とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

裁判員制度 2

2008年07月26日 19時41分35秒 | 時事問題(日本)
[編集] 裁判員の秘密保持義務に関する問題
裁判員として「評議の秘密」と「その他職務上知り得た秘密」について、終生の秘密保持義務を負い、違反には刑事罰が規定されている。刑事罰による威嚇の下で、「墓場まで持って行く秘密」を「くじ」で選ばれた一般国民が負わされること自体、過重な義務であると批判がある。
守秘義務の程度は、通常の公務員が職務上知りえた秘密に関して負う守秘義務と同程度であり、過重とは言えない。
しかし、公務員になるのは自らの意思によってであるが、裁判員になるのは自らの意思ではないため、一般国民にとっては大きな負担になるという指摘もある。
裁判員の守秘義務の目的は、評議における裁判員の自由な意見表明を可能にすることにある上、守秘義務があることにより、裁判員に対する不当な接触や関係者からの報復の防止が図られ、裁判員自身のプライバシーや身体の保護につながると考えられることから、裁判員自身もお互いがかかる義務を履行することを望むものと予想される。
「その他職務上知り得た秘密」について、法務省の説明によれば、「刑事裁判で見聞きした証拠のうち、他人のプライバシーに関わる情報など他人に知られたくないような情報を指す」が、「公判で行われた質問は含まれない」とされる。公開証拠と非公開証拠の区別が困難な一般人にとって、「秘密」の内容が不明確であることから、秘密保持義務について不安を招いている。
評議内容、プライバシーを漏らさないよう配慮すれば、裁判員の職務や裁判制度について感想を述べることは自由、と法務省は説明。
不明確な規定によって刑罰を定めることには、罪刑法定主義との関係で問題がある。

[編集] 裁判員相互の問題
裁判所での議論は「口頭」で行われるため、威勢の強い者が多く発言し、口下手な人、他人とのコミュニケーションが苦手な人が思ったことを発言できなくなるおそれがあるとの主張
威圧感を与える意図がなくとも、外見により他の裁判員に威圧感・恐怖感を与える可能性があるとの主張
法は「裁判長は、評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない」と定める。各裁判員が十分意見を言えるよう、裁判官は配慮しなければならないとしている。
ただし、口べた云々は個人の資質の問題であり、法や制度が関与できることではないし、すべきことでもないという考え方もある。しかし、評議に参加させる意図を持って裁判員として徴用しているのであるから、裁判長は口下手な人も充分に議論に参加し、意見が述べられるように配慮しなければならないとされている。
ちなみに、職業裁判官の場合は最高裁の人事評価によって統制され、上級審による逆転判決を恐れる傾向もあることから、裁判員に比べてみずからの意見を自由に表明することは困難であることが指摘されている。また、袴田事件で有罪判決を書いた元裁判官熊本典道は、自分は無罪と考え死刑判決に反対したが、結局、押し切られて有罪判決を書かされたと2007年になって告白している。

