蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

『卒業記念写真帖 師範科』 東京音楽学校 (1937)

2011年07月09日 | ピアニスト 2 小倉末子

 内表紙には、「昭和十二年 〔一九三七年〕 度 卒業記念写真帖 師範科 東京音楽学校」とあり、下の写真が貼られている。34センチ、厚さ5センチ。

 ・学校長〔乗杉嘉壽〕、校舎前景

  

 ・先生寄書〔欠〕、諸先生
 ・声楽(イロハ順)伊藤武雄先生、田中伸枝先生〔欠〕
 ・長坂好子先生、浅野千鶴子先生
 ・齋藤秀子先生、木下保先生
 ・ピアノ(イロハ順)井口基成先生、萩原英一先生
 ・貫名美名彦先生、小倉末子先生

  

 ・渡邊トリ先生、川上きよ先生
 ・高折宮次先生、田中規矩士先生
 ・室岡清枝先生、宇佐美ため先生〔欠〕
 ・山田菊枝先生、福井直俊先生
 ・見田公子先生、同期本科生全員
 ・定期演奏会 ラダムナヌイオン デ フアウストベリオーズ、ミサ パフヱ マルセリ パレストリーナ  
 ・級会〔欠〕、落書
 ・芝生ニテ、風景(ドーム)
 ・或ル一日 登校、控室(男子)
 ・控室(女子)、授業(山下先生)
 ・昼休ミ、複科
 ・演奏旅行 新潟(昭和九年初夏)、大阪公会堂(昭和十年六月)〔欠〕
 ・大阪 宿屋ニテ 〔二枚〕
 ・和歌山(昭和十一年十一月五日)、奈良公会堂
 ・奈良公園ニテ〔二枚〕
 ・ー朝カラ晩マデー 〔四枚〕
 ・記念祭 A、B
 ・予餞会 A、B


「第四十八回演奏会曲目及梗概」・「慈善演奏会曲目」 小倉末子 (1922)

2011年06月23日 | ピアニスト 2 小倉末子

 表紙には、「 第四十八回演奏会曲目及梗概 独奏者 小倉末子 音楽奨励会 大正十一年 〔一九二二年〕 二月廿五日(土曜日)午後七時開会 丸ノ内日本工業俱楽部」とある。21.3センチ、三つ折れ。

       PROGRAMM

   Ludwig van Beethoven.

       (1770-1827)

 Ⅰ. Op.2,Ⅲ. C-dur-Sonate. … (1795)

     Allegro con brio
       Adagio
          Scherzo (Allegro)-Trio
              Allegro assai

      Pause 15 Minuten

 Ⅱ. Op.27,Ⅱ.cis-moll. Mondschein-Sonate. … (1801)

     Adagio sostenuto
       Allegretto
           Presto agitato

       Pause 15 Minuten

 Ⅲ. Op.53, C-dur. Waldstein-Sonate … (1804)

     Allegro con brio
        Introduzione (adagio molto)
           Rondo (Allegretto moderato-Prestissimo)

    解説

 Ⅰ.Op. 2, Ⅲ.C-dur-Sonate.

 1792年に芸術の都 Wien に移り Haydn の高弟となつた Ludwig van Beethoven (1770-1827)は 1795年に作品二番として初めて三つの大きな Sonaten(f.A.C) を発表しヴイーンの学界を風靡した。此の作品は Op.1, Trios と共に第一期(1770-1800)の作品中重要な意味を持つてゐる。このOp.2 の三つの Sonaten は明に Mozart , Haydn の形式に従つて Allegro-Andante (Adagio) -Scherzo (Menuetto) -Rondo の四楽章に書かれてゐる。乍併三曲は各々異つた感じを持ち、f moll-Sonate の暗い感じに反して、今度弾かれる C-dur-Sonate は明るい歓喜に充満した作品であると批評家は言ふ。
 第一楽章の Allegro con brio は非常に生気のあるもので、此の第二主題は彼が15歳の時故郷 Bonn で作曲した Klavier-Quartett (C-dur) から取つたものである。第二楽章 Adagio (E-dur) は静かな美しい而も明暗と気分に富んだもので Beethoven の新しき批評家 Paul Bekker は Op.2 のすべての楽章中で F-moll-Sonate の第四楽章と此の E-dur-Adagio は途中で一度 e-moll に転調する。第三楽章の Scherzo (C-dur) には Beethoven の特色はまだ出てゐない。Menuetto-Trio の形式に依つたものであるが第四楽章との対照がよいと Elterlein は言ふ。 Trio は a-moll である。第四楽章 Allegro (C-dur) は若い生命に満ちた感じを持つたもので Elterlein は Baccanalia と呼んだ。輝きと力とを持つた此楽章の中頃に dolce で出る F-dur のメロディーは美しいものである。

Ⅱ. Op.27,Ⅱ. cis-moll-Sonate quasi una Fantasia.

