中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

真綿から糸をつむぐ

2024年07月02日 | 紬塾’21~’24
染織実習コースの方に、真綿から糸をつむぐことをしてもらいました。
つむぎ方も幾通りかありますが、久米島式のつむぎ台を使っています。

真綿4g(一反分の緯糸の約1/100の量)から着尺より太い糸をつむいでもらいました。
久米島式は真綿が平らに開いていますので、太い糸もつむげます。
また、糸を切るということもほとんどなく引き出せます。
結城の工芸士さんにも糸つむぎを習ったことがありますが、結城の方式では糸を引き出すのに張力が掛かるので、特に経糸に向いていると思います。

安定した太い糸をつむぐことは初心者にはとても難しいのです。
太かったり、急に細くなってしまったりはしましたが、みなさん1.5~2時間でつむぎ終えました。


今期の方の中に、養蚕から真綿を作るところまでしている方があり、その方は別途個人指導の時間を取り、一人でもつむいでいけるよう、ご自分の真綿(上の画像の)でも4gほどつむいでもらいました。


この時は着尺用の太さでつむいでもらいました。
光沢のあるとても強い真綿で経糸もつむげそうです。



単純な道具を使うので、その人の感覚がよく出ます。
糸つむぎを見ると大体の力量や性質が分かると宗廣先生も仰られていました。
本当によくわかります。^_^

ただ細いだけではない、身体のリズムと真綿と一体になっておおらかな糸をつむぎたいものです。
織っていて、惚れ惚れするような糸のかたち、表情、景色に出会うと嬉しくなります。


私は、もうつむがなくても染めた糸がたくさんありますので、ここ15年程はまとまった糸つむぎはしていません。それでも手本を示しながら糸をつむげば、こころは落ち着きます。
糸つむぎのような微調整の仕事は得意な方です。(^^)/

以前のブログにも書きましたが、
ただ、大事なことは、「麻にせよ、木綿にせよ、紬にせよ、布を織ることや、糸つむぎは、今の時代は趣味的なことのように捉えられがちですが、機械的なものが出てくる以前は、生きるためのとても厳しい、時間のかかる過酷な仕事でした。」
そして、主に女性たちがその過酷な仕事を担わされてきた歴史もあり、低賃金で糸はつむがれてきたのです。
着心地の良い真綿紬の価値がもう少し真に評価され、末端の人も報われて欲しいです。そうしないと、技術も紬も未来へ繋がらないからです。
もう紬をわかる人がこの業界でも少ないのではないでしょうか?


紬塾で「糸つむぎ」をやるのは、紬の着物を着る方にも手つむぎ糸を引くことの難しさ、大変さを身体を通して知ってもらいたいからです。
文化は市民一人ひとりが育てていくものですから。

過去のブログもご参照ください。
2018.6.252019.6.072023.6.16 など。




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