昨日の夜は、矢吹邦彦著『炎の陽明学―山田方谷伝』を読み返していました。
総額10万両を超える巨額借金の為に破綻寸前にあった幕末の備中松山藩の財政をたった8年で返済して尚且つ10万両の蓄財を成し遂げた山田方谷の物語です。
山田方谷が藩主・板垣勝静に述べた「事の外に立つ」という言葉は難しいなぁ。
よく分かっていないけど意訳してみる。
「財政再建を果たす為には財政再建を第一義に考えては成功しない。
政治も経済も大局観を持たなければならない。
何の為に備中松山藩はあるのか?
政治の姿勢を正し大義を示し方針を明確化しそれを実践すれば民は安心する。
民を安心させることが出来れば自ずと財政状況は好転する。
小手先の理論で財政再建を優先させると状況は悪化する」
これは言うのは簡単だけど実践するのは物凄く難しいだろうなぁ。
経済学や財政学は不確定なパラメーターは排除して計算するので、案外不確かなもの。意味はあるけどね。
指針にはなるけど固執すればしっぺ返しを食う。
「何を最優先にするのか・助けるのか・行うのか?」は哲学であって政治の領域。机上の計算に振り回されずに政治家ならまずはそこを明確にせよ、ってことか?
「経営が苦しくなったからリストラする」などと言っている企業経営者などとは大違いだ。
山田方谷が行ったことや言ったことを現代の人が行おうとするのは難しい。
机上の空論ではなく実践の為の学問を学びそして実践する知行一致。理を求めずやるべきことを行って結果として理を得る。む、難しい。
まず備中松山藩の大義を明確にし、それをもとに抜本的な方針を整え、基本方針をもとにして個別の案件に対処するので筋が通り信頼を得る。
例えば、中級武士以上の士分と豪農・豪商には厳しい節約令を出すが、農民には出さない。そして飢饉に備えて義蔵を設置する。
餓死者が出なくなったので農民一揆が無くなり生産性も上がる。さらに義蔵に集まる米を機に応じて売却して利益を得る。
さらに倹約するばかりではなく同時に積極的な投資策も行う。
ので産業が起こる。産業が興れば民が潤う。民が潤えば経済が活性化する。
財政再建の為の方策のみを考えるのではなく民が潤うことを考える。結果として経済が活性化し財政再建が果たされる……。
でも「何を最優先とするのか?」という問いに明確に答えるのはすごく難しい。
口先だけでは駄目なのだ。述べるだけならなんとでも言える。机上の空論になってはならないのだ。述べて尚且つ行動に移してそして成功しなければ意味が無い。
しかしそれは難しい。
でも難しいと言っていては駄目なのかもしんない。
等々、つらつら考えながら昨晩は読み返しておりました。
筆者の矢吹邦彦氏は山田方谷のことが大好きなんだろうなぁ。
贔屓の引き倒しの部分は若干有り。
でも膨大な資料を基に見事に山田方谷の生涯を描いています。
面白いですよ。