイコンにも使っています。

帯は「山笑う」と題したもので、この帯は同じ経糸で横の段を違え3本織りました。今は無い、赤城の太い節糸で織っています。



銘、「野辺の垣」は志野茶碗、「野辺の垣」からいただきましたが、茶碗を観て真似て作ったものではなく、観る以前に、私の中にある、シンプルな余白の美しい作品を作りたいという思いから、自然にすっと浮かんだデザインです。
経絣とすくい織で破れ格子のようにしてあります。



上の画像は身八つ口のアップですが、経糸、緯糸の味わいをご覧ください。
無地の部分も景色の感じられるよう太さの違う糸や色を混ぜながら立体的に織っています。



日本橋の三井記念美術館で国宝の志野茶碗「卯花墻」を観たときに、「野辺の垣」も観ました。 ※上の画像はこちらの記事から拝借。

共に素晴らしい茶碗でした。
もちろん手に取ることはできませんが肌合いの美しさ、深い白、そしてシンプルだけれど究極の間合いのような垣根文様。
感銘を受けたのですが、私の制作した紬と似ているなあ‥と、恐れ多くも思ったのです。(*^-^*)

この「野辺の垣」の地色、間隔を少し変え、もう一点制作しました。着る人を引き立て、着物も強い主張はないが、存在感を放つ・・。そんなものが好きです。
「野辺の垣 II」は工房でご覧いただけます。お問い合わせください。

そして、「卯花墻」と題した紬も織っています。
ある方がお召しになられて、インスタにも上げてくださっています。織ってすぐに手元を離れたので、写真にも撮っていないのですが、いつかご紹介できればよいのですが。






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DIC川村記念美術館 「西川勝人展」

2024年09月26日 | 工芸・アート
先日、千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館へ久々に出かけた。

まずはお目当ての企画展、西川勝人展を拝見。


石膏作品の表面を型押ししたカッコいい図録からほんの少し紹介。



自然と対峙し、耳を澄まして聴くような作品だった。
印刷物やWeb上ではこの作品の本当の良さは伝わらない。
自然光の中で、あるいは直に素材の質感や、透過性のある素材の奥からの光を感じ、生の花びらによる作品から立ち上る香りなども直にでなければ味わえない。

会場は初日とあって混雑していたが、鑑賞者たちの高揚感が静かに漂っているように感じた。
外光や自然の景観を取り入れたこの美術館の建物と作品が、観るものに心地よさを与えてくれる。
通常美術館は自然光が閉ざされた空間で、ライティングスポットを当て見せるケースが多いが、自然光を入れた展示では観る側も自然体で鑑賞できる。


今回の展示で特に惹かれたものが『静寂の響き』という作品。
白と黒の四角いオブジェが壁に市松状に24点配置されている。
遠くからは白黒モノトーン作品という感じしかなかったが、近づくと白も黒も何か複雑な色相を呈している。そして壁に体を寄せ厚みの部分を覗くと何枚かの薄い板状のアクリルガラスの層があり、それを細い針金で固定してある。その銀の細い針金の固定の仕方も一様ではなく、繊細な細部にも興味をそそられた。
アクリルガラスの層には黒ではないペパーミントグリーンのような色も覗いている。

美術作品と着物は、姿かたちは違うが、そのような表層のことではなく自然を見つめた作品に立ち現れる心地よさには共通のものがある。

織物も経糸や緯糸や隣り合う色糸、あるいは襲の色目など、重なり合う布の関係で生まれてくる色がある。
真珠の色は白だけでなく、ピンクや黄色、ブルー、グレーなどいろいろあるが、その下に重なる層と光が干渉しあって生まれてくるという。そんなことも少し連想させる。


同じ作りの24点からなる『静物』という作品も、まさに草木染の色を感じさせる。この作品の並ぶ部屋は大きな窓から木々の緑が見えている。


そしてもう1点は『ラビリンス断片』という作品。
実はこの広い会場へ入った時には、迷路のように繋がれた高さ1m程の白い展示台を見て、美術館も什器に随分凝ったことをするなあ・・と思っただけなのです。(#^^#)


迷路は小部屋のようにな個室の感じもありながら、全体を見渡せる解放感もあり、観ている人々、話をしている人々も感じられる。

迷路を迷わず(!?)順に進めば、作品を鑑賞しつつ自然と出口へ誘われる。振り返り見渡せば余韻を味わうこともできる。迷路を歩きながら観るという行為を、他の誰かもそれを視野の片隅に入れながら移動していく…。そんな動きも取り入れた作品なのか!?

