「独立愚連隊」 1959年 日本

監督 岡本喜八
出演 佐藤允 中谷一郎 鶴田浩二
上村幸之 三船敏郎 中丸忠雄
南道郎 瀬良明 上原美佐
雪村いづみ 中北千枝子 横山道代
夏木陽介 ミッキー・カーティス
ストーリー
第二次大戦も末期、北支戦線の山岳地帯で敵と対峙している日本軍に、各隊のクズばかり集めて作った独立愚連隊と呼ばれる小哨隊があった。
独立愚連隊に行くには、敵の出没する危険な丘陵地帯を行かねばならない。
この死地へ、新聞記者の腕章を巻き、戦闘帽に中国服姿の男が馬を走らせていた。
大久保(佐藤允)という元軍曹だが、愚連隊小哨長をしていた弟の死因を究明するために、入院中の北京の病院を脱走して来て、従軍記者荒木と名乗っていた。
彼には弟が交戦中に情婦と心中したという発表は信じられなかったのだ。
彼は生前弟が使用していた居室から、弟の死因となったピストルの弾を発見した。
心中なら二発ですむわけだが、弾はいくつも壁にくいこんでいた。
部屋で死んだのだから、敵ではなく部隊内の誰かが犯人だ。
戦況はすでに破局に達していたが、死んだ梨花の妹でヤン小紅(上原美佐)という娘が現われた。
荒木は、彼女から姉の形見だという紙片を見せてもらった。
大久保見習士官が死ぬ直前に綴った、橋本中尉(中丸忠雄)の不正と隊の軍規是正を望むものだった。
橋本中尉は、自分の不正がばれるのを恐れて大久保を殺し、心中の汚名を着せたのだ。
しかし、荒木の身許が橋本にバレた。
荒木の北京時代の恋人で、今は将軍廟で慰安婦をしているトミ(雪村いづみ)が荒木を追って来た。
そして彼女は将軍廟の橋本からかかって来た電話に出て、荒木の本名を口走ってしまったのだ。
将軍廟に向うトミと荒木を乗せたトラックは途中で敵の砲撃を受け、トミは死んだ。
荒木も将軍廟に着くと営倉に投げこまれてしまう・・・。
寸評
寝転がっていたギョロ目の男が起き上がりひらりと馬に飛び乗る。
西部劇に出てくる騎兵隊のような彼が土煙を立てて荒野を突っ走り、軽快な音楽と共に地平線に消えていくタイトルバックは並の戦争映画でないことをうかがわせるものとなっている。
この映画では馬がしょっちゅう出てきて、戦争映画ではあるが西部劇を感じさせるものになっている。
日本陸軍に独立愚連隊のような部隊はあろうはずもなく、日本陸軍をパロディ化した映画には違いないがアクション・コメディと呼ぶには抵抗がある内容だ。
出演者の中には鶴田浩二や三船敏郎と言ったビッグ・ネームもあるが、彼等の登場時間は短い。
そんな中で面白いのは三船敏郎の部隊長だ。
彼は精神を病んでいて敵襲の妄想に取り付かれている。
ヒーロー役が圧倒的に多い彼が、ここでは狂った部隊長を大真面目に演じている。
それなのに登場時間はごくわずかで、「部隊長は病気の為部隊を離れる」と挨拶し、部下たちの最敬礼で見送られれるという滑稽場面でいなくなる。
バカバカしい軍隊組織を揶揄しているようなシーンだ。
中国戦線で八路軍を相手に絶望的な戦いを続ける日本軍であるが、前進基地である守備隊本部には慰安所があり中北千枝子が朝鮮半島出身の慰安婦を演じている。
姉御肌の慰安婦でたっぷり金をため込んでいて戦後は東京で喫茶店を開くことを夢見ている。
慰安婦問題が一向に解決しない日韓関係であるが、もしかしたら慰安所の実態はこのようなものだったのかもしれない。
戦争を体験している岡本監督が目にしていた光景なのかもしれないし、職業として結構な金を得ていた娼婦もいたのではないか。
売春は許させる行為ではないが、当時の世相からすれば罪悪感のないものだったのかもしれない。
将軍廟を守るように命じられた石井軍曹の中谷一郎が逃げ出そうとする仲間に向かって、「命令は絶対なので自分はここを守り敵が通り過ぎるのを見届ける」と言って建物に隠れて息をひそめる。
