とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

「ピーターラビットの絵本」シリーズ (24)の2

2007年03月10日 00時47分19秒 | 児童文学(絵本もふくむ)
(24)の2 こぶたのロビンソンのおはなし

                第5章
 よろず屋の年寄りのマンビーさんの お店につきました。このお店には、いろんなものが売っていましたが、ほかのお店のように、ハムは売っていません。ながいソーセージをつんだり、天井からベーコンがさがったりなんか、していません。
 「店にはいったとたん、ハムに あたまをぶつけるなんて どんな気持ちがすると思います。またいとこかも しれないじゃ ないですか」
ですから、おばさんたちは、雑貨をみな マンビーさんのお店で買っていました。でも イーストは 新鮮でないといけないので あつかっていませんでした。パン屋に行って、わけてもらうように、マンビーさんは、おしえてくれました。キャベツの種は、きせつはずれで もう売っていませんでした。かがり用の糸はありましたが、ロビンソンは何色だったか 忘れてしまいました。《ロビンソンは、じぶんのお金で、すてきにべたべたした砂糖菓子のかたまりを6個買いました。》
 重い荷物をもって、マンビーさんの店をでましたが、かかぎり用の糸と、イーストと、キャベツの種が気になりました。
 ところが、リューマチが少しよくなったベッツィおばさんに 会いました。おばさんは、プリムローズをたばねていた毛糸の糸の色をおぼえていました。「サムのくしたをかがったのと同じ、青みがかった灰色糸だよ」、そして しんせつに 毛糸屋さんへ いっしょに行ってくれました。
 おばさんのおかげで、はい色のかがり糸を買うことができました。「重い籠は、ゴールドフィンチさんの所にあずけて、はやく 買い物をすませて 農場へ帰ったほうがいいよ。長い道のりだし、ずっとのぼり坂だよ」
 ゴールドフィンチさんの所へいそぎましたが とちゅうにパン屋があって、切ない気持ちでショーウインドーをながめていると、スタンピィが通りかかり、イーストを買うことができました。そこは、スタンピィが、いつもドッグフードを買うお店だったのです。「キャベツの種は、1軒だけ埠頭の先の店にあるかもしれないから重いにもつは、ゴールドフィンチさんのところにおいていきなよ」
 ゴールド・フインチさんのお店は、感じのいいコーヒー店でした。ロビンソンが、あまり疲れているようすなので、おちゃをいれてくれました。そして、ドーカスおばさんを尊敬しているけれど、こんな小さな子どもを ひとりでお使いにだすなんてと、怒りました。荷物も 重すぎるので、、シム・ラムさんとこの二輪馬車が まだ うちのうまやにいるので、あなたをのせていってくれるように頼んでおきましょう。どっちにしろブタゴヤ・ポーコム農場を通るんですから。
 さ、はやく買い物をすませて 帰っておいでなさい。ゴールドフィンチさんは、ひわ鳥でした。

