(8)のねずみチュウチュウおくさんのおはなし(1910年刊)
ビアトリクス・ポター さく・え いしいももこ氏やく
(要約)
《むかし、あるところに、1ひきの のねずみが すんでいました。名まえは、チュウチュウおくさんといいました。チュウチュウおくさんは、いけがきのしたの どてにできた あなのなかに すんでいました。》
そのいえは とても おもしろく、すなのろうかが なんメートルも なんメートルも、つづいていて、ろうかのりょうがわに ものおきや 木のみの くらや、くさのみの おきばなどが ありました。そして、これは みな いけがきの木の根のあいだに ほってあるのでした。
おかっても 居間も しょっきおきばも しょくりょうべやも あり、おくさんのへやも あり、そこの 小さな はこベッドに ねるのでした。
チュウチュウおくさんは とても きれいずきな やかましやで いつも ゆかをはいたり ほこりを はらっていました。
ときどき ごみむしが まよって ろうかを うろうろすると 《しっ! しっ!小さな きたないあしあとを つけるやつめが!」と、ちりとりを かちゃかちゃ ならしていました。》
ある日 あかい ぼちぼちの ついた 小さなおばあさんが ろうかを あちこち かけあるいていると、《「てんとうむしさん、おまえのうちは、もえてるぞ!はやく こどものとこへ とんでいけ!」》と むかしからある わらべうたをうたって おいはらいました。
《また べつの日には 大きな ふとったくもが あまやどりしに はいってきました。》《「ごめんください。ここは くもを見て こわがって にげだした、と、うたにもうたわれた モフェットさんの おたくでは ありませんかね?」》
「でていって おくれ」と、くものすを ひっかける くもを おいはらいます。くもをつかまて まるめて、まどから ほうりだしました。
《おくさんは ごはんのしたくをするため、さくらんぼのたねや あざみのわたげがしまってある とおくのものおきに でかけました。》
ろうかを あるきながら くんくん においをかいでいると どうも はちみつのにおいがします。小さな あしあとが ろうかに ついているような 気がします。
ろうかのかどを まがったとたんに、まるはなばちのバビティー・バンブルにあいました。《「じじ・びず・びず!」と、バビディーはいいました。》
おくさんは いまいましそうに バビディーを見て、ほうきをもってくればよかったと 思います。
「こんにちは、バンブルさん。つくえみがきに はちろうなら ゆずってもらっても いいのですが、いったい なんの用ですか?どうして いつも まどから はいって 、じじ・びず・びずなんて いうのですか?」《チュウチュウおくさんの きげんは わるくなるばかり。》
《「ジジ・ビズ・ビズー!」と、まるはなばちは、おこったように きいきいごえでいいました。》そして よろよろと どんぐりがしまってある へやのなかに きえました。でも どんぐりは おくさんが クリスマスまえに食べてしまったので からっぽのはずです。《ところが いま そのへやは きたならしい かわいた こけが いっぱい つまっていました。》
《チュウチュウおくさんは そのこけを ひっぱりだしはじめました。》3ひきか 4ひきの はちが おこって ぶんぶん いいました。
「わたしは ひとに へやをかさないわ。これは ふほうしんにゅうだ!」だれにてつだって もらったほうが いいか?ジャクソンさんはだめ。あのひとは あしは ふかないから。
おくさんは はちの しまつは あさごはんを すませてから することにしましました。
ところが 居間にもどると だれかが ふといこえで せきばらいをしています。《みれば、ジャクソンさんが すまして すわっているではありませんか!》
《ジャクソンさんは 大きなからだを 小さなゆりいすから はみださせて、あしを だんろのほうへのばし、りょう手をもみながら にこにこしていました。》《ジャクソンさんは たいへんきたならしい ほりの なかに すんでいるのでした。》
