とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

「ピーターラビットの絵本」シリーズ (19)

2007年03月05日 02時34分45秒 | 児童文学(絵本もふくむ)
(19)パイがふたつあったおはなし(1905年刊)
ビアトリクス・ポター さく・え  いしいももこ氏訳
              (要約)
《あるところに リビーという名の ねこがいました。リビーが ある日、ダッチェスという名の いぬを おちゃに よびました。》
「ちょうど おちゃの じかんに いらしてください。《とても おいしいものを、ごちそうします。いま、パイざらで やいているところ。
ピンクのふちどりのある パイざらですよ。ぜんぶ あなたが めしあがって いいのですよ。あたしは マフィンを食べますから》」
 
 ダッチェスは、しょうたいじょうを読んで、へんじをかきました。
《「よろこんで 4じ15ふんに おうかがい いたします。でも、おかしいですね。ちょうど いま、わたしも あなたを ばんごはんに およびして、すばらしくおいしいものを さしあげるつもりで いたところでしたの。》でも、じかんきっかりに おうかがい いたします」

そのあとに、「ねずみのパイでないと いいのですが」と、つけくわえましたが、しつれいかと おもい、かんがえて、「おてんきが いいと いいのですが」と、かきなおして てがみを ゆうびんやさんに わたしました。 
 
 けれども、ダッチェスは 《パイのことが 気になって しかたがありません。》 てがみを なんども なんども 読みなおして、《「どうしたって ねずみのパイのような 気がする!」》と、おもいました。おさらも ピンクとしろだって!そうよ、おそろいで タビタおくさんの おみせで かったんだもの。
でも ねずみのパイなんて とても たべられない。でも たべなくちゃあ。およばれなんだもの。 
《あたしが つくっていたのは 子牛とハムのパイだったのに!》
ダッチェスは おかってに いって オーブンに いれるばかりに なっていた パイをながめました。

 こんなに よくできていて パイのかわが へこまないように ちいいさいブリキの焼き型を いれておいたんだわ。ああ、ねずみのパイじゃなくて わたしのパイが たべたい!

 ダッチェスは かんがえて かんがえて また てがみを よみました。
「パイは あなたが ぜんぶ めしあがって いいのですよ。あたしは マフィンをたべますから」

きっと リビーは これから マフィンをかいに でかけるわ。その るすに 《このパイ リビーの
オーブンにいれてきて しまえば いいいんだわ》 すばらしい おもいつきに うれしくなりました。 

いっぽう リビーは うかがいますという へんじをもらうと すぐさま パイを オーブンに いれました。
このオーブンンは、上のだんと下のだんに わかれていました。下のだんは きつくて あけるのに、ちからが いりました。
「このパイは ねずみのにくとベーコンを よくたたいて まぜておいたの。ほねは ぜんぶ とってある。
だって ダッチェスは、このまえ おさかなのほねを のどに ひっかけて もうすこしで ちっそくしそうになったのですもの。はやく たべすぎるのよ。ひとくちに パlクっと。でも おぎょうぎのいい おじょうひんな いぬだわ。

リビーは ろばたを おそうじをし やかんに みずをいれに いどへいきました。そして おへやを きれいにしました。 それから テーブルに あらいたてのテーブルクロスをかけ そのうえに いちばんじょうとうの おちゃのどうぐを ならべました。

それから ぎゅうにゅうとバタを かいに はたけのむこうの おひゃくしょうさんのところへ いきました。
かえってくると オーブンの下のだんを のぞきました。ぐあいよく やけているように 見えました。

《リビーは、ショールをかけ ボンネットをかぶって バスケットをもつと おちゃと かくざとうと マーマレードをかいに また でかけました。》
と、ちょうど そのとき ダッチェスが むらの むこうはしの じぶんのいえから出てきました。
  
 リビーは むらの 大通りの まんなかあたりで ダッチェスに あいました。ふたりは おじぎをしただけでなにも はなしませんでした。《 はなしは これから おちゃを のみながら するのですものね。》
ダッチェスは リビーのすがたが みえなくなるや わきめもふらず いちもくさんに リビーのいえへむかって かけだしました。《ただ いっさんに!》

 いっぽう リビーは タビタさんのおみせで かいものをすませました。タビタさんは、《「いぬの おきゃくだって!このむらに ねこが いないって わけでもないのに!それに おちゃに パイをだすなんて きいたこともない!」》
と、いいました。リビーは そのあと ぱんやで マフィンをかって かえりました。