                 第6章
 《スタイマスの町には たくさん宿屋がありました。たくさんすぎるといっても いいくらいです。》
“丁と判亭”という居酒屋があり、そこの戸口に3、4人の男がたむろしていました。《青いセーターを着た水夫が、ロビンソンをしきりにじっと見つめ、道をよこぎって近づいてきました。
「ちょいと、そこの小ブタ!かぎたばこ、いっぷく、どうだい?」と、その水夫はいいました。》
 ロビンソンの欠点は、“ノー”と、いえないことです。水夫は、かぎたばこをわたし、ロビンソンは、ドーカスおばさんに、もっていこうと 紙につつみました。それから、礼儀正しくしないといけないと思い、砂糖菓子を水夫にあげました。水夫は、砂糖菓子がだいすきで、びっくりするくらいロビンソンのお菓子を食べました。耳をひぱって「あごが5重だね」と、おせじをいいました。キャベツの種を売っているお店には、かならずつれていってやると、約束しました。それから さいごに じぶんが乗っている船を見せたいから、おいでねがいませんか、と、いいました。「ローソクどっさり号」という、ショウガあきないの船だというのです。
 ロビンソンは、船の名前がきにいりませんでした。《獣脂でできたローソクを思い出しましたし、ラードとか、ベーコンのふちのあぶらみと とおからずとおもえたからです。》
 それなのに、ロビンソンは その水夫についていったのです。《その男が、船のコックだということが、ロビンソンにわかってさえいたらねぇ!》
 ふたりが、港におりるとき、マンビーさんが心配して、「ロビンソン!、ロビンソンや!」と声をかけましたが、荷車の音で いっぱいでかき消されてしまいました。ちょうど、店に客が来て、マンビーさんは そちらに気をとられてしまい、忘れてしまいました。
 水夫とロビンソンは 手をつないで歩きました。シム・ラムじんさんが、船から羊毛の包みを倉庫におろすたびに うなづいて いました。ロビンソンを知っているので、警告するべきだったのです。
 じいさんの牧羊犬も、ロビンソンを知っていましたが、ちょうど、イヌのけんかのかんとくのまっさい中でした。
《 「ロウソクどっさり号」は、埠頭のいちばんそとがわに停泊していました。》潮がみちてきて、波が船腹にひたひたとうちよせ、埠頭につないであるもやい綱は、ピンとはりつめていました。
 船長は、まわりのものをバシバシたたいては、ぶつぶつ文句をいっていましたが、コックとロビンソンが、ゆれる板をのぼってくるのが、目にとまると、黙りました。
 ロビンソンは、デッキにあがったとたん、くつをみがいている黄色いネコと はちあわせをしました。ネコは、驚いてクツブラシを、おとしました。そして 目をパチパチさせて、ロビンソンにおそろしい顔つきをしてみせました。コックは、ネコにくつを投げつけました。それで、ネコは逃げました。
 コックは、いんぎんに、ロビンソンを船室へまねき、マフィンをどっさり食べさせました。《わたしはロビンソンが マフィンをいくつ食べたかわかりません》 どんどん食べ続け、眠ってしまいました。
 
 《ガタンとゆれを感じて、ロビンソンは おきあがりました。》そして、はしごをのぼってデッキにでました。《つぎの瞬間、おそろしさのあまり、キィーッ、キィーッとなきはじまました!船のまわりいちめん、みどりまたみどりの海原だったのです。》埠頭にならぶ小屋は、人形の家のように小さく陸地のかなたのブタゴヤ・ボーコム農場も切手ぐらいの大きさで見えてyいました。黒いひき船「海馬
号」が、ゆれながらすすんでいて、ちょうど「ローソクどっさり号」から投げ返されたひき綱を巻いているところでした。
 船長はひき船に声をかぎりにさけび《、船員たちも、またさけびながら、こんかぎりに綱をひき、帆をあげていました。船は、かたむき、波をきって進みました。海のにおいが,鼻をつきました。》
 《ロビンソンはといえば、ぐるぐる ぐるぐる かけまわり、つんざくようなするどい悲鳴をあげていました、》そのうち、悲鳴が歌にかわりました。
《あわれな ぶたのロビンソン・クルーソー!
ああ、よくも こんなことが できたものだ!
やつらは。あわれなロビンソンを、
おそろしい船に のせてしまった、ああ!
ああ、あわれな
ぶたのロビンソン・クルーソー!」》

 《船員たちは わらいころげ なみだがでるほど わらいました。》
けれども、ロビンソンは、このうたを50回もうたい、かけはしったので、ついにおこられました。コックも、歌をやめないと、ポーク・チョップにしてしまうぞ、とおどかしたので、ロビンソンは気をうしない、《「ローソクどっさり号」のデッキに ひらたくのびてしまったのでした。》

