羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

ガンダム 鉄血のオルフェンズ 1

2015-10-05 21:35:02 | 日記
子供の頃、三日月は言う通りにした。銃を撃ち、反動でひっくり返る三日月。痛め付けられていたオルガは見ていた。相手は倒れ、流血している。振り返る三日月。「ねぇ、次はどうすればいい? オルガ」オルガは拳を握った。
「オルガ」現在の三日月の声でオルガは目覚めた。一瞬、怖れたように三日月を見るオルガ。「おお、ミカ」「おおじゃないよ、見付かったらまた何されるか」ガンダムバルバトスの足元だった。雪之丞もバルバトスの動力室の出入り口から顔を出した。社長が呼んでいるという。「ここ入るなって言ったろ?」「ここ年中あったけぇからさぁ」オルガはダルそうに出入り口に向かった。続く三日月は一度、バルバトスを振り返った。
オルガと三日月は民間軍事警備会社(PMC)のクリュセ・ガード・セキュリティー(CGS)の参番組で働いていた。社長の話は、クリュセ代表の娘を地球まで運ぶ護衛を参番組に任せるというものだった。オルガと共に話を聞いたビスケットは戸惑った。娘、クーデリアは火星独立運動を行っている。「何で俺らに?」「御指名なんだよ」オルガに、社長は投げやりに答え、「やることは変わんねぇ、お前らガキは俺らの言うこと聞いてりゃいいんだよっ!」傍の上官の男はデタラメに怒鳴った。
少年兵の中でも若手の者達は拠点周囲に地雷を埋める作業をしていた。明日はこれを撤去する作業をするという。ただのイビりだった。その近くではMW乗りの少年兵達がペイント弾で演習を行っていた。目覚ましい活躍をする三日月。若手の一人、タカキが見惚れていると作業監督者にラバー棍棒で殴られた。「宇宙鼠がはしゃぎやがってっ」少年達の環境はそんなものだった。
温室で茶を飲む母に別れを告げたクーデリア。
     2に続く

ガンダム 鉄血のオルフェンズ 2

2015-10-05 21:34:53 | 日記
「お母様は目を逸らしているのよ」御付きのフミタンに熱弁するクーデリア。少年兵に依頼したのも『痛みを分かち合えたら』という主旨らしい。冷静に聞いているフミタン。
「若さとは、純真さとは何と美しいことだろう?」ギャラルホルン火星本部、静止軌道基地アーレスで、司令官コーラルはクーデリアの父ノーマンと差し向かっていた。「皮肉なものだな?」「はぁ、愚かな娘で」冷や汗をハンカチで押さえるノーマン。「火星中のならず者達も、彼女を支持するのだろう。ならば、永遠に民衆の記憶に残るよう、我々も手助けをしようじゃないか?」「はい、御手柔らかに」ノーマンは、娘を売った。コーラルは内心呆れて席を外したが、今回の『手柄』で地球の監査も覚えめでたくなり、援助も受け易くなる。「あの娘にも頑張って貰わないとな」コーラルは呟き、MSドックでオーリスに作戦の指揮を任せた。
一方、地球からのギャラルホルン艦ヴィルムで特務三佐監査官マクギルスと同じく特務三佐監査部付き武官ガエリオが中継器に向かっていた。「火星か、出涸らしみたいな星だ」ボヤくガエリオ。「辺境任務は退屈か?」作業しつつ応えるマクギルス。「仕事はきっちりやるさ」「地球圏の経済は、その出涸らしを組み敷いた上に成り立っている。今後とも地球圏への献身を貫いて貰う為にも火星支部には、我ら世界秩序の番人足るギャラルホルンの一員として、襟を正して貰わねばなな」「支部の連中には同情する」「火星は今、独立の気運が高まっているらしい」「ん?」「案外、同情している暇は無いかもしれんぞ」マクギルスは予感していた。
火星の夜、CGSの少年兵の多くは掛け布団も無く、多くは横向きになって眠っていた。そうして寝ている少年兵達の背骨には異様な突起が付いていた。フロアの一角では昭弘と三日月が懸垂で競い合っていた。小柄な三日月の方が早い。
     3に続く

