(9)まちねずみジョニーのおはなし(1918年刊)
ビアトリクス・ポター さく・え いしいももこ氏訳
(要約)
《まちのねずみジョニーは、あるいえの しょっきとだなのなかで うまれました。チミー・ウィリーーは、あるのうかの やさいばたけでうまれました。チミーは、小さないなかのねずみですが、あるとき まちがって、やさいかごにはいって、まちにつれていかれたことがあります。》のうかの さくおとこは、まいしゅう1ど、やさいをかごにいれて、うんそうやさんに まちへ はこんでもらいます。
やさいかごは きどのところに だしてあります。ある日、チミーは、かごのあなからはいりこんで、まめをいくつか たべたりしているうち―ぐっすり ねこんでしまいました。
《かごが うんそうやさんの にばしゃにのせられたとき チミーは ぎょっちして目をさましました。》そのうち ばしゃは ぱかぱかと はしりだしました。ほかの にもつもいれられて それから なんキロもなんキロもにあいだ がたごと がたごと!チミーは、やさいのまんなかで ふるえていました。
《とうとう にばしゃは、あるいえのまえにとまりました。》かごは、おろされ、なかへ はこびこまれました。コックさんが うんちんをはらい、うらぐちの戸は、ばたん!としめられました。ばしゃは いってしまいましたが あたりは しずかになるどころか 何百台ものばしゃが いえのそとを いったり きたりしているようで、いぬは ほえ おとこのこたちは くちぶえをふいています。コックさんは 大ごえでわらい こまづかいのセーラーは かいだんを かけのぼったり おりたり、《そして、カナリヤが1わ じょうききかんしゃのように うたっていました。》
はたけでばかり くらしてきたチミーは こわくて しにそうでした。《そのうち コックさんが やさいかごをあけて、なかのものをとりだしはじめたので、きもをつぶして、チミーは、ぴょんと、かごからとびだしました。》
おどろいてコックさんは、《「ねずみ!ねずみ!はやくねこをよんできて!セーラー、火っかきぼうをもってきて!」とさけびました。》チミーは、かべのしたの はめづたいに どんどん かけだすと 小さなあながあったので、とびこみました。
すると、チミーは、ねずみたちが、パーティをしていた テーブルのまんなかへ落ち、コップを3っつ わりました。「いったい、なにものだ?」とまちのねずみのジョニーはいいました。けれど、おどろきがさめると、ジョニーはすぐに、れいぎただしいねずみにもどりました。
そして、ていねいに、チミーをほかのねずみたちに しょうかいしました。《そのねずみたちは みな しっぽがながくて、しろいネクタイをつけていました。それにくらべて チミーのしっぽときたら、まことにおそまつでした。》みなは すぐ それにきづきましたが 《そだちがよかったので ひとのようすなどは くちにしませんでした。》ただ1ぴき、「ねずみとりに かかったことがあるのですか?」と、ききました。
そのパーティは りっぱなものでした。たべものは たっぷりありませんでしたが とても じょうひんでした。チミーは、どれも みたことがなかったので たべるのが ちょっと こわいきがしました。でも おなかがぺこぺこでしたし たべなければ しつれいに あたったでしょう。うえから ひっきりなしに おとがきこえてきたので、チミーは、びくびくして おさらを1まい こわしてしまいました。《「いやいや ごしんぱいなく どうせ わたしたちのものではありませんから」と、ジョニーはいいました。》
「しょくごの ごちそうを もってこないな」。というのは、2ひきのわかいねずみが、だいどころへ ごちそうを さがしにいっていたからです。この2ひきはきいきいこえをあげたり、わらいながら もどってくるのでした。《チミーは、わけをきいて ぞっとしました。》ねこに おいかけられてくるのです。チミーは、きも とおくなりそうでした。ゼリーをジョニーがすすめます。
《めしあがらない?おやすみになります?」》ねこごちがいいという ながいすのうえの クッションにあんないされます。でも、クッションは、あながあいていましたが、とくべつのおきゃくさまようのじょうとうなベッドだと、ジョニーはねっしんに すすめてくれましたが ねこのにおいがしみこんでいました。《チミーは そのばん、だんろの火がこいのしたで、みじめなよるをすごしました。》
つぎの日も、まえの日と同じでした。あさごはんには すばらしいごちそうが でました。―まちのねずみは、ベーコンなど たべつけていましたが、《けれども、チミーは いままで 木の根やレタスしか たべたことがありませんでした。》その日、ジョニーや、ほかのねずみたちは、《ゆかしたで大さわぎをし、ゆうがたになると、ゆかしたからでて、だいたんにも いえじゅうをのしあるきました。》いちばんの大そうどうは、こまづかいのセーラーが、おちゃのおぼんをもったまま、2かいからころがりおちたことでした。ねこもいたというのに、うまいこと、パンのかけらや ジャムのかたまりを かきあつめることができました。