                第7章
《ロビンソンが、船で、ひどいあつかいを受けたなどとは、いっしゅんもおもってはなりません。 まったく、そのはんたいでした。》
農場にいたときよりも ごちそうを食べさせてもらい、やさしくかわいがってもらえたのです。
 ですから、だんだん、ロビンソンは、気がはればれしてきました。元気になり、“船歩き”もじょうずになりました。
そのうち ふとって あるくのさえ おっくうになってしまいました。コックは、いつもロビンソンのために、いやがらず おかゆをつくってくれました。ひきわりトウモロコシとジャガイモがロビンソンを喜ばせようと、特別に用意されているようでした。好きなだけ、食べさせてもらいました。ロビンソンは、ひだまりにゴロリと横になり、気候があたたかくなるにしたがって、《ますますものぐさになっていきました。》
 船員たちは、ごちそうのおこぼれをくれ、背中やお腹をかいてくれました。わきばらに、あつく脂肪がついてしまって、もうくすったいとも 感じませんでした。
 ロビンソンを、おもしろ半分に相手にしないのは、船長とネコだけでした。
ネコの態度は、ロビンソンには理解できませんでした、なにやら秘密めかして、飽食のおそるべき報いとか、口にするのですたが、どんなむくいかは いいませんでした。《ネコは、けっして、よそよそしくはなかったのですが、なんとなく悲しそうな様子をし、預言者めいていました。》
 じつは、ネコは、ラッブランドうまれのフクロウとの愛をはばまれ、なやんでいたのです。フクロウは、アイスランドゆきの船にのせられ、いっぽう、「ローソクどっさり号」は、熱帯へむかっていたのです。
 こういうわけで、ネコは仕事をなまけ、夜も昼も帆桁のうえにいて、月にむかって歌をうたってくらしていました。そして、ときどき、デッキにおりてきて、ロビンソンに忠告を与えるのでした。
 あんまり食べるのが、なぜ いけないのか はっきりいいませんでしたが、ある日づけを口にしました。その日は、船長の誕生日だということでした。
「リンゴソースの用意をしていると、聞いたぞ」ロビンソンは、気にもとめませんでした。と、いうのは、ちょうど2ひきで、きらきら銀色に光る魚の大群を見ていたからです。
《船は なぎで すっかり とまっていました。》
 デッキにあがってきたコックは、魚をみると、ボートをおろし、つりをしました。ねこもボートにとびのりました。
 そのあいだ、ロビンソンは、デッキでのんびり眠っていました。航海士は それをみると「日射病にやられたブタ肉なんてたべたくない。ブタは 日にあててはいけないんだ。」と言って、硬い帆布をロビンソンにかけました。ロビンソンは、あがきましたが、ぬけでられません。
船長があがってきて、望遠鏡と海図で船の位置をたしかめろ、と命令しました。群島のなかに いるはずだと。
「木曜日までに 船長のきげんをなおさなくちゃあ。せっかくのロースト・ポークの味がだいなしになる」と航海士は いいました。
 ボートが帰ってきました。海は たいへん しずかでしたので、そのまま うかばせておこうということになりました。ネコは、望遠鏡をもって、マストを登らせられましたが、なにも見えなかったといいました。
 ところが、それは、まっかなうそでした。海はしずかでしたので、特別に見張りはたてられませんでした。船員たちは、船底でトランプに興じました。
 ネコは、帆布の下でうごくものがあるのに気づきました。めくってみれば、おそろしさで、なみだにくれ、ちじこまったロビンソンでした。ブタ肉の話を聞いてしまったのです。
「《なんども それとなく 注意してやっただろう》さあ、聞け。簡単きわまりない逃げ道があるんだから。
 きみ、ボートをこげる?そう遠くまで行く必要はない。さっきマストにあがったとき、北東の前方にボング樹のこずえが見えた。群島のあいだの海峡は、「ロウソクどっさり号」には浅すぎて通れない。ほかのボートには 穴をあけておこう。忘れないように、いま、やってしまおう。
 さあ、はやく、ぼくの言うとおりにしろ」
ネコは、必要な道具をぜんぶそろえてくれました。そろそろ、船員達がデッキにあがってきはじめました。
 ネコはいそいで、ロビンソンをデッキからおしだし、ロビンソンは綱をつたって、ボートにおりました。
 ついに、ロビンソンが逃げ出したのが、船長にわかってしまいましたが、ほかのボートには、穴があき、おいかけられませんでした。望遠鏡で確認しようとしたのでしたが、消えていました。かしこいネコが、ロビンソンのボートに入れておいたのです。

