2003年9月24日
「売りもの――イラク」
売り出し中――人口2千500万人、肥沃で豊かな国。
おまけ――外国人兵士約15万人と操り人形が少し。
販売条件――アメリカかイギリスの企業であること(フランスの企業はお断り)。できたらハリバートンの系列であることが望ましい。
詳細は、イラク・バグダッドの統治評議会メンバーへ。
イラク新財務大臣カーミル・ガイラーニが発表した第一次経済改革案を聞いた人は、”イラクはユートピアで経済状態は絶好調、足りないものは海外からの投資だけ”と思うだろう。BBCがとてもうまくまとめている――原油およびその他の天然資源と無関係の国有企業すべて払い下げ。つまり、水、電気、通信、交通、保険医療などは民営化される。BBCはこれを”予想外”と言っていたけれど、私たちは驚かなかった。なぜ驚かなくちゃいけないの?
どっちみち操り人形どもは買い取られているのだ。人形劇の舞台も一緒にいかが?イラクは少しずつ切り売りされている。みんな怒っている。いろいろな企業がイラクのおいしい部分をがっぽり買おうと乗り出してきている。いや、こう言ったほうがいい。企業は統治評議会とCPAが、”自由の守護者”たちに支払ったおいしい部分をそっくり買おうとし始めている。
事態はとっても皮肉。石油産業、つまり売りにだされ”ない”ほとんど唯一の産業が、結局は事実上外国人の経営になりつつある。
ちょうど2街区向こうに住んでいるSのことは、近所中が知っている。彼はいわゆる”商売人”。彼自身は自分のことを”ビジネスマン”って言いたいらしいけど。
この6年間、Sは石油省と取引していた。いわゆる「石油食料交換プログラム」
の監視と指導の下に原油タンカーの部品を輸入していたのだ。
*(訳注「石油食料プログラム」:96年以降に始まったもので、国連安保理決議986に基づいている。対イラク経済制裁下で、イラク国民の人道的支援に必要な物資調達資金を確保するために国連監視下で行う限定的原油輸出。
収入の大部分はイラク国民向けの食料、医療品に使われ、他にクウェート賠償金、国連経費に充てられる。99年に採決された安保理決議1284により、石油限度枠の撤廃、輸入品目の拡大などがされた。)
3月初め、開戦が予想される状況下で、すべての契約は”保留”になった。国際企業との何千件もの契約がキャンセル、または延期された。
Sは頭にきた。ある国からエンジンを入荷することになっていたのに、それが”国境止め”されてしまったのだ。行く先々、ひっきりなしに吸う煙草の煙の中で、彼は「信用状」とか「商品番号」だとか、かんしゃく持ちのトラック運転手たちがいらつき始めているとか、言い散らすのだった。
戦争が終わり、CPAは契約によっては商売を認めようと決定した。何にも増して優先されるのは、原油採掘を再開するための契約だった。うまくいけば、Sが待つエンジンも届くことになった。
ところが、彼がエンジン搬入のゴーサインをもらおうとするたび、人から人へとたらい回しにされ、結局、CPA、石油省、国連プロジェクトサービス機構(UNOPS)の官僚主義に絡め取られて自分もエンジンも一歩も動けないことを知るのだった。状況がいくぶんわかってきて石油省と直接交渉しようという段になって、彼は"知恵”をつけられたKBRが彼を承認も推薦もしていないのなら、何も気にする必要はないと。
その週の間、近所中はKBRの話題でもちきりだった。KBRって何?何をする会社?いろんな憶測を呼んだ。弟のEは、たぶんCPAみたいな委員会じゃないかと言った。ただ原油生産基盤の請負か再建をするための。私は、たぶん会社だと思った。だけどどこの?ロシア?フランス?ハリバートンやベクテルでなければどこでもいいけど。KBRという名前は初耳だった。少なくとも、この組み合わせのイニシャルは初めて。そう、少なくとも30分間は初耳で、ついに好奇心を押さえきれず、インターネットで調べてみた。
KBRとは、ケロッグ・ブラウン・アンド・ルートのことだった。ある企業の子会社
―――当ててみて!