ジャクソンさんは びしょぬれです。《「いや、ありがとう、ありがとう チュウチュウおくさん!しばらく 火にあてて かわかさせてもらいます」》うわぎからは ぽたぽた みずが たれています。おくさんは モップで あちこちを ふきまわりました。
《そのあと いつまでも ジャクソンさんが かえらいので とうとう おくさんは ごはんをあがっていらっしゃいと いわなければ なりませんでした。》
さくらんぼのたねを だしましたが ジャクソンさんは 歯なしです。
そこで こんどは あざみのわたげを だしました。
《「さて、やれやれ!ぷっ ぷっ ぷっ!」》と、ジャクソンさんは くちから わたげを へやじゅうに ふきとばしました。ジャクソンさんが ほしかったのは、はちみつでした。
《「うちには はちみつは すこしも ありませんですのよ」》
《「さて、やれやれ、チュウチュウおくさん!」》とジャクソンさんは にこにこして《「いいにおいがする。それで きましたんじゃ」》
《ジャクソンさんは どっしりしたからだをおこすと、とだなのなかをさがしはじめました。》おくさんは ぞうきんで ゆかを ふいて あるきました。
とだなに はちみつが ないとわかると ジャクソンさんは ろうかへ でましたが つかえて うごけなくなりました。
だが ジャクソンさんは 大きなからだで しょっきおきばに むりに はいりこみました。ここにも みつは ありません。そのかわり くねくね はいまわるものが 3ひき いました。いちばん 小さいのが ジャクソンさんに つかまってしまいました。
それから ジャクソンさんは しょくりょうべやへ むりに はいりこみました。そこでは1ひきのちょうが おさとうを なめていましたが まどから にげていきました。
《おたくには おきゃくが おおぜい いますなあ!」「それも、よびもしないのに おしかけてくるおきゃくさんがね!」》
ふたりが こんなことをいいながら ろうかへ でると まるはなばちが1匹いました。《「わたしは まるはなばちが きらいだ。とげだらけだからなあ」》とジャクソンさん。《「でていけ、きたならしい おいぼれのかえるめ!」》と、まるはなばち。《「ああ、わたしは きちがいに なりそうだ」》とチュウチュウおくさん。
《ジャクソンさんが はちのすを ひきずりだしているまに、チュウチュウおくさんは、木のみのくらに とじこもりました。》《ジャクソンさんは はちに さされても いっこう へいきらしいのです。》
おくさんが くらからでてくると もう だれもいませんでした。《でも、あたりの ちらかっていることといったら、すごいものでした―「まあ、こんなきたならしいうち、見たことがないわ―はちみつ べたべた。》それに、こけや わたげや 小さなあしあとや 大きなあしあとが、きれいな いえじゅうに あるのです。
おくさんは こけや はちのろうを かきあつめると いりぐちを せまくしました。《ジャクソンさんが はいれないように しなくちゃ!」》
《それから、ものおきから じょうとうのせっけんと ふらんねるのきれと ゆかをこする ブラシをとってきました。》けれど つかれて それいじょう なにもできず いねむりし、それから ベッドにはいって ねました。
《「また このいえを もとどおりに きれいに できるのかしら?」と、きのどくなチュウチュウおくさんんは いいました。》
その よくあさ はるの おおそうじをはじめました。この おおそうじには2しゅうかん かかりました。ゆりかご、ほこり、テーブル、いすをふき、はちろうでつやだしをして 小さいすずのスプーンも みがきました。
いえのなかが すっかり きれいになったときに 5ひきのねずみをよんで おちゃのかいを ひらきました。ジャクソンさんも たべもののにおいをかいで やってきましやが いりぐちが せまくて はいれませんでした。
《けれど、みんなは くさのくきからとった あまいみずを、どんぐりのコップに1っぱい、まどからだしてやりましたので、ジャクソンさんは すこしも きをわるくしませんでした。》
そして、日なたにすわって、チュウチュウおくさんのけんこうをいわって、いただきました。
おわり
読んであげるなら:4才から
