
【執筆原稿から抜粋】
タテとヨコ
この「正しさ」と「美しさ」、または世俗と宗教(聖と俗)、物質と精神は、伝統的に「横(水平)」と「縦(垂直)」という比喩で語られてきました。
正しさは歪み得る。永遠とは言えない短期的。ドロドロとした人間世界のはかない価値観。
そこで、正しさは横・水平的と捉えられています。
この「ヨコ」の価値観として、大きさ、多さ、成功か失敗か、などが挙げられます。
大きな家に住むこと。大会社に勤めること。財産が多いこと。友人が多いこと。履歴書に書けるような成功。
これら全て、世俗的で「ヨコ」的な価値観です。
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一方、履歴書に書かれるのではなく、葬式の弔辞で読まれるような価値観。
心が美しい。潔い。高潔だ。品がいい。欲がない。利他的である。気高い。人類共通の目標と言える真・善・美に近づくような行為。
これらの価値観は伝統的に、天(神)との関係でイメージされてきたため、これを縦・垂直的と表現します。
大聖堂や大伽藍の天井が高いのも、この神聖さ・崇高さを天上にいる神との関係でイメージするためです。物理的な高さが、精神的な気高さを表すとされたのです。