答えはハリバートン。業務内容は、主として「エネルギー産業向け設計・建設業」。KBRは再建努力だけで有名なのではない。1997年、米軍への合板納入に際して600万ドルを過剰請求したとして告訴されている!このけちな事件の全貌を知りたい人は「このページを見て。」
*(訳注「このページを見て。」: http://www.southemstudies.org/reports/halliburton.pdf
ハリバートンの概略を紹介している。)
今、KBRは、”会議宮殿”に納まっている。会議宮殿は、ラシード・ホテルの前にあって大きな会議室をいくつも持つ。かつては大きな国際会議の会場だった。今はKBR本部ってことらしい。外国企業は石油会社を100%所有することはできないが、経営することはできる。ほら、イラクを所有することは絶対できないけれど、統治評議会を運営することはできるでしょ。これとまったく同じ。
数週間前、ハリバートンとベクテルを持ち上げたメールを送ってくれた人がいる。こんな有力企業に石油産業を経営してもらって、復興の取り組み(英語では再建努力と同じ言葉)を先導してもらえるなんて、イラク人は自分たちのことを”ラッキー”だと思うべきだって。理由はまず、(a)これら企業はとても有能で効率的だし、それに(b)”地元民”を雇ってくれるから。
オーケー、わかったわ。戦前と同じ水準に電気を復旧するのに最低2年はかかるって書かれていた記事は読まなかったふりをしよう。戦争が終わって5ヶ月も経ったこと。かの有能な企業の数々が治安がめちゃくちゃなために業務開始できないという事実もないことにしよう。
地元民の雇用については、何が起こっているか少しはっきりしてきた。何百万ドルという大規模復興事業の契約は、ベクテルとかハリバートンとかの巨大企業に行く。これら企業がイラク人を雇う段になるのだけど、それはこんな具合。まず、個別の事業について競争入札を実施する。そして最低金額で入札したイラク企業が仕事を手に入れる。イラク企業は、巨大コングロマリット(多国籍企業)から、”きっかり”自分が入札した金額だけをもらう。それはベクテルやハリバートンの懐に入る契約金のごく一部だ。こんなからくりの中、100万ドルのはずのプロジェクトは、5千万ドルに跳ね上がる。
私のことをバカとでもアホとでもお好きなように呼んで。けれど、これは絶対に経済的に得策ではないし、経験あるイラクの企業に直接仕事を発注するほうがイラク人の利益になると言えるんじゃない?かつて”イラク軍会議”の下で仕事をして、ミサイルから電気製品まで何でも作っていた87の企業や工場の中から選んで直に契約すればいいじゃないの。以前の産業石油省の下で、キャンディーから鉄鋼の梁まで何でも作っていた158の企業や工場の中から選んで直に契約したらどう?1991年からずっと住宅省の下で復興事業に取り組んできた建設会社や土木会社と契約すればいいのに。それをどうして?
優れたエンジニアや研究者、建築家、技術者たちは目下失業中。だって彼らを雇っている会社には仕事がないし、経営を続けていく資金もない。会社員たちは週に数日出てきて、生ぬるいお茶やトルコ・コーヒーを前に冴えない時間を過ごしている。何十億ドルも多国籍企業にたれ流すのではなくて、ほんの数百万ドルで部品を輸入して、工場を修復すればいいんじゃないの?
父の友人に、妻と3人の子持ちでイタリア系のインターネット会社で働いている人がいる。何千キロも彼方のローマでのうのうとしているボス(バグダッドで家族を養わなければならない人々が働いているおかげで)とはメールで連絡を取っている。その人を含む男性技術者チームは、1日10時間、週6日働いている。バグダッド中を移動して電線を張るのだ。彼らが乗っているのはオンボロ四駆で、電線や針金、ペンチやネットワーク・カード、インストール用CDを積み込んでいる。それと、カラシニコフ銃も.......。何に使うものかって?うーん、緊急事態用。
この会社で働いている20人は、どの人も月給100ドルだ。月260時間に対して100ドルということは......、1時間当たり0.38ドル。「私の家に来ていた16歳のベビーシッター」だって、もっと稼いでいた。
*(訳注「私の家に来ていた16歳のベビーシッター」:リバーベンドからのメールによると「子どもの時に3年間外国に住んでいたので、その時に両親がベビーシッターを雇っていました。イラクではベビーシッターに不自由しません。親戚が大勢いて、隣人も親切なので誰かしら子どものお守りをしてくれるのです」)
他の外国企業もだけど、このイタリア企業のもともとの請負金額はいくらか考えてみて。何百万ドルものお金が支払われているっていうのに、この20人が電線工事でもらうのは月100ドルってわけ?