《 リビーは、げんかんに はいったとき うらぐちのほうで、なにか どたばたというような おとを きいたように おもいました。》 《まさか あのパイに だれか いたずらしたんじゃないかと おもうけど。》
でも おかってには だれも いません。《オーブンの下のだんを あけると ねずみのやける おいしそうなにおいが たちのぼりました。》
《いっぽう ダッチェスは、うらぐちから、そっと そとに出ました。》

「あたしのパイを オーブンの上のほうへ いれてきたとき リビーのが はいってなかったのは おかしいわね!
どこにも ないんだもの。オーブンは 上のだんしか あかなかったし」

 ダッチェスは いえにかえると 毛にブラシをかけました。《それから にわにでて リビーにあげる はなたばを つくりました。》 4じに なるまで きっちり まちました。

 《こちらは リビーです。》 だれも かくれていないか よくよく たしかめてから 《にかいに あがって おちゃかいの よういに うすむらさきのふくをきて ししゅうのついた モスリンのエプロンを つけました。》

 《リビーは また だいどころに おりてきて ポットにおちゃをいれ、》オーブンのうえの あたたかいところに おき、オーブンの下のだんを のぞきましたが パイは こんがりと やけて ゆげをたてていました。リビーは 火のまえで、ダッチェスを まちました。

 《4じ きっかりに ダッチェスは いえを出ました。》 はやく つきすぎたので すこし まちました。
《リビーは あたしのパイを オーブンから 出したかしら?》 でも、ねずみのパイは どこへ いったのかしら?」

《 4じ15ふん ちょっきりに とても おじょうひんに トントンと 戸をたたく おとがしました。》
「リブストンのおくさまは ございたくでしょうか?」
《「おはいりください。まあ ごきげんいかが、ダッチェスさん?」と、リビーは 大ごえをあげました。「おげんきでしょうね」》
《「ええ、ありがとう。げんきで ございます。それで、あなたは いかが、リビーさん?おはなを もって まいりました。
まあ、なんて おいしそうな パイのにおい!」》
《「あら、なんて きれいなおはな!ええ、あのパイ、ねずみとベーコンですのよ」》

《「いまは たべもののはなしは やめときましょう、リビーさん」と、ダッチェスは いいました。》「パイは もうやきあがりました?それとも オーブンのなか?」
「あと 5ふんは かかると おもいます。そのまえに おちゃを すこし いれましょう。おさとうは おいりになる?」
「ええ、いただきます。《その かくざとう ひとつ あたしの はなに のせてくださる」?》
《「まあ あなた ちんちんが おじょうずなのね。ほんとに おみごと!」》

《ダッチェスは かくざとうを はなの上にのせて、くんくん においをかぎました―「ああ、なんて パイのいいにおい!
あたしは 子牛とハムが だいすきなの―いえ、ねずみとベーコンのことですけど―」》

 ダッチェスは、うろたえて かくざとうを おとしてしまいます。さがしているまに リビーがパイを だしてしまいました。
どのだんに はいっていたのか 見ませんでした。

「パイを切ってさしあげますわね」「あの パイを切るときは 焼き型に気をつけて」
《「あら、あなた  なにを おっしゃいました?」》
《「マーマレード そちらへ おまわししましょうか?」と、ダッチェスは あわてて いいなおしました。》
 《たべてみると 、パイは とても おいしくて、マフィンは あたたかくて やわらかでした。》パイは みるみるうちに すくなくなって いきました。パイざらは からになり スプーンで おさらを かきまわしています。
「ベーコンを もうすこし さしあげましょうか?」「ありがとう。あたし 焼き型を さがしているところなの」
「焼き型ですって?なんのことを いっていらっしゃてるの?焼き型なんて このパイには いれて ありませんよ」

 それでも ダッチェスは スプーンで あさらをかきまわし しんぱいそうに いいました。
「焼き型が でてこないわ」
「いれて いません」「いえ、はいっていたんですよ、リビーさん。」
「いえ たしかに はいっておりません。あたし パイのなかへ 金気のものをいれるのは このましくないとおもっています。《とくに パクっとたべるひとの いるときは》、と、ちいさい こえで つけくわえました。》

 「あたしの しんるいのタビタ大おばさんは、どこのいえでもいれる クリスマスのプディングにいれる幸運のゆびぬきを のみこんで しんだんですよ。だから、あたしは いっさい金気のものは いれません」

