とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

突然ふらついて倒れ救急車で病院へ、診断結果はまったく予想外の病名だった 勢古 浩爾 によるストーリー  2023/10/5

2023年10月05日 13時08分05秒 | 感染症
突然ふらついて倒れ救急車で病院へ、診断結果はまったく予想外の病名だった
突然ふらついて倒れ救急車で病院へ、診断結果はまったく予想外の病名だった© JBpress 提供

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 9月24日(日)、急激に寒くなった日、深夜の3時ごろ(もう25日だ)に半袖のTシャツの上に長袖のパジャマを着た。その後、考えもしなかった変事に見舞われた。

 座った姿勢から立ち上がって便所に行こうとしたところ、全身の力が脱け、平衡感覚を失ってソファの下のほうに頭を突っ込んだのである。

 一瞬、なにが起きたのかわからなかった。両手でふんばって頭を上げようとするのだがびくともしない。嫌な記憶がよみがえった。まさか脳梗塞の再発か、と思い、両手両足を動かしてみた。なんの問題もない。自由に動く。

 一安心したが、だとしたらこれはどういうことだ? 10分か15分、両手両足の位置を変えてもがいた結果、なんとか立ち上がることができた。全身汗まみれである。

 ふらふらしている。伝い歩きで小用を終え、寝ればすこしはよくなるかと倒れこむようにして寝た。

力が入らない、喉が猛烈に痛い

 25日(月)、ふらふらするのはおなじで、体温も37度から38.5度はあった(平熱は35.5度だ)。なにをする気もせず午後6時まで寝た。

 その後起きたが、深夜2時ごろ、今度は周囲に積んでいる本の山にバランスを崩して頭を突っ込んだ。本の山をなぎ倒した。こんなぶざまな姿は家族には見せられんなとつまらんことを考える。

 普段175センチ73キロの体を苦に思ったことはなかったが、このときばかりはただの邪魔な肉塊でしかなかった。人間は2メートルの巨漢でも、どこか平衡感覚を失えば、指一本で倒れてしまうのだ。このときも汗でグショグショになった。

 26日(火)も事態は回復せず、また午後6時まで寝た。寝るのが楽なのである。市販の解熱剤は飲んでいた。しかしこれはいったい何なのか。両腕に満身の力を込めているのにまったく頭が持ち上がらないという筋無力や筋脱力は。

 痰はしきりに出るわ、咳やくしゃみをするたびに喉が削れらるように痛いわ、右ふくらはぎが2回もつるわで、散々である。

 もう明日は近所の発熱外来に行こうと考えていた。ところが夜中の1時30分ごろ、ヘッドフォンをテレビから取り外そうとして、頭をちょっと下げただけで畳に突っ伏したのである。

 もうだめだ、がまんできん。

なかなか病院が決まらず

 その瞬間に決した。救急車を呼んだ。これからの残された時間が5年あるのか10年あるのかわからんが、こんな状態で過ごすようになったのではたまらん、と思ったのである。

 救急車に乗ったのは2018年がはじめてであった。脳梗塞だったのだが、あのときは呂律が回らない、半身不随で歩けない、とひどかった。

 しかし今回は2回目だから、もうなんの躊躇もない。近所にきたらサイレンは鳴らさないように、など、一切頼まなかった。

 すぐ救急車が到着した。玄関まで二人の隊員が入ってきてくれた。寝たままの状態でシートに乗せられ、ストレッチャーに移され、車に収容された。問診が行われ、聞き取りを終わると、隊員のひとりが病院に収容依頼の電話をかけ始めた。

 5年前の脳梗塞のときは、病院がきまるまで3、4回かけたと記憶する。わりと早かった気がする。

 しかし今回は8カ所目でやっときまった。若い隊員は1回1回相手にわたしの病状をつたえ、断られるということを繰り返した。その都度、どんどんとおくの病院になっていくのがわかった。

 電話をうけた看護師が先生に伺いをたてるので、時間がかかるらしかった。満床だとか熱が高すぎるというのが主な理由だった。

 かれらは、一番最初にかけて先生が処置中で手が空いていないという理由で断られた病院にもう1回かけてみるかといってかけたら、OKが出たのである。ホッとした。

 2時に救急車に乗って、病院が決まったときは3時半になっていた。それでもふたりの若い救急隊員にはよくしていただいた。感謝の言葉もない。

こんな症例があるなんて

 病院で診てくれたのは若い女医さんとベテラン看護師。採血と、コロナとインフルエンザ用の鼻孔粘膜チェック(うわ、かなり奥に突っ込むんだねえ、と声が出た)、あとは念のためということでCTスキャンを撮った。

