蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

「音の製作 濟韻」 (鈴木バイオリン) (1931.6) 

2020年11月06日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 向暑の砌り益々御健祥欣賀の至りに存じ上げます
 さて此のたびバイオリン製作で御承知の鈴木政吉氏に依りまして樂器の鳴音を開發する玄妙の工術か發明されました
 此の工術は樂器に對する機能の薫陶法とも見るべきものでありまして施工の目的は各種各箇の樂器が非常に長年月よく彈き込れて眞の能力を發現したると同樣の狀態に致さんとするものであります(詳細は別紙説明書に依つて御參照下さい)
 鈴木氏の濟韻の工術は和洋管絃或ゆる樂器に通じて鳴音を美化增大にする事を得ますか氏はバイオリンの創始前三味線の工人として名聲あり又製作研究に就ての蘊蓄を有して居らるゝ關係より三味線の濟韻は殊に得意とせらるものゝ如くでありまして既に其施工の結果は斯界の元老稀音家六四郎師杵屋佐吉師並に今井慶松師等の夙しく絶賞されて居るところであります
 尚最近我國音響學の泰斗東京帝大教授小幡博士の感激の許に濟韻が樂器の發音に及ぼす狀態を仝博士自ら音波寫眞に依つて証明すべく着手中の由であります
 實に此發明は近代楽界の快事と存じまして此工術の博く樂壇に活用せらる時の速かならん事を切望するものであります
 就きまして本協會としては會員諸氏のために此の濟韻の施工を最も便宜に御利用の途を講じ度く考へまして鈴木氏への交渉の結果左記の特典ある豫約申込の方法を設け御希望の方々へ御需めに資す事と致しました
 施工の性質工程等の關係より御引受の數量時期等に制限を余儀なく致しましたが此点は宜しく御諒察頂きまして此機會に精々御申込願ひますれば本懐と存じます

  昭和六年七月
          名古屋長唄協會
  會員
            殿

    
   鈴木政吉氏  施工豫約申込規定
   三味線濟韻

一、本規定ニ依ル申込ハ   名古屋長唄協會々員に限る
一、申込受付定數      三味線 五十挺
一、申込受付期間      昭和六年七月廿日ヨリ仝八月卅一日迄
                但し申込定數に達したる場合は期間中と雖も締切ります
一、濟韻料         貳拾圓(一般施工料卅圓以上ノトコロ)濟韻施工濟の上現品と引換拂
一、申込方法        別紙申込書に依り本會事務所宛(名古屋新聞社内)申込マレタシ
一、施工及現品受渡しに就て 濟韻の施工は約一ヶ月の時日を要しますが十挺位同時に着手致しますから毎月十挺位の施工を完了する事が出來ます
             着手は御申込順に致します御申込を頂きますと術者から豫め着手の時日の回答を申上げます樂器は其日取の前に市内東區東門前町鈴木樂器店(電東一一六三)へ御届け下さるか又同店へ御申付けになれば店員御伺ひして樂器を頂きます
一、濟韻の証明       濟韻施工したる樂器は術者の証印を押捺して永久に價値を証明致します
一、御斷り         濟韻の施工の爲め樂器の原形等を變化する等の事は決してありませぬが三味線の皮は氣候其他の原因にて時としては破れる事がありますのでこれだけは豫め御許しを願ひます

  昭和六年七月
             名古屋長唄協會  

    鈴木政吉氏  施工豫約申込書
    三味線濟韻

 貴會御取扱ニ關ル三味線濟韻施工申込候也

       住所
        氏名
            電話    局     番
  昭和六年七月 日

 名古屋長唄協會御中

   

