おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ションベン・ライダー

2021-04-01 08:50:30 | 映画
「ションベン・ライダー」 1963年 日本


監督 相米慎二
出演 藤竜也 河合美智子 永瀬正敏 坂上忍
   鈴木吉和 原日出子 桑名将大 木之元亮
   財津一郎 村上弘明 寺田農 伊武雅刀
   きたむらあきこ 倍賞美津子 前田武彦

ストーリー
ジョジョ(永瀬正敏)、辞書(坂上忍)、ブルース(河合美智子)の三人の中学生はガキ大将のデブナガ(鈴木吉和)にいつもいじめられており、今日こそやっつけてやろうというとき、そのデブナガが三人の眼の前で誘拐されてしまった。
デブナガの父(前田武彦)が覚醒剤をタレ流していることに腹を立てた横浜のヤクザ極龍会のイヤガラセだ。
誘拐したのは極龍会の組員、山(桑名将大)と政(木之元亮)だが、マスコミはこの事件を派手に報道し、組ではもてあましていた。
一方、三人の中学生は横浜に向い、そこで、極龍会の組員で、山と政の二人を連れ戻すように命令を受けている中年のヤクザ、厳兵(藤竜也)と出会い、一緒にデブナガ救出しようと持ちかけ、厳兵はしぶしぶ承諾する。
その頃、デブナガは熱海から名古屋に連れ去られていた。
一方、ヤク中で暴力的な厳兵を嫌う辞書はブルースと一緒に、熱海に研修会に来ていたアラレ先生(原日出子)を救出作戦に巻き込んでしまう。
一方、別行動をとっていたジョジョと厳兵は山と政を貯木場に追いつめており、そこへ、ブルース、辞書、アラレも到着した。
運河に浮かぶ木の上で大迫跡が繰り広げられ、厳兵とブルースは負傷し、アラレも橋から落ちて傷だらけ、そして、山と政、デブナガはどこかへ逃げ去っていた。
クサる厳兵や辞書たちのところに島田組の者が現れ、協力を申し出てきた。
腹では極龍会を支配しようと考えている島田組の招待で五人は飲めや歌えの大騒ぎをする。
しかし、厳兵は島田の援助を断ると、山たちが逃げたと思われる大阪へ向った。
そんな厳兵の姿に、ブルースは心惹かれるものを感じる。


寸評
いじめっ子に仕返しをしようとしている三人の少年少女が居て、そのいじめっ子がやくざに誘拐されてしまったので、その行方を三人で追っているだけの単純な話なのだがストーリー性はない。
したがってストーリーを追って見ている分には面白くない映画である。
説明不足だと思う部分は多々あるが、カメラはそんな観客の疑問を置き去りにして、相米監督の代名詞でもある長回しが駆使されながら延々と少年少女三人を捕らえつづけていく。
カメラは移動したりパンしたりするがカット割りは極めて少ない。
ほとんど遠くから写されるために個々の表情は詳しくは分からないが、三人は全身で演技をしている。
後に名実兼ね備えた一流俳優に成長するこれがデビュー作の永瀬正敏や坂上忍らが若さ溢れるイキのいい演技をみせている。
なかでもボーイッシュなハツラツ少女を演じた河合美智子からは、少女でも大人でもない正にこの時代の一瞬のきらめきが感じられ忘れがたい印象を残す。
自分は男だと言い、自分をボクと呼んで男の子二人と仲良くやっているのだが、ブルースが海に入るシーンはジョジョと辞書の男二人と本来は女であるブルースの決定的な溝を感じさせるいいシーンだ。

その他、橋から木場へと続く追跡シーンや、軽トラに自転車で追いついて飛び移るシーンなどが印象深い。
横浜へ行ったり名古屋へ行ったりと夏休みの子供たちにとっての冒険映画となっている。
冒険はデブナガを救い出すと言う単純なものなのだが、その単純さから脱線しそうになるいくつもの場面は迷走しているとさえ思えるものなのだが、それを相米独特の長回しが捕らえ続けることで転覆を免れている。
物語の迷走を引き起こしているのは、少年少女達の予測不能あるいは意味不明の危なっかしい行動だ。
実際にはあり得ない行動なのだが、少年時代を思い起こす時、もしかしたら自分も同じようなことをしたかもしれないと思わせるノスタルジーを感じさせるのがこの映画の魅力だ。
ノスタルジーを感じさせるのは映画の中の夏が僕の中にある懐かしい夏感覚にマッチしていたからなんだと思う。
あの頃の夏は冬と違って開放的になり、ヤクザと付き合うことはなかったが危なっかしいこともやってみたくなったし、大人の世界に潜り込んで随分と背伸びした体験をしたものだったように思う。
2軒隣のオジサンはスゴイ刺青をしていたが恐ろしくはなかった。
そのオジサンは僕を可愛がってくれてウナギ釣りの仕掛けによく連れて行ってくれた。
僕はその川に2回もはまって流され、その家のオバサンに助けられた。
懐かしい・・・。

役名がそのまま芸名になったこれがデビュー作の河合美智子は、主題歌の「わたし・多感な頃」でも歌手デビューも果たしている。
1996年のNHK連続テレビ小説「ふたりっ子」に通天閣の歌姫こと叶麗子をモデルにしたオーロラ輝子役で出演して一気に知名度を上げ、紅白歌合戦にも出場したのだが、この作品での彼女はブラジャーもつけずに頑張っていてボーイッシュな少女を好演している。
原日出子のアラレ先生までノーブラだったのはなぜなんだろう。
へんなところに気が行った。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