《チミーは 日のあたる どてのなかの しずかな じぶんのすにかえりたいなあとおもいました。まちのたべものは、チミーのおなかにはあいません。よるは、ものおとがきこえて ねむれません。》いく日かすると チミーは、やせてきました。ジョニーも、きがついて、どうしたのかとききました。はなしをきいて、ジョニーは、チミーのやさいばたけは どんなものなのか きいてきました。《なんだか たいくつなところのように おもえるが、あめのふる日は、どうするのですか?》
《「あめがふると、わたしは さらさらしたきもちよい あめのなかで あきにとっておいた むぎや くさのみのからをむくのですよ。それから しばふにくる うたつむぎや くろなきどりをながめるのです。」》こまどりのコック・ロビンは、ともだちで、お日さまのでているにわは、バラだの、なでしこなど、パンジーなどで、おみせしたいくらいです。とりや、はちや、まきばのひつじのほかには、おとをたてるものも ないのです。
また、ねこがきたので、ちかしつの せきたんおきばに にげこんで ジョニーは、また、はなしのつづきをしました。《「チミー・ウィリアムくん、ぼくは しょうじきにいって すこしがっかりしました。あなたに たのしんでいただこうとおもって、ぼくたちは いっしょうけんめい おもてなしをしたつもりですよ」「ええ、ええ、それは よくわかります。みなさん ほんとうに ごしんせつにすてくださいました。でも、わたしは からだのぐあいがわるいのです」と、チミーはいいました。》
「たべものが からだや 歯にあわないのかもしれません。やさいかごといっしょに おかえりになったほうがいい」《「えっ!そんなことができるのですか?」と、チミーはさけびました。》ジョニーは、あまり きげんのよくないようすで、まいしゅう どようびに やさいかごは いなかにかえることを知らせる。
《こうして、チミーは、あたらしいともだちに さよならをいって、ケーキのくずと しなびたキャベツのはっぱをもって、やさいかごのなかに かくれました。》ながいこと ゆられて ぶじに じぶんのいえに かえってきました。
チミーは、ときどき どようびに きどのところの やさいかごをのぞきにいきますが、こりているので 2どと かごに はいりません。まちねずみのジョニーは、チミーをたずねてくるようなことを いっていたのですが、かごから おきゃくのでてきたことも ありません。
ふゆがすぎ《また、日があたたかく てりはじめました。チミーは、あなのそばにすわって、けがわのようふくをあたためたり、すみれや、はるのくさのにおいを かいだりしました。》もう、まちへいったことなど わすれかけていました。すると、ある日のこと、たびのしたくに身をかため、まちねずみのジョニーが、ちゃいろのかばんをさげて、こみちをやってくるでは ありませんか!
《チミーは りょう手をひろげて、ジョニーをむかえました。》「1ねんで、いちばん いいときにやってきましたね。やくそうのプディングでもたべましょう」《「ふうむ、ちとしけっぽいところですな」》まちねずみのジョニーは、よごれないように しっぽをもちあげて いいました。
《「あの、おそろしいおとは、なに?」といって、ジョニーは とびあがりました。》「うしですよ。すこし ぎゅうにゅうを わけてもらってきます。うしたちは おとなしいから だいじょうぶですよ。したじきになると、たいへんですが。おともだちは、おかわりありませんか?」
《ジョニーが きかせてくれたはなしは、あまりうれしいものでは ありませんでした。》まちの ひとたちが はるの りょこうで かいがんにいっているあいだに ねずみたいじの大そうじを はじめているのだそうです。子ねこが4ひきうまれ、おやねこは カナリヤを ころしたということです。
《「いえのものは、ぼくたちがころしたのだと いっている。しかし、それは、まちがいさ」》「あれ、あのおとは なに?」「しばかりきですよ。しばを すこしひろってきて あなたのベッドをつくりましょう。そんなことなら いなかにおちついたほうが いいんじゃありませんか」
《ふうむ―らいしゅうのかようびまで ようすをみてみましょう。やさいかごは、うちのひとたちがかいがんへいっているあいだは まちへは いきませんからね」「きっと、まちへは かえりたくなると おもいますよ」と、チミーはいいました。
《けれども まちねずみのジョニーは、やはり つぎの やさいかごといっしょに、まちへかえっていきました。いなかは しずかすぎると、ジョニーはいうのです。》
《あるひとは あるばしょがすきで、またべつなひとは べつなばしょがすきです。わたしは どうかといいますと、チミーとおなじように いなかにすむほうがすきです。》
おわり
読んであげるなら:4才から