   樂器製作上の一大發明
 音の製作  濟韻

  樂器の革命的大發明
   鈴木政吉翁 濟韻(音の製作)に就て

 バイオリン製作者としての一生を記念すべき名作品の完成を多年の宿望として居りました鈴木政吉翁は偶々先年伊太利の古名器カルネリユースの力作品を入手した事に因を發し不撓四十余年の体驗と驚くべき製作の天分を以て二百年來失はれておつた音の製作秘訣を探り茲に劃期的の大成をとげ其製作品を遠く獨逸の樂壇に最初の發表を致しまして一躍歷史的の名作家として世界の斯界を驚嘆せしめたる事蹟は恐らく諸賢の御記憶に新しき事と存じます
 音の製作は二百年前伊太利クレモナに於てバイオリンの製作を完成せしめた不出世の名匠ストラデヴァリー氏並に共にクレモナの双璧と稱へらるゝカルネリユース氏兄弟等の大匠が創始の秘技であつたのでありますが其等巨人の沒後此の大藝術は繼承するものなく遂に廢滅に歸し再び彼等の手に成つた如き名作品は産出を見る事が出來なくなつたのであります爾來世界中樂器の製作に手を染むる者委くが其秘技の發見に努めて來つたのでありますが成効を見ず世に「クレモナの秘密」と稱せられ樂器研究者の永久の謎として殘つて居るのでありました

     音の製作發見

 多年世の製作家科學者の献身的の研究も成効に至らなかつた音の秘訣が我が鈴木政吉翁に依つて大成された事は實に世界の驚異であつた次第でありますが翁の四十余年獨創の研究と偉大なる才能は嘗て如何なる製作者も考へ及ばなかつた着眼と獨步の研究に進んだのでありました一例を擧げますと從來バイオリンの製作の研究は器体の完成と云ふ事のみに注意されて居りまして從て材料原料の精選構造仕樣の方法等は可なり精細の研讃が成されてありましたが翁は此等の器体の製作は樂器の素質を構成する重大なる基礎工程ではあるが眞の音の製作は其上に更に高級の工術あると云ふ事を觀破したのでありました而して專ら其施工に就ての考究に沒頭致しましたが遂に翁の超人的の受感性が古名器に打込まれて居つた名工の氣魂に観應するに到つて茲に始めて二百年埋もれて居つた音の秘密は翁の手中に握られる事となりました。
 更に驚くべき事は斯くて翁の体得したる音の製作術はバイオリンにのみのものではなく管絃金石すべての樂器の音の製作術である實に樂器製作大乗の妙諦であつた事であります

     濟韻の成案

 爾来翁は此妙技を振つて自作の絃樂器の製作に專念して居りましたが過般此音の製作術を器体の製作と分離して加工し得る工案を得たのであります從つてバイオリンのみならず箏 三味線 尺八等の樂器にて翁の製作に依らざる既成のもの或は各位の御使用中の各種樂器へ施工して其鳴音を著しく美化増大に致す事か可能さるゝ事となりました、翁は此珍しき工術を樂器の濟韻と名稱致して居ります
 全く此工術は空前のものでありまして勿論翁の獨特の靈感に依つてのみ爲されるものでありますが濟韻施工の結果を最も判り易く申し上げますと御承知の如く樂器を永年彈き込みますと良き鳴音を發韻致します而かも名手に依つて其れが成されたる場合は一層光輝ある發音に致されます其原因は正しく彈き込まれる事に依つて音の道が啓かれるのであります云ひ變へますと樂器の性來含有して居る機能が漸次其働きを擴張され段々能力を發展する結果に他ならないのでありまして他から音を塗殖するものではない事は恰も天然の寶玉が磨かれて光輝を發すると同樣であります
 然るに樂器を彈き込む事に依りて樂器の眞の能力を發露せしめる爲めには非常の永い年月を要するのであります其爲めに事實としては音の全能力の發する前に器体其物の生命が保たない塲合が多いのでありますから何時の時代にも鳴りの名器は存在が尠いのでありますそこで翁の濟韻は一種の超人的の施工を以て樂器が非常なる年月正しく彈き込まれたものと仝樣の狀態に器体の機能を置く樂器製作の革命的の大藝術であります
 而して濟韻は決して科學的の裝置或は藥品等の塗殖的の差用に依るものでなく徹底して其樂器の箇性素質に應じて其全部の能力を啓發するにあります而も其効果は恐らく各位の御想像を越へるものと信します尚又此施工の爲器体の外觀は素より内部仕樣の何物にも何等の加削を用ひませんから豪も原態を損しないのであります     

