東京都知事選(20日告示、7月7日投開票)に立候補を表明した立憲民主党の蓮舫参院議員が針のムシロだ。小池百合子都知事に舌鋒鋭く切り込み、強力なライバルに躍り出たが、過去の醜聞が蒸し返されれば、事前運動の公選法違反の疑いでやり玉に挙げられている。
蓮舫氏にミソがついたのは2日の立候補表明後初となる東京・有楽町で行った街頭演説会だ。報道陣や聴衆は雨で野ざらしの中、蓮舫氏は屋根の下での〝女王様演説会〟で、日本維新の会の馬場伸幸代表は「X」(旧ツイッター)に「自分達は濡れないところで演説をやる、というところがこの方々の普段の政治姿勢に現れていると感じるのは小生だけでしょうか?」とチクリとポストした。
これだけではない。この時、蓮舫氏が「七夕に予定されている都知事選に蓮舫は挑戦します。皆さんのご支援、どうかよろしくお願いします」とあいさつすれば、応援に駆け付けた立憲の枝野幸男前代表も「みんなが安心して住める東京、日本をつくっていきましょう。そのために蓮舫さんを勝たせましょう」とエールを送っていたのだ。
この様子がメディアで報じられると「投票の呼びかけができるのは選挙中だけ。事前運動の公選法違反!」と問題視する声が噴出。先月、埼玉・所沢の小野塚勝俊市長が市長選告示前の街頭演説で、「絶対に勝ちます。皆さんのお力を頂きたい」と投票を呼び掛けたことで、公選法違反(事前運動)の疑いで書類送検されていたことも拍車をかけた。
弁護士で立憲の米山隆一衆院議員は「まあギリですね。こういう『しまった言い過ぎた!』は実際の場面で各所、各陣営で見られ、(中略)それでどうにかなるようなものではありません」とグレーながらも以後、気を付けるべきと説いた。
公選法違反といえば、4月の衆院東京15区補選で他陣営の演説を妨害するなど、大暴れしたつばさの党・黒川敦彦代表らがグレーゾーンといわれた自由妨害の疑いで、逮捕されている。黒川容疑者は「捜査は小池都知事の圧力だ」と不当逮捕を訴え、警視庁による小池氏への忖度との見方も出ていたばかりだ。
NHK党の立花孝志党首は5日、自身のユーチューブで「(蓮舫氏の事前運動の疑いで)すでに多くの人が告発しようとしている。(枝野氏の)『勝たせましょう』という発言はこれまで検挙されていなかっただけで、明らかな公選法違反。蓮舫さんはそれなりの報いを受けると思う」と指摘した。
蓮舫氏を巡っては、小池氏が公約を発表してから、自身も政策を打ち出すとの考えだが、その小池氏はまだ3選出馬の表明すらしていない。蓮舫氏とは長年の仇敵に当たる元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏からは「『リセット』『反自民・非小池』を安易に使ってしまったミスを挽回するには早く公約を出すべきだ」と連日、Xでダメ出しされているが、スルーしている。
また、二重国籍騒動や薬物で逮捕歴のある社長との交友歴など過去のスキャンダルも蒸し返され、週刊誌の格好のネタになっている。
「都知事選はこれまで現職が負けたことがありません。さらに後出しじゃんけんした候補が有利とされるのは、何か発言でボロが出たり、メディアなどの身体検査にさらされたりするリスクが減る点もある。ただえさえアンチの多い蓮舫氏ですから、小池氏は告示直前まで動く必要がなく、高みの見物でしょう」(永田町関係者)
告示まで2週間と迫り、各陣営の駆け引きは続く。
東京の合計特殊出生率が初の「1」割れ…続く一極集中に生活コスト高、少子化と人口減少が加速
厚生労働省は5日、2023年の日本人の人口動態統計(概数)を発表した。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、1947年以降過去最低の1・20で、8年連続で低下した。人口の一極集中が進む東京都は0・99と「1」を割り込んだ。出生数も過去最少の72万7277人だった。婚姻数が90年ぶりに50万組を下回ったほか、初産が遅い「晩産化」も進んでおり、少子化と人口減少が加速している。 【グラフ】出生数と婚姻数の推移
