宗教団体「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の問題を巡り、政府が宗教法人法に基づく質問権を行使し、調査に乗り出す。消費者庁の有識者検討会は「解散命令」にも言及し、不当な献金を禁止する法規制を提言している。元信者や家族からは「ようやく国が動き出した」と期待の声が上がったが、具体的な被害救済に結びつくかどうかは、不確定な部分もある。

■「大きな一歩」

 関西地方に住む元信者の女性(50歳代)は「国が調査に入ることは、実態解明の大きな一歩」と歓迎する。

 女性が旧統一教会に入信したのは20歳代だった1980年代。合同結婚式で初めて会った男性と結婚し、少ない収入から献金を重ね、生活は困窮した。十数年前に離婚して脱会したが、所在を知られないよう、それまでの知人とも連絡を絶っておびえながら暮らしているという。

 「旧統一教会は教義が全てだと信じ込ませ、多くの人の人生を壊してきた。高額献金だけでなく、本人の意思に反して無理やり結婚させるなどの問題も徹底的に調べてほしい」と訴える。

■献金1500万円

 一方、母親が信者だったいわゆる「宗教2世」の愛知県内の男性(30歳代)は、国の動きを前向きに受け止めつつ、「どれだけの被害が救済されるのか」との懸念も抱いている。

 消費者庁の有識者検討会が17日に公表した報告書は、マインドコントロール下で合理的な判断ができない場合、献金の取り消しを可能とする法整備を検討するよう求めた。

 しかし、男性の母親が入信したのは約40年前。献金総額は1500万円を超えるという。安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡した事件の後、説得して母親を脱会させたが、今も信仰心は薄れておらず、旧統一教会に返金請求をすることは拒んでいるという。

 男性は「献金の多くはかなり以前。そもそも母親に返金を求める気がなく、家族でも返金請求できるようにしてほしい」と訴える。

 母親とともに20年以上信仰していた東京都の40歳代の女性は高額な壺(つぼ)や印鑑などを買わされ、1000万円以上献金したが、メモなどの記録は残していないという。「もし法が整備されても、被害回復できる人はわずかではないか」と話す。

■解散命令求め署名

 今後の焦点は、政府が旧統一教会の解散命令請求に踏み切るかどうかだ。

 支援団体「全国統一協会(教会)被害者家族の会」やジャーナリストなどは17日、文部科学相らに解散命令を裁判所に請求するよう求めるオンライン署名活動を始めた。同日午後8時時点で2万5000筆を超え、1か月後に関係省庁に提出するという。

 同会の担当者は「被害者からすれば、霊感商法が社会問題になった20~30年前から解散命令請求の要件を満たしていると思っている。証拠を隠滅される前に早く調査に入ってほしい」と話した。

 世界平和統一家庭連合の広報担当者は、読売新聞の取材に「質問権の行使は前例がないが、真摯(しんし)に受け止めて、誠実に対応していきたいと思います」とコメントした。

 

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