[編集] 裁判員の資質の問題
明らかにやる気のない裁判員への対処はどうするのか。裁判員制度のモデルの一つである参審員制度が存在するドイツでは酒に酔った状態で裁判に参加した参審員がいた。そのためその日は裁判ができず延期された。また、陪審員制度のアメリカで、殺人事件の裁判でどうしても事件の審理に興味が持てなかった陪審員の一人が審理中に居眠りをし、その場で陪審員を解任された。また、陪審選任手続の際、選任されたくない者が、質問票に「人種差別主義者である」「男性(女性)優位主義者である」「陪審裁判を行なうまでもなく、被告人を有罪(無罪)と確信している」といった回答を行い、選任手続段階で逃れようとする者も少なくない(しかし、法廷戦略上、被告人に有利もしくは不利な評決を狙い、あえてこのような回答をした候補者を選任しようとする弁護士や検察官もいるため、逆効果になることもある)。
裁判員が義務である以上、裁判長は各裁判員が積極的に参加するために必要な措置を行う。やむを得ない場合は、裁判長がその裁判員を解任して審理を続行する(法41条)。
なお、日本の現行制度でも公判中に裁判官や検察官が居眠りをしているところを目撃された例もあり、「やる気」の問題は裁判員に限られない。
裁判員として評議の場に出席した上で、裁判の内容に関心を示さず全く発言しないこと自体は、とくに違法ではない。
海外にも裁判員制度(又は類似した制度)を採用している国は存在するが、多忙なビジネスマンは不参加が多く、結果的に参加者の多くは暇を持て余している専業主婦や年金生活者となる傾向がある。欧州には罰金を払ってでも参加を拒否するビジネスマンもいる。
裁判員として職務を拒むことができる事由は限定されている。専業主婦や年金生活者がビジネスマンに比べて裁判員としての資質に欠けるとはいえない。しかし、様々な職種の裁判員が集まらなければ、真の市民(一般)感覚を取り入れた裁判とは言えず、従来の裁判官が専業主婦や年金生活者に代わっただけという結果では裁判員制度の意味がないという指摘もある。
金銭のやり取りによって結託し、判決を操作する可能性がある。
裁判官3名、裁判員6名からなる合議体で、少なくとも裁判官1名を含む5人の一致によらなければ評決がなされないから、買収危険性は現在の職業裁判官に比べて高いと言えない。
買収など違法行為については、取締りにより対処すべき。
裁判という高い専門性、立法趣旨を理解する高度な洞察力、法解釈には客観的論理性が要求される制度に素人が参加することへの不安。
法令解釈に関する判断、訴訟手続に関する判断は、裁判員は参加せず、裁判官の合議により決定。
一般感覚を裁判に導入するのが裁判員制度の目的で、素人性は否定されるべきものではない。とされているが、(裁判官から簡単な法律の説明があるとはいえ、)法律に無知なことと一般感覚(素人性)は似て非なる全くの別物であり、ある程度の法学力は必要である。とする説もあり、この点については様々な意見がある。

[編集] 不利益な扱いの問題
法は「労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと」などを理由として「不利益な取扱いをしてはならない。」と定めているが、裁判員となった者が昇進を遅延させられる、解雇されるなどの不利益を課された場合、その救済は困難である。不利益な扱いを受けたことの立証責任は労働者側にあり、また会社を訴えること自体が本人にとってマイナス評価になりかねないとのおそれがあるためである。
この点は、裁判員制度特有のものでない。
「裁判員制度の円滑な実施のための行動計画」では、「労働者が裁判員の職務を行う場合が労働基準法7条の公の職務に該当する旨の通達を発出し、使用者は労働者が裁判員の職務に必要な時間を請求した場合に拒んではならないことについて周知を行うとともに、裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止を徹底する。また、裁判員制度が円滑に実施されるためには、裁判員の職務に対応した休暇制度導入など、労使の自主的取り組みが促進され、労働者が裁判員として刑事裁判に参加しやすい環境が整備されることが重要であるため、法務省、厚生労働省及び最高裁判所が連携して必要な施策を実施する。」としている。
しかし、西野喜一氏著書『裁判員制度の正体』によれば現実社会でこのような不利益な取扱いを受けないことを保障するものではない。そのため、上記のような努力目標的な対策では実効性は疑問視される。

[編集] 休暇について
裁判員の職務に就いている間の休暇及び給与の扱いについては、運用については個別の企業に判断がゆだねられている。

従業員が少ない零細企業においては、人手が取られてしまうことによる負担感が大きく、事業活動に支障が出ることが懸念されている[6]。

一方、ある程度の規模以上の企業においては、例えばトヨタや東京電力が裁判員制度専用の有給休暇制度を導入するなど、休暇制度を整える動きが広がっている[6]。


[編集] 職務遂行により疾病に陥る恐れ
刑事裁判の証拠資料としての残酷な写真を見なければならないことで、裁判員がPTSD(心的外傷後ストレス障害)等に陥る可能性があるとの主張
制度導入を否定すべきものではなく、ケアなどを検討すべき問題である。しかし裁判員には守秘義務があるので、「評議の秘密」と「その他職務上知り得た秘密」を他人に話すことができない。よって苦悩や葛藤を打ち明けることができず、十分なケアを受けられない可能性がある。