我が国のとる専守防衛という国防に通じる作戦だ。
守るように言われたが、せん滅せよとは命じられていないのでとった作戦だが、成功いま一歩のとこでちょっとしたことから戦端が開いてしまう。
独立愚連隊と八路軍の全面対決が起こり両軍とも全滅してしまう。
いくら専守防衛を唱えていても、ちょっとした出来事で戦争が始まってしまう危うさを描いているように思える。
この映画には鶴田浩二演ずる馬賊の親分というわけのわからぬ人物が登場する。
どうして彼が同胞ではなく、敵国の人間に友情を抱いたのかはあまり深く掘り下げられていない。
この映画には消化不良になりそうな点も多いのだが、訳の分からなさを吹き飛ばす大らかさがあり、その大らかさがこの映画の持ち味だろう。

監督 岡本喜八
出演 佐藤允 中谷一郎 鶴田浩二
上村幸之 三船敏郎 中丸忠雄
南道郎 瀬良明 上原美佐
雪村いづみ 中北千枝子 横山道代
夏木陽介 ミッキー・カーティス
ストーリー
第二次大戦も末期、北支戦線の山岳地帯で敵と対峙している日本軍に、各隊のクズばかり集めて作った独立愚連隊と呼ばれる小哨隊があった。
独立愚連隊に行くには、敵の出没する危険な丘陵地帯を行かねばならない。
この死地へ、新聞記者の腕章を巻き、戦闘帽に中国服姿の男が馬を走らせていた。
大久保(佐藤允)という元軍曹だが、愚連隊小哨長をしていた弟の死因を究明するために、入院中の北京の病院を脱走して来て、従軍記者荒木と名乗っていた。
彼には弟が交戦中に情婦と心中したという発表は信じられなかったのだ。
彼は生前弟が使用していた居室から、弟の死因となったピストルの弾を発見した。
心中なら二発ですむわけだが、弾はいくつも壁にくいこんでいた。
部屋で死んだのだから、敵ではなく部隊内の誰かが犯人だ。
戦況はすでに破局に達していたが、死んだ梨花の妹でヤン小紅(上原美佐)という娘が現われた。
荒木は、彼女から姉の形見だという紙片を見せてもらった。
大久保見習士官が死ぬ直前に綴った、橋本中尉(中丸忠雄)の不正と隊の軍規是正を望むものだった。
橋本中尉は、自分の不正がばれるのを恐れて大久保を殺し、心中の汚名を着せたのだ。
しかし、荒木の身許が橋本にバレた。
荒木の北京時代の恋人で、今は将軍廟で慰安婦をしているトミ(雪村いづみ)が荒木を追って来た。
そして彼女は将軍廟の橋本からかかって来た電話に出て、荒木の本名を口走ってしまったのだ。
将軍廟に向うトミと荒木を乗せたトラックは途中で敵の砲撃を受け、トミは死んだ。
荒木も将軍廟に着くと営倉に投げこまれてしまう・・・。
寸評
寝転がっていたギョロ目の男が起き上がりひらりと馬に飛び乗る。
西部劇に出てくる騎兵隊のような彼が土煙を立てて荒野を突っ走り、軽快な音楽と共に地平線に消えていくタイトルバックは並の戦争映画でないことをうかがわせるものとなっている。
この映画では馬がしょっちゅう出てきて、戦争映画ではあるが西部劇を感じさせるものになっている。
日本陸軍に独立愚連隊のような部隊はあろうはずもなく、日本陸軍をパロディ化した映画には違いないがアクション・コメディと呼ぶには抵抗がある内容だ。
出演者の中には鶴田浩二や三船敏郎と言ったビッグ・ネームもあるが、彼等の登場時間は短い。
そんな中で面白いのは三船敏郎の部隊長だ。
彼は精神を病んでいて敵襲の妄想に取り付かれている。
ヒーロー役が圧倒的に多い彼が、ここでは狂った部隊長を大真面目に演じている。
それなのに登場時間はごくわずかで、「部隊長は病気の為部隊を離れる」と挨拶し、部下たちの最敬礼で見送られれるという滑稽場面でいなくなる。
バカバカしい軍隊組織を揶揄しているようなシーンだ。