自分で読むなら:小学低学年から
ビアトリクス・ポター さく・え いしいももこ氏やく
(要約)
《むかし、あるところに、1ひきの のねずみが すんでいました。名まえは、チュウチュウおくさんといいました。チュウチュウおくさんは、いけがきのしたの どてにできた あなのなかに すんでいました。》
そのいえは とても おもしろく、すなのろうかが なんメートルも なんメートルも、つづいていて、ろうかのりょうがわに ものおきや 木のみの くらや、くさのみの おきばなどが ありました。そして、これは みな いけがきの木の根のあいだに ほってあるのでした。
おかっても 居間も しょっきおきばも しょくりょうべやも あり、おくさんのへやも あり、そこの 小さな はこベッドに ねるのでした。
チュウチュウおくさんは とても きれいずきな やかましやで いつも ゆかをはいたり ほこりを はらっていました。
ときどき ごみむしが まよって ろうかを うろうろすると 《しっ! しっ!小さな きたないあしあとを つけるやつめが!」と、ちりとりを かちゃかちゃ ならしていました。》
ある日 あかい ぼちぼちの ついた 小さなおばあさんが ろうかを あちこち かけあるいていると、《「てんとうむしさん、おまえのうちは、もえてるぞ!はやく こどものとこへ とんでいけ!」》と むかしからある わらべうたをうたって おいはらいました。
《また べつの日には 大きな ふとったくもが あまやどりしに はいってきました。》《「ごめんください。ここは くもを見て こわがって にげだした、と、うたにもうたわれた モフェットさんの おたくでは ありませんかね?」》
「でていって おくれ」と、くものすを ひっかける くもを おいはらいます。くもをつかまて まるめて、まどから ほうりだしました。
《おくさんは ごはんのしたくをするため、さくらんぼのたねや あざみのわたげがしまってある とおくのものおきに でかけました。》
ろうかを あるきながら くんくん においをかいでいると どうも はちみつのにおいがします。小さな あしあとが ろうかに ついているような 気がします。
ろうかのかどを まがったとたんに、まるはなばちのバビティー・バンブルにあいました。《「じじ・びず・びず!」と、バビディーはいいました。》
おくさんは いまいましそうに バビディーを見て、ほうきをもってくればよかったと 思います。
「こんにちは、バンブルさん。つくえみがきに はちろうなら ゆずってもらっても いいのですが、いったい なんの用ですか?どうして いつも まどから はいって 、じじ・びず・びずなんて いうのですか?」《チュウチュウおくさんの きげんは わるくなるばかり。》
《「ジジ・ビズ・ビズー!」と、まるはなばちは、おこったように きいきいごえでいいました。》そして よろよろと どんぐりがしまってある へやのなかに きえました。でも どんぐりは おくさんが クリスマスまえに食べてしまったので からっぽのはずです。《ところが いま そのへやは きたならしい かわいた こけが いっぱい つまっていました。》
《チュウチュウおくさんは そのこけを ひっぱりだしはじめました。》3ひきか 4ひきの はちが おこって ぶんぶん いいました。
「わたしは ひとに へやをかさないわ。これは ふほうしんにゅうだ!」だれにてつだって もらったほうが いいか?ジャクソンさんはだめ。あのひとは あしは ふかないから。
おくさんは はちの しまつは あさごはんを すませてから することにしましました。
ところが 居間にもどると だれかが ふといこえで せきばらいをしています。《みれば、ジャクソンさんが すまして すわっているではありませんか!》
《ジャクソンさんは 大きなからだを 小さなゆりいすから はみださせて、あしを だんろのほうへのばし、りょう手をもみながら にこにこしていました。》《ジャクソンさんは たいへんきたならしい ほりの なかに すんでいるのでした。》
