裁判員制度
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裁判員制度(さいばんいんせいど)とは、一定の刑事裁判において、国民から事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する日本の司法・裁判制度をいう。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号。以下「法」という。2006年(平成16年)5月21日成立)により規定され、一部の規定を除いて2009年(平成21年)5月21日に施行され、同年7月下旬以降に実際に裁判員が加わる裁判が開始される予定[1]。
[編集] 概要
裁判員制度は、市民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行う制度で、国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることが目的とされている。
裁判員制度が適用される事件は地方裁判所で行われる刑事裁判のうち、殺人罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪など、一定の重大な犯罪についての裁判である。例外として、「裁判員や親族に危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件」は裁判官のみで審理・裁判する(法3条)。被告人に拒否権はない。
裁判は、原則として裁判員6名、裁判官3名の合議体で行われ、被告人が事実関係を争わない事件については、裁判員4名、裁判官1名で審理することが可能な制度となっている(法2条2項、3項)。
裁判員は審理に参加して、裁判官とともに、証拠調べを行い、有罪か無罪かの判断と、有罪の場合の量刑の判断を行うが、法律の解釈についての判断や訴訟手続についての判断など、法律に関する専門知識が必要な事項については裁判官が担当する(法6条)。裁判員は、証人や被告人に質問することができる。有罪判決をするために必要な要件が満たされていると判断するには、合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない(一部立証責任が被告人に転換されている要件が満たされていると判断するためには、無罪判決をするために合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない)。以上の条件が満たされない場合は、評決が成立しない(有罪か無罪かの評決が成立しない場合には、被告人の利益に無罪判決をせざるを得ないと法務省は主張しているが、法令解釈権を持つ裁判所の裁判例、判例はまだ出ていない)。
なお、連続殺人事件のように多数の事件があって、審理に長期間を要すると考えられる事件においては、複数の合議体を設けて、特定の事件について犯罪が成立するかどうか審理する合議体(複数の場合もあり)と、これらの合議体における結果および自らが担当した事件に対する犯罪の成否の結果に基づいて有罪と認められる場合には量刑を決定する合議体を設けて審理する方式も導入される予定である(部分判決制度)。
裁判員制度導入によって、国民の量刑感覚が反映されるなどの効果が期待されるといわれている一方、国民に参加が強制される、国民の量刑感覚に従えば量刑がいわゆる量刑相場を超えて拡散する、公判前整理手続によって争点や証拠が予め絞られるため、現行の裁判官のみによる裁判と同様に徹底審理による真相解明や犯行の動機や経緯にまで立ち至った解明が難しくなるといった問題点が指摘されている。裁判員の負担を軽減するため、事実認定と量刑判断を分離すべきという意見もある。
[編集] 導入の理由と背景
裁判員制度は、「司法制度改革」の一環として、死刑制度に反対する公明党主導で導入された[要出典]。国民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民の信頼向上につながることが目的とされている。
(趣旨)
第一条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律より
類似制度として陪審制と参審制があり、陪審制はアメリカ、イギリス、参審制はフランス、ドイツ、イタリアで行われている。日本も戦前に刑事裁判に限り陪審制が導入されていた時期がある。また、1980年代には東ドイツをはじめとする共産主義国家でも導入されていた。共産圏諸国の行政的動機は、行政のみならず立法権を官僚が事実上掌握した社会において、官僚が制定した法の遂行作業(司法)を国民自身に参加・担当させることで、「ガス抜き」および国民の体制内化をもたらして、官僚支配を不可視にし、政治体制の維持延命を図るものであった[要出典]。
[編集] 対象事件
死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件(法2条1項1号)
