連邦災害機関の廃止を示唆
2025/1/25 BBC
(CNN) トランプ米大統領は24日、ノースカロライナ州でハリケーン「へレン」の洪水被害を視察した際、米連邦緊急事態管理局(FEMA)を廃止する可能性を示唆し、同州は「民主党から見捨てられた」との認識を示した。
トランプ氏は今回、ロサンゼルス一帯が山火事に見舞われたカリフォルニア州も訪問する。連邦議会の共和党議員の間では、支出削減を求める保守派の意向と、両州の再建支援を誓うトランプ氏の公約とのバランスを探る作業が始まっている。トランプ氏が首都ワシントンを離れるのは20日の就任以来初めて。
トランプ氏は記者団の取材に応じ、ノースカロライナ州でのFEMAの取り組みについて「おそらく、この組織が機能不全に陥っていることを示す最たる例の一つ」と言及した。ノースカロライナ州はトランプ氏が3回にわたって勝利を収めた激戦州。トランプ氏は民主党の対応は拙劣だとして、自らのリーダーシップと対比しようと試みた。
そのうえで、近くFEMAを廃止して各州に直接資金を送り、災害救援活動の管理を州に委ねる可能性に言及した。
また、政治的に近い関係にあるマイケル・ワトリー共和党全国委員会委員長を起用して、民主党のジョシュ・スタイン・ノースカロライナ州知事とともに州再建の陣頭指揮に当たらせる意向も示した。ワトリー氏はノースカロライナ州出身。
ノースカロライナ州の問題を解決する方策を問われ、トランプ氏は「現時点ではFEMAのことは頭にない」と説明。ワトリー氏や共和党の議員3人の名前を挙げた。「州に問題がある時は、州がその問題に対応すべきだと思う。そのために州がある。州が自ら問題を処理するし、州知事が迅速に対応できる事柄もある」としている。
さらにFEMAには「とても失望させられた」と述べ、動きが遅く過度に官僚的で、連邦政府にとって費用が高くつく組織だとの見方を示した。
ノースカロライナ州でのトランプ氏の発言を受け、FEMAの当局者はその内容を理解する作業に追われた。事情に詳しい情報筋によると、トランプ氏の発言がFEMAの将来や現場の仕事にどのような意味を持つのか見極めようと、全国の職員が電話やテキストメッセージでやり取りしている状況だという。
FEMAのクリスウェル前長官はCNNに対し、FEMAの廃止や縮小を求めるトランプ氏の発言は、州レベルでも緊急対応に悪影響を及ぼす可能性があると指摘した。
【参考】
ハリケーン米南部で大規模洪水45人死亡
2024/09/28
Live: President Trump visits disaster-hit Pacific Palisades to survey wildfire damage
ライブ:トランプ大統領は、山火事の被害を調査するために災害に見舞われた太平洋柵を訪問します
President Donald Trump and First Lady Melania Trump are visiting hurricane-battered Asheville, North Carolina, before heading west to assess the damage in wildfire-ravaged Los Angeles.
ドナルド・トランプ大統領とメラニア・トランプ大統領夫人は、ハリケーンで猛威を振るったノースカロライナ州アッシュビルを訪れ、その後、山火事で荒廃したロサンゼルスの被害を評価するために西に向かいます。
California Wildfires 2025 LIVE: Hughes Fire In Castaic Explodes Near Los Angeles, California | N18G
カリフォルニアの山火事 2025 LIVE: カリフォルニア州ロサンゼルス近郊でキャスタイックのヒューズ火災が爆発 |N18G
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A new fast-moving wildfire has erupted in Los Angeles County, prompting tens of thousands to evacuate a region already reeling from the most destructive fires in its history. The Hughes fire ignited about 45 miles northwest of the city of Los Angeles on Wednesday afternoon, near Castaic Lake in a mountainous area that borders several residential areas and schools. The out-of-control blaze has grown to more than 9,400 acres in several hours fuelled by winds and dry brush that is acting as fuel. No homes or businesses have been damaged, but about 31,000 residents have been forced to flee and Interstate 5 - the primary highway running along the US West Coast from Mexico to Canada - is closed.
