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御厨貴・東京大名誉教授
安倍晋三首相が辞任を表明した。2012年の第2次内閣発足以降、連続在任日数は大叔父の佐藤栄作元首相を抜き、歴代単独1位となったばかり。通算でも在任期間の最長記録更新を続けていた。経済政策「アベノミクス」で国民の高い支持を集めた一方で、安全保障法制などでは強権的手法もいとわなかった。歴代最長政権の功罪とは――。
安倍晋三首相は2007年の第1次内閣の時も健康上の理由で政権を投げ出した。今回も、体調不良のなか追い詰められて退陣する形になった。過去の長期政権は、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎の各首相は、どう辞めるかを考えたものだ。例えば佐藤は官房長官に竹下登を起用し、中曽根は後藤田正晴を再登板させて幕引きの体制を整えた。それに比べ、安倍内閣は菅義偉官房長官にしても、麻生太郎副総理兼財務相にしてもアクセルをふかす人ばかりで、過去に全く学んでいない。
8年近いこの政権を振り返ると、それほど大きな功績はなかったのではないか。目標の憲法改正にしても、時折熱を入れたことはあったが、かけ声ばかりで何のために、どこをどう変えるのか、はっきりしなかった。コロナ禍さなかの経済は、とてもいいとは言えない。力を入れた外交も小さな成功の積み重ねはあったが、北方領土や拉致の問題は停滞している。世論調査の支持する理由は「他の内閣よりよさそうだから」が多い。
政権の特徴の一つは、…
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