 看護師に、不調になられて数日経ってますね、といわれ、いやこれは脳梗塞じゃないからちょっと様子見してた、というと、脳内出血ということもあるから甘く見ないほうがいいですよ、と釘を刺された。なるほどそういうこともあるか、とちょっと反省した。

 1時間ほど待って検査結果を知らされた。まったく予想外なことに、インフルエンザということだった。コロナ対策をほとんどしなくてもコロナには罹らなかったのに(ワクチンは3回打った)、伏兵のインフルエンザごときにやられてしまうとは。

 いままでも、インフルエンザの予防接種はしたことがない。それにインフルエンザに罹ると、みんなあんな筋無力症みたいなことになるのか。どうにも納得がいかない。高熱になると頭がふらふらしますよ、といわれたが、頭がふらつく程度ならいいのだ。それに一時的に38.5度になったことはあるが、つねに38度以上あったわけではない。

 そもそもどこで感染したのか、思い当たるところがない。人混みのなかに出かけたわけではない。厚労省の統計によると、9月18日から24日までの週では感染者総数が全国で約3万5000人いる。これが多いのか少ないのかわからない。

 しかし、症例をみても、わたしみたいな筋無力症のような症例は見当たらない。反対にインフルエンザの重症例である高熱、嘔吐、下痢、呼吸困難といった症例がわたしにはなかったのである。

 いまだに釈然としない気分が抜けきらない。

1週間でほぼ復調

 しかし、それはそれ。ともあれ、病名がはっきりしたことで一安心である(がん以外はみなそういう気持ちになるのではないか)。抗インフルエンザ薬「タミフル」と解熱剤「カロナール」を処方された。

 
抗インフルエンザ薬「タミフル」(写真:共同通信社)
抗インフルエンザ薬「タミフル」(写真:共同通信社)© JBpress 提供

 しかしカロナールは服用すると吐いてしまうので、2日使用してやめた(38度以下の場合、不要とあった)。タミフルは2日服用したころから効いてきた。平衡感覚がほとんど戻ってきたのである。

 

 服用3日目の29日(金)には、体温も36.2度あたりで安定するようになった。咳や鼻水も減少し、喉の痛みも小さくなった。外を15分間ほど歩いた。まだ多少ふらつくがもう大丈夫だ。まだ自転車に乗るには不安が残るが、明日あたりはいけそうな気がする。

 朝方4時からはラグビーW杯のサモア戦も見た(それまでも他のグループの試合は、CS放送で全部見ていた)。

 日本は勝ちはしたが不満である。タックルは相変わらず大甘で食い込まれ(後半取られた2トライはそのせい)、格闘の秘密練習をしていたが何の役にもたっていない。つまらない反則も多い。

 深夜まで起きることに害はない。頭痛はない。

 風呂に5日ぶりに入った。毎日測っている体重計に乗ってみると、体重が3㎏減少していた。当然である。5日間、うどんとおじやしか食べてないのである。

 30日(土)、夕方の4時ごろに起きた。ここ1週間、ずっと午後遅くまで寝ている。一日、なにもできない。

 体温は平熱の35.6度に戻った。自転車に乗り、近所を30分ほど回った。案外大丈夫だった。食事は今日もおじや。タミフルも今日で5日間の服用が終わる。

 10月1日(日)、不調を自覚してからほぼ1週間。もう体力的にはほぼ回復しているはずである。熱はなく、くしゃみ、鼻水もない。頭痛ものどの痛みもまったくない。しかしつまらない咳がしつこく残っている。

 ただ気分的にはしっかりしていない。またずるずると午後5時近くまで寝てしまった。

 どうやら、わたしは病気になると、よし負けないぞとか思わずに、簡単に負けてしまう人間であるらしい。こんなことではがん告知にひとたまりもない気がする。

 不屈の魂とか絶対にあきらめない精神などの持ち主に感動し、男たるものそうあらねばと考えもするのだが、わたし自身はただのへなちょこであることがわかった。拷問されたらすぐに白状してしまう。

 まあ、そんなことはどうでもよい。だれに拷問されるというのだ。

 今回も最大の教訓は、やはり健康一番ということである。しかしわたしが普段から健康をないがしろにしているということではない。結果的に大したことはなかったから、そういえるわけである。

 2012年8月の突発性難聴、2018年の脳梗塞、2020年3月の白内障手術(緑内障でなくてよかった)。そして今回のインフルエンザ。いずれも軽くて助かった。しかしこの幸運も、いつまでつづくかわからない。


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