勇気と理解、広げる後押しを 皇后さまへ期待する声
皇后さまは八日、代替わり後初の宮中祭祀(さいし)に臨まれた。外交官のキャリアを経て皇室入りし適応障害で病気療養しながら、人々と交流を重ねてきた皇后さまへの期待や思いを聞いた。
■困難抱える人に
皇后さまは児童養護施設を訪問したり、闘病中の子どもを癒やすアニマルセラピーへ関心を示してきた。
認定NPO法人児童虐待防止協会理事長の津崎哲郎さん(73)は「虐待など困難を抱える人へ理解を示されている。皇室という一歩離れた場所から、地道な支援活動の後押しや、当事者の力づけになるメッセージを発信してほしい」と語る。
セラピードッグを育成する日本レスキュー協会の今井雅子さん(41)は「(皇后さまの活動で)犬や動物には子どもを変える力があることを知ってもらう機会になれば」と期待した。
■在日外国人と交流を
国際交流への思いの強い皇后さま。日本で暮らす外国人からは「私たちの生活も知って」という声も。在日エチオピア人を支援するNPO法人「アデイアベバ・エチオピア協会」理事のアベベ・サレシラシェさん(52)は「国内で交流を増やし、海外へ活動を広げてほしい」と望む。
東京都板橋区で居酒屋を経営するイラン人のコルドバッチェ・マンスールさん(55)は「日本で外国人がどんな生活をしているか見てほしい」。渋谷区のイスラム教モスク(礼拝堂)のスタッフでインドネシア国籍のグフロン・ヤジッドさん(28)は「皇后さまが来ることで、ムスリムへの理解が広がる」と期待する。
■皇后に理想像ない
皇后さまが外務省へ入省したのは一九八七年で、前年に施行された男女雇用機会均等法の第一世代。家族問題に詳しい山田昌弘中央大教授(家族社会学)は「女性が自分で人生を決めることができた最初の世代とも言えるが、『子どもを育てるのは女性の役割』という周囲の意識は変わらなかった」と分析する。
作家の北原みのりさんは「皇室で葛藤する姿を、同世代の多くの女性が自分とダブらせて見てきたのでは。平成は素晴らしいキャリアを持つ女性を生かし切れなかった」と指摘。今後について「皇后とはこうあるべきだという理想像はなく、ご自分でつくり上げればよい。自立した一人の女性として生きる姿を見たい」とエールを送った。
(小松田健一、長竹祐子、渡辺聖子、山田雄之)