     濟韻の結果を大方の發表

 最近翁は和洋各樂器に濟韻の施工を致しました結果を東都の斯界の權威方へ披露致しましたところ絶大の御賞讃を得尚即座に御秘藏の名器へ施工を依囑さるヽ向もあり翁は至大の面目を得ましたが尚斯る發明は樂界のため博く紹介し世の愛樂家の樂器の能率增進のため一般の需めに應して施工すべく切なる御勸めがありましたので翁も其旨を体して今回取扱ひ一切を弊社へ任しまして大方の御需めに從て妙技の施工を開始する事と成りました

     濟韻施工御申受に就て

 今回以上の次第に依りまして鈴木政吉翁濟韻施工に就ての御用申受其他一切の業務を弊社に於て取扱ふ事となりました
 就ては此空前の藝術を最も御便宜に各位の御需めに供へる事は多年の御恩顧に報ゆる一分であり又幸ひ其施工が御愛器の眞價發揚に資し引ては樂界に聊かたり共良果をもたらす事とも相成りますれば此上もなき光榮と存じます
 何卒此新しき藝術につき充分の御理解を賜りまして續々の御用命仰付けられん事を伏て懇願申上る次第に御座います

     濟韻施工樂器の種目及施工料

 濟韻を施工の樂器は當分左記の種目と致して居りますが其他の樂器に就て御希望の御座いました節は一應御紹會を願ひます
   一 (洋樂器) バイオリン、マンドリン、ギター、及同系低音樂器
   一 (邦樂器) 箏、三味線、皷、尺八、横笛類
   一 濟韻料     一器       参拾圓以上
   一 特別濟韻料 
        二重濟韻         五拾圓以上
        三重濟韻         百圓以上
   但し特別濟韻は樂器の素質が普通濟韻を施工の上尚其以上に細密に渉つて重ねて濟韻する事に依り最高の目的に至る見込みあるものに限り御希望に依つて施工を行ひます、施工を重ね益々細密に渉て濟韻する事に依つて音の美は完成されるのであります
濟韻の御用は左記の承り所へ御申付を願ひます
      以上

  昭和六年六月      鈴木バイオリン製造株式會社

  濟韻御用承り所   名古屋市東區東門前町
              鈴木樂器店
                電話東一一六三番
            東京市四谷區内藤町一番地
              鈴木バイオリン東京營業所
                電話四谷五六四六番
            大阪市東區淡路町三丁目二六ノ二
              鈴木バイオリン大阪營業所
                電話本四六六八番


『白眉音楽評論』 創刊号(1925.9)

2019年12月10日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

   

 白眉音楽評論
  編輯 伊庭孝・小泉洽・堀内敬三  大正十四年九月 No.1 創刊号

 内容目次

 ▽目黒楽話 伊庭生
 ▽音楽の高価 上司小剣
 
  ジル・マルシエツクスの宿
 
 ◎今秋の楽壇に、多くのピアノ愛好家から期待されてゐるジル・マルシェックスは、最近にロンドンに於て、数回のレサイタルで、大喝采を博した近代的ピアニストである、が、是をわが国に招聘したのは、薩摩治郎八氏で、先年徳川頼貞氏が、ホルマンを招聘したやうに、大金を抛って、この巨匠を迎へるのださうである。
 ◎ジル・マルシェックスの演奏曲目は既に発表されてゐるが、氏のレサイタルは毎晩ではなく、その間に一週間ばかりの間隔がある。是は曲目が曲目だけに、その間に楽匠は魂を休め、指を走らせて練習をする休養と練習の期間であらうと思はれる。
 ◎薩摩氏はジル・マルシェックスを、ホテルには泊めないで、静かな処で練習させるといふ約束をしたさうで、目下同氏の駿河台の邸内には、楽匠の為めに静かな一棟が建築されつゝあるとの事である。
 ◎最も贅沢な演奏ではある。しかし、是が本当の楽匠の「招き方」ではなからうか。音楽はかうして聞かす可きものかうして聞く可きものである。(K)
  