《ダッチェスは どぎもをぬかれたようすで パイざらを たてにしてみました。》
「あたしの 焼き型は 4つとも ちゃんと 戸だなのなかに はいって おります」
《ダッチェスは、うおーという 大ごえを あげました。》
「《あたし しぬんだ!あたし しぬんだ!》焼き型 のんじゃった。とても 気ぶんが わるくなって しまいましたわ」
 「そんな はず ありませんよ。焼き型なんて はいってなかったんですよ」

《「焼き型は なかったんです」リビーは おこったように いいました。
「いいえ、あったんですよ、リビーさん。たしかに あたし のんじゃったんです」》

「クッションに 横におなりなさい。」
「からだじゅう 気もちがわるいのよ。あたし ぎざぎざの 焼き型 のんじゃったんだ」
「おいしゃを よんできましょうか」
「カササギせんせいを よんできて ください」
リビーは いそいで せんせいをさがしに むらへ でかけていきました。

せんせいは、かじやにいて むちゅうで さびたくぎを インクのびんに いれていました。
《「《なに?ばかきゃ?は!は!》と せんせいは、あたまをかしげて いいました。」
リビーの せつめいを きくと 《「たれ?は!は!」》と、いそいで リビーのいえに ついてきました。

 けれども、リビーが いしゃをさがしに いっているあいだに ダッチェスのほうは とても かなしい おもいをしていました。「あたししか パイを たべていないから 焼き型を のんだのは あたしだわ」
そのとき しゅーっと おとがしました。

 《ダッチェスは ぎょっとしました。そして 上のだんのオーブンを あけてみました。子牛とハムの こってりとしたにおいが、ゆげといっしょに ながれてきました。》 焼き型も ちらりと みえます。
「じゃあ あたし ねずみ たべたんだ。気ぶんがわるくなるのも あたりまえ」
こんなこと、とても リビーには はなせないので パイをうらにわに出して いわないで おくことにしよう。
パイを うらにわにだすと もどってきて だんろのまえに すわり 目をつぶりました。リビーが、せんせいをつれて もどってきたときは まるで ねむっているに見えました。

《「ばきゃたれ?は!は!」と、せんせいは いいました。》
ダッチェスは ぎょっとして 目をさまし、「あたし、ずっと 気ぶん よくなりました」と、いいました。》
カササギせんせいは、おくすりを よういしてくれていました。《「ただ パンをまるめたおくすりだから のんだほうが いいですよ。ミルクもおのみなさい」》と、リビ-。
《ダッチェスが むせたり せきこんだりしているあいだ、せんせいは、「ばきゃたれ?ばきゃたれ?」と、いっていました。》
「そんなこと 2どと いわないでください。とっとと出ていってください」と、リビーは かんしゃくを おこしました。
《「ばきゃたれ、うすのろ!は!は!は!」 カササギせんせいは とくいそうに うらにわで 、さけびました。

「あたし 気ぶんが とてもよくなったから 家へかえります」
「おおくりしましょう」
「いえ いえ そんな ごめんどうを」
「では あすの朝 おみまいに いきますからね」
リビーとダッチェスは たがいに やさしく さよならをいって わかれました。

ダッチェスが とちゅうで ふりむくと リビーは もう家にはいり、《げんかんの戸はしまっています。》
《ダッチェスは かきねをくぐりぬけ》 うらのわを のぞきました。ぶたごやの うえには カササギせんせいと3ばの子ガラスが とまっていて パイをたべていました。

《「ばきゃたれ、は!は!」》せんせいは ダッチェスの ちいさい 黒いはながのぞいているのを 見ると さけびました。
《ダッチェスは ほんとうに ばかだったと はずかしくなって うちへかけて かえりました。》
リビーが おちゃのどうぐを あらおうと うらにわに でてみると 白とピンクのパイざらが めちゃめちゃにこわれ、焼き型は、ポンプの下に ころがっていました。

 リビーは おどろいて 焼き型を見ました。「やっぱり、焼き型は あったんだわ。でも、あたしのは、みんなだいどころの戸だなにしまってあるし。《こんなこと、きいたことない。こんど おちゃかいを するときは いとこのタビタを よぶわ」》
               おわり

読んであげるなら:5・6才から
自分で読むなら:小学低学年から
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