 1801 年の作である。此の Sonate は Beethoven の中期(1800-1815)に於て、Op.53 と共に代表的作品であり、又彼の全作品を通じての傑出したものの一つである事は批評家の一致する所である。従来此の曲に就いては、種々の伝説が説かれて来たが、作曲者自身標題楽として書いたのでは無い以上、強いて此の曲の解釈の為めに、月光の曲と云ふ標題の誤謬であつた事を指摘する必要もなく、又 Julie Guicciardi との恋愛問題を此の曲の背景と考へる必要もない。若し失恋と苦悩との精神状態から此の曲が生れたとするならば、此の曲と同時に作曲してゐた Op. 27, I. (E-dur-Sonate) を何んで説明す可か。一体 Beethoven の創作意識は二つの相反した感情内容を持つて同時に二つの作品を作つてゐる。一方が明るく快適であるならば、他方は暗く情熱的である。即一方が多くの場合 Dur であり他方が Moll dである。其例を挙げれば Op. 2 の A-dur と f-moll, Op. 10 の F-dur と c-moll, Op. 27 の Es-dur と cis-moll, Op.31 の G-dur と d-moll, Op. 53 (C-dur) と Op. 57 (f-moll) 又交響曲では6番と5番の如きである。此等は皆二曲づゝ殆んど同時に作曲されてゐる。
 Bekker は此の Op. 27, Ⅱ を其形式から見て Phantasie-Sonate と呼んだ。(Op. 27, Ⅰも同様)此の曲は先づ荒涼たる感じの前奏曲的な第一楽章(cis-moll-Adagio)に始まり、 Scherzo 風の間奏曲的な第二楽章 (Des-dur-Allegretto) に始まり、Scherzo 風の間奏曲的な第二楽章(Des-dur-Allegretto) を経て、精神の叫び、情熱そのものゝ様な長い第三楽章(cis-moll-Presto) に終る。我々は伝説のすべてを捨てゝたゞ Beethoven の絶対的音楽と共鳴したい。

 Ⅲ. Op.53, C-dur. Waldsteinsonate.

 此の作品は Op. 57 (Appassionata)〔熱情〕 と共に、1804 年の作で、彼の天才が最も円熟した時代の作である。此の二曲は共に司伴楽的な形式を持つものであるから Bekker は Konzert-Sonate と呼んだ。若き日の友であり保護者であつた Waldstein 伯に捧げた此の曲は Sonate の中でも最大にして難曲の一つである。此の曲に表現されたものは、音のなし得るあらゆる世界の展開である。五彩陸離たる音の世界と且つ其規模の雄大さとには総ての批評家が等しく賞讃の辞を呈する所である。形式より見れば二大楽章(共に C-dur)からなり、前者は Allegro con brio (4/4 拍子)で、後者は Rondo (初め Allegretto, 2/4 拍子 - 後に Prestissimo, 4/4拍子)である。最初中間の楽章 Adagio は無かつた為め Beethoven の或る友人が余り此の Sonate は長過ぎると言つた。そこで彼は中間の楽章の為めに F-dur-Adagio を書き、第二楽章 Rondo の初めに附けて Introduzione としたのが現今存してゐるものである。Andante の方は単独に翌年出版された。Beethoven は非常に此の曲を好み、Andante favori と呼んで幾度か人の前で弾いたと Ries は言ふ。

  

 公会堂ピヤノ開キ 慈善演奏会曲目

 〔大正十一年〕 十月廿一日(土) 午後七時 於 岡崎・市公会堂 

主催 桜楓会京都支部 
後援 京都市 
後援 大阪毎日新聞社京都支局

 市は私共市民の為に数千金を投じて関西の地には未だ見ぬ優秀なるピアノを購ひ公会堂に備へられました。当会が何か奉仕の企を持つて居りました矢先皆様に之れが紹介の為に働き得られます事は誠に喜ばしい次第で御座います。
 現代女流ピアニストの第一人者東京音楽学校教授小倉末子女史、声楽家東京文化学院講師荻野あや子嬢バイオリスト東京音楽学校講師奥村艶子嬢 伴奏同上宇佐美ため子嬢を迎へて初秋の気爽かなる一夜皆様と共に芸術の妙技をうかがふ事はどんなに幸福で御座いませう。
 小倉女史の天才的芸術については既に皆様ご承知の通りで今更改めて申上くる迄もございませぬ荻野、奥村、宇佐美、三嬢は共に新進音楽家の妙手として東都の楽壇に名声嘖々たる方々許りで御座います。殊に小倉氏の曲目中には 畏くも嘗て 皇后陛下が音楽学校へ行啓の砌(みぎり)御前演奏の栄誉に浴した同氏得意の名曲も入れられて御座います。
 斯る卓越せる方々によつて初めて開らかれるピアノの幸ある将来と、かゝる優秀なるピアノによつて益々向上さる可き旧都楽壇の光ある将来とを思ふて祝福する時、私共は皆様と共に欣喜の情を禁じ得られない次第で御座います

 曲目

 一、ピアノ独奏:    小倉末子
    狂想曲(歌劇『アルツエステ』中の舞踊曲より) ‥‥ グレツク
                                      サンサーン編
 二、ソプラノ独奏:   荻野あや子
     イ、悲歌(ヴアイオリン助奏) ‥‥ マツスネー
     ロ、ソクヴエーヂの歌     ‥‥ グリーク
     ハ、〔汝が碧き眼を開け    ‥‥ マツスネー
 三、ヴァイオリン独奏: 奥村艶子
     熱情的幻想曲(第一楽章)   ‥‥ ヴユターン

            休憩

 四、ピアノ独奏:    小倉末子
     イ、夜の曲          ‥‥ スガムバテイ
     ロ、泉のほとり        ‥‥ リスト
     ハ、前奏曲          ‥‥ デビユツシー
 五、ソプラノ独唱:   荻野あや子
     抒情調(歌劇『お蝶夫人』より) ‥‥ プツチニー
 六、ピアノ及ヴァイオリン二部合奏:     宇佐美ため子 奥村艶子
     ソナタ(長へ調第一楽章)   ‥‥ ベートヴエン
 七、ピアノ独奏:    小倉末子
     變奏曲(作品二十一番)    ‥‥ ブラームス

             伴奏:    宇佐美ため子

 なお、同日同時刻は、アンナ・パヴロワの京都公演 〔於 南座〕 最終日開演予定時間でもあった。