ロサンゼルス郡で新たな急速に進行する山火事が発生し、歴史上最も破壊的な火災ですでに動揺している地域に、数万人が避難を余儀なくされました。
ヒューズの火災は、水曜日の午後、ロサンゼルス市の北西約45マイル、いくつかの住宅地と学校に隣接する山岳地帯のキャスタイク湖の近くで発火しました。
制御不能な炎は、風と燃料として機能している乾燥した茂みによって煽られ、数時間で9,400エーカー以上に拡大しました。家屋や企業への被害はありませんが、約31,000人の住民が避難を余儀なくされ、州間高速道路5号線(メキシコからカナダまで米国西海岸を走る主要高速道路)は閉鎖されています。
トランプ大統領 ののしり合っていた知事と抱擁 LA火災の支援約束(2025年1月25日)
米上院、ヘグセス氏を国防長官に承認 51対50の僅差
1/25 BBC
米連邦議会上院(定数100)は24日、ドナルド・トランプ大統領の指名を受けて、元FOXニュース司会者のピート・ヘグセス氏(44)を国防長官に承認した。賛成50、反対50と票数が拮抗(きっこう)したため、上院議長を兼ねるJ・D・ヴァンス副大統領が賛成票を入れ、わずか1票差で新国防長官が決まった。
上院での指名承認議決にあたり、共和党からミッチ・マコネル元上院院内総務(ケンタッキー州)、リサ・マーコウスキ議員(アラスカ州)、スーザン・コリンズ議員(メイン州)の3人が反対に回ったため、上院議員による投票は賛成50、反対50となった。
このため、あらかじめ上院に到着していたヴァンス副大統領が賛成票を投じ、ヘグセス氏はわずか1票差で国防長官に承認された。
上院による閣僚承認のために副大統領が上院議長として投票する必要が生じたのは、アメリカ史上わずか2回目。1回目は2017年にトランプ氏が指名した教育長官候補を承認するため、マイク・ペンス副大統領(当時)が投じた。
ヘグセス氏はさらに、ミネソタ州から上院選に出馬して落選したほかは、政界での経験がほとんどない。
国防省は8500億ドル近い予算の巨大組織で、約130万人の現役米軍兵士を束ねる。それだけに、ヘグセス氏の国防長官就任については、与党・共和党からも異論が出ていた。
マコネル議員が異例の批判
承認後にマコネル上院議員は、なぜヘグセス氏の国防長官就任に反対したのか、異例の声明で説明した。共和党重鎮のマコネル氏が、トランプ氏に公然と異論を唱えるのは珍しい。
マコネル氏はヘグセス氏について、巨大予算と職員300万人を擁する国防省を取り仕切り、世界中の同盟諸国と提携できる能力が備わっているとは思わないと批判。
「ヘグセス氏はこれまでのところ、自分がその課題を果たせるとは示してこなかった」、「アメリカの安全保障と繁栄を裏付ける秩序を破壊しようとする複数の敵が、連携して繰り広げてくる攻撃に、アメリカは直面している。ヘグセス氏は公の発言や上院軍事委員会での証言において、この現実を受け止めていなかった」とマコネル議員は指摘した。
さらに上院での証言でヘグセス氏が、中国が台湾やフィリピンを攻撃した場合にアメリカはどう対応すべきか計画を示すことなく、そもそもアメリカが台湾やフィリピンを中国から守るために介入すべきなのかについても言明しなかったとマコネル議員は批判。ヘグセス氏は、中国とどう取り組むのか「戦略的なビジョンを詳細に示すことが、まったくできなかった」ともマコネル議員は述べた。
マコネル氏はさらに、ヘグセス氏が「戦士の文化」復活をかねて強調していることから、「『戦士の文化』復活とは、社会文化のために戦うカルチャー戦士たちを、別のカルチャー戦士たちと入れ替えたからといって、実現できるものではない」とくぎを刺した。
そのうえで議員は、「ヘグセス長官の大成功」を願うと声明を結んだ。
同様に、承認に反対した共和党のマーコウスキ議員はこの日の議決より先に、ヘグセス氏の「過去の行動は、この国の軍隊の指揮を執る人にふさわしい判断力の欠落を示している」と批判していた。
共和党のコリンズ議員は、「この仕事で成功するために必要な経験と視点を、(ヘグセス氏が)備えていないのではないかと心配している」と述べていた。
かつて女性兵の戦闘参加に反対
承認手続きのための上院軍事委員会公聴会では、特に多くの女性上院議員が、ヘグセス氏がかつて、女性が兵士として戦闘に参加すべきでないと発言していたことについて問いただした。これに対してヘグセス氏は、自分は女性兵の戦闘参加に反対しているのではなく、アメリカ軍の水準維持を重視しているのだと答えていた。
公聴会では、女性に対する問題行動疑惑が繰り返し取りざたされた。2017年にはカリフォルニア州のホテルで女性を性的に暴行した疑惑があるものの、ヘグセス氏は一連の疑惑をすべて否定している。