 ▽本の値段と音楽研究者 小泉洽
 ▽写真の人(野村光一氏) 堀内敬三
 ▽白眉ハーモニカ楽譜使用者に 春柳振作
 ▽寄席にもピアノ一台 青柳有美
 ▽今年読んた本より 伊庭生
 ▽オルンスタインと其の作品 伊庭孝

 チヤイコウスキイの「船唄 バルカロール」(ヴァイオリン独奏曲
                      レオ・オルンスタイン編曲〔楽譜〕 
 ▽去る人来る人
 ▽椋鳥通信

 編輯後記

 ◎足掛三年来、音楽愛好家から驚異の眼で視られてゐた「白眉月報」は、たうとう普通の形の雑誌になった。そのために「月報」は自然廃刊になったわけであるが、色々編輯上の都合や何かで、七月号と八月号とをお休みしたのである。白眉愛好家の中には、月報の届かぬのを不思議に思はれた方も、少くないと思ふが、そのお埋め合わせには月報の倍以上の内容ある「白眉音楽評論」をお送りするのであるから、どうぞ悪からず思召し下さい。
 〔省略〕
 ◎尚、本誌は、他の音楽雑誌と違って、楽団以外の社会的地位ある諸大家の言説を多く掲載することを特色としたいと希っている。〔以下省略〕
 ◎本誌の特色とするのは、「質疑欄」と「好楽クラブ」とである。〔以下省略〕

 白眉音楽評論
  編輯 伊庭孝・小泉洽・堀内敬三  大正十四年十月 No.2

 内容目次

 ▽世界の音楽 ✕✕✕✕
 ▽目黒楽話 伊庭孝
 ▽続ゴトフスキイ論 鈴木賢之進
 ▽楽蝶譚語 小泉洽
 ▽音楽春秋
   ▽悪口雑言(堀内敬三)
   ▽無題(増沢健美)
   ▽楽壇忠臣蔵(てれめん散)
   ▽楽壇意見帳(大久保彦左衛門)
   ▽飢放送(如是空)
   ▽音楽春秋ABC(渋井三七)
 ▽今年読んだ本より 小泉洽 
 ▽寿命とは? 春柳振作
 ▽オルンスタインと其の作品 伊庭孝

 ダ・ウィドヴァイオリン練習曲 
                   作品第二十四の十五 〔楽譜〕

 ▽ハクビ小学唱歌に就て 小田島樹人


「日本の洋琴製造者」 (松本新吉) (1902.1)

2019年09月26日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 日本の洋琴製造者

 日本が過る数年間になせる工業上の大進歩は人をして驚嘆に堪ざらしむるものあり、何れの方面に於ても其国民が容易に西洋文明を適用するの力量を示しつゝあり、今やピヤノ及びオルガンの製造も亦進歩的日本人の注意する所となれり、勿論オルガンの製造は既に幾年かの以前より之に従事したる者あれども、ピヤノの製造に至りては、此度松本新吉氏なる人物が之に着手せるを以て其嚆矢となす。
 松本氏は嘗て数箇のピヤノを据付たる経験より、自ら進んで此ピヤノ製造に関する一切のことを熟知せんことを志し、此目的を齎らして米国に来り、東西諸州の数多き大製造所を巡覧せり、其紐育に来るや間もなく有名なるブラドバーリのエフ、ジー、スミス氏に遇ひ、氏の懇篤なる薫陶の下に、委さにピヤノ製造の技術を学び、終に調律の業をも卒ふるに至れり、スミス氏及び氏が製造所の総理は共に大に松本氏の力量を称賛しつゝあり、松本氏は其以前と雖も既に日本に於て、最も調律のことに通じたる者として知られ、暫の間は殆んど日本唯一の調律者たりし者なり、今や即ち新に其本国に帰り、ピヤノ製造の上に熟練の技を現はさんとす、其目論見は米国風のピヤノを日本向きの大さに製造するにあり
 米国のピヤノ製造者は、東洋に於ける此最初のピヤノ製造を、深き注意を以て視察すべきなり、或ひは日本人民は音楽的の国民にあらずと云ふものあれど、東京に於ては夙に音楽学校の設ありて、多くの日本学生が之に充実せる如きは、以て其如何許り音楽を愛好するかを示すものなり、亦日本の貴婦人は西洋風の音楽、楽器を愛好するが故に、亦速かにピヤノを用ふるに至るべし、ピヤノの五箇のオクターブを有するものは、恰かも日本の家屋に適するものなり、蓋し米国風大形のものは、日本家屋に適せざるが為なりと云ふ
 (紐育ミュージック、ツレード、レビュー)