法定合議事件(法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関するもの(同項2号)
例えば、外患誘致罪、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪、強姦致死罪、危険運転致死罪、保護責任者遺棄致死など[2]。
ただし、「裁判員や親族に対して危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件[3]」については、対象事件から除外される。報復の予期される暴力団関連事件などが除外事件として想定されている。一方、外患誘致罪なども困難な事件と言えるとの指摘がある[要出典]。
対象事件はいずれも必要的弁護事件である。
最高裁判所によれば、平成17年に日本全国の地方裁判所で受理した事件の概数111,724件のうち、裁判員制度が施行されていれば対象となり得た事件の数は3,629件で、割合は3.2%とされている[4]。
[編集] 裁判員選任手順
各年度ごとに、市町村の選挙管理委員会が、衆議院議員の公職選挙人名簿登録者から「くじ」で翌年度の裁判員候補予定者を選定して「裁判員候補予定者名簿」として地方裁判所に送付する(法21条、22条)。地方裁判所は、裁判員候補予定者名簿を元に、毎年度、「裁判員候補者名簿」を作成し、裁判員候補者名簿に記載された者にその旨を通知する(法23条、25条)。
そして各事件ごとに、地方裁判所において裁判員候補者名簿の中から呼び出すべき裁判員候補者を「くじ」で選定する。この「くじ」に際しては、検察官及び弁護人は立ち会うことができる(法26条)。呼出すべき裁判員候補者として選定された者には、「質問票」と「呼出状」が自宅に送付される(法27条、30条)。
裁判員候補者は、質問票に回答し裁判所に返送する。この質問票においては、欠格事由(義務教育を修了しない者、禁錮以上の刑に処せられた者など。法14条)・就職禁止事由(一定の公務員、法曹など法律関係者、警察官など。法15条)・事件に関連する不適格事由(被告人・被害者の関係者、事件関与者など。法17条)・辞退事由(70歳以上、学生、重要な用務があること、直近の裁判員従事など。法16条)の存否について質問される。
質問票の回答により、明らかに欠格事由、就職禁止事由、事件に関連する不適格事由に該当する場合および辞退を希望して明らかに辞退事由が認められる者については、呼出しが取り消されることもある。
質問票に虚偽の事項を書いた場合には、50万円以下の罰金に処せられるか、または30万円以下の過料が課される(法110条、111条)。また、呼び出されたにもかかわらず、正当な理由なく出頭しない者は、10万円以下の過料が課されることがある(法112条)。
裁判所に呼び出され、出頭した裁判員候補者の中から、非公開で裁判員と補充裁判員が選任される(法33条)。候補者としては、裁判員・補充裁判員として必要な人数を超える人数(現時点では未定)を呼び出すこととなる。裁判長は、裁判員候補者に対し、欠格事由の有無や辞退理由の有無、および不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問を行う。陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、判断のために必要と思う質問を、裁判長が裁判員候補者に対して行うよう求めることができる(法34条)。
裁判所は、この質問の回答に基づいて選任しない者を決定する(法34条4項)。さらに、検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ4人(補充裁判員を置く場合にはこれよりも多くなる。)を限度に理由を示さず不選任請求できる(法36条)。これらの手続を経た上で、裁判所は、裁判員と補充裁判員を選任する決定をする(法37条)。
裁判員の選任手続が終わったら公判に入り、裁判員は裁判官とともに証拠書類・証拠物の検討や、証人尋問、検証、被告人質問等の証拠調べを経て、評議・評決の上、判決成立に関与する。公判開始後も、裁判員について不公平な裁判をするおそれがあるときや裁判から除外すべき場合、検察官、被告人又は弁護人は、裁判所に対し、裁判員の解任を請求できる(法41条)。また、法律問題は裁判官のみによる合議で決定される。
なお、裁判員に選任される確率については、平成17年の統計値を基にした場合、年間約3500人に1人になると試算されている(裁判員候補者として呼び出される確率はこれより高くなる)。
[編集] 合議体の構成
原則、裁判官3名、裁判員6名の計9名で構成する(法2条2項)。
ただし、公訴事実について争いがないと認められるような事件(自白事件)については、裁判官1名、裁判員4名の5名の合議体で裁判することも可能である(法2条3項)。
[編集] 裁判員の権限
裁判員は、有罪判決若しくは無罪判決または少年事件において保護処分が適当と認める場合の家庭裁判所への移送決定の裁判をするに当たって、事実の認定、法令の適用、刑の量定について裁判官と共に合議体を構成して裁判をする権限を有する(法6条1項)。
