羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

うしおととら 1

2015-10-24 20:55:36 | 日記
苦しむ潮は半ば獣と化していた。「潮!」呼び掛けるとら。「止せっ! アイツはもう蒼月潮じゃねぇ、『獣』だぜ」警戒するイズナ。潮は吠えた。その頃、光覇明宗総本山の御角の前に淡い光が出現した。和羅達が構えると「よい」と御角は制した。「お懐かしゅう、初代」「初代、この方が」驚く和羅。光は古代中国風の衣と羽衣を纏った女の姿となった。「獣の槍を持つ子が、獣に変わろうとしています」北海道では潮が襲い掛かり「ワシがわかんねぇのかよっ?!」とらを困惑させていた。
これまで『獣』になって人に戻れた者はおらず、御角が潮を救う方法を問うと初代は答えた。「あの『櫛』を使うのです」初代から御角に、御角から潮の母に譲られ、そして今は潮が持つ櫛のことであった。「私は『櫛』を使う少女達の所に向かいます」御角には強い法力僧を集めるよう指示して、初代は去ろうとした。「いつも風のように現れて、去ってしまうのですね」「すまぬのう、いつかゆっくり語り合おうな」初代は消えていった。また総本山には予期したように、紫暮が来ていた。
「あなたの勇気をお貸し下さい」まず勇の元に現れた初代。次に座敷わらしに旅に出ることを予見されていた小夜の前に現れ、編み物をしていた礼子の前に現れ、最後に麻子と真由子の前に現れた。「私はジエメイ。この世に在らぬ者」「真由子そっくり」驚く麻子と、怖がる真由子にジエメイ事情を話した。これまでのことにようやく合点がいった麻子。『櫛』で縁のある女が潮を案じながら梳ることで人に戻すことができる。「来てくれますか」「行くわっ!」叫ぶ真由子。「でもどこに?」麻子に問われ、ジエメイは北海道旭川と答えた。そこへ「乗って!」礼子がタクシーで駆け付けた。
北海道で潮が流達の三日月の結界を破って逃走する中、麻子達はタクシーで空港に向かっていた。
     2に続く

うしおととら 2

2015-10-24 20:55:28 | 日記
「ごめんね、麻子! 今まで隠してて」真由子が謝ると「えいっ」麻子は相当軽く、触れる程度に真由子を小突き「礼子も、後で間崎さんにも」といって、礼子にも軽くチョップした。「あいつにもえいっ、てやってやるんだから」麻子は明るく言った。
先に旭川空港に着いた小夜がここからの手筈がわからず周囲を見回していると、後ろから走ってきた前髪のボリュームで視界が遮られた? 勇にぶつかられて倒れた。「わっ、ごめんなさい」「いえ」スッと立ち上がって去ろうとする小夜を勇がついてきた。「旭川の人?」「始めてです」「そっかぁ、参ったなぁ、お化けの人に旭川にって言われて来たけど」思ったことどんどん喋っちゃう勇。「え? 綺麗な中国の人とか?」「どうしてそれを?」等とやり取りしてるとヘリと共に紫暮が現れた。「檜山勇殿! 鷹取小夜殿! いらっしゃるかぁ!!」「はいっ!」応える勇。「私ですっ」小夜も応え、顔を見合わせていると麻子達も合流し、一同はヘリで飛び立っていった。空港にもヒョウも来ており、水を張った洗面台で八卦を見ており、ある方角で自分が追っているモノの情報が手に入ると見取っていた。
流達がバイクで先回りして潮の伯父の寺まで来ると、日輪が来ていた。「適任者じゃない者が槍を持ったりするからよっ」「何よアンタっ?」ムッとする純を無視して、日輪は潮が向かっているのは槍の使い手が入らねばならないという『洞』に向かっているということを告げた。
『洞』へ向かっているらしい潮は通り掛かった(引き寄せた?)妖怪を次々殺しながら疾走していた。(ああっ、体が言うこと聞かねぇ! 止せっ、何もしてないヤツ、殺したくない! はっ?!)前方に『人間』の母子を見付けた潮。(何をする気だ? 止めろよぉッ!!)槍を手に母子に突進する潮。「きゃああっ!!」
     3に続く

うしおととら 3

2015-10-24 20:55:18 | 日記
悲鳴を上げる母親。(止めろぉおおおッ!!!)何とか止めさせる潮。勢い余って草地に転ぶが即、起き上がり潮の体の疾走は止まらない。(ダメだぁ、人間も妖怪も、殺しまくるつもりだ。それに、どこへゆくつもりだ?)「カムイ、コタン」獣の潮は呻くように呟いた。
「この機を逃すなッ!」海の底で全婢妖群に命じ、無数の婢妖が北海道に殺到していた。内なる潮は毛で縛られ『折れた』多数の刃に囲まれ朦朧としていたが、どこかからか金属を打つ音が聞こえ出した。見れば、ボロボロの古代中国風の衣を着た男が素手で焼けた剣の柄を握り、鎚で剣を唸りながら打ち鍛えていた。男が打つ度、柄を握る手から鮮血が飛び散る。血涙する男は口から炎を吐き、剣を熱する。(獣の槍?!)驚く潮。男が水を張った桶に剣を浸けると蒸気が上がった。「かつて何人もそうであったように、お前も槍に魂を吸いとられ『獣』と化しっ、憎き白面の者を追う。槍に引き摺られながら探すのだぁ!」剣を鍛え続ける男。(おじさん誰だ?! 何で白面の者を憎んでいる?!)「でぇええいッ!! 何で憎いかだと? 忘れたよっ、2000年も前のことだからなぁ!!」男は血涙しながら『剣』を鍛え続けた。
夜、カムイコタンに揃った麻子達と流達。今の潮では空を覆う程の婢妖には敵わない。紫暮、流、悟、ついて来ていた純の連れの法力僧4人で四方の山に結界を張って時間を稼ぐことになった。「ほぅらなぁ、こんな美人ばかり待たせてた。頼んだぜぇ、別嬪どもぉっ!」流はそい言い、紫暮意外の僧達もそれぞれ山へ向かった。「とら殿、頼んだぞ?!」「ケッ」紫暮に言われ、とらは『櫛』を回収する為に飛び上がった。「危険だと思ったら逃げてくれ。だが、少しでも可能性があると思ったら、潮を、助けてやってくれ」紫暮は頭を下げた。「はいっ!」麻子達は声を揃えた。「感謝する!」
     4に続く