常設展も充実しているが、特に観たい現代アートの作品を駆け足で回った。


野外彫刻もあちこちに。金属を使った上の作品はフランク・ステラ「リュネヴィル」



第二代社長、川村勝巳と建築家、海老原一郎の二人の関係から生まれた建築も素晴らしい!!

来年1月に運営に関することで休館になるという。
交通の便は悪いが、コレクションも建築も庭も素晴らしいのにとても残念だ。


赤い彫刻は清水久兵衛「朱甲面」

工房からは3時間ほどかかるが小旅行と思って、秋も深まる頃に再び訪れたい。


光線が変わり、木々の葉のも変化する。作品とともに鑑賞するのが楽しみだ。

.................................................
千葉県佐倉市でも存続を求める署名活動をしている。
こちらから。 9/30迄

また、change. orgで個人でも署名を立ち上げている。
署名をお願いしたい。

企業内のことではあるけれど、公的な役割のある美術館。
市民が声を上げることも大切。文化、芸術は市民が育てる。

自然と作品と建築が響きあう、稀なる美術館だ。
何とか、この地で存続させてほしい。
HPもご覧ください。



shopでお土産に買った、西川作品からイメージされたコーヒーもハーブ入り紅茶もペタルチョコもとても、やさしい香りでとてもおいしかった。
帰ってからも鑑賞の余韻に浸った。
近郊の方はぜひお出かけください。わざわざ行く価値のある企画展、そして美術館です!




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平和をつくる人々よ!

2024年08月10日 | こぼれ話(着物)
残暑お見舞い申し上げます

昨日8月9日は長崎原爆の日でした。
長崎の鐘の音とともに1分間の黙とうを捧げました。
核兵器廃絶と世界恒久平和の確立を心から願います。

6日の広島原爆の日、ご自分の言葉で語られた湯崎英彦広島県知事の挨拶もよかったですが、
鈴木史朗長崎市長の平和宣言も素晴らしかったです!

「原爆を作る人々よ!
しばし手を休め 眼をとじ給え
昭和二十年八月九日!
あなた方が作った 原爆で
幾万の尊い生命が奪われ
家 財産が一瞬にして無に帰し
平和な家庭が破壊しつくされたのだ
残された者は
無から起ち上がらねばならぬ
血みどろな生活への苦しい道と
明日をも知れぬ”原子病″の不安と
そして肉親を失った無限の悲しみが
いついつまでも尾をひいて行く
これは23歳で被爆し、原爆症と闘いながらも原爆の悲惨さを訴えた長崎の詩人・福田須磨子さんが綴った詩です。」
力のこもった朗読でした。
後半、
「世界中の皆さん、私たちは、地球という大きな一つのまちに住む「地球市民」です。」とまず呼びかけ、
「平和をつくる人々よ!
一人ひとりは微力であっても、無力ではありません。私たち地球市民が声を上げ、力を合わせれば、今の難局を乗り越えることができる。国境や宗教、人種、性別、世代などの違いを超えて知恵を出し合い、つながり合えば、私たちは思い描く未来を実現することができる。長崎は、そう強く信じています。」

宣言の中にもあった「唯一の戦争被爆国である日本の政府は、核兵器のない世界を真摯に追求する姿勢を示すべきです。そのためにも一日も早く、核兵器禁止条約に署名・批准することを求めます。そして、憲法の平和の理念を堅持するとともに、北東アジア非核兵器地帯構想など、緊迫度を増すこの地域の緊張緩和と軍縮に向け、リーダーシップを発揮することを求めます。」
私も賛同します。

平和宣言に賛同される方は、リンク先の文末にある賛同ボタンをぜひお願いします!