評決に当たっては、構成裁判官及び裁判員の双方を含む過半数の賛成を必要とする(法67条1項)。
なお、構成裁判官及び裁判員の双方の過半数を得られない場合、挙証責任を有する者に不利な判断が下されたものとして扱うほかないと考えられている。例えば、裁判官3名と裁判員1名が犯罪は成立する、裁判員5名が犯罪は成立しないと判断した場合、犯罪の成否に関する事実については、一部の例外を除いて検察官が立証責任を負うので、この場合、犯罪の証明がないとして無罪として扱うこととなるものと考えられる。英米のように、評決不能(hung jury)として、裁判をやり直すわけではない。
ただし、刑の量定について、意見が分かれ、構成裁判官及び裁判員の双方を含む過半数の一致ができないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数になるまで、被告人にとって最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による(法67条2項)。
なお、法令の解釈に係る判断、訴訟手続に関する判断(保護処分が適当な場合への家裁への移送決定をなす場合は除く)、その他裁判員の関与する判断以外の判断は裁判官のみの合議による(法6条2項)。
もっとも、裁判所は、裁判員の関与する判断以外の判断をするための審理以外の審理についても、裁判員及び補充裁判員の立会いを許すことができ(法60条)、その評議についても裁判員に傍聴を許し、その判断について裁判員の意見を聴くことができる(法68条)。
[編集] 裁判員が負う義務
出廷義務
裁判員及び補充裁判員は、公判期日や、証人尋問・検証が行われる公判準備の場に出廷しなければならない。正当な理由なく出廷しない場合、10万円以下の過料が課される(法112条)。また、評議に出席し、意見を述べなければならない(評議参加者全員の意見が必要なため。議論が進む中で、気付いた範囲で、自由に意見を述べればよい)。
守秘義務
裁判員は、評議の経過や、それぞれの裁判官・裁判員の意見やその多少の数(「評議の秘密」という。)その他「職務上知り得た秘密」を漏らしてはならない。この義務は、裁判終了後も生涯に渡って負う。裁判員が、評議の秘密や職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される(法108条)。
[編集] 裁判員等の日当等
裁判員、補充裁判員及び裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者に対しては、旅費、日当及び宿泊料が支給される(法11条、29条2項)。
旅費は、鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の4種であり、それぞれ裁判員の参加する刑事裁判に関する規則に定められた計算方法により算定される。
日当は、出頭又は職務及びそれらのための旅行に必要な日数に応じて支給され、裁判員及び補充裁判員については1日当たり1万円以内において、裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については1日当たり8000円以内において、裁判所が定めるものとされている(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条)。
宿泊料は、出頭等に必要な夜数に応じて支給され、1夜当たり8700円ないし7800円と定められている(同規則8条)。
[編集] 区分審理
連続殺人事件や無差別大量殺人事件などのように、多数の事件を1人の被告人が起こした場合においては、審理が長期化するおそれがあり、裁判員が長期間審理に携わることは困難である。そこで、裁判所は、併合事件(複数の事件を一括して審理している事件)について、事件を区分して、区分した事件ごとに合議体を設けて、順次、審理することができる。ただし、犯罪の証明に支障を生じるおそれがあるとき、被告人の防御に不利益な場合などは区分審理決定を行うことはできない(法71条)。
この場合、あらかじめ2回目以降に行われる区分審理審判または併合事件審判に加わる予定の裁判員または補充裁判員である選任予定裁判員を選任することができる。
区分審理決定がされると、その区分された事件についての犯罪の成否が判断され、部分判決がなされる。部分判決では犯罪の成否のみ判断が下され、量刑については判断を行わない。ただし、有罪とする場合において情状事実については部分判決で示すことができる。この手続を区分審理審判という。
そして、すべての区分審理審判が終了後、区分審理に付されなかった事件の犯罪の成否と併合事件全体の裁判を行う。すなわち、ここの合議体では残された事件の犯罪の成否と既になされた部分判決に基づいて量刑を決定することとなる。なお、この審判を併合事件審判という。
そして、裁判員はそれぞれ1つの区分審理審判または併合事件審判にしか加わらないので、裁判員を長期に拘束する必要がなくなり負担軽減につながるとされている。もっとも、裁判官は原則として事件全体に関与するので、裁判員と裁判官の間の情報格差が審理に影響を及ぼすのではないかと懸念する声もある。