うしおととら 4

2015-10-24 20:55:05 | 日記
紫暮は持ち場に駆け去って行った。
「何か、大変なことになっちゃったね。あたし、中村麻子」「私は勇、檜山勇っていうの」握手する二人。勇は少し麻子の言動に違和感を感じてるようでもあった。他の娘達もそれぞれ名乗ったが「へぇ、あのバカ、何も粗相をしなかったぁ?」麻子がいつものノリで言うと小夜は戸惑い、勇は真顔になっていた。
とらが飛んでいると、肩の上のイズナがいち早く道を疾走し、対向車を驚かせている潮を見付けた。「前より酷くなってやがる」「ポケットを見ろ!」目ざといイズナは潮のポケットの光に気付いた。「お前は女、守ってやれっ。俺がやるよ!」「ああっ?! こらぁ!」とらが止める間も無く、イズナは潮に飛び掛かった。振るわれた槍にまとわりつく様に柄で素早く回転しながらポケットに迫ると、潮の『髪』に捕まり、絞り上げられるイズナ。「あああッ!! このくらいでイズナ様がぁっ、負けるかよぉおおっ!!!」髪を千切り『櫛』を口でくわえて奪うイズナ。「いっただきぃっ!」イズナは最大速度で逃げ出した。
「よかったねぇ、潮君がゆく先々でナンパしたんじゃなくてさぁ!」「何よぉ!!」待ってるまでに詳しい話を聞き真由子にイジられ動揺する麻子。「麻子はねぇ、昔から潮君のこと」「わああああっ!!」慌てて真由子の口を塞ぐ麻子。見ている勇。「あたしはねぇ、あいつのこと何てどうでもいいの! ただお化けになったって聞いて、可哀想だと思って」「何よ何よ! いい気なもよね?!」勇は怒り出した。「あのバカとか、あいつとかって、あなたに蒼月君のことそんな風に言う資格あるの?!」「勇さん」小夜が止めようとしたが勇は止まらない。「幼馴染みだからって何よっ! 事情も知らないで、のうのうと暮らしてたクセに! 最低よっ」
     5に続く

うしおととら 5

2015-10-24 20:54:52 | 日記
「言いたいだけ、言ってくれちゃって」拳を握る麻子。「好きで知らなかったんじゃないわ! 教えてくれなかったんだもんっ!」「麻子!」真由子が麻子を押さえる「誰にも言わないで出て行って、一人で化け物になっちゃったんじゃないか?! 知ってれば、相談してくれれば、あたしだって!」泣き出す麻子。勇は見ていた。「あれ? ホントに、潮のバカ!」自分の涙に、麻子は後ろ向いてしまった。
迫る婢妖の大群は紫暮達の結界で一先ず押さえた。「やい、女どもっ! 潮が来るぞ!」戻ってきたとらが警告した。程無く『櫛』をくわえたイズナを追って、変わり果てた潮が前方に駆け込んできた。息を呑む麻子達。「私が行きます!」「礼子?!」驚く麻子。礼子は進み出た。「言っておくが、今の潮は化け物! 獣の槍だって当たりゃあ死ぬぞ?!」「私は、潮君がいなければ、こうしていることもなかった」とらの言葉にも怯まず歩いてゆく礼子。麻子達が代わろうとしても「一度、獣の槍に刺されているの、もう怖くないわ」礼子は微笑んで潮へと歩んで行った。「受け取れぇっ!」イズナが口で『櫛』を投げた。跳び上がって『櫛』を取る礼子。
潮へ駆けてゆく礼子。(潮君、覚えている? 私、礼子。死にたがりの羽生礼子よ。あなたの言葉が私を地獄から救い出してくれた。今じゃ私、生きたがりの礼子よ! だから、絶対助けてあげるわ!!)近寄ると殴り付けられる礼子。(お父さんの方が、ずっと怖かったわよ!)倒れ際に潮の髪を『櫛』で梳る礼子。『櫛』は光り、潮の髪はごっそり一房抜け落ちた。「抜ける! 戻せるかもしれないっ!」礼子が体を起こして振り返ると潮は麻子達に迫っていた。
「皆、逃げて!」礼子は叫び、麻子達は一旦逃れようとしたが、小夜が転び、勇が起こそうと引き返した。二人に潮が襲い掛かろうとする!
     6に続く