 上の文は、明治三十五年〔1902年〕一月廿一日発行の『出版月報』 第三号 雑録 出版月報社 に掲載されたものである。
 なお、同号には、下の新型オルガンの広告も掲載されている。
 
 

 謹賀新年
  遊戯用教授用新形風琴披露

 遊戯用風琴ハ欧米両式ノ長所ヲ採リ我国ノ風土ニ適スルヨウ制作シタル古今未曾有形(従来我国ニテ多ク仕用シ来リシ米国式室内風琴装飾附トハ異リ)平形ニテ重量軽ク発音強大ニシテ優美(音笛袋等ハ米国最上等実ニ五十年ノ仕用ニ耐ユルモノ)調律ハ米国ニウヨークブラッドヴェリ楽器製造会社ニテ第一位ノ修業証書ヲ得タル所主担任スレバ其音律ノ正確ナルト永久音調ノ狂ハザルコトハ比類ナカルベシ

 楽器目録進呈 要郵券二銭

     東京市京橋区新湊町五丁目一番地
       ピアノ、ヲルガン製造所主
   米国音楽得業士  松本新吉
               電話新橋二二九八番 


『音楽倶楽部』創刊号 東京演芸通信社(1923.3)

2018年09月24日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 

 音楽倶楽部 創刊号 学生音楽号

   東京演芸通信社発行   大正十二年三月一日発行

 表紙(奏で終りて)
 口絵(静)
 楽譜(最新流行歌アラブの首長)  デッド・シニイダー作曲

 記事
 ◇音楽趣味の振興策 渡辺鉄蔵
 ◇学生が音楽に親しむ利と害と 大塚淳
 ◇美的情操涵養と女学校の音楽教授 永井郁子
 ◇音楽を実生活に結び附ける独逸の楽聖 岸辺福雄
 ◇楽聖音楽団と其指導者へ 小松平五郎
 ◇学生の横断的音楽連盟の建設 田尻英彦
 ◇楽界風聞録 楽阿彌
 ◇お前の頭は何故禿げた 逆蛍生
 ◇女流音楽家出世の秘訣(漫画) 山田みのる
 ◇唯だ一つの音 門馬直衛
 ◇近代音楽と恋愛 ローレンス・ギルマン
 ◇歌劇私見 曽野功
 ◇王と音楽
 ◇簡易作曲法(単音曲の作り方) 紫陽花人
 ◇歓びに満てる三月の楽壇 松野信太郎
 ◇学生音楽欄