自分で読むなら:小学低学年から
ビアトリクス・ポター さく・え いしいももこ氏訳
(要約)
《まちのねずみジョニーは、あるいえの しょっきとだなのなかで うまれました。チミー・ウィリーーは、あるのうかの やさいばたけでうまれました。チミーは、小さないなかのねずみですが、あるとき まちがって、やさいかごにはいって、まちにつれていかれたことがあります。》のうかの さくおとこは、まいしゅう1ど、やさいをかごにいれて、うんそうやさんに まちへ はこんでもらいます。
やさいかごは きどのところに だしてあります。ある日、チミーは、かごのあなからはいりこんで、まめをいくつか たべたりしているうち―ぐっすり ねこんでしまいました。
《かごが うんそうやさんの にばしゃにのせられたとき チミーは ぎょっちして目をさましました。》そのうち ばしゃは ぱかぱかと はしりだしました。ほかの にもつもいれられて それから なんキロもなんキロもにあいだ がたごと がたごと!チミーは、やさいのまんなかで ふるえていました。
《とうとう にばしゃは、あるいえのまえにとまりました。》かごは、おろされ、なかへ はこびこまれました。コックさんが うんちんをはらい、うらぐちの戸は、ばたん!としめられました。ばしゃは いってしまいましたが あたりは しずかになるどころか 何百台ものばしゃが いえのそとを いったり きたりしているようで、いぬは ほえ おとこのこたちは くちぶえをふいています。コックさんは 大ごえでわらい こまづかいのセーラーは かいだんを かけのぼったり おりたり、《そして、カナリヤが1わ じょうききかんしゃのように うたっていました。》
はたけでばかり くらしてきたチミーは こわくて しにそうでした。《そのうち コックさんが やさいかごをあけて、なかのものをとりだしはじめたので、きもをつぶして、チミーは、ぴょんと、かごからとびだしました。》
おどろいてコックさんは、《「ねずみ!ねずみ!はやくねこをよんできて!セーラー、火っかきぼうをもってきて!」とさけびました。》チミーは、かべのしたの はめづたいに どんどん かけだすと 小さなあながあったので、とびこみました。
すると、チミーは、ねずみたちが、パーティをしていた テーブルのまんなかへ落ち、コップを3っつ わりました。「いったい、なにものだ?」とまちのねずみのジョニーはいいました。けれど、おどろきがさめると、ジョニーはすぐに、れいぎただしいねずみにもどりました。
そして、ていねいに、チミーをほかのねずみたちに しょうかいしました。《そのねずみたちは みな しっぽがながくて、しろいネクタイをつけていました。それにくらべて チミーのしっぽときたら、まことにおそまつでした。》みなは すぐ それにきづきましたが 《そだちがよかったので ひとのようすなどは くちにしませんでした。》ただ1ぴき、「ねずみとりに かかったことがあるのですか?」と、ききました。
そのパーティは りっぱなものでした。たべものは たっぷりありませんでしたが とても じょうひんでした。チミーは、どれも みたことがなかったので たべるのが ちょっと こわいきがしました。でも おなかがぺこぺこでしたし たべなければ しつれいに あたったでしょう。うえから ひっきりなしに おとがきこえてきたので、チミーは、びくびくして おさらを1まい こわしてしまいました。《「いやいや ごしんぱいなく どうせ わたしたちのものではありませんから」と、ジョニーはいいました。》
「しょくごの ごちそうを もってこないな」。というのは、2ひきのわかいねずみが、だいどころへ ごちそうを さがしにいっていたからです。この2ひきはきいきいこえをあげたり、わらいながら もどってくるのでした。《チミーは、わけをきいて ぞっとしました。》ねこに おいかけられてくるのです。チミーは、きも とおくなりそうでした。ゼリーをジョニーがすすめます。
《めしあがらない?おやすみになります?」》ねこごちがいいという ながいすのうえの クッションにあんないされます。でも、クッションは、あながあいていましたが、とくべつのおきゃくさまようのじょうとうなベッドだと、ジョニーはねっしんに すすめてくれましたが ねこのにおいがしみこんでいました。《チミーは そのばん、だんろの火がこいのしたで、みじめなよるをすごしました。》
つぎの日も、まえの日と同じでした。あさごはんには すばらしいごちそうが でました。―まちのねずみは、ベーコンなど たべつけていましたが、《けれども、チミーは いままで 木の根やレタスしか たべたことがありませんでした。》その日、ジョニーや、ほかのねずみたちは、《ゆかしたで大さわぎをし、ゆうがたになると、ゆかしたからでて、だいたんにも いえじゅうをのしあるきました。》いちばんの大そうどうは、こまづかいのセーラーが、おちゃのおぼんをもったまま、2かいからころがりおちたことでした。ねこもいたというのに、うまいこと、パンのかけらや ジャムのかたまりを かきあつめることができました。