[編集] 障害者の参加
障害者等の参加が困難であるとの主張
制度導入を否定した場合は、障害者のみならず健常者も参加できなくなるから、障害者参加に必要な措置を検討すべき問題。視覚障害の場合点字資料を用意することが考えられる。

[編集] 被告人の権利
被告人には裁判員裁判を拒否する権利はない。裁判員制度は被告人のための制度ではないからである。この点は欧米の陪審員制度などと全く異なる。
裁判員が法律の素人であること、性別、年齢、容姿、社会的地位に影響され偏見を持ちやすいことなどで被告人が公正な裁判を受けられなくなるという指摘もある。
しかし、その根拠となる職業裁判官と市民を比較した調査が行われたことはない。
米国などの陪審制についての研究では、職業裁判官に比べて市民である陪審員は、検察官に対してより高度の立証を求める傾向があること、したがって無罪判決が増える傾向があることが統計数字などをもとに指摘されている。
被告人が、権利として職業裁判官による裁判を保障されているわけではなく、公正な裁判内容は制度で規定される。また、裁判員制度導入で不公正になるとはいえない。
なお、有罪率99%を超える現行制度のもとで無罪判決を書いたことがないという職業裁判官も多数に上ることから、職業裁判官にこそ「被告人は有罪」という先入観が生じているではないかという指摘もある。
裁判員制度が目指す迅速審理は、拙速な審理になる恐れがある。
ただし裁判を2年以内のできるだけ短い期間内に終わらせることを目指す裁判迅速化法は、2003年に制定されており、拙速審理の危険は裁判員制度導入のみによって発生したものとは言えない。
裁判員制度導入も理由の一つとされる公判前整理手続では、手続後に被告に有利な証拠・証人が出ても、採用が制限される。
この問題は、強制捜査権やその結果得られた証拠などの管理権を裁判所から一方の当事者にすぎない検察官に移した戦後刑訴法制定の結果、戦後新たに生じた問題であり、日弁連などでは検察官手持ち証拠の事前、全面開示を要求している。したがってこの問題は、厳密には裁判員制度による問題ではなく現行刑訴法の問題である。
証拠・証人が「やむを得ない事由によって公判前整理手続において請求できなかったもの」である場合、証拠調べを請求できる(刑事訴訟法316条の32第1項)。また、裁判所が必要と認めるとき、職権で証拠調べできる(同条第2項)。しかし、同様の規定がある現在の控訴審で極めて限定的な解釈が取られており、裁判員裁判でも同様に制限的に運用される可能性は大きい。結局、現行制度、裁判員制度に共通する問題である。

[編集] 権力と一体化したメディアスクラムの可能性
一般人が裁判員となると情報操作への抵抗力がないうえ、感情的になりがちなため、今まで以上に裁判におけるメディアの影響力が大きくなり、メディアによる世論操作での判決操作も大きくなるという主張もある。
職業裁判官制度では職業裁判官の自覚にのみ頼るが、陪審員制度では陪審員をメディアの犯人視報道から隔離するためメディアへの接触の禁止などの手段がとられている。イギリスでは予断を与えるような事件報道は法廷侮辱罪により規制されている。
世間に単一メディアのみが存在するわけでなく、問題となるのは多数メディアが一致して故意に世論操作する可能性があるのであって、それは限定的場面に過ぎないため、メディアが権力と一体化する蓋然性は低い。しかし実際、松本サリン事件や尼崎列車脱線事故のようなメディアスクラムが起こり特定の人物が世論感情によりつるし上げられることや興味本位の報道、感情をぶちまける報道が多数存在するなど、世論がマスコミやメディアによって操作される例も珍しくなく、日本ではメディア・リテラシーが確立されていないという現状もある。そのため、裁判の公正性に影響があるのではないかと懸念する意見もある。この点は西日本新聞で法曹関係者がマスコミ各社に対しに意見を述べており、また、BPO内の放送倫理検証委員会でもこの問題について議論が起こっている。[2]
裁判員のみならず、従来どおりの職業裁判官も評決に関与する。また、裁判員制度は一般感覚を裁判に導入するものであるから、メディア報道が一般感覚から乖離したり、過度に過剰な報道をしない限り、否定すべきとまではいえない。

