とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

石垣りん氏の詩1編:『表札』

2016年11月01日 15時56分27秒 | 映像・画像・詩 そしてラインセンス

            

           『表札』

 自分の住むところには

 自分で表札を出すに限る。

 

 自分の寝泊りする場所に

 他人がかけてくれる表札は

 いつもろくなことはない。

 

(そうだ、そうだね、表札はレッテルと読み替えてもいいのかしら?)

 病院へ入院したら

 病室の名札には石垣りん様と

 様がついた。

(自分で表札をかけた自分の家ではないということかしら?お客さまになっている所)

 

 旅館に泊まっても

 部屋の外に名前は出ないが

 やがて焼き場の鑊(かま)にはいると

 とじた扉の上に

 石垣りん殿と札が下がるだろう

 そのとき私がこばめるか?

(つい最近、焼き場の鑊(かま)にはいった母のことを思い出した。確かに自分でかけた表札ではなかった。)

 

 様も

 殿も

 付いてはいけない、

 

 自分の済む所には

 自分の手で表札をかけるに限る。

 

(そういえば、母の老人ホームの個室にも表札がかかっていた。様だったか殿がついていた。どっちだっただろうか?

 なるほど、さびしさは自分でかけたものではなかったからか?)

 

 精神の在り場所も

 ハタから表札をかけられてはならない

 石垣りん

 それでよい。

 

 

 

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