[編集] 裁判員裁判を行う裁判所
裁判員裁判を行う裁判所は、原則として地方裁判所の本庁で行う(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則2条)。ただし、次に掲げる地裁支部においては、裁判員裁判を行う。
福島地裁郡山支部
東京地裁八王子支部
横浜地裁小田原支部
静岡地裁沼津支部
静岡地裁浜松支部
長野地裁松本支部
名古屋地裁岡崎支部
大阪地裁堺支部
神戸地裁姫路支部
福岡地裁小倉支部
[編集] 制度に関して指摘される問題点と対応
刑事裁判に国民を参加させることで司法に対する国民の信頼を増進するとの目的で法制化された制度であるが、従来になかった「抽選で本人の意思に関わりなく裁判員候補者を呼び出し、裁判員を選任する」という性質上、問題点が指摘されている。
[編集] 裁判員への参加強制
裁判員をやりたくない人を強制的に参加させることは「意に反する苦役」を課すものとして憲法違反(18条)ではないかとの主張
法務省は「憲法でいうところの苦役にはあたらない」とし(平成16年5月11日、参議院法務委員会での政府答弁)、裁判員制度が「裁判の内容に国民の感覚が反映されるということにより、司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上が図られ、司法がより強固な国民的な基盤を得るということができるようにするための重要な意義を有する制度」であることを強調する。また、義務履行の担保としては刑事罰や直接強制によることなく、秩序罰たる「過料」を課すにとどめており、一定のやむを得ない事由がある場合には裁判員となることを辞退する制度を設けていることから、裁判員制度の実施のために必要最小限のものということができるとする。原則として辞退はできないが、辞退の要件なども踏まえつつ、個々のケースによって裁判所が適宜判断をする。
以下に該当するものは証明書提出により候補を辞退できる。
70歳以上
地方自治体の議員(会期中に限る)
学生や生徒(通信制の場合等は除く)
過去5年間に裁判員を経験
重い病気
親族の介護・養育
その他政令で定める上記に準ずる事由
病気で辞任できるが、精神病で悪化する可能性を否定できない病気(鬱病等)の場合も出席しなければならないのか。出席しなくて良い場合、裁判員逃れのために病院で虚偽報告し、病気と判断してもらうこと(精神病の場合外見的に検証が難しいため、知識の無いものでも容易に出来てしまう)が可能となり、問題となる。
裁判員となることで病気が悪化する場合は裁判員から除外されることが制度として予定されている。違法行為により裁判員候補から除外されることを求める者を、あえて裁判員にする必要はない。
その他、通院を伴わない風邪による欠席(証明書が提出できない)、仮病を使われた場合、遅刻の場合の扱いなど、法律で決められていないものも多い。
戦前、戦時中の赤紙(召集令状)との共通点として、権力機関による強制徴用(呼出)、不適格事由(免除)、罰金(過料)、市町村による名簿作成、旅費支給などがある。軍事的紛争と法的紛争の違いはあるものの、人命などに関わる重大な紛争の当事者を時に死に追いやる行為への強制参加という点、良心的兵役拒否にあたる制度(良心的裁判員拒否制度)が無い点も共通している。司法制度改革推進本部の資料にも裁判員制度を徴兵制に例える意見がある[5]。
[編集] 裁判員の匿名性・安全の確保
裁判員の氏名が、被告人や他の裁判員に知られることで危害が加えられることへの不安
裁判手続において被告人に裁判員氏名が開示されることはなく、裁判員相互も氏名は開示されない。事件について知るために裁判員(又は裁判員であった者)へ接触することも禁じられる。
裁判員(または裁判員であった者)の氏名を漏示すること(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、また、裁判員等(又は裁判員であった者、その親族)を威迫すること(2年以下の懲役又は20万円以下の罰金)は、それぞれ罰則をもって禁じられている。
氏名非公表としても、顔を出すこと自体不安とする声もある。裁判員の顔は他の裁判員に見られる(同じ室内で同席するため顔を見られることが避けられない)。また、被告人にも見られる。
勤務先に申告して参加する場合、裁判員になったことを勤務先に知られてしまうことは避けられず、第三者に知られてしまう。
その種の行為は、法律で禁止されている(法72条)。
しかし、世間には違法な情報や他人に知られたくない情報を独自のルートで調べ、利益を上げている違法闇業者(情報屋)もあり、実際に警察に摘発された例もあるため、法律で禁止されているだけでは絶対的に安心とはいえないという意見もある。
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この項目は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談くだuttenn さい。免責事項もお読みください。