9日は私の母の命日でもあり、毎年青山のお墓にお参りします。
お墓の前に行くだけで気持ちが落ち着きます。



いつも夏着物で行きますので、この日もガンバって!と着ることは着たのですが、、冷房のない部屋で着付けていたら、出かける前にもう大汗をかいてしまいました。半巾を侍結びでキリリと締めたのですが、、。(;^_^A

湿度もとても高かったので、11時半から3時ごろまで都心のアスファルトの戸外を歩くのはやはり命の危険を覚え、写真を撮る前に、麻のワンピースに着替えてしまいました。
やはり都心はとても暑くて、高齢者としては無理をしないでよかったです。

でも外苑前駅で40代くらいの涼やかな着物の方をお見掛けしました。見ほれました・・。
この猛暑の中では、ご自分の体力や健康状態、環境などと相談して無理をしませぬように。

トップ画像は以前のもので、2枚目はこの日着る予定の半巾帯との取り合わせ。着物自体はとても涼しい上布なのですが…。



そしてお土産に、青山紅谷さんで和菓子を買って帰宅しました。
4時ごろ帰宅したのですが、急に空が掻き曇り、暗くなってしまいましたが、
窓辺に置いて、いただく前にパシャリ!!
道明寺粉が中に使われています。
左が、「小石川」、「蝉時雨」でとてもおいしかったです!!
目にも美しく涼やかですが、道明寺粉の食感ものど越しもよく、幸せな気持ちになりました。
 「閑さや岩にしみ入蝉の声  松尾芭蕉」

こうした和菓子の文化にも、日本の美しい自然を取り入れること、着物の文化も同じです…。
平和な日々が続いてこそ文化、芸術は高まると改めて思います。


さて、かなり難しい着尺をお盆前になんとか織りあげました。
あとは事務的なことを片付けて、明日8/11から8/18まで工房はお盆休みに入ります。

「大き荷の男結びに秋の風   宇多喜代子 」

秋風が待ち遠しいです。ご自愛ください。




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紬塾 第4回 「帯揚げを染める」―草木の色とは

2024年07月25日 | 紬塾’21~’25
今まで帯揚げの染は、染織実習コースの方達だけにしていたのですが、来年度に染織実習コースが出来るか不透明ですので、今期の基礎コースの方達には特別に、染色の回を増設しました。

まだ梅雨の明けきらないどんよりとした日の染色実習となりました。
本来は晴れの日にしたいところですが、遠方の方が3名いらして、早目のチケット予約の都合もあり、それでも工夫をすればなんとかやれると判断し決行しました。

草木染は天日に干し、早く乾燥させたいので、ただ室内で乾けばいいというものではなく、色を見極める際の光も欲しいので、曇りの中ではその判断が難しいのです。
染めるということは染液に浸け、加熱し、色を付けるだけの行為ではありません。

染めるということは、植物の採集時期や、チップの作り方、煮出し方、染液を直ぐ染めたほうが良いもの、時間を置くほうが良いもの等の違い、また糸や布の湯通しや洗い、加熱を止め、温度が下がっていく時間も、天日に干すこと、空気酸化による変化の時間なども含まれます。

生木による草木染は本当はとても難しいものです。45年以上続けても難しいです。
しかし、一般の方にも身近な自然物にこんな不思議な生き生きとした深い色の世界があるのだということを、ほんの一端でも知ってもらいたく続けてきました。

色名では語れない、自然な生きた色。色とは何なのでしょう?

以前、武蔵野美術大学工芸工業科テキスタイルデザインの学生たちに桜染の糸を見せたら、みんなとても感動してくれて、ある学生は見たことのない色と言っていました。
講義の後の感想に、「草木染めの色の話がとても興味深かったです。普段、パソコンや染料や絵の具をまぜて色を作っているけど、植物に宿っている無限の色を引き出すという草木染めの感覚はそのどれとも違っていて、本当におもしろいと思いました。日本の四季をこれまで以上に感じ、色の感覚を大事にしていきたいと思いました。」と綴ってくれました。