[編集] 背景事情
裁判員は衆議院議員の公職選挙人名簿より抽選で選ばれ、思想・信条・能力にかかわらず選任される。選任に際して虚偽申告した場合、刑事罰として罰金に処せられ、選任された場合に正当な理由なく出頭しなければ行政罰として過料に処せられる。類似制度として検察審査会がある。


[編集] 意識調査
裁判員制度への国民意識について2005年2月に裁判員制度における刑事裁判への参加意識(内閣府)によれば、導入後の裁判について

専門家でない裁判員により適切でない判決が出る(39.3%)
犯罪・治安のことを自分のこととして考える意識が高まる(31.2%)
裁判に国民感覚が反映され、司法への国民の理解・信頼が深まる(27.6%)
刑事裁判の手続・判決がわかりやすくなる(27.0%)
などの回答が得られている。

また、2006年12月の裁判員制度に関する特別世論調査(内閣府)によれば、

裁判員として参加したいかについて
参加したい(5.6%、前回4.4%)
参加してもよい(15.2%、前回21.2%)
あまり参加したくないが、義務であるなら参加せざるをえない(44.5%、前回34.9%)
義務であっても参加したくない(33.6%、前回35.1%)
刑事裁判に参加する場合に不安に感じる点について
自分達の判決で被告人の運命が決まるため責任を重く感じる(64.5%)
冷静に判断できるか自信がない(44.5%)
裁判の仕組みが分からない(42.0%)
専門家である裁判官の前で自分の意見を発表することができるか自信がない(40.5%)
被告人やその関係者の逆恨み等による身の安全性(39.1%)
などとなっている。(前回とは、2005年2月の裁判員制度における刑事裁判への参加意識。)

なお、政府は裁判員制度導入に向けて前向きな姿勢を保ち続けているが、法曹界での賛否は両論ともにあり、否定的見解としては、「国民にまだ(裁判員制度の導入や詳しい内容が)十分に浸透していないのにもかかわらず、時期尚早ではないのか」といった意見や「裁判員制度を導入したところで、国民の負担が増えるだけで、政府が考えるほどの効果は得られない。廃止、凍結すべきだ」といった反対意見が出ている。


[編集] 国家による組織的世論誘導
2006年12月12日、あらかじめ政府側が作成した質問を特定の参加者に行わせ、それに対して専門家が用意された回答を行う「やらせ質問」について、司法改革タウンミーティングでも行われていたことが発覚した。タウンミーティング(タウンミーティング 小泉内閣の国民対話)での「やらせ質問」については2006年10月に「教育改革タウンミーティング イン 八戸」で行われていたことが発覚したのが発端であったが、2006年11月15日に社会民主党の保坂展人議員が、当時の長勢甚遠法務大臣に司法制度改革タウンミーティングでのやらせ質問の有無について追及し、2006年12月12日に上記のやらせ質問が発覚したものである。タウンミーティングでやらせ質問が発覚した全15回中、司法制度改革タウンミーティングで最多の6回のやらせ質問が行われていた。

2007年1月には、最高裁判所や法務省が行った裁判員制度フォーラム会場に人材派遣会社が派遣した登録アルバイトスタッフによるサクラを動員したことも発覚した。

2007年2月には、保坂展人議員が、最高裁主催の裁判員制度全国フォーラムについて最高裁が電通と交わした平成17年度の契約書(同年9月30日付)が作成された経緯を国会で追及したところ、この契約書が平成17年9月30日より後に作られたものであることが発覚、すなわち、実際の契約日よりも前の日付が契約書に記載されている「さかのぼり契約」だったことも判明した。これは、1960年に最高裁判所が示した判例に違反する行為である。


[編集] マスコミによる不公正な報道姿勢
裁判員制度に対する各マスコミの報道姿勢はほとんど100%推進派の論理で行われており、批判的報道姿勢がほとんどない。それどころか、推進派の論理による不公正な報道姿勢も見受けられる(参考記事[7][8][9][10][11]詳細は報道におけるタブー参照)。


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