ジャクソンさんは びしょぬれです。《「いや、ありがとう、ありがとう チュウチュウおくさん!しばらく 火にあてて かわかさせてもらいます」》うわぎからは ぽたぽた みずが たれています。おくさんは モップで あちこちを ふきまわりました。
《そのあと いつまでも ジャクソンさんが かえらいので とうとう おくさんは ごはんをあがっていらっしゃいと いわなければ なりませんでした。》
さくらんぼのたねを だしましたが ジャクソンさんは 歯なしです。
そこで こんどは あざみのわたげを だしました。
《「さて、やれやれ!ぷっ ぷっ ぷっ!」》と、ジャクソンさんは くちから わたげを へやじゅうに ふきとばしました。ジャクソンさんが ほしかったのは、はちみつでした。
《「うちには はちみつは すこしも ありませんですのよ」》
《「さて、やれやれ、チュウチュウおくさん!」》とジャクソンさんは にこにこして《「いいにおいがする。それで きましたんじゃ」》
《ジャクソンさんは どっしりしたからだをおこすと、とだなのなかをさがしはじめました。》おくさんは ぞうきんで ゆかを ふいて あるきました。
とだなに はちみつが ないとわかると ジャクソンさんは ろうかへ でましたが つかえて うごけなくなりました。
だが ジャクソンさんは 大きなからだで しょっきおきばに むりに はいりこみました。ここにも みつは ありません。そのかわり くねくね はいまわるものが 3ひき いました。いちばん 小さいのが ジャクソンさんに つかまってしまいました。
それから ジャクソンさんは しょくりょうべやへ むりに はいりこみました。そこでは1ひきのちょうが おさとうを なめていましたが まどから にげていきました。
《おたくには おきゃくが おおぜい いますなあ!」「それも、よびもしないのに おしかけてくるおきゃくさんがね!」》
ふたりが こんなことをいいながら ろうかへ でると まるはなばちが1匹いました。《「わたしは まるはなばちが きらいだ。とげだらけだからなあ」》とジャクソンさん。《「でていけ、きたならしい おいぼれのかえるめ!」》と、まるはなばち。《「ああ、わたしは きちがいに なりそうだ」》とチュウチュウおくさん。
《ジャクソンさんが はちのすを ひきずりだしているまに、チュウチュウおくさんは、木のみのくらに とじこもりました。》《ジャクソンさんは はちに さされても いっこう へいきらしいのです。》
おくさんが くらからでてくると もう だれもいませんでした。《でも、あたりの ちらかっていることといったら、すごいものでした―「まあ、こんなきたならしいうち、見たことがないわ―はちみつ べたべた。》それに、こけや わたげや 小さなあしあとや 大きなあしあとが、きれいな いえじゅうに あるのです。
おくさんは こけや はちのろうを かきあつめると いりぐちを せまくしました。《ジャクソンさんが はいれないように しなくちゃ!」》
《それから、ものおきから じょうとうのせっけんと ふらんねるのきれと ゆかをこする ブラシをとってきました。》けれど つかれて それいじょう なにもできず いねむりし、それから ベッドにはいって ねました。
《「また このいえを もとどおりに きれいに できるのかしら?」と、きのどくなチュウチュウおくさんんは いいました。》
その よくあさ はるの おおそうじをはじめました。この おおそうじには2しゅうかん かかりました。ゆりかご、ほこり、テーブル、いすをふき、はちろうでつやだしをして 小さいすずのスプーンも みがきました。
いえのなかが すっかり きれいになったときに 5ひきのねずみをよんで おちゃのかいを ひらきました。ジャクソンさんも たべもののにおいをかいで やってきましやが いりぐちが せまくて はいれませんでした。
《けれど、みんなは くさのくきからとった あまいみずを、どんぐりのコップに1っぱい、まどからだしてやりましたので、ジャクソンさんは すこしも きをわるくしませんでした。》
そして、日なたにすわって、チュウチュウおくさんのけんこうをいわって、いただきました。
おわり
読んであげるなら:4才から
自分で読むなら:小学低学年から