羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

無痛 1

2015-10-29 22:01:32 | 日記
2年前、臨床心理士になったばかりの菜見子は薬物中毒者だった瀬野愛莉のカウンセリングを担当していた。最初は爪を噛み、テーブルに足を乗せ、顔も見てくれなかった愛莉。同時期、菜見子は落とした財布を拾ってくれた? 佐田と知り合っていた。程無く「上から目線で言われるとムカつくっ!!」話しはできるようになったが、診察で愛莉に吠えられる菜見子は佐田に相談し、励まされていた。「上から目線だって言われたから」次の診察で患者用の椅子の脇にややおどけてしゃがんでみせる菜見子。「バ~カ」毒舌気味だが落ち着き始める愛莉。
「ホントに買ったんですかぁ?! すごーいっ!」菜見子は佐田か買った車でドライブに付き合うようになっていた。「自分は逃げることしかできなかった」心の傷を語り始める愛莉。佐田とドライブデートを重ねる菜見子。「やめようと思ったんだけど」薬物使用を後悔し泣く愛莉。車中で、佐田からプリンを渡される菜見子。「今日で終了です」菜見子はすっかり穏やかになった愛莉に治療の終了を告げ、さらに「彼氏できたんだ。私の過去ってさ、彼に話すべきだと思う?」「一度、信じてみたら?」菜見子は『善意』から、打ち明けるよう勧め、愛莉を無邪気に喜ばせた。一方で、突如嫉妬に狂い、束縛し、車中で「俺の傍にいろっつってんだよッ!!」等と暴力を振るい始めた佐田と、菜見子は別れていた。
そして半年前、サトミが患者として現れた。暴行の痕かまだ残る、髪もボサボサのサトミ。じっと菜見子を見る目は現在と何も変わらないようでもあった。
「残酷な医者ですね。諦めてるだけじゃないですか! 最後まで患者に寄り添うってただの自己満足だろう?!」為頼の診療所では『診える』だけで治し方がわからないと言われ、早瀬が吠えていた。「刑事を辞めることだ! 犯罪から遠ざかれば」
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無痛 2

2015-10-29 22:01:25 | 日記
「人なんか殺さない! 刑事も辞めない」早瀬は反論し、診療所を出て行った。「犯因症の治療か、私も研究したかったな」為頼は久留米に相談したが、久留米は苦し気に煙草を吸いながらそう呟くばかりだった。早瀬は診療所を去った後で石川一家殺人事件の現場に供えた花を取り替えに行っていた。無惨な死体の姿を思い出す早瀬。「俺は違う!」早瀬は自分に言い聞かせ、現場を後にした。
菜見子はストーカーに怯えつつ、帰りにコンビニに寄っていた。「俺、こんなんッスけど、マジ顔もできんスよ?」ひょうきんな店員野々村はハロウィンの面を被ってポーズを取り、菜見子を笑わせた。その様子を写真に撮る佐田。翌朝、野々村が石で何度も殴打され、さらに腕の一ヶ所に煙草の火を何度も押し付けられて殺されいた。「同じ目に合わしてやりたいですっ!」太田は現場で憤ったが、早瀬はいつものようにはもう怒れず、複雑な顔をしていた。
野々村の殺害をニュースで知った菜見子は戸惑い、直後に入った佐田の野々村との画像付きメールの『天罰が下った』という一文に激しく動揺していた。イバラはそれを黙って見ていた。同日、白神は行動が不安定になってきたサトミの様子を見に行っていた。「その『絵』はサトミちゃんの知ってる人達なのかな?」白神は軽く探りを入れたが、サトミは警戒し話にならない。白神は「君の味方だよ」と名刺を置いて病室を出た。
夜、自宅マンションの廊下まで帰ってきた菜見子。自分の部屋の前まで来ると、ドアの傍に佐田と同じ銘柄の煙草の吸殻があった。後ろから足音が近付いてくる。菜見子は部屋に入ろうと鍵を差そうとしたが、震えて上手く鍵穴に差せない。焦っていると「高島さんですか?」早瀬と太田だった。一人分の足音に聞こえたのは菜見子の主観か? 事件について聞かれたが怯えて佐田のことを何一つ伝えずにそそくさと
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無痛 3