  学生音楽団評判記
  慶応義塾ワグネルソサイエテイの歴史


 慶應義塾
  ワグネルソサイエテイーの歴史
                  小松平五郎
 
 ワグネルソサイエテイーの創立は明治三十五年の五月十四日であります。創設前は、只今三越の楽器部の主任をしてゐられる秋葉純一郎氏であります。
 当時の日本洋楽界は、恐らく、今から比べて見たら随分滑稽な程幼稚なものであったに違ひありません。然かし其の時代に於て、学生の最初の音楽団として我がワグネルソサイエティーの生れた事は、さすが、明治の大偉人、福沢諭吉先生の門に学ぶ、自覚せる我が慶應義塾の学生にして初めてなし得た事と思ひます。我田引水の様でありますけれども、我々は実際其の事を深く感じてゐます。
 恐らく当時の学生は、故意に、破れた袴、汚ない帽子、それに太いステッキに高足駄と云ふ様なものをうがち、市中を悠々と横行闊歩するのが自分達の本分と思ってゐた時代だったに違ありません。そういふ学生間の気風だった時代に、音楽、然かも所謂毛唐味タップリの西洋音楽の団体が学生間に生れたと云ふ事は随分と破天荒な事だったと思はれます。
 会名は、秋葉氏の同志十数名が協議の結果楽聖リシヤルトワグネルの名を取ってワグネルソサイエテーとする事にしました。そして独立自尊の我が三田山上の学生生活に此の新声を鼓吹して学生間に一新生命を開拓しやうと云ふ堅い決心の下に創立されたのでした。
 最初の年に声楽部を設け、鈴木米次郎(現東洋音楽学校長)に就きて声楽の練習をし、後石垣六三郎氏に就きて勉強の余暇驚くべき熱心を以って練習しました。創立当時は僅か十数名の会員でありましたが翌年にはこれに倍し、翌三十六年正月に、初めて、金須嘉之進氏を聘して器楽部を設け先づヴァイオリンを練習することにしました。
 第一回の演奏会は、三十六年三緣亭に大学倶楽部の会合が開かれた時、初めて演奏会なるものが開かれました。が恐らく余興的の初めての試みであったにもかゝわらず、意外にも非常な歡迎を受けました。これに力を得た会員は、財政上非常の困窮に出会したにもかゝわらず、福沢先生も非常に援助されて福沢家のピアノを貸して下すったりしたので練習を怠らず続けました。当時塾の外人教師ヴィッカース氏夫人なども大へん同情して下さり無報酬で指導をして下いました。三十六年五月には、初めて公開の演奏会を今の旧演説館で開きました。其の時のプログラムは、会員の演奏としては単唱音歌二曲で、他は楽友倶楽部の演奏が主でした。
 第二回の演奏会から器楽部も活動し三回目からは、曲目を一部二部に分って、一部を会員二部を専門家と云ふ風に、それに其の頃上野の音楽学校以外では聞く事の出来なかった四重唱のコーラスなども演奏したのであります。
 やがて器楽部も益々整頓して来て、セロ、ヴィオラなどを買入れましたが、此処に特筆大書すべき事は、其の時買ひ入れたセロは、我が日本で作られた(鈴木製)最初の二ツの中の一ツである事で実に貴重なる記念品であります。今もまた此のセロを会員が使ってゐます。
