ずいぶん前に終了した映画ですが、メモがほったらかしにしていたので、書きたいと思います。
見に行ったのが 2021/05/06。終盤だったので、完全に貸し切りでした。
映画館の貸し切り・・・壮観でしたね。
映画『騙し絵の牙』公式サイト | 3月26日(金)全国公開
塩田武士が「大泉洋」を主人公にあてがきし、世間の注目を集めたベストセラー小説「騙し絵の牙」がついに映画化!主演:大泉洋×監督:吉田大八×オー...
映画『騙し絵の牙』公式サイト | 3月26日(金)全国公開
まず「ばーん」と感想を書くと
「ただただ王道のドラマ」
と言うことです。
大泉洋さんを主役にすべく、あて書きした小説(塩田武士さん著) をベースにした映画との事でした。
大泉さんらしいかと言うと、「探偵はBARにいる」ほうが”らしい”かな?とは思いますが、役者さんなので新しい雰囲気も必要かなと思います。良かったのではないでしょうか。
この映画、公開が新コロナの影響で、ずいぶん延期されたこともあり、配給元はCMなどで「あおり」まくっていましたね。
「全員クセモノ!」
「全員ウソをついている」
など、人の興味を引きそうな文句を並べたてることで、 話題作りをしていたと思います。
ただね・・・作中で
「グヘヘ、あいつに嘘をついて、地獄に落としてやる!!!」
という事もなく、私の感覚では
「この程度の”ビジネス上の駆け引き”は良くあること」
と言うのが率直な感想です。
そもそも、出版業界の”出し抜き”を扱った作品だと思うので、良くある話ですし、逆にその点が馴染みがある面白さではないでしょうか。
という事もあり、変なCMを使って悪い方向にミスリードしちゃったかなと。
先にも書きましたが、ただただ王道な内容です。
そのため見やすい反面、サプライズが少ない=視聴者を引き付けるポイントが少ないという感じに見えました。
これと言った伏線もなく、伏線が無いので回収作業もなく、プロット通りの時間経過を前後しながら描いていくという進め方です。
良く言えば「見やすく理解しやすい」、悪く言うと「TVのサスペンス枠で良いのでは」という感想です。
良くできた普通のサスペンスドラマであるものの、それは無いなーと思ったのが「矢代(演 宮沢氷魚さん」というキャラクターが記者会見を行うところ。
この手のお話の悪いところで、作品が終わった後の時間を含めた時間で誰も得をしない話になっていること。
この記者会見は、作中では
「してやったり。商売敵(といっても別部署で同じ出版内)をはめてやったぞ!」
で、してやったり感、得をした感、サプライズ的な爽快感がありますが、物語終了後、この人はマスコミやら週刊誌やらに地の底まで追いかけられることになります。またどこまで逃げても、どの業界に行こうと引きずります。
そのためリアル社会では、こういった記者会見は大々的にはやらないでしょ。つまりリアルでは無いのです。
爽快感があるかもしれませんが。
こういったシーンを作るのは、先が見えない「指示待ち社員」的な発想で、ビジネスリーダーから見ると???な内容に見えると思います。
・・・劇場アニメ「天気の子」でも、思ったんだよな
「自分たちが幸せでハッピーエンドだろうけど、この後の東京は地獄だよな・・・自分しか見えてないんじゃない?」
と。
まあ、単発の物語なので、これで許されますけど。
あとは、最後のシーンで高野(演 松岡茉優さん)が速水(演 大泉洋さん)を出し抜いて、有名作家を引き抜き出版してしまうところ。
出版では良くある話なのかもしれません(仁義は切りますよね?わかりませんが)。
速水がコーヒーを地面に投げつけ、悔しさを前面に表現します。
その後、獄中の城島咲(演 池田エライザさん)に新連載を促すという話ですが、速水が「次はこっちの番だ」とつぶやきます。
この時の演出がね。。。
せっかく悔しさを全開に出したのだから、もっとギラギラとした目で「倍返しだ!」ぐらいの圧のある演技でやるべきだったのではないかと。
どうもね、悔しい割には必死感が伝わらなかった。
大泉さんらしいと言えばらしいのだが、であるならコーヒーを投げつけるのではなく、静かに紙カップを握りつぶすという演出の方が心情がマッチしていたかと感じました。
ちょっと「すっきり」しないですね。
最後に、東松(演 佐藤浩市さん)が進めていたプロジェクト「KIBA」ですが、実は前社長のために、前社長に感謝をしてと言う部分を、社長の名前「伊庭 喜之助(いばきのすけ)」からとった
”K.IBA”
であることを肖像画に示された名前プレートを映し出すことで表現しています。
分かります。。。ある意味、感動の場所として配置したコンテでしょう。
・・・何の伏線にもなっていませんし、「へーそうなんだ」の上でもなく下でもないです。
もっとKIBAという名前にフューチャーして
「このプロジェクトKIBAを、どうしても進めるんだ!!何としても!!!」
という強い雰囲気を描くことで、この名前プレートのシーンをグッとくるシーンにできたのでは?と感じました、残念です。
名前と言えば「機動警察パトレイバー the Movie」(1作目ですね)で、帆場暎一 (ほばえいいち)という黒幕が出てきます。
もうわかるかと思いますが、イニシャルで書くと”E.HOBA”。つまりエホバですね。
ここから、このキャラクタは自分を神格化し酔っていく。しかしながら、正しくはヤーヴェであると知ると狂気したという内容が、キャラクターのセリフで示されます。
つまり帆場の起こした出来事の背景には”E.HOBA”という文字が大きくかかわり、そこから性格も構成され、社会を憎んでいく。
名前一つで、キャラクターのイメージを重厚に作り上げていっています。
”K.IBA”を意味ありげに表現するのであるなら、これぐらいの表現を入れてほしかったですね。