「そうだ。お前を私を操るには不適当。よって私はお前の元を去ろう。私をここに捨てて去るがよい」槍を見上げる潮。「何しろお前は馬鹿だし、短絡的だし、おせっかいだし、諦めが悪いし、頭も悪いし」後ろでとらが囁いていた。「とにかくダメだから、あははっ」潮はとらの下唇を摘まんで引っ張り、離してバチンっ! と喰らわしてやった。「だっはぁ!」仰け反るとらはすぐに潮の頭を小突きだした。潮もとらのボディを拳で連打する。「おめぇはさっさと喰われればいいんだよ!」「うるっせぇ! 紛らわしいことしやがってぇ、だぁっ!!」ドロップキックでとらを吹っ飛ばす潮。
反動で後ろに軽く飛ばされた潮はバイクに激突した。「痛ぁっ」「いい天気だなぁ」「ええ?」フェリーターミナルで潮を見ていた男だった。「よぉ」「ああ! ホントにねぇ、アハハハ」取り繕う潮。「気を付けないと、石ころだって足元すくうぞ?」「うん、ああ?! 格好いいバイクだなぁ! エンジンでっけぇ! ホイルもかっけぇ!」「バイク好きなのか?」「うんっ、俺も今に乗ってやるんだぁ。体に風をいっぱい受けてさぁ、魂まで風になれぇ!」槍をハンドルに見立てて乗った真似をしだす潮。男は笑った。「乗ってみるか?」「え? 乗りたいけど、今はいいや! 兄ちゃんも気を付けなよぉっ! こんな天気の日に怪我なんてヤだもんなっ」「ああ」潮は駆けてその場を去り、男は見送った。
バスターミナルへの坂道を下りながら、恥をかいたと頭の上のとらに文句を言う潮。「ざまぁみろっ」とらは笑ったが、『視線』に気付いた。振り返ると、牧場からさっきの男が錫杖を担いでとらを見ていた。(ワシに用か? じゃあ行ってやらぁ!)とらは男の方へ飛んで行った。「おいっ、どこへゆくんだよぉ?!」とらは応えなかった。一方、ターミナルの旭川行きのバスの車下に先回りした
7に続く
反動で後ろに軽く飛ばされた潮はバイクに激突した。「痛ぁっ」「いい天気だなぁ」「ええ?」フェリーターミナルで潮を見ていた男だった。「よぉ」「ああ! ホントにねぇ、アハハハ」取り繕う潮。「気を付けないと、石ころだって足元すくうぞ?」「うん、ああ?! 格好いいバイクだなぁ! エンジンでっけぇ! ホイルもかっけぇ!」「バイク好きなのか?」「うんっ、俺も今に乗ってやるんだぁ。体に風をいっぱい受けてさぁ、魂まで風になれぇ!」槍をハンドルに見立てて乗った真似をしだす潮。男は笑った。「乗ってみるか?」「え? 乗りたいけど、今はいいや! 兄ちゃんも気を付けなよぉっ! こんな天気の日に怪我なんてヤだもんなっ」「ああ」潮は駆けてその場を去り、男は見送った。
バスターミナルへの坂道を下りながら、恥をかいたと頭の上のとらに文句を言う潮。「ざまぁみろっ」とらは笑ったが、『視線』に気付いた。振り返ると、牧場からさっきの男が錫杖を担いでとらを見ていた。(ワシに用か? じゃあ行ってやらぁ!)とらは男の方へ飛んで行った。「おいっ、どこへゆくんだよぉ?!」とらは応えなかった。一方、ターミナルの旭川行きのバスの車下に先回りした
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