 第四回の演奏会からはプログラムを稍今日に等きものとなり、宮内省雅楽部のオーケストラなども演奏しました。又二部の終りには、伊十郎の長唄などをも取り入れました。これは基本金を演奏会に依って得ん為の新しい試みでした。それ程当時に於ては西洋音楽は一般的ではなかったのです。元来から云へば此の種の学生の会に入場料を徴集する事は好ましい事ではありませんが、然かし学校から何等援助を受けていない独立会計のもとにある此の会は、さうした事で基本金を得なければならない事は止むを得ない事だと思ひます。
 明治四十四年は丁度慶應義塾創立五十年祭がりまして、我がワグネルでも、両部の大活動に依って始めて、ワグネル作の、タンノイザアとローエングリンとを演奏するに至りました。
 そしてこれを一転期として、ワグネルソサエテイーの面目は一新し、学生音楽団の随一として春秋ニ季の大会は凡ての好期家より期待さるゝの有様となりました。
 大正四年には現在の大ホールも出来上るし、演奏会も此処で開催する様になってからは、会員の増へ、聴衆も演奏会毎に増加し、従って今迄窮迫してゐた財政上の困難も追々と順調になり翌六年には初めてピアノを買ひ入れる事が出来ました。それから管楽器も一と通り揃ひまして今では、全然会員のみにて不完全ながらもオーケストラを演奏する事が出来る様になりました。これ迄になりますには随分と先輩諸兄の苦しい奮闘振があります。従って現在に於ては其の基礎の確実な事に於て確固たるものがあります。
 現在の会員は約百五十名程居ります。そして声楽、器楽の二ツに分れ、声楽の講師は、大塚淳氏、器楽の方のヴァイオリンは田中英太郎氏、セロに高勇吉氏、ピアノにゼームスダン氏、以上三氏は目下独逸に遊学中でありますが、何れ帰朝の暁には、再び我がワグネルソサエテイーの為に御尽力して下さる事になってゐます。
 目下ヴァイオリンは、栗原大治氏、杉山長谷夫氏に、声楽は、大塚淳氏につき毎週二回の練習をしてゐます。其の他有志は船橋栄吉氏、柴田知常氏の下に其の指導を仰いでゐます。又管楽器は、陸軍戸山学校の好意に依り毎週其の教を受けてゐます。
 我がワグネルソサイエテイーの生んだ音楽的知名な人々には、かなりたくさん居ります。中にも加藤武ニ氏早川義郎氏の如きには、其のヴァイオリンに於て、下手な上野出よりは数等の確実さがります。加藤氏は昨年推選されて東京シインフォニイのセカンドヴァイオリンを弾きました。尚セロには出雲商会主の川崎甲子男氏、声等に堀江満氏が居ります。
 堀江氏は、選抜されて混声合唱団の一員となり、バスの少ない我が楽壇に偉才を放って居ります。
 現今の会員にも偉才が少くありません。バリトンの有馬大五郎氏、バスの猪飼正一氏等で、殊に猪飼氏は船橋栄吉氏の高弟であす。
 以上、ワグネルソサイエテイの起原及現在の大体であります。
 最後に、当会の会長は、文学部教授田中貞一氏の死後、経済学部教授にして塾内随一の音楽通、小泉信三氏をお願いしてゐます。(終)