パソコンでも自由に色は作れるけれど、そんなことではない、根本的な質の違いがあるのです。
私達は自然物のありのままの色にもう少し目を向けてもいいのではないでしょうか?
あんな色、こんな色が欲しいとかではなく、まずはどんな色になるのだろう・・という気持ちが染色では大切です。

今まで参加のみなさんは柔らかな頭で、素直に染め上がる色を見詰めてくれたように思います。

今週末には、別グループで糸染めを含め、染の実習をやります。(;^_^A💦


媒染や、干している間の時間を使って、自宅で半衿や、無媒染でも染められる草木染のことなどレクチャーをしました。

今までの方でも自宅でも帯揚げや半衿を染めてみたという方もありました。
毒性のない、食用にもなる植物でしたら、キッチンのステンレスボールなどで染めることもできます。染色は料理の感覚が大切です。
工房の庭には食べられる実のなる植物が沢山あります。
※媒染剤をキッチンで使う場合は取り扱いに十分注意が必要です。染色の基礎を学んでからにして下さい。

上の画像の竿に掛けている薄いピンクの柿の染は、曇り空でしたので少しでも早く乾かすためにエアコンの送風と扇風機を当てています。あらかた乾くのを待ち、2回目の染に入りました。



こちらは桜で、3枚ともアルミ媒染のものです。
1回目の染めでは、1煎目だけを使い、2回目の染めで少し赤味の多い2煎目を足しましたので、オレンジ系になりました。湿度高く、乾ききりませんでしたので、家で各自、干してもらうことにしました。

私は薄い色の帯揚でも2工程、3工程と何日もかけ染め重ねるのですが、半日の講座ではそれはかないません。ただ、もし褪色などがあれば、その時また染め重ねることもできます。生地は丹後の上等のものですので、長く使ってほしいと思います。

内容などは過去の紬塾、染織実習のブログもご覧下さい。
2023.7月 2018.07月


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真綿から糸をつむぐ

2024年07月02日 | 紬塾’21~’25
染織実習コースの方に、真綿から糸をつむぐことをしてもらいました。
つむぎ方も幾通りかありますが、久米島式のつむぎ台を使っています。

真綿4g(一反分の緯糸の約1/100の量)から着尺より太い糸をつむいでもらいました。
久米島式は真綿が平らに開いていますので、太い糸もつむげます。
また、糸を切るということもほとんどなく引き出せます。
結城の工芸士さんにも糸つむぎを習ったことがありますが、結城の方式では糸を引き出すのに張力が掛かるので、特に経糸に向いていると思います。

安定した太い糸をつむぐことは初心者にはとても難しいのです。
太かったり、急に細くなってしまったりはしましたが、みなさん1.5~2時間でつむぎ終えました。


今期の方の中に、養蚕から真綿を作るところまでしている方があり、その方は別途個人指導の時間を取り、一人でもつむいでいけるよう、ご自分の真綿(上の画像の)でも4gほどつむいでもらいました。


この時は着尺用の太さでつむいでもらいました。
光沢のあるとても強い真綿で経糸もつむげそうです。



単純な道具を使うので、その人の感覚がよく出ます。
糸つむぎを見ると大体の力量や性質が分かると宗廣先生も仰られていました。
本当によくわかります。^_^

ただ細いだけではない、身体のリズムと真綿と一体になっておおらかな糸をつむぎたいものです。
織っていて、惚れ惚れするような糸のかたち、表情、景色に出会うと嬉しくなります。


私は、もうつむがなくても染めた糸がたくさんありますので、ここ15年程はまとまった糸つむぎはしていません。それでも手本を示しながら糸をつむげば、こころは落ち着きます。
糸つむぎのような微調整の仕事は得意な方です。(^^)/

以前のブログにも書きましたが、
ただ、大事なことは、「麻にせよ、木綿にせよ、紬にせよ、布を織ることや、糸つむぎは、今の時代は趣味的なことのように捉えられがちですが、機械的なものが出てくる以前は、生きるためのとても厳しい、時間のかかる過酷な仕事でした。」
そして、主に女性たちがその過酷な仕事を担わされてきた歴史もあり、低賃金で糸はつむがれてきたのです。
着心地の良い真綿紬の価値がもう少し真に評価され、末端の人も報われて欲しいです。そうしないと、技術も紬も未来へ繋がらないからです。
もう紬をわかる人がこの業界でも少ないのではないでしょうか?


