岸田総理による突然の不出馬宣言で、自民党に激震が走った。麻生副総裁でさえ当日の朝まで知らされていなかったという。そして自民党総裁選の号砲は鳴った。これから新しい世代による闘いが始まる。
岸田vs.菅の因縁の闘い
「これは逃げじゃない。攻めの辞任だ」
総裁選不出馬宣言の前夜、岸田文雄は最側近の嶋田隆・首席首相秘書官や木原誠二・官房副長官らと食事をしながら、こう語ったという。
岸田が3年の任期を終えて官邸を去る。しかも、攻めるためだと言う。いったいどういう意味か。
旧岸田派の自民党中堅議員が、総理の心中を推察する。
「自民党の現職総理大臣は総裁選で負けたことがない。福田赳夫元総理の例がよく出されるが、あれはあくまで『予備選』で敗れて自ら身を引いたというもの。もし岸田さんが総裁選に出れば、現職総理大臣が負けるという前代未聞の事態が起こりかねなかった。
そうなれば岸田さんの政治生命は終わり。そんなことになるくらいなら、自ら退くことで影響力を残そうとしたのでは」
では影響力を温存し、岸田が攻めようとしている相手は誰か。もちろん「岸田おろし」の先頭に立ってきた菅義偉・前総理にほかならない。
「菅さんは国会が閉会してからというもの、メディアに出演しては、『首相は責任を取っていない』と岸田さんを批判してきた。岸田さんとすれば絶対に許せない相手だ。総裁選を菅の良いようにはさせない—そんな強い思いから、あえて撤退を決めた」(同前)
「石丸現象」を見た菅が目をつけたあの「総裁候補」
一方の菅はこれまで岸田が総裁選に出馬することを前提に、「打倒岸田」の準備を進めてきた。総裁候補として目をつけていたのが、小泉進次郎・元環境相(43歳)だった。
旧ガネーシャの会(菅グループ)に所属する自民党中堅議員が語る。
「菅さんはもともと、総裁選は世論調査で国民の人気が高い石破茂さんを担ごうと考えていました。
ところが東京都知事選で、ネットや若い人の間で人気がある石丸伸二候補が大躍進したのを見て、考えを変えた。今の自民党には何よりも刷新感が大事であることに気づいたんです。そのため進次郎にシフトしました」
裏金問題で地に落ちた自民党のイメージを払拭するには、「世代交代」を見せつけるしかない。派閥解消をしたところで、どうしようもなく古い自民党のイメージがつきまとう岸田に、若手人気ナンバー1の進次郎をぶつけて叩き潰す—これが菅の計画だった。
ただこの計画には一抹の不安もあった。
「確かに各社世論調査では、岸田政権の支持率は軒並み20%台と低空飛行を続けていました。しかし、総裁選は世論の支持で決まるわけではない。議員票が大きな比重を占めています。
岸田総理のバックには唯一派閥を存続させている麻生太郎副総裁がいる。岸田派も表向きは解散したとはいえ、ゆるやかなつながりは続いています。総裁選で再び『派閥の力学』が働けば、支持率に関係なく、岸田総理は再選する可能性がありました」(全国紙政治部記者)
ところがその岸田が自ら降りた。菅からしたら願ったり叶ったりだ。菅は岸田の不出馬会見の直後、地元の神奈川新聞の取材に、「自民が崩壊し、めちゃくちゃになる危機をとりあえずは逃れたと思う」と答えている。
後編記事『ついに「小泉進次郎総理」爆誕へ!そして「解散総選挙」がやってくる』へ続く。
「週刊現代」2024年8月24・31日合併号より
自民党の石破茂・元幹事長と中央大の中北浩爾教授が19日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、9月に行われる自民党総裁選について議論した。
石破氏は総裁選に勝利した場合、10月27日投開票の参院岩手選挙区補欠選挙に合わせて衆院解散・総選挙を行う可能性について「あると思う。政権を選ぶ総選挙はあまり時期をおいてはいけない」と述べた。総裁選の勝敗では「勝てる見込みがないのに推薦人をお願いしない」とも語った。
中北氏は「石破氏のような異論を言う人が、きちんと処遇される党にする必要がある」と指摘した。