合計特殊出生率は、2005年に1・26まで落ち込み、15年に1・45まで持ち直した後に再び下落。23年は全都道府県で前年よりも低下し、全体では前年を0・06ポイント下回った。都道府県別で最も高かったのは沖縄県(1・60)で、宮崎県(1・49)、長崎県(1・49)が続いた。東京都のほか北海道(1・06)、宮城県(1・07)も低かった。
東京都の合計特殊出生率は03年に0・9987となったが、厚労省は小数点以下第3位を四捨五入して公表しており、当時は1・00と発表された。23年は0・9907で、公式発表としては初めて1を下回った。
総務省によると、昨年東京都に転入した20代の女性は11万2990人で、転出よりも4万3552人多かった。東京は生活コストの高さなどから出生率が低い傾向があり、地方からの若い女性の東京流入が、日本全体の少子化に拍車をかける構図となっている。
婚姻数は、前年より3万213組少ない47万4717組で、50万組を下回るのは1933年(48万6058組)以来。平均初婚年齢は夫31・1歳、妻29・7歳で前年と同じだったが、第1子出生時の母親の平均年齢は31・0歳で、前年の30・9歳から2年ぶりに上昇した。晩産化に加え、価値観の多様化で結婚後も子どもを持たない選択をする夫婦が増えたことなどが影響しているとみられる。
昨年1年間に生まれた子どもの数(出生数)は、1899年の統計開始以降最少となる72万7277人(前年比4万3482人減)で、8年連続で減少。死亡数は過去最多の157万5936人だった。出生数が死亡数を下回る「自然減」は17年連続で、昨年は84万8659人と過去最大の減少幅だった。
合計特殊出生率 15~49歳の年齢別人口と出生数のデータを基に、1人の女性が生涯に平均何人の子どもを産むかを算出した数値で、少子化の状況を示す指標の一つ。日本で人口を維持するために必要な出生率は2・07程度とされる。
東京都知事選(7月7日投開票)で、無所属での立候補の意向を表明した立憲民主党の蓮舫参院議員が、共産党の支援を受けるとみられることについて、国民民主党の榛葉賀津也幹事長が5月31日、「共産党と連携する人が東京の知事では困る」と述べた。
筆者も、蓮舫氏が同29日、都議会の共産党控室を訪れた映像を見たのだが、何度もお辞儀をしながら、「ぜひ、一緒に明るい温かな東京をつくらせていただきたい」とあいさつし、大山とも子都議団長から花束を受け取っている姿を見て少し驚いた。
共産党の田村智子委員長は同29日、「蓮舫さんを全力で応援する。都政を変え、国政を大きく転換する流れを東京から全国へ広げていきたい」と、「蓮舫支援」を明らかにしている。
立憲民主党はこれまで国政選挙で共産党との選挙協力を行ってきたが、2021年の衆院選で小選挙区では議席は増やしたものの比例では減らし、トータルではマイナスとなったため、当時の枝野幸男代表が引責辞任した。共産党も議席を減らした。
この時は、「共産党の政権参加」が具体的に議論されたために、有権者が「引いて」しまったものとみられる。その後、立憲民主党は共産党との連携に慎重になっていたのだが、今年4月の衆院3補選では、3選挙区とも共産党の支援を受けて3戦全勝したので、次期総選挙でどうするのか注目されている。
蓮舫氏は出馬会見で、「自民党政権の延命に手を貸す小池都政をリセットする」と述べたが、「どの政党の支援を受けるのか」との質問に対しては、「広範な都民の支援を受ける」「反自民、非小池、オール東京」などと述べるにとどまり、共産党を含む具体的な政党名は口にしなかった。
SNS上では、共産党の支持者と思われる人が「蓮舫さんが知事になったら共産党は都議会与党だ」と投稿していた。
蓮舫氏は共産党の支援を受けるのか、共産党と政策協議をするのか、そして、もし蓮舫氏が勝ったら共産党は都議会与党になるのか。次の会見は公約を発表する場になると思うが、その時にはこうした疑問への答えを、ぜひ明らかにしてほしいと思う。 (フジテレビ特別解説委員・平井文夫)