中国戦線で八路軍を相手に絶望的な戦いを続ける日本軍であるが、前進基地である守備隊本部には慰安所があり中北千枝子が朝鮮半島出身の慰安婦を演じている。
姉御肌の慰安婦でたっぷり金をため込んでいて戦後は東京で喫茶店を開くことを夢見ている。
慰安婦問題が一向に解決しない日韓関係であるが、もしかしたら慰安所の実態はこのようなものだったのかもしれない。
戦争を体験している岡本監督が目にしていた光景なのかもしれないし、職業として結構な金を得ていた娼婦もいたのではないか。
売春は許させる行為ではないが、当時の世相からすれば罪悪感のないものだったのかもしれない。
将軍廟を守るように命じられた石井軍曹の中谷一郎が逃げ出そうとする仲間に向かって、「命令は絶対なので自分はここを守り敵が通り過ぎるのを見届ける」と言って建物に隠れて息をひそめる。
我が国のとる専守防衛という国防に通じる作戦だ。
守るように言われたが、せん滅せよとは命じられていないのでとった作戦だが、成功いま一歩のとこでちょっとしたことから戦端が開いてしまう。
独立愚連隊と八路軍の全面対決が起こり両軍とも全滅してしまう。
いくら専守防衛を唱えていても、ちょっとした出来事で戦争が始まってしまう危うさを描いているように思える。
この映画には鶴田浩二演ずる馬賊の親分というわけのわからぬ人物が登場する。
どうして彼が同胞ではなく、敵国の人間に友情を抱いたのかはあまり深く掘り下げられていない。
この映画には消化不良になりそうな点も多いのだが、訳の分からなさを吹き飛ばす大らかさがあり、その大らかさがこの映画の持ち味だろう。
この映画「独立愚連隊」は、暗く悲惨な従来の日本の戦争映画に対して、"陽気でアナーキー"な戦争活劇の出現という、日本映画史における金字塔を打ち立てた、岡本喜八監督の代表的なシリーズの第1作目の作品ですね。
この作品は、岡本喜八監督の名を、多くの日本映画ファンの間に一躍知らしめた、ウエスタン調の戦争映画で、主演は日本のチャールズ・ブロンソンこと佐藤允。
そのギョロリとした目、大きな口。
いかにも、ひと癖ありそうな風貌で悪役を演じていた彼は、この作品で初主演し、一躍スターダムにのし上がりましたね。
日中戦争末期の中国大陸の北支戦線。
追いつめられた日本軍の最前線に、従軍記者の荒木(佐藤允)が、ふらりと現われます。
実は、彼は脱走兵で、最愛の弟が前線で不審な死に方をしたのを知り、従軍記者を装って真相を暴きに来たのだった。
そして、そこに待ち受けていたのは、落ちこぼればかりを集めた「独立愚連隊」と呼ばれる部隊だったのだ--------。
荒木は、生前に弟が使っていた部屋の鍵から何発もの銃弾を発見。
ますます、弟の死に陰謀が絡んでいることを確信する。
この作品は、ジャンルとしては戦争ものなのですが、リアリズムは全くと言っていいほどありません。
西部劇とハードボイルドな探偵映画をミックスしたような感じで、岡本喜八監督の演出は、コミカルで、時にアクション・シーンの展開に、胸のすくような爽快な歯切れの良さを見せて、そこから"戦争の愚劣さ"が鮮やかに浮かび上がってくるんですね。
とにかく、全編を通じて、快調なテンポ、粋なセリフ、逆境でのギャグ。
日本映画にありがちな、じめじめとした情緒とは全く異質な、カラリと乾いたクールな感覚が、この作品独自の特質であり、素晴らしさだと思うのです。
そして、この作品を観て、私の心に刻み込まれたのは、主人公の佐藤允が演じる主人公の、長いものに巻かれず、正義を貫き通す生き方のカッコよさだ。
また、日本映画ファンとしては、三船敏郎、鶴田浩二、雪村いづみらの大物が、意外な役で出演しているのも嬉しくなってきますね。
キャラクターが面白い。
わけがわからん人物たちで笑ってしまう。