紬塾で「糸つむぎ」をやるのは、紬の着物を着る方にも手つむぎ糸を引くことの難しさ、大変さを身体を通して知ってもらいたいからです。
文化は市民一人ひとりが育てていくものですから。

過去のブログもご参照ください。
2018.6.252019.6.072023.6.16 など。



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紬塾 第3回「とことん着尽くす」― 着物の更生・運針

2024年06月22日 | 紬塾’21~’25
紬塾では、環境や、エコの問題を話題にします。みなさんからも日々エコのことで工夫していることを伺ったりするのですが、紬とエコが繋がらない方もあるかもしれません。
紬のことや着物のことを学びに来たのに・・。

紬の前身は“絁(あしぎぬ)”と呼ばれる絹織物と言われています。
節のある織物で武士や僧侶などが着ました。
平安時代の法令集「延喜式」の中にも“絁”が出てきます。
学生時代に平安時代の衣の文化についての課題があって、調べた時に「絁」の文字を覚えています。

諸説あるのでここには書きませんが、いずれにしても、所謂生糸の平絹織物ではなく、繭を一度に沢山引き出す節糸や、出殻繭から直接引き出すずりだし糸や、繭を真綿にして引き出す真綿紬糸など、節は出るけれども無駄なく使い、織られたものです。
堅牢な織物として、その風合いや、野趣味、柔らかさも人々に愛され、今日では紬として続いているのです。
そこにはひと手間も、ふた手間もかけた創意工夫があって出来るものなのです。

また、着物の和裁の知恵というものも凄いものがあります。
昔は解くことを前提に縫われていて、ミシンのようなきつい縫い目ではなく、玉止めを取ればすうっと糸が抜けるようにできています。
衿肩明きだけ鋏が入っていますが、前身ごろと後身ごろを逆に使うこともできるのです。
この日着ていたこの紬も前後を入れ替えて仕立てかえてあります。
前身ごろに大きなシミをつくってしまい、表裏を返し、更に前後も入れ替え帯でカバーできるようになったのです。(^^ゞ

堅牢に織られた紬は3代に渡って着ることもできると言われていますので、これこそとことん使う究極のエコではないでしょうか?



襤褸(ぼろ)の写真集、「襤褸の美」(額田晃作)をいつもお見せするのですが、凄まじいものがあります。
何十枚もの継ぎ当てのある布団側や野良着。
しかしある種の美も湛えているのです。
日頃の自分のエコ意識などの生ぬるさを突きつけられるような思いになります。


私の母も着物地や子供たちの学生服のズボンやスカートで普段使いの座布団側を沢山縫っていました。
上の画像で私が手に持っているのは、扇風機を保管する時のカバーを古い母の夏のスカート(母が自分で縫ったギャザースカート)から作ってありました。

他にも沢山リメイク品があるのですが、運針だけで縫っているものがほとんどです。
子供の頃の銘仙の着物で縫った風呂敷も沢山あります。
今のようにビニール袋や衣装ケースのない時代、衣服を風呂敷で包んで茶箱に保管していました。


上の画像は、銀行の粗品の手拭いで、子供たちが飯盒炊爨の時に持って行くお米を入れる袋も作っていて、お見せしました。

母は自分用に、自家用に作っただけで、まさか娘が他人に見せるとは思ってもなかったでしょう。苦笑いしているでしょう。(#^^#)

秋にはみなさんにも何かあるもので創意工夫して縫ってもらうべく、夏休みには運針練習をしてもらうことになっています。
布を見詰める良い機会になればよいと思います。

エコ意識はクリエイティブな世界に繋がっています。
安いものをたくさん買って捨て続けるのではなく、気に入ったものを大切に修繕しながら使うことは、ものへの愛情も深まり、自分の気持ちも安定します。創意工夫は脳の活性化にもつながります。



五本指のお気に入りのソックスは二度三度とアップリケ状に継ぎを当てて履いています。
靴下の継ぎ当ても楽しいですよ!








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