ガンダム 鉄血のオルフェンズ 3

2015-10-05 21:34:41 | 日記
「俺の方が体重いんだからなっ」「はいはい」「なっ?」受け流されて焦る昭弘。二人とも背骨に複数突起があった。MWのハンガーでは雪之丞とオルガが話していた。「地球までの往復に、あれやこれやで5ヶ月くれぇいか」「ここも静かになるなぁ」「マルバのおっさん(社長)は、俺らのことヒゲ(背の突起)のおかげで他よりちょっとすばしっこいのが取り柄の鼠くらいにしか思っちゃいねぇからな」「旧時代のマンマシンインターフェース、『阿頼耶識』か。ひでぇ話だな」埋め込むのが働く条件だった。「仕事があるだけまだマシかぁ」オルガは麻酔もない手術に声一つ上げなかった。「可愛げが無いって殴られてよぉ」「泣けばだらしねぇって殴られただろう? 俺ら参番組はガス抜きする玩具か、弾除けくらいの価値しかない。でも、俺にも意地があるからなぁ。格好悪いとこ見せられねぇよ」煙草を吹かす雪之丞。「三日月にか?」苦笑するオルガ。「苦労するなぁ、隊長」雪之丞は煙草を床に捨て、踏んで揉み消した。
火星都市クリュセでは独立運動家達のデモが行われていた。水着を着て体にメッセージを書き、騒いでいた。ノーマンの治世には反対らしい。その下町の、かなり年期の入った雑貨屋で、アトラが鼻唄混じりに紐を編んでいた。左手には紐を編んだ腕輪をしていた。「ご機嫌だね?」ハバに声を掛けられ慌てるアトラ。「すいませんっ!」「いいよ、今日は騒がしくって客なんて来やしない。それ、あの坊主にかい?」「あの」「いーよいーよ、しばらく会えなくなるんだろう? 明日の納品に間に合わせないとね」「はい」アトラの店はCGSに物資を納品していた。
その日、クーデリアがフミタンと共にCGSを訪れていた。社長は適当にクーデリアは持ち上げていたが、そこへオルガ達が現れた。三日月、ビスケット、ユージンも畏まった。
     4の続き

ガンダム 鉄血のオルフェンズ 4

2015-10-05 21:34:29 | 日記
「はじめまして、クーデリア・藍那・バーンスタインです」立ち上がって挨拶してきたクーデリアにすぐに反応できないオルガ達。「はい」軽く返事するオルガ。「どーもッス」必要以上に砕けてしまうユージン。「てめぇらっ、挨拶もできねぇのか?!」上官は怒鳴り付けてきた。クーデリアは微笑んでみせた。うんざりと視線を逸らす三日月。「あなた、お名前は?」三日月に近付くクーデリア。「三日月・オーガス、です」「三日月、ここを案内して貰えますか?」「はい?」戸惑う社長。「フミタン、ここは任せるわ」「かしこまりました」「では、三日月」手袋をしたまま手を差し出すクーデリア。「じゃあ、こっちへ」三日月は握手せず、さっさと部屋を出て行った。「あのう、ちょっとぉ!」クーデリアは慌てた。顔を見合わせるオルガとビスケット。
自前のエイハブ・リアクターが有ると解説しながら、小柄だが歩みの早い三日月に小走りで追い付き、再び握手を求めるクーデリア。自分が手袋をしたままでいることに気付き手袋を取った。「握手をしましょう!」「ああ」自分の手を見る三日月。「なぜですか? 私はただ、あなた達と対等の立場になりたいと思って」「手が汚れてたから遠慮してたんだけど?」オイルで汚れた手を見せる三日月。「その、私」「けどさ、それってつまり、俺らは対等じゃないってことですよね」三日月は背を向けて歩いて行き、クーデリアは何も言えなかった。
中継器の傍に留まっていたヴィルムでは本部との定期連絡が済んでいた。「厄介だな、中継器を介さねば通信もままならんとは」またボヤくガエリオ。「船の動力を含め、エイハブ・リアクターのエネルギーなしに宇宙での生活は立ち行かない」応えるマクギルス。「そのせいで地球からの目が届き難くなり、我々のような監査官の仕事が増える。300年前の大戦だって、
     5に続く

ガンダム 鉄血のオルフェンズ 5

2015-10-05 21:34:19 | 日記
これが原因みたいなものだろう?」「一度手にした力は、手離し難いものなのさ。それが、自らを滅ぼす力であったとしても」誰に解説しているんだ、二人とも?
CGS基地では見張りの兵がギャラルホルンの狙撃手に撃たれていた。「クリア。よし、次は、あっ」別のポイントで証明弾が上がった。「チッ、いきなりしくじりやがった。ヘマしたスナイパーは営倉にブチ込んでやる!」指揮官オーリスは激怒した。「待てオーリス、慎重に」ベテラン兵のクランクに忠告されたが、「攻撃開始!!」強引に基地攻撃は開始された。多数のギャラルホルンの機体が実弾曲射で砲弾の雨を降らす。「様子を見てきます」フミタンはクーデリアの寝室から離れて行った。ハンガーではスデニ出た三日月に続き、オルガとユージンも背に中継コネクタを付け、出撃の準備をしていた。「俺ら参番組は敵の頭を押さえろ!」上官達が押し掛けてきた。「敵って、相手がわかったんですか?」「そ、それは」オルガの問いに上官は言葉を濁した。
前線で三日月達がギャラルホルンのMWに苦戦する中、社長は自室で鞄に貴金属等を詰め込んでいた。「クソッタレ! 何で奴等が? ウチには大した資産も」金庫の暗証番号を忘れた社長。「確か子供の頃飼っていたメス犬に、資産、メス犬、ササイ!」思い出したらしい社長。本隊との連携もハッキリしないまま無理矢理出撃させられたオルガ達。オルガはビスケットから基地動力以外のエイハブ・ウェーブが観測されたことを知らされていた。MSも、来る。オルガは出撃前にビスケットにいくつか頼んでいった。
オルガは三日月達を補給に下がらせた。指示していると、「オルガさん、俺も出して下さい!」若手のダンジが直談判してきた。「無理はすんなよ」オルガは許可した。ビスケットはクーデリアを連れ出していた。クーデリアは
     6に続く