米財務長官ジョン・スノーは、改革は”統治評議会の提案、理念、構想”によるものであって、米当局は何の圧力も加えていないと主張している。もしそれが本当なら、ブッシュは自分が好きな時に米軍を引き上げることができる。だって、後に残るのはブッシュやチェイニーもびっくりなくらいハリバートンに取り入ろうという魂胆が見え見えな統治評議会だもの。
「売りもの――イラク」
売り出し中――人口2千500万人、肥沃で豊かな国。
おまけ――外国人兵士約15万人と操り人形が少し。
販売条件――アメリカかイギリスの企業であること(フランスの企業はお断り)。できたらハリバートンの系列であることが望ましい。
詳細は、イラク・バグダッドの統治評議会メンバーへ。
イラク新財務大臣カーミル・ガイラーニが発表した第一次経済改革案を聞いた人は、”イラクはユートピアで経済状態は絶好調、足りないものは海外からの投資だけ”と思うだろう。BBCがとてもうまくまとめている――原油およびその他の天然資源と無関係の国有企業すべて払い下げ。つまり、水、電気、通信、交通、保険医療などは民営化される。BBCはこれを”予想外”と言っていたけれど、私たちは驚かなかった。なぜ驚かなくちゃいけないの?
どっちみち操り人形どもは買い取られているのだ。人形劇の舞台も一緒にいかが?イラクは少しずつ切り売りされている。みんな怒っている。いろいろな企業がイラクのおいしい部分をがっぽり買おうと乗り出してきている。いや、こう言ったほうがいい。企業は統治評議会とCPAが、”自由の守護者”たちに支払ったおいしい部分をそっくり買おうとし始めている。
事態はとっても皮肉。石油産業、つまり売りにだされ”ない”ほとんど唯一の産業が、結局は事実上外国人の経営になりつつある。
ちょうど2街区向こうに住んでいるSのことは、近所中が知っている。彼はいわゆる”商売人”。彼自身は自分のことを”ビジネスマン”って言いたいらしいけど。
この6年間、Sは石油省と取引していた。いわゆる「石油食料交換プログラム」
の監視と指導の下に原油タンカーの部品を輸入していたのだ。
*(訳注「石油食料プログラム」:96年以降に始まったもので、国連安保理決議986に基づいている。対イラク経済制裁下で、イラク国民の人道的支援に必要な物資調達資金を確保するために国連監視下で行う限定的原油輸出。
収入の大部分はイラク国民向けの食料、医療品に使われ、他にクウェート賠償金、国連経費に充てられる。99年に採決された安保理決議1284により、石油限度枠の撤廃、輸入品目の拡大などがされた。)
3月初め、開戦が予想される状況下で、すべての契約は”保留”になった。国際企業との何千件もの契約がキャンセル、または延期された。
Sは頭にきた。ある国からエンジンを入荷することになっていたのに、それが”国境止め”されてしまったのだ。行く先々、ひっきりなしに吸う煙草の煙の中で、彼は「信用状」とか「商品番号」だとか、かんしゃく持ちのトラック運転手たちがいらつき始めているとか、言い散らすのだった。
戦争が終わり、CPAは契約によっては商売を認めようと決定した。何にも増して優先されるのは、原油採掘を再開するための契約だった。うまくいけば、Sが待つエンジンも届くことになった。
ところが、彼がエンジン搬入のゴーサインをもらおうとするたび、人から人へとたらい回しにされ、結局、CPA、石油省、国連プロジェクトサービス機構(UNOPS)の官僚主義に絡め取られて自分もエンジンも一歩も動けないことを知るのだった。状況がいくぶんわかってきて石油省と直接交渉しようという段になって、彼は"知恵”をつけられたKBRが彼を承認も推薦もしていないのなら、何も気にする必要はないと。
その週の間、近所中はKBRの話題でもちきりだった。KBRって何?何をする会社?いろんな憶測を呼んだ。弟のEは、たぶんCPAみたいな委員会じゃないかと言った。ただ原油生産基盤の請負か再建をするための。私は、たぶん会社だと思った。だけどどこの?ロシア?フランス?ハリバートンやベクテルでなければどこでもいいけど。KBRという名前は初耳だった。少なくとも、この組み合わせのイニシャルは初めて。そう、少なくとも30分間は初耳で、ついに好奇心を押さえきれず、インターネットで調べてみた。
KBRとは、ケロッグ・ブラウン・アンド・ルートのことだった。ある企業の子会社
―――当ててみて!