この項目は予定される事象を扱っています。予想を記載するなど性急な編集をせず、正確な記述を心がけてください。この内容は不特定多数のボランティアにより自由に編集されていることを踏まえ、自身の安全利害に関わる情報は自己責任でご判断ください。
裁判員制度(さいばんいんせいど)とは、一定の刑事裁判において、国民から事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する日本の司法・裁判制度をいう。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号。以下「法」という。2006年(平成16年)5月21日成立)により規定され、一部の規定を除いて2009年(平成21年)5月21日に施行され、同年7月下旬以降に実際に裁判員が加わる裁判が開始される予定[1]。
[編集] 概要
裁判員制度は、市民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行う制度で、国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることが目的とされている。
裁判員制度が適用される事件は地方裁判所で行われる刑事裁判のうち、殺人罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪など、一定の重大な犯罪についての裁判である。例外として、「裁判員や親族に危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件」は裁判官のみで審理・裁判する(法3条)。被告人に拒否権はない。
裁判は、原則として裁判員6名、裁判官3名の合議体で行われ、被告人が事実関係を争わない事件については、裁判員4名、裁判官1名で審理することが可能な制度となっている(法2条2項、3項)。
裁判員は審理に参加して、裁判官とともに、証拠調べを行い、有罪か無罪かの判断と、有罪の場合の量刑の判断を行うが、法律の解釈についての判断や訴訟手続についての判断など、法律に関する専門知識が必要な事項については裁判官が担当する(法6条)。裁判員は、証人や被告人に質問することができる。有罪判決をするために必要な要件が満たされていると判断するには、合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない(一部立証責任が被告人に転換されている要件が満たされていると判断するためには、無罪判決をするために合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない)。以上の条件が満たされない場合は、評決が成立しない(有罪か無罪かの評決が成立しない場合には、被告人の利益に無罪判決をせざるを得ないと法務省は主張しているが、法令解釈権を持つ裁判所の裁判例、判例はまだ出ていない)。
なお、連続殺人事件のように多数の事件があって、審理に長期間を要すると考えられる事件においては、複数の合議体を設けて、特定の事件について犯罪が成立するかどうか審理する合議体(複数の場合もあり)と、これらの合議体における結果および自らが担当した事件に対する犯罪の成否の結果に基づいて有罪と認められる場合には量刑を決定する合議体を設けて審理する方式も導入される予定である(部分判決制度)。
裁判員制度導入によって、国民の量刑感覚が反映されるなどの効果が期待されるといわれている一方、国民に参加が強制される、国民の量刑感覚に従えば量刑がいわゆる量刑相場を超えて拡散する、公判前整理手続によって争点や証拠が予め絞られるため、現行の裁判官のみによる裁判と同様に徹底審理による真相解明や犯行の動機や経緯にまで立ち至った解明が難しくなるといった問題点が指摘されている。裁判員の負担を軽減するため、事実認定と量刑判断を分離すべきという意見もある。
[編集] 導入の理由と背景
裁判員制度は、「司法制度改革」の一環として、死刑制度に反対する公明党主導で導入された[要出典]。国民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民の信頼向上につながることが目的とされている。
(趣旨)
第一条 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律より
類似制度として陪審制と参審制があり、陪審制はアメリカ、イギリス、参審制はフランス、ドイツ、イタリアで行われている。日本も戦前に刑事裁判に限り陪審制が導入されていた時期がある。また、1980年代には東ドイツをはじめとする共産主義国家でも導入されていた。共産圏諸国の行政的動機は、行政のみならず立法権を官僚が事実上掌握した社会において、官僚が制定した法の遂行作業(司法)を国民自身に参加・担当させることで、「ガス抜き」および国民の体制内化をもたらして、官僚支配を不可視にし、政治体制の維持延命を図るものであった[要出典]。