2015-10-29 22:01:15 | 日記
部屋に入ってしまう菜見子。ドアが閉ざされると「太田」「はい」当然気付いていた吸殻を早瀬達は回収した。車で去る早瀬達を、菜見子のマンションの傍で件の『青い車』の中から佐田が見送っていた。
白神の病院を訪ねた為頼は、横井に席を外させ、犯因症が診えることを打ち明け、院で働くことと引換に治療法の研究の許可を求めた。白神は笑った。「面白い! いや、失礼。やはり先生は素晴らしい。一緒にがんばりましょうっ」白神は為頼の提案を受け入れた。同じ頃、サトミの相手をしながら佐田からのメールを見ていた菜見子はサトミが自分のスマホを覗いているのに気付いたが、サトミはすぐに視線を逸らした。と、佐田が今の様子を見ているらしいメールが届き、動揺した菜見子はその場を離れ、佐田を探した。それらしいと思われた人は別人で、仕方なくサトミのいた場所に戻ると、サトミの姿は無かった。
フードを取り、スケッチブックも持たず、一人で院内をフラフラ歩いていたサトミ。ある部屋の前を通り掛かるとゴム手袋が落ちていた。薄暗い掃除用具室で帽子を取ったイバラが屈んで何かしている。サトミに気付き、振り返るイバラ。サトミが手袋を差し出すと受け取ろうと立ち上がった。イバラはまたナイフで腕を切っていた。以前の傷口はもう塞がっている。今、切った傷からは血が滴っていた。息を飲み、ゴム手袋を落とすサトミ。石川一家の惨殺体を思い浮かべる。呼吸が荒くなり、困惑するイバラを見て、駆け去るサトミ。
菜見子がサトミを探していると、看護師に追われてサトミが駆けて来た。「サトミちゃん?!」エスカレーターを駆け降りてにげようとするサトミ。たまたま居合わせた為頼が、これを抱き止めてひっくり返った。「サトミちゃん、大丈夫?!」為頼とサトミを起こす菜見子。サトミの呼吸は荒い。
     4に続く

無痛 4

2015-10-29 22:01:07 | 日記
その騒動をロビーにいた佐田がスマホで撮影しており、それを更にイバラが上階から見ていた。
菜見子の部屋の前で見付かった煙草の銘柄と刺青のある野々村の腕に押し付けられた煙草の銘柄は一致した。殺害現場に煙草の吸殻その物は無かったが、菜見子の部屋の前に有った煙草を吸っていたのは鑑定の結果、『男』であることがわかった。
「少し、顔色が悪いようですけど?」サトミは鎮静剤を射たれて眠りにつき、目を離したからと責任を感じる菜見子をまだ病院に残っていた為頼は気遣った。「最近ちょっと、あっ、すいません、何でもないです」菜見子はごまかした。為頼は診察があると帰っていったが、さっきの騒動でスマホをどこかに落としていた。佐田は車中で件のプリンを食べ、菜見子の部屋の前に落ちていた物と同じ煙草を吸い、病院での菜見子と為頼の写真を見ていた。付き合ってた頃の写真をサンバイザーの裏に貼っている佐田。
『次はこの男か。』と書かれた為頼との写真付きの佐田からのメールを怖れた菜見子は為頼の診療所に電話を掛けた。「今、診察中なのよ」和枝が出た。菜見子は為頼のスマホが見付かったことを伝え「先生はいつも通りですか?」とまでは何とか聞けたが、結局何も忠告できずに電話を切ってしまった。そうこうしている内に、診療所に早瀬が来た。「俺の持ってるエネルギーは、犯罪を阻止する為にあるんです。俺は刑事を続けたい。だから先生に頼みがある。俺が暴走したら、止めてほしいんです」頭を下げる早瀬。「できるだけのことはする。犯因症の治し方も探してみるつもりだ。期待はしないでくれ。でも、ただ諦めるよりマシだろ?」為頼は引き受けた。早瀬は一先ず安心して診療所を出て行こうとしたが、和枝が書いた切りにしていた菜見子からの電話のメモを見付けた。「高島さん?」早瀬が今、
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無痛 5

2015-10-29 22:00:56 | 日記
追ってる事件で事情を聞いていると為頼と和枝に話すと、和枝は電話で菜見子の様子おかしかったことを伝えた。
捜査は女癖の悪い野々村の交遊関係の広さに、やや難航していた。署に戻った早瀬は野々村の刺青と、煙草で焼かれた箇所に注目していた。為頼は佐田に車の中から監視されつつ、スマホを受け取りに白神の病院に来ていた。「すいません、連絡頂いて」スマホを受け取った為頼は一度はそのまま帰ろうとしたが、早瀬から話を聞いたとして「あの、殺人事件のことで話を聞かれてるって」と切り出した。「私、疑われてるんですか?」「わかりません。ただもう一度話を聞くと」ここでまたスマホに着信が入り、バイブに怯える菜見子。ポケットからスマホが出せない。「警察には話した方がいいと思いますよ? あの刑事、信用できるから」「プライベートなことですから」また着信が入る菜見子。「話せばそれで済みます」「プライベートだって言ってるじゃないですか!」ムキになる菜見子。「すいません、自分でちゃんと解決しますから」言い切る菜見子に、為頼はそれ以上は押せなかった。
早瀬は太田と、なぜかモニターでチキパのライブ映像が流れる刺青屋で聞き込みをしていた。「あー、彫った彫った、ここに!」掘り師は遺体の写真から、煙草で潰された箇所に彫ったことをすぐに思い出した。野々村はカップルで来店し、イニシャルを使ったマークを互いに彫っていた。女のイニシャルは『A』。
病院のロビーまでエレベーターで降りてきた為頼はその『女』と擦れ違った。驚く為頼。その女は犯因症が出ていた。『愛莉』だった。追おうとするが、愛莉はエレベーターで上階へ上がってゆく。早瀬達が薬物中毒だった『A』の通院先を問い合わせて突き止める中、愛莉が11階で降りたことをエレベーターの現在位置表示で確認した為頼は階段で
     6に続く