  立教大学音楽部の此頃 川上忠男
  法政大学音楽部の創立より今日まで 丁生
  帝大音楽部の過去と現在

 ◇楽界消息

  □久野久子女史(洋琴家) 五月独逸に留学する為め二月二十四日、五日の両日午後二時より東京音楽学校に送別演奏会を催す、曲はベートーベンの後期作品を選ぶといふ尚三月一日名古屋、三日京都、四日大阪、五日神戸と各地演奏旅行を企だつる由
  □小倉久子女史(洋琴家) 赤坂区榎坂町五番地に移転せり。


「楽器ヴヮイオリンの製造家鈴木政吉君」(1905.11)

2018年07月26日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 

 楽器ヴヮイオリンの製造家鈴木政吉君 

 我国にてヴヮイオリンを手にするもの鈴木政吉君の名を知らざるなし、然れども君がヴヮイオリンの製造に就て幾多の艱難辛苦を嘗めて、而して後ち今日の成功を得し実歴を知るもの極めて稀れなり、記者此頃君を知れる二三の人々に就て纔 わずか に其実歴の一端を知り得たれば、世の青年立志の一助にもと思ふて、左に其概略を記すこととなせり。
 君は安政六年当市宮出町旧名古屋藩士御先手同心の家に生れ家巖を正春君と呼びて、勤務の余暇には手内職として三味線の製造を営まれしかば、君も亦た幼より父君の業を助け為に多少音楽の趣味を解することゝなりて、後年ヴヮイオリンの製造には此素養が第一の因をなせりとぞ。
 其第二の因とし見るべきは明治初年旧幕の各藩に於て英式の調練をなせし際、名古屋藩に於ても同じく其事ありしかば、君も徴されて楽隊手となり太鼓の稽古に怠りなかりき、然れども当時の君は父君の業を続で三味線の製造人たるに心なく偏に後來天下の大商人たらんことを期して、楽隊勤務の傍らに専ら英学の修業に勉めたりといふ。
 歳十五の頃其童心に想へらく、我家貧にして専心修学に由なし寧ろ此際東都に出でゝ苦学をなさんものと、即ち父君に其志を告げて上京し塗物を業とせる親戚某氏の家に食客となりぬ、然り其実は丁稚奉公にして日夜塗物の手伝にのみ忙しく終に修学の暇を得ざりしといふも、畢竟するに此塗物業の手伝をなせしは、後日又たヴヮイオリンの製造に関して直ちに第三の素養となりしなり。
 歳十七にいたるまで東都に在りしも、同年春父君よりして再三帰郷を促し来りしかば遂に止むなく帰郷して、再び父君の業を助けて不愉快なる消光をなすことゝなりしに、其後父君は家禄を奉還して専ら三味線製造業を営むことゝなり、且つ幾年ならずして逝去せられしかば君は則ち父君の業を続き現今の住宅なる東門前町の近傍に借宅せり、当時君は偶同業者の集会に列席せしに、席上或一人はいふ此頃東京に於て音楽取調所なるもの新たに設立せられ今後大に斯業発達の望みありと、君は此談を聴き、翻然昔日の素志を抛ちて一生音楽の研究に其身を委ぬることに決心し、先づ三味線の音色を分別するに苦心せり、而して其ヴヮイオリン製造の研究に着手せしは実に明治二十年冬の頃なりしとぞ。
 明治二十年の冬君は業務の余暇に、時の愛知県師範学校音楽教師恒川鐐之助君を師として唱歌の稽古を励みおりしに、一日同門生なる甘利鐵吉なる人ヴヮイオリンの模造品を携へ来りて其教授を受くるの状を熟視し、且つ該楽器の西洋各国い於て非常に流行するの実情をも聴きて直ちに以て其製作に従事せんことに志し、以来用材の研究等に数多の苦幸をなし漸く翌二十一年二月始めて一の模造品を製出するに至り、該品をば恒川氏に示せしに氏は比較的好良なりと称讃し又た各所よりの注文も少からざりしかば、遂に君は殆んど本案なる三味線製造業を廃して該品の製造にのみ出精するに至れりと。然るに当時岐阜県師範学校に於てヴヮイオリンの舶来品を購入せりとの報に接せしかば、君は自家製品と比較して其優劣を知らんと欲し、同地に赴きて時の同校音楽教師亀井虎次郎君を訪ふて来意を述べ先づ舶来品を一見せしに、其製造は何れの点に於ても精巧の妙を極めおりて君が製品と比較しては殆んど人造物にはあらざるかとまで疑はれ、且つ亀井氏は君の製品を指して児童の玩具にだも劣れりと酷評せしかば、君は此際断乎該器の製造を中止せんかとの感を起すにさゑ至れりとぞ。
 然れども由来不屈不撓 ふどう の精神に富める君は、爾来三年間愈々侵食をも忘れて該品の製造研究にのみ熱衷し、漸く用材に就て多少得る所ありしも猶発音に関しては毫も得る所なかりしと、而して此間に於ける君は漸次資本の欠乏を来たし、実に人世悲惨のあらゆる苦味を嘗め尽せりといふ。
 試みに直接君に対して発音に関する苦辛談を聴かんか、君は唯纔に二十三年五月上京して時の東京音楽学校御雇教師ヂットリヒ氏に就き、自製品の試験を請ふて多くの注意と訓誨とを與へられ為に大に得る所と自ら確信する所ありて、帰途初めて関東地方の一手販売を共益商社と特約し、猶舶来品一箇を購入し来りて爾後該品を常に己が座右に置きて各種の工夫をなし、或時は殆んど茫然自失して家人よりも狂せしかとまで疑はれしも、終に二十四年の秋に至りて己が製造の手加減に依りて自由の発音を得ることを自覚せしのみと答へん、然り君が其自覚を得るