2021年8月21日 10時21分 東京新聞
菅義偉首相(画像はネットから借用）
政府は２０日、菅義偉首相の１７日の記者会見で指名されなかった報道機関が、会見後に提出した質問に書面で回答した。本紙は、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクがある選手も参加する東京パラリンピックを安全・安心に開催できるかを質問。東京五輪と合わせて、国民に外出自粛を要請する政府のコロナ対策と矛盾していると指摘したが、首相から直接の回答はなかった。
医療提供体制について専門家が「災害レベルの非常事態」と指摘していることなどを踏まえ、パラリンピックの中止や再延期を議論しなかった理由も尋ねたが、回答はなかった。
丸川珠代五輪相が、パラリンピック選手のワクチン接種率を把握していなかったことから、本紙は「安全・安心に開催できる科学的根拠が乏しいのでは」と指摘。首相は「事務的なミスで（丸川氏に）伝わっていなかった。８８％が接種済みだ」としたが、その他の科学的根拠は示さなかった。
朝日新聞は、１７日の会見について「記者団の質問に正面から答えなかった場面が散見された。それらの質問に答えてほしい」と求めた。
首相は「質問に対して、私なりの言葉で、既に答えた」とし、改めて答えることはせず、「官邸のホームページで確認いただきたい」とした。
１７日の会見は、幹事社を含めて１１人が質問し、１時間３分で終了。政府は希望する記者の質問を文書で受け付け、７社が提出した。 （上野実輝彦）
◆安全安心な大会へ定期消毒、ＭＲＩ配備で対応
政府が２０日、書面で発表した菅義偉首相の回答の要旨は次の通り。
東京新聞 現在のコロナ対策が十分に効果を発揮せず、評価されていない理由として、首相の発言に実態が伴っていないことが挙げられている。コロナ対策と切り離して、リスクの説明や評価をあいまいにして五輪やパラリンピックを開催する姿勢が矛盾したメッセージとなり、政府の自粛要請などの呼び掛けが国民に届かないことにつながっているのではないか。パラリンピックでは、重症化リスクのある選手もいる中で安全・安心に開催できるか。
「制御不能」の感染状況と「災害レベルの非常事態」とされる医療提供体制の中、政府や組織委員会が中止や再延期の議論をしなかったのはなぜか。丸川珠代五輪相は選手のワクチン接種率を「把握していない」と説明しているが、安全・安心に開催できる科学的根拠は乏しいのではないか。
首相 感染対策を徹底して安全安心な大会を実現するため、選手や大会関係者の徹底した検査や行動管理を行う。プレーブックに基づき、一般的な感染対策に加え、車いすなど他者が触れる箇所の定期的な消毒を実施する。地域医療に支障を生じさせないようにしながら、選手村内にパラアスリートをサポートする看護師を配置し、総合診療所に磁気共鳴画像装置（ＭＲＩ）や酸素供給装置を配備している。選手等のワクチン接種率は事務的なミスで伝わっておらず、あらためて８８％の選手が接種済みだと組織委が説明したと承知している。
◆本紙以外への回答要旨
京都新聞 「災害レベルの非常事態」と医療の専門家が指摘する状況で、なぜ国会は開かれないのか。
首相 現在も与野党と閉会中審査で議論を行っている。臨時会の召集については与党とも相談しながら考えていく。
共同通信 首相が普段から考えている危機管理、危機対応の要諦は。
首相 縦割りを排し、省庁の壁を乗り越えて、想定される事態への準備と訓練、未知の事態への臨機応変の対応を政府の総力を挙げて行うことが重要だ。
時事通信 自身の体調を万全と考えているか。なぜ夏休みを取らなかったのか。
首相 コロナ対策など喫緊の課題に遅滞なく対応することが首相としての最優先の職責だ。今年は夏休みをほとんど取れていないが、体調は万全だ。
日刊現代 抗体カクテル療法の治療薬について首相は会見で「十分な量を確保している」と言ったが、何人分か。必要とする医療機関はいくつあるか。
首相 具体的な確保量は相手方企業との秘密保持義務もあるので答えは控えるが、当面、必要となる十分な量を確保している。全国で約３０００の医療機関が投与の意向があると登録されており、既に約１２００の医療機関で約５０００人に投与されている。
朝日新聞 １７日の会見では記者団の質問に正面から答えない場面が散見された。それらの質問に答えてほしい。
首相 その場でいただいた質問に、私なりの言葉で既に答えており、内容は官邸のホームページで確認してほしい。
ラジオ日本 抗体カクテル療法の治療薬の生産態勢、流通態勢は。確保できている具体的数量は。
首相 海外で生産されたものを日本の製造販売業者を通じて輸入している。具体的確保量は秘密保持義務もあるので答えは控えるが、当面、必要となる十分な量を確保している。