[編集] 対象事件
死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件(法2条1項1号)
法定合議事件(法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関するもの(同項2号)
例えば、外患誘致罪、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪、強姦致死罪、危険運転致死罪、保護責任者遺棄致死など[2]。
ただし、「裁判員や親族に対して危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件[3]」については、対象事件から除外される。報復の予期される暴力団関連事件などが除外事件として想定されている。一方、外患誘致罪なども困難な事件と言えるとの指摘がある[要出典]。
対象事件はいずれも必要的弁護事件である。
最高裁判所によれば、平成17年に日本全国の地方裁判所で受理した事件の概数111,724件のうち、裁判員制度が施行されていれば対象となり得た事件の数は3,629件で、割合は3.2%とされている[4]。
[編集] 裁判員選任手順
各年度ごとに、市町村の選挙管理委員会が、衆議院議員の公職選挙人名簿登録者から「くじ」で翌年度の裁判員候補予定者を選定して「裁判員候補予定者名簿」として地方裁判所に送付する(法21条、22条)。地方裁判所は、裁判員候補予定者名簿を元に、毎年度、「裁判員候補者名簿」を作成し、裁判員候補者名簿に記載された者にその旨を通知する(法23条、25条)。
そして各事件ごとに、地方裁判所において裁判員候補者名簿の中から呼び出すべき裁判員候補者を「くじ」で選定する。この「くじ」に際しては、検察官及び弁護人は立ち会うことができる(法26条)。呼出すべき裁判員候補者として選定された者には、「質問票」と「呼出状」が自宅に送付される(法27条、30条)。
裁判員候補者は、質問票に回答し裁判所に返送する。この質問票においては、欠格事由(義務教育を修了しない者、禁錮以上の刑に処せられた者など。法14条)・就職禁止事由(一定の公務員、法曹など法律関係者、警察官など。法15条)・事件に関連する不適格事由(被告人・被害者の関係者、事件関与者など。法17条)・辞退事由(70歳以上、学生、重要な用務があること、直近の裁判員従事など。法16条)の存否について質問される。
質問票の回答により、明らかに欠格事由、就職禁止事由、事件に関連する不適格事由に該当する場合および辞退を希望して明らかに辞退事由が認められる者については、呼出しが取り消されることもある。
質問票に虚偽の事項を書いた場合には、50万円以下の罰金に処せられるか、または30万円以下の過料が課される(法110条、111条)。また、呼び出されたにもかかわらず、正当な理由なく出頭しない者は、10万円以下の過料が課されることがある(法112条)。
裁判所に呼び出され、出頭した裁判員候補者の中から、非公開で裁判員と補充裁判員が選任される(法33条)。候補者としては、裁判員・補充裁判員として必要な人数を超える人数(現時点では未定)を呼び出すこととなる。裁判長は、裁判員候補者に対し、欠格事由の有無や辞退理由の有無、および不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問を行う。陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、判断のために必要と思う質問を、裁判長が裁判員候補者に対して行うよう求めることができる(法34条)。
裁判所は、この質問の回答に基づいて選任しない者を決定する(法34条4項)。さらに、検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ4人(補充裁判員を置く場合にはこれよりも多くなる。)を限度に理由を示さず不選任請求できる(法36条)。これらの手続を経た上で、裁判所は、裁判員と補充裁判員を選任する決定をする(法37条)。
裁判員の選任手続が終わったら公判に入り、裁判員は裁判官とともに証拠書類・証拠物の検討や、証人尋問、検証、被告人質問等の証拠調べを経て、評議・評決の上、判決成立に関与する。公判開始後も、裁判員について不公平な裁判をするおそれがあるときや裁判から除外すべき場合、検察官、被告人又は弁護人は、裁判所に対し、裁判員の解任を請求できる(法41条)。また、法律問題は裁判官のみによる合議で決定される。
なお、裁判員に選任される確率については、平成17年の統計値を基にした場合、年間約3500人に1人になると試算されている(裁判員候補者として呼び出される確率はこれより高くなる)。
[編集] 合議体の構成
原則、裁判官3名、裁判員6名の計9名で構成する(法2条2項)。
ただし、公訴事実について争いがないと認められるような事件(自白事件)については、裁判官1名、裁判員4名の5名の合議体で裁判することも可能である(法2条3項)。
[編集] 裁判員の権限
