とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

ヒバクシャ・坪井直さん「核廃絶へ、大いなる一歩」 核兵器禁止条約発効へ

2020年10月25日 08時42分10秒 | 核兵器禁止条約
坪井直さん=広島市中区で2018年4月5日午後2時21分、木葉健二撮影

 「『ついに! 良かった』との大きな興奮を覚えている。長年の悲願である核兵器の禁止・廃絶を具体化する、大いなる一歩であることは間違いない」。広島県原爆被害者団体協議会(広島県被団協)理事長で、核兵器禁止条約の早期発効を求める「ヒバクシャ国際署名」呼びかけ人の坪井直さん(95)=広島市西区=は、今の気持ちをそう表現した。

 広島工業専門学校(現広島大)に通っていた20歳の時、爆心地から1・2キロ離れた路上で被爆。全身に大やけどを負い、約40日間、意識不明になった。数学の教員として中学校の教壇に立った戦後は、自ら「ピカドン先生」と名乗って被爆体験を生徒たちに語り、定年退職後に被爆者運動に加わった。がんで入退院を繰り返しながら、体験を伝えるため20回以上海外を訪れ、「核なき世界」の実現を訴えてきた。

 2016年5月には、原爆を投下した米国の現職首脳として初めて広島を訪れたオバマ前大統領と平和記念公園で面会した。笑顔で握手を交わし、「(原爆投下は)人類の間違ったことの一つ。それを乗り越えて我々は未来に行かにゃいけん」と語りかけた。翌17年7月に核兵器禁止条約が国連で採択された頃からは、高齢と病気のため公の場に姿を見せることは少なくなったが、カナダ在住のサーロー節子さん(88)ら国内外の被爆者とともに「ヒバクシャ国際署名」の呼びかけ人として1261万筆超を集め、条約の早期発効に道筋をつけた。

 坪井さんは「喜びと同時に『ようやくここまでか』との複雑な思いがあるのも事実だ。長い道のりであった」と振り返りつつ、核保有国や日本が批准していないことを念頭にこう続けた。「これからも険しい道が続くのかもしれないが、忌むべき兵器を世の中から無くすよう諦めずに進んでいきたい」

 一方、もう一つの広島県被団協の理事長、佐久間邦彦さん(76)=広島市西区=も「悲願である核兵器のない世界に向けた重要な一歩。(条約不参加を表明した)日本政府の態度は人々の願いに背くもので、核兵器のない世界の実現、核被害者への援助と支援の強化に向けて努力を続けたい」とコメントした。【小山美砂】

核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて開かれた国連安全保障理事会の公開会合=米ニューヨークの国連本部で2020年2月26日、隅俊之撮影

 史上初めて核兵器を全面禁止する核兵器禁止条約を批准した国・地域が24日、発効に必要な50に達した。中米ホンジュラスが新たに批准した。条約は90日後の来年1月22日に発効する。米露などの核保有国や米国の「核の傘」に依存する日本などは不参加で実効性に欠けるが、核兵器を非人道兵器とする国際規範ができることで「核なき世界」に向けた新たな一歩となる。

 批准を働きかけてきた国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が24日、明らかにした。核兵器禁止条約は2017年7月、国連加盟の6割を超える122カ国・地域の賛成多数で採択された。条約は、核兵器の開発や保有、使用だけでなく、核兵器による威嚇、他国の核兵器を自国内に配備することなどを全面的に禁じる。発効から1年以内に締約国会議を開く予定で、オーストリアでの開催が有力視されている。

 現在の核軍縮・核不拡散の基盤である核拡散防止条約(NPT)は、米露英仏中の5大国に核兵器の保有を認める代わりに、誠実に核軍縮交渉を行う義務を定めている。しかし、米露間では中距離核戦力(INF)全廃条約が失効。来年2月に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)は1年延長の可能性が出ているが、米露双方で「使いやすい核兵器」とされる小型核弾頭の配備や開発が進む。このような核軍縮が進まない現状に対する非核保有国の危機感が批准を後押しした。

 核兵器禁止条約は締約国でなければ拘束されない。だが、ICANのベアトリス・フィン事務局長は「発効すれば(核軍縮を進めるべきだという)強い国際規範が生まれ、核保有国も圧力にさらされる」と指摘。日本や北大西洋条約機構(NATO)加盟国など「核の傘」に依存する国が参加することが「最初のステップになる」と話している。今後は、署名・批准数をどこまで増やせるかが焦点になりそうだ。

 

 被爆国の日本は、核軍縮の進展に向けて核保有国と非核保有国の「橋渡し役」を担うと表明してきた。核兵器禁止条約をめぐっては「現実の安全保障を踏まえていない」として、17年3月から始まった交渉会議にも参加しなかった。だが、締約国会議には核保有国や日本など批准していない国もオブザーバーとして参加できるため、与党でも公明党が参加の検討を求めている。【ニューヨーク隅俊之】

 

核兵器禁止条約発効へ 批准した国が50カ国に到達(2020年10月25日)

 

「核兵器禁止条約」発効へ 批准50か国

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