《チミーは 日のあたる どてのなかの しずかな じぶんのすにかえりたいなあとおもいました。まちのたべものは、チミーのおなかにはあいません。よるは、ものおとがきこえて ねむれません。》いく日かすると チミーは、やせてきました。ジョニーも、きがついて、どうしたのかとききました。はなしをきいて、ジョニーは、チミーのやさいばたけは どんなものなのか きいてきました。《なんだか たいくつなところのように おもえるが、あめのふる日は、どうするのですか?》
《「あめがふると、わたしは さらさらしたきもちよい あめのなかで あきにとっておいた むぎや くさのみのからをむくのですよ。それから しばふにくる うたつむぎや くろなきどりをながめるのです。」》こまどりのコック・ロビンは、ともだちで、お日さまのでているにわは、バラだの、なでしこなど、パンジーなどで、おみせしたいくらいです。とりや、はちや、まきばのひつじのほかには、おとをたてるものも ないのです。
また、ねこがきたので、ちかしつの せきたんおきばに にげこんで ジョニーは、また、はなしのつづきをしました。《「チミー・ウィリアムくん、ぼくは しょうじきにいって すこしがっかりしました。あなたに たのしんでいただこうとおもって、ぼくたちは いっしょうけんめい おもてなしをしたつもりですよ」「ええ、ええ、それは よくわかります。みなさん ほんとうに ごしんせつにすてくださいました。でも、わたしは からだのぐあいがわるいのです」と、チミーはいいました。》
「たべものが からだや 歯にあわないのかもしれません。やさいかごといっしょに おかえりになったほうがいい」《「えっ!そんなことができるのですか?」と、チミーはさけびました。》ジョニーは、あまり きげんのよくないようすで、まいしゅう どようびに やさいかごは いなかにかえることを知らせる。
《こうして、チミーは、あたらしいともだちに さよならをいって、ケーキのくずと しなびたキャベツのはっぱをもって、やさいかごのなかに かくれました。》ながいこと ゆられて ぶじに じぶんのいえに かえってきました。
チミーは、ときどき どようびに きどのところの やさいかごをのぞきにいきますが、こりているので 2どと かごに はいりません。まちねずみのジョニーは、チミーをたずねてくるようなことを いっていたのですが、かごから おきゃくのでてきたことも ありません。
ふゆがすぎ《また、日があたたかく てりはじめました。チミーは、あなのそばにすわって、けがわのようふくをあたためたり、すみれや、はるのくさのにおいを かいだりしました。》もう、まちへいったことなど わすれかけていました。すると、ある日のこと、たびのしたくに身をかため、まちねずみのジョニーが、ちゃいろのかばんをさげて、こみちをやってくるでは ありませんか!
《チミーは りょう手をひろげて、ジョニーをむかえました。》「1ねんで、いちばん いいときにやってきましたね。やくそうのプディングでもたべましょう」《「ふうむ、ちとしけっぽいところですな」》まちねずみのジョニーは、よごれないように しっぽをもちあげて いいました。
《「あの、おそろしいおとは、なに?」といって、ジョニーは とびあがりました。》「うしですよ。すこし ぎゅうにゅうを わけてもらってきます。うしたちは おとなしいから だいじょうぶですよ。したじきになると、たいへんですが。おともだちは、おかわりありませんか?」
《ジョニーが きかせてくれたはなしは、あまりうれしいものでは ありませんでした。》まちの ひとたちが はるの りょこうで かいがんにいっているあいだに ねずみたいじの大そうじを はじめているのだそうです。子ねこが4ひきうまれ、おやねこは カナリヤを ころしたということです。
《「いえのものは、ぼくたちがころしたのだと いっている。しかし、それは、まちがいさ」》「あれ、あのおとは なに?」「しばかりきですよ。しばを すこしひろってきて あなたのベッドをつくりましょう。そんなことなら いなかにおちついたほうが いいんじゃありませんか」
《ふうむ―らいしゅうのかようびまで ようすをみてみましょう。やさいかごは、うちのひとたちがかいがんへいっているあいだは まちへは いきませんからね」「きっと、まちへは かえりたくなると おもいますよ」と、チミーはいいました。
《けれども まちねずみのジョニーは、やはり つぎの やさいかごといっしょに、まちへかえっていきました。いなかは しずかすぎると、ジョニーはいうのです。》
《あるひとは あるばしょがすきで、またべつなひとは べつなばしょがすきです。わたしは どうかといいますと、チミーとおなじように いなかにすむほうがすきです。》
おわり
読んであげるなら:4才から
自分で読むなら:小学低学年から