ウイルス“エリス”猛威ふるう 尾身茂さん「コロナ第9波、まだピークでない」【Nスタ解説】
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東京などでは新型コロナの感染者数が第8波に迫る状況です。猛威をふるっているのは「エリス」と呼ばれる変異ウイルスです。
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東京都の1医療機関あたりの患者数をみてみると、第8波を過ぎた後、5月頃から感染者が増加。14日に発表された今月10日までの1週間の数は、16.36人と前の週から減少したものの、第8波のピークに迫りつつある状態です。
この感染拡大はいつまで続くのでしょうか。コロナ対策などを検討する「対策推進会議」の議長退任に伴い、14日、会見を開いたこの人は… 尾身茂氏「まだ全国的に今のいわゆる“第9波”はピークには達していません。まだ多くの地域で感染が少しずつ増えている。この冬にかけては気がかりだと私は思っています」
■なぜ急増?新型コロナ患者
東京“第8波”に迫る 井上貴博キャスター: 新型コロナウイルスの分類を5類に変え、インフルエンザとほぼ同じ対応にしている今、医療機関が求めるものは何なんでしょうか。
まずは東京都の新型コロナウイルスのデータです。1医療機関当たりの患者数は、第8波(2022年末~2023年始)のピークでは19.78人でした。今日発表された患者数は、先週から減り16.36人。波で数えますと、第9波ということになるんでしょうか?
入院患者の人数で見ますと、第8波のピーク時の2022年12月21日時点では3862人。そして9月11日時点では、2353人というデータが発表されています。
東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅医師に話を伺いました。
今、新型コロナに感染していても、受診しない方が多いそうです。実際の感染者数は2倍~3倍ではないか、ということでした。
東京歯科大学市川総合病院 寺嶋毅医師 「新型コロナの病床数は5類移行後、確実に減っている。今後さらに入院患者は増加することが考えられる」
インターパーク倉持呼吸器内科の状況は、病床17床のうち3床が埋まっている状態。
入院患者の特徴として▼熱、せき、食事が取れないなど、10日~2週間症状が改善せず入院▼肺炎を発症している、というのが特徴なんだそうです。
倉持先生は「家で我慢して症状が悪化して入院する方が多い。今は早めに受診して治療することで改善できる」というふうに話しています。
■ 尾身氏「まだピークではない」
また、尾身茂さんは「まだ全国的に今のいわゆる“第9波”はピークには達していません。医療現場、特に救急医療を中心にかなり負荷がかかっている」というふうに14日の会見で話しています。
ホラン千秋キャスター: 倉持さんは、現場で3年以上この新型コロナウイルスと闘い続けていらっしゃるわけなんですけれども、症状の変化など、第9波と呼ばれているこの波で、何か感じることなどありますでしょうか?
インターパーク倉持呼吸器内科 倉持仁院長: デルタ株の頃から比べると、皆さんもご存知のように重篤な肺炎を起こす率が、中年男性が多かったんですが、今はそういったことはありません。
一方、感染者の数が非常に増えていますから、これから後遺症ということを見据えた上で、対策を立てていく必要があるのかなというふうに思いますね。
ホランキャスター: 例えばどのような後遺症を懸念されていますか?
倉持仁院長: 他のインフルエンザなどでもそうですが、喘息のような状態になったり、今まで通りスムーズに働けないなどの脳の障害であったり、そういった複合的な障害が起こることが、だんだんわかってきましたから、やはりそういったことを見据えて、確率はそんなに高くないですが、そういったケアも必要だと思いますね。
ホランキャスター: ウルヴェさんは現状をどう見てらっしゃるでしょうか?
田中ウルヴェ京 スポーツ心理学者(博士): 8月のお盆以降あたりに、何となく周りでコロナだけでなく、風邪の症状のような人が増えたなという印象を持ちました。 結果的に検査をする人もいればしない人もいる。でも検査をした人で、コロナが増えたという印象も確かに実感としてありました。 ただ、聞く情報はやっぱり「症状が軽かったよ」っていう情報の方が入りやすくて、本当に重症になってしまったような方々に話は聞けないんですよね。本当に回復をされてからでないと、お話を伺えなかったり、あるいはお話すらしてくださらなかったりする方もいらっしゃる。そうなると、やはり私達は事実がちょっと見えにくいんだろうなということは感じます。
井上キャスター: 倉持さん、一つ伺いたいんですけど、新型コロナウイルスを5類にして、ある程度重症化率も下がり、薬もある。広く医療機関で受け入れていただきましょう、というふうになって今、医療機関が制度として求める「ここを変えてもらえるとより円滑に医療提供できます」というところがあれば具体的に教えていただけますか。
倉持仁院長: 2類から5類になり、医療側で困っていることは、「自治体と基幹病院との連携がなくなったこと」。どの地域で困っていて、どの地域で困っていないのか、が全くわかりにくくなってしまった。 実際に私の病院でも最近、他県から、肺炎の方がどこの機関病院も受け入れてくれなくて、入院できず、県2つぐらい越えて来た方もいますので、その辺が足りない。
それから検査、薬、ワクチンがもう揃ってきたわけですね。どういう株が今後流行るのか、ということを検証しながら、その対策を立てていくことが大切です。 また、きちんとマスクをするということも流行期には必要なことですから、そういう正しい情報の発信が必要です。
それから今年が例年と違うのは、インフルエンザも同時に流行してきています。インフルエンザも新型コロナも、症状が軽い人が多い一方、一部の人が重症化してスムーズに受診できずに救急医療が逼迫しているのも事実です。そういったことをしっかり伝えていく必要はあると思いますね。
井上キャスター: 前半の話は自治体がデータを集計しきれていない、ということでしょうか。
倉持仁院長: 定点観測になって、発表される数字も実感としてあんまりピンとこないんですね。 夏の時期、感覚的には去年の方が倍ぐらい多かった。今のところ我々は余裕があるんですが、やはり重症患者の入院は先々週ぐらいから滞ってきていますので、これは新型コロナに関わらず、その辺の一部の負担が、周りには気づきにくくなってる、ということは知っておく必要があると思います。
【参考】
エリス(EG5.1)はオミクロン株の派生型株
- 増加傾向のコロナ変異株EG5.1、通称「エリス」について専門家に聞いている
- 症状はのどの痛み、発熱、せきなどで重症化する例は少ないそう
- 感染力は今までと「同じ」か「やや強い」という
XBB1.16
世界保健機関(WHO)はインドなどで感染が急拡大している新型コロナウイルス・オミクロン株の新系統「XBB.1.16」を「注目すべき変異株(VOI)」に指定し、監視を強めている。
「XBB.1.16」はオミクロン株のBA株の2亜系統が融合したXBBの子孫で、SNS上では「うしかい座」のアルファ星「アークトゥルス」の別名で知られる。現在インドで流行の主流になっているが、ほとんどが軽症。ほかに米国など32カ国で見つかっている。