                 第8章
《ロビンソンは、だんだん「ローソクどっさり号」から、とざかっていきました。うまずたゆまず、オールをぐいとひいてこぎました。オールは、ロビンソンには、とても重く感じられました。太陽が、しずみました。
 けれども、南の海では、たしか―わたしは、いったことはないのですが―水の上に、ほのかな光が、さしているものだと、聞いたことがあります。》
オールを水からひきあげるたびに、水滴が、ダイヤモンドのようにきらめきながら、したたりおちました。
《ほどなく、水平線に月が、のぼりはじめました。まるで大きなおぼんが、はんぶん顔をのぞかせているようでした。
 ロビンソンは、手をやすめ、月の光のなかで、波一つたたない水のうえに、しずかにとまっている「ローソクどっさり号」を見つめました。ちょうどこのときは―船から4ぶんの1マイルのところにあったのですが、―ふたりの水夫が、ロビンソンのボートをデッキから見て、海にかぶとむしがおよいでいると、おもったのです。
 船の上のさわぎは、とおすぎて、ロビンソンには聞こえなかったのですが、やがて、3そうのボートがおろされ、ついせきがはじまりました。おもわずしらず、ロビンソンはキィキィ鳴きはじめ、こんかぎりにボートをこぎました。このレースでは、3そうのボートが負けて、あともどりしていきました。ネコがキリであなをあけておいたことを、おもいだしました。
 《それからは、あわてず、一晩中、しずかにこぎつづけました。》空気がひんやりとして、眠る気がおきませんでした。次の日は暑かったのですが、《帆布の下で、ぐっすり眠りました。》 かんがえぶかいネコがテントを用意していてくれたのです。「ロウソクどっさり号」は視界から消えていきました。
《羅針儀で方向をさだめようと、ふりむいたとたん、どすんと、ボートの底が、砂地にさわりました。でも、さいわいボートは、つっかえたわけではありませんでした。》
 ロビンソンは、たちあがり、1ぽんのオールでこぎながら、まわりを注意深くながめると、まあ、ボング樹のこずえがみえたではありませんか。《30ふんほどこいで、大きな島の海岸につきました。》
 好都合な入り江をみつけ、ボートをつけ、陸におりたちました。銀色の砂浜に、熱い湯の流れる小川が流れ、海岸はカキでおおわれ、木々にはアメやお菓子がなっていました。ヤムイモが、もうちゃんと焼けていました。パンの木には、砂糖のかかったケーキやマフィンが、焼きあがって なっていました。《ここでは、どんなぶたも、おなかが おなかがすくことはないのです。》《あたまのうえに、ひときわ高くボング樹が、そびえています。もう少し、島のようすを詳しく知りたかったら、『ロビンソン・クルーソー』を読んでください。》よく似ているか、いや、それよりも もっと いいくらいです。
 わたしは、この島には行ったことがないのですが、フクロウとネコが1年半後に新婚旅行にいってきて、気候がすばらしかったといっていました。ただ、フクロウには暑すぎたようです。
 また、のちに、スタンピィと小イヌのティプキンズもでかけていきました。ロビンソンは、とても元気で しあわせで、スタイマスに帰る気はまったくないと、いっていたそうです。今も、その島に住んでいます。
 ますます、ふとりにふとり、《「ロウソクどっさり号」のコックには、二度とロビンソンを見つけることはできませんでした。》

              おわり

読んでやるなら 5,6才から
自分で読むなら 小学低学年より

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