裁判員は、有罪判決若しくは無罪判決または少年事件において保護処分が適当と認める場合の家庭裁判所への移送決定の裁判をするに当たって、事実の認定、法令の適用、刑の量定について裁判官と共に合議体を構成して裁判をする権限を有する(法6条1項)。
評決に当たっては、構成裁判官及び裁判員の双方を含む過半数の賛成を必要とする(法67条1項)。
なお、構成裁判官及び裁判員の双方の過半数を得られない場合、挙証責任を有する者に不利な判断が下されたものとして扱うほかないと考えられている。例えば、裁判官3名と裁判員1名が犯罪は成立する、裁判員5名が犯罪は成立しないと判断した場合、犯罪の成否に関する事実については、一部の例外を除いて検察官が立証責任を負うので、この場合、犯罪の証明がないとして無罪として扱うこととなるものと考えられる。英米のように、評決不能(hung jury)として、裁判をやり直すわけではない。
ただし、刑の量定について、意見が分かれ、構成裁判官及び裁判員の双方を含む過半数の一致ができないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数になるまで、被告人にとって最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による(法67条2項)。
なお、法令の解釈に係る判断、訴訟手続に関する判断(保護処分が適当な場合への家裁への移送決定をなす場合は除く)、その他裁判員の関与する判断以外の判断は裁判官のみの合議による(法6条2項)。
もっとも、裁判所は、裁判員の関与する判断以外の判断をするための審理以外の審理についても、裁判員及び補充裁判員の立会いを許すことができ(法60条)、その評議についても裁判員に傍聴を許し、その判断について裁判員の意見を聴くことができる(法68条)。
[編集] 裁判員が負う義務
出廷義務
裁判員及び補充裁判員は、公判期日や、証人尋問・検証が行われる公判準備の場に出廷しなければならない。正当な理由なく出廷しない場合、10万円以下の過料が課される(法112条)。また、評議に出席し、意見を述べなければならない(評議参加者全員の意見が必要なため。議論が進む中で、気付いた範囲で、自由に意見を述べればよい)。
守秘義務
裁判員は、評議の経過や、それぞれの裁判官・裁判員の意見やその多少の数(「評議の秘密」という。)その他「職務上知り得た秘密」を漏らしてはならない。この義務は、裁判終了後も生涯に渡って負う。裁判員が、評議の秘密や職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される(法108条)。
[編集] 裁判員等の日当等
裁判員、補充裁判員及び裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者に対しては、旅費、日当及び宿泊料が支給される(法11条、29条2項)。
旅費は、鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の4種であり、それぞれ裁判員の参加する刑事裁判に関する規則に定められた計算方法により算定される。
日当は、出頭又は職務及びそれらのための旅行に必要な日数に応じて支給され、裁判員及び補充裁判員については1日当たり1万円以内において、裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については1日当たり8000円以内において、裁判所が定めるものとされている(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条)。
宿泊料は、出頭等に必要な夜数に応じて支給され、1夜当たり8700円ないし7800円と定められている(同規則8条)。
[編集] 区分審理
連続殺人事件や無差別大量殺人事件などのように、多数の事件を1人の被告人が起こした場合においては、審理が長期化するおそれがあり、裁判員が長期間審理に携わることは困難である。そこで、裁判所は、併合事件(複数の事件を一括して審理している事件)について、事件を区分して、区分した事件ごとに合議体を設けて、順次、審理することができる。ただし、犯罪の証明に支障を生じるおそれがあるとき、被告人の防御に不利益な場合などは区分審理決定を行うことはできない(法71条)。
この場合、あらかじめ2回目以降に行われる区分審理審判または併合事件審判に加わる予定の裁判員または補充裁判員である選任予定裁判員を選任することができる。
区分審理決定がされると、その区分された事件についての犯罪の成否が判断され、部分判決がなされる。部分判決では犯罪の成否のみ判断が下され、量刑については判断を行わない。ただし、有罪とする場合において情状事実については部分判決で示すことができる。この手続を区分審理審判という。
そして、すべての区分審理審判が終了後、区分審理に付されなかった事件の犯罪の成否と併合事件全体の裁判を行う。すなわち、ここの合議体では残された事件の犯罪の成否と既になされた部分判決に基づいて量刑を決定することとなる。なお、この審判を併合事件審判という。
そして、裁判員はそれぞれ1つの区分審理審判または併合事件審判にしか加わらないので、裁判員を長期に拘束する必要がなくなり負担軽減につながるとされている。もっとも、裁判官は原則として事件全体に関与するので、裁判員と裁判官の間の情報格差が審理に影響を及ぼすのではないかと懸念する声もある。
[編集] 裁判員裁判を行う裁判所
裁判員裁判を行う裁判所は、原則として地方裁判所の本庁で行う(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則2条)。ただし、次に掲げる地裁支部においては、裁判員裁判を行う。
福島地裁郡山支部
東京地裁八王子支部
横浜地裁小田原支部
静岡地裁沼津支部
静岡地裁浜松支部
長野地裁松本支部
名古屋地裁岡崎支部
大阪地裁堺支部
神戸地裁姫路支部
福岡地裁小倉支部
[編集] 制度に関して指摘される問題点と対応
刑事裁判に国民を参加させることで司法に対する国民の信頼を増進するとの目的で法制化された制度であるが、従来になかった「抽選で本人の意思に関わりなく裁判員候補者を呼び出し、裁判員を選任する」という性質上、問題点が指摘されている。
[編集] 裁判員への参加強制
裁判員をやりたくない人を強制的に参加させることは「意に反する苦役」を課すものとして憲法違反(18条)ではないかとの主張
法務省は「憲法でいうところの苦役にはあたらない」とし(平成16年5月11日、参議院法務委員会での政府答弁)、裁判員制度が「裁判の内容に国民の感覚が反映されるということにより、司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上が図られ、司法がより強固な国民的な基盤を得るということができるようにするための重要な意義を有する制度」であることを強調する。また、義務履行の担保としては刑事罰や直接強制によることなく、秩序罰たる「過料」を課すにとどめており、一定のやむを得ない事由がある場合には裁判員となることを辞退する制度を設けていることから、裁判員制度の実施のために必要最小限のものということができるとする。原則として辞退はできないが、辞退の要件なども踏まえつつ、個々のケースによって裁判所が適宜判断をする。
以下に該当するものは証明書提出により候補を辞退できる。
70歳以上
地方自治体の議員(会期中に限る)
学生や生徒(通信制の場合等は除く)
過去5年間に裁判員を経験
重い病気
親族の介護・養育
その他政令で定める上記に準ずる事由
病気で辞任できるが、精神病で悪化する可能性を否定できない病気(鬱病等)の場合も出席しなければならないのか。出席しなくて良い場合、裁判員逃れのために病院で虚偽報告し、病気と判断してもらうこと(精神病の場合外見的に検証が難しいため、知識の無いものでも容易に出来てしまう)が可能となり、問題となる。
裁判員となることで病気が悪化する場合は裁判員から除外されることが制度として予定されている。違法行為により裁判員候補から除外されることを求める者を、あえて裁判員にする必要はない。
その他、通院を伴わない風邪による欠席(証明書が提出できない)、仮病を使われた場合、遅刻の場合の扱いなど、法律で決められていないものも多い。
戦前、戦時中の赤紙(召集令状)との共通点として、権力機関による強制徴用(呼出)、不適格事由(免除)、罰金(過料)、市町村による名簿作成、旅費支給などがある。軍事的紛争と法的紛争の違いはあるものの、人命などに関わる重大な紛争の当事者を時に死に追いやる行為への強制参加という点、良心的兵役拒否にあたる制度(良心的裁判員拒否制度)が無い点も共通している。司法制度改革推進本部の資料にも裁判員制度を徴兵制に例える意見がある[5]。
[編集] 裁判員の匿名性・安全の確保
裁判員の氏名が、被告人や他の裁判員に知られることで危害が加えられることへの不安
裁判手続において被告人に裁判員氏名が開示されることはなく、裁判員相互も氏名は開示されない。事件について知るために裁判員(又は裁判員であった者)へ接触することも禁じられる。
裁判員(または裁判員であった者)の氏名を漏示すること(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、また、裁判員等(又は裁判員であった者、その親族)を威迫すること(2年以下の懲役又は20万円以下の罰金)は、それぞれ罰則をもって禁じられている。
氏名非公表としても、顔を出すこと自体不安とする声もある。裁判員の顔は他の裁判員に見られる(同じ室内で同席するため顔を見られることが避けられない)。また、被告人にも見られる。
勤務先に申告して参加する場合、裁判員になったことを勤務先に知られてしまうことは避けられず、第三者に知られてしまう。
その種の行為は、法律で禁止されている(法72条)。
しかし、世間には違法な情報や他人に知られたくない情報を独自のルートで調べ、利益を上げている違法闇業者(情報屋)もあり、実際に警察に摘発された例もあるため、法律で禁止されているだけでは絶対的に安心とはいえないという意見もある。