答えはハリバートン。業務内容は、主として「エネルギー産業向け設計・建設業」。KBRは再建努力だけで有名なのではない。1997年、米軍への合板納入に際して600万ドルを過剰請求したとして告訴されている!このけちな事件の全貌を知りたい人は「このページを見て。」
*(訳注「このページを見て。」: http://www.southemstudies.org/reports/halliburton.pdf
ハリバートンの概略を紹介している。)
今、KBRは、”会議宮殿”に納まっている。会議宮殿は、ラシード・ホテルの前にあって大きな会議室をいくつも持つ。かつては大きな国際会議の会場だった。今はKBR本部ってことらしい。外国企業は石油会社を100%所有することはできないが、経営することはできる。ほら、イラクを所有することは絶対できないけれど、統治評議会を運営することはできるでしょ。これとまったく同じ。
数週間前、ハリバートンとベクテルを持ち上げたメールを送ってくれた人がいる。こんな有力企業に石油産業を経営してもらって、復興の取り組み(英語では再建努力と同じ言葉)を先導してもらえるなんて、イラク人は自分たちのことを”ラッキー”だと思うべきだって。理由はまず、(a)これら企業はとても有能で効率的だし、それに(b)”地元民”を雇ってくれるから。
オーケー、わかったわ。戦前と同じ水準に電気を復旧するのに最低2年はかかるって書かれていた記事は読まなかったふりをしよう。戦争が終わって5ヶ月も経ったこと。かの有能な企業の数々が治安がめちゃくちゃなために業務開始できないという事実もないことにしよう。
地元民の雇用については、何が起こっているか少しはっきりしてきた。何百万ドルという大規模復興事業の契約は、ベクテルとかハリバートンとかの巨大企業に行く。これら企業がイラク人を雇う段になるのだけど、それはこんな具合。まず、個別の事業について競争入札を実施する。そして最低金額で入札したイラク企業が仕事を手に入れる。イラク企業は、巨大コングロマリット(多国籍企業)から、”きっかり”自分が入札した金額だけをもらう。それはベクテルやハリバートンの懐に入る契約金のごく一部だ。こんなからくりの中、100万ドルのはずのプロジェクトは、5千万ドルに跳ね上がる。
私のことをバカとでもアホとでもお好きなように呼んで。けれど、これは絶対に経済的に得策ではないし、経験あるイラクの企業に直接仕事を発注するほうがイラク人の利益になると言えるんじゃない?かつて”イラク軍会議”の下で仕事をして、ミサイルから電気製品まで何でも作っていた87の企業や工場の中から選んで直に契約すればいいじゃないの。以前の産業石油省の下で、キャンディーから鉄鋼の梁まで何でも作っていた158の企業や工場の中から選んで直に契約したらどう?1991年からずっと住宅省の下で復興事業に取り組んできた建設会社や土木会社と契約すればいいのに。それをどうして?
優れたエンジニアや研究者、建築家、技術者たちは目下失業中。だって彼らを雇っている会社には仕事がないし、経営を続けていく資金もない。会社員たちは週に数日出てきて、生ぬるいお茶やトルコ・コーヒーを前に冴えない時間を過ごしている。何十億ドルも多国籍企業にたれ流すのではなくて、ほんの数百万ドルで部品を輸入して、工場を修復すればいいんじゃないの?
父の友人に、妻と3人の子持ちでイタリア系のインターネット会社で働いている人がいる。何千キロも彼方のローマでのうのうとしているボス(バグダッドで家族を養わなければならない人々が働いているおかげで)とはメールで連絡を取っている。その人を含む男性技術者チームは、1日10時間、週6日働いている。バグダッド中を移動して電線を張るのだ。彼らが乗っているのはオンボロ四駆で、電線や針金、ペンチやネットワーク・カード、インストール用CDを積み込んでいる。それと、カラシニコフ銃も.......。何に使うものかって?うーん、緊急事態用。
この会社で働いている20人は、どの人も月給100ドルだ。月260時間に対して100ドルということは......、1時間当たり0.38ドル。「私の家に来ていた16歳のベビーシッター」だって、もっと稼いでいた。
*(訳注「私の家に来ていた16歳のベビーシッター」:リバーベンドからのメールによると「子どもの時に3年間外国に住んでいたので、その時に両親がベビーシッターを雇っていました。イラクではベビーシッターに不自由しません。親戚が大勢いて、隣人も親切なので誰かしら子どものお守りをしてくれるのです」)
他の外国企業もだけど、このイタリア企業のもともとの請負金額はいくらか考えてみて。何百万ドルものお金が支払われているっていうのに、この20人が電線工事でもらうのは月100ドルってわけ?
米財務長官ジョン・スノーは、改革は”統治評議会の提案、理念、構想”によるものであって、米当局は何の圧力も加えていないと主張している。もしそれが本当なら、ブッシュは自分が好きな時に米軍を引き上げることができる。だって、後に残るのはブッシュやチェイニーもびっくりなくらいハリバートンに取り入ろうという魂胆が見え見えな統治評議会だもの。