『鬼の食事』
泣いていた者も目をあげた。
泣かないでいた者も目を据えた。
ひらかれた扉の奥で
火は
矩(く)形にしなだれ落ちる
一瞬の花火だった。
行年四十三才
男子。
(母は行年92才 当然女子)
お待たせいたしました、
と言った。
(おお 母の時も そう言われた)
火の消えた暗闇の奥から
おんぼうが出てきて
火照る(ほてる)白い骨をひろげた。
(おお 母の時も そうだった。あいつ、おんぼうと言うのか。うれしそうに きれいに焼けたとも言った)
たしかにみんな、
待っていたのだ。
会葬者は物を食う手つきで
箸を取り上げた。
礼装していなければ
恰好のつくことではなかった。
(なるほど なるほど なるほど)