昨日の夜は、三崎亜記の小説『となり町戦争』を読んでいました。
主人公は二年前にある町に引っ越してきた青年。
青年はある日、町の広報の『となり町との戦争のお知らせ』で戦争が始まることを知る。
しかし戦争が始まる期日になっても町は今までどおり変わりは無い。でも町の広報には小さく戦死者の数が掲載されている……。
そんな中、主人公の青年に町役場からの戦時特別偵察業務従事者の任命書が届く……。
このお話は何の寓意なんだろ?
戦争、ではないよなぁ?
物語では、ある町と隣の町の戦争が淡々と始まり、いつの間にか終わる。
注意を向けなければ、何も気が付かずに始まり気が付かない内に終わってしまう。
私達の世界そのものを描いている、のだろうか?
何故始まったのか今となっては分からない誰もが意味がないと思っている事業でも、止めるには莫大な手続きが必要となって止める事が出来ない。或いは、知らないうちに何かが始まり、何かが始まっている事に私達は気が付いていない。そんな事柄は世界に満ちている。
本質的な事柄にアクセス出来ない漠然とした不安感や焦燥感を描いているのかもしんない。
もしくは、私達は目を逸らして気が付かないふりをしているけど自分たちの手を汚さずに何度も戦争に加担してきた―『機動警察パトレイバー 2 the Movie』の戦闘シーン無しバージョンと捉えることもできるかも?
淡々とした筆致の不条理物です。
お役所独特の言い回しや考え方は面白かったですよ。
案外、お役所仕事への皮肉を面白く描くことが作者の目的だったのかもしんない、と思ったりもしました。
面白かったです。