おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ニキータ

2019-12-04 06:47:10 | 映画
「な」は8本にとどまりました。
「に」の映画を紹介していきます。


「ニキータ」 1990年 フランス


監督 リュック・ベッソン
出演 アンヌ・パリロー
   ジャン=ユーグ・アングラード
   ジャンヌ・モロー
   チェッキー・カリョ
   ジャン・レノ
   ジャン・ブイーズ
   フィリップ・デュ・ジャネラン
   フィリップ・ルロワ

ストーリー
パリの路上に生きる粗暴な不良娘ニキータ(アンヌ・パリロー)。
麻薬中毒の彼女は薬屋を襲撃しようとして3人の警官を射殺してしまう。
ニキータは無期懲役刑を言い渡されるが、その生存能力の高さに政府の秘密機関が目をつけ、工作員として働くことを強要される。
初めは抵抗したニキータだったが、選択肢のないことを知り、教育係のボブ(チェッキー・カリョ)による厳しい訓練に耐え、先輩のアマンド(ジャンヌ・モロー)のアドバイスもあって3年後には美しい女殺し屋に変貌していた。
23歳の誕生日に初めて外出を許されたニキータは、ボブに連れていってもらったレストランで拳銃を与えられ、暗殺指令を受ける。
無事仕事をこなした彼女は一人前の秘密工作員として認められ、コードネームをもらった。
そんな日々の中、ニキータにも初めての恋が芽生えた。
相手はスーパーのレジ係マルコ(ジャン・ユーグ・アングラード)。
しかし婚約者となっても彼には秘密を打ち明けることはできなかった。
ソ連大使館から機密情報を奪取する指令を受け潜入するが失敗し身も心も疲れきったニキータにマルコは仕事をやめろと言う。


寸評
不良少女が工作員に仕立て上げられ活躍する話だが、一言でいえば非常にスタイリッシュな作品で、僕の思い込みもあるのかもしれないがフランス映画を感じさせる雰囲気を持っている。
圧倒的多数を占めるアメリカ映画なら、ニキータが秘密機関の工作員として鍛えられる場面では、過酷な訓練状況がこれでもかとばかりに描かれただろう。
武器の取り扱い、格闘技において熟練していく過程、レディとしての礼儀作法などをてきぱきと描いていくのがアメリカ映画の得意なところだが、この映画にはそのような演出は見られない。
また教官に反発するエピソードもアメリカ映画ならもっと執拗に描かれたのではないかと思われる。
ニキータの孤独、反抗、希望などの内面に潜んだ感情を雰囲気を醸し出しながら描き続けていくことで、ニキータはスーパー・ウーマンとして変質するのではなく、特異な能力を会得しながらも普通の女性の側面を残し続けているということを印象付けることに成功している。
僕はこの前半部分にフランス映画をすごく感じた。

一人前になって世に出たニキータにミッションが下るが、そのミッションは徐々に高度化していく。
その様子を描いていくだけなら女性が主人公のフランス版「ミッション・インポシブル」にすぎないのだが、彼女に恋し、彼女が恋する相手としてスーパーのレジ係マルコを登場させて作品を別なものに仕上げているのはリュック・ベッソンらしい。
さらに教育係のボブがニキータによせる微妙な感情も加わり、恋愛映画の様相も加味されていい雰囲気だ。
ニキータが巣立っていく時に「寂しくなるな」と言って廊下で壁にもたれかかるボブの姿が印象的だ。
ニキータが婚約した報告を聞いた時の振る舞いに僕は切なさを感じた。
不良少女時代や、訓練を受けている時の表情に比べ、マルコに見せるニキータの笑顔は魅力的だ。
この表情の変化がニキータの幸せ感を十分すぎるほど感じさせ、そのことで使命との狭間で苦しむ彼女の苦悩が伝わってきて、アンヌ・パリローあっての映画だなと思わせる。
自分の気持ちをしまい込んで、厳しいながらも温かくニキータを見守るボブのチェッキー・カリョも渋くていいが、やはりこの作品ではアンヌ・パリローの存在感が際立っている。

マルコは過去を語らないニキータに不信感を抱きながらも愛し続け支えているのだが、ニキータとの愛のささやき場面以外で彼の行動は描かれることはない。
愛せば愛すほど彼女のことが知りたいだろうし、彼女の行動に興味が湧いて当然だと思うが、それは割愛されていて、僕などは途中で、もしかすると彼もどこか別の国の工作員ではないのかとすら思ってしまったぐらいだ。
彼女の正体を知る経緯も描かれていいように思うが、マルコの突然の告白で終わり、サスペンスとしては少しあっけにとられた感が生じた。
それも意図したもので、ラストシーンでのボブとマルコの対面となったのだろう。
二人の会話は余韻を残した。
特にボブが再びつぶやく「寂しくなるな」は二人の感情を表していた。
結末を急いだ感がありながらも、このラストは余韻を残し、最後にこの映画の持つ雰囲気を締めくくった。


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