さらに、職場での飲酒を含むアルコールによるさまざまな問題行動や、かつて2度の結婚の間に不倫関係をもっていたとも批判されている。
公聴会でヘグセス氏は、「私は完ぺきな人間ではないが、(罪の)あがないは本物だ」と発言していた。
(英語記事 Ex-Fox News host Pete Hegseth confirmed as Trump's defence secretary)
へグセス氏(画像はネットから借用)
「世界に軍事力を提供した米国」の終焉 トランプ氏が突きつけた「自分の力で自分を守る」時代に対応を 佐々江元駐米大使
産経新聞 2025/1/25
日本国際問題研究所は、29、30の両日、東京都内で国際会議「第6回東京グローバル・ダイアログ」を開催する。佐々江賢一郎理事長(元駐米大使)が会議を前に、20日に発足したトランプ米政権との向き合い方について展望を語った。主な発言は次の通り。(聞き手 岡田美月)
「力を背景とする国益の維持」必要に
トランプ米大統領が就任した。世界はトランプ氏の登場前から既に、米国が力を持ち中心となって引っ張っていく体制ではなくなってきている。多国間主義やグローバル化がもたらした反動や弊害が、貧富の格差、文化闘争、価値観の多様化などの形で表れ、統合よりも分散していく遠心力の方が強まった。
懐深く世界のために資金を出し、軍事・安全保障も提供し、鷹揚(おうよう)に構えていた米国の時代はもう終わりつつある。トランプ氏の登場はその現実の反映といえよう。それぞれの国が自分の力を最大限発揮して自らを守る。安全保障、防衛、経済安保、文化的なアイデンティティーの問題など各国がもう一回、自分たちの守るべき価値と国益が何かを再評価することが求められている時代だ。トランプ氏がある面で先陣を切っているといえ、世界はこれが現実だとの認識の上に立つ必要がある。
トランプ氏の要求をどう逃れようか、との発想ではなく、自分たちはどうしたいか、どうすべきかという考えがまずあるはずだ。日本は歴代首相が「今日のウクライナは明日の東アジア」だと訴えてきた。その本質は、ロシアのウクライナ侵略をひとごとだと思って眺めるのではなく、日本の安全保障・防衛体制の問題として受け止める危機感に他ならない。
日本は中露朝の三正面で、より深刻な潜在的な脅威に直面しつつある。5年後、10年後、この抑止力が十分働き、戦争や紛争を防げるだけの態勢を整えていればいい。いざとなって、(防衛努力を要求してきた)トランプ氏の主張が正しかったなどと、後悔する事態にならないようにしたい。
米中「一致点はあり得る」
他方、気候変動問題など米国の役割が期待できなかったらどうするかとの問題がある。環太平洋経済連携協定(TPP)などの貿易体制をはじめ、米国なき秩序の維持に向けた努力がより一層、重要になる。
一方で、政権移行で見られた良い兆しは、中東和平に向けたバイデン前政権の最後の交渉努力に、トランプ氏のチームが参加したことだ。政策や政権の変更があっても、米国の対応には継続性があるとの保証を与えた。実態を見て判断することは非常に重要だ。
米国では対中警戒が強まっている。他方でトランプ氏はディール(取引)を通じ、ある種の落ち着き先を見つけることによって新しい米中関係の安定性を求めていくのではないか。中国を破壊し、新たな秩序を作ろうと考えている人は少数だと思う。
トランプ氏自身は何らかのディールをして中国に対して米国が優位な形で安定的な米中関係を持つことを考える。一方、中国は米国に追い付くために時間稼ぎをしながら本格的な争いをしない範囲で自国の実力を伸ばすことが戦略的に重要だと考える。その両者の間で、どこかで一致点はあり得るのではないか。
日本は、トランプ氏本人や、ルビオ国務長官、ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ら鍵となる周辺人物をはじめ、米国の政府、議会、世論も含めて全体として日米関係をマネージ(うまくまとめることが)できるような土台を作ることに全力を挙げることが肝要となろう。
ささえ けんいちろう
佐々江 賢一郎
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2013(平成25)年11月12日アメリカ合衆国国務省にて
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生誕 | 1951年9月25日(73歳) 日本 岡山県倉敷市 |
国籍 | 日本 |
出身校 | 東京大学法学部卒業 |
職業 | 公益財団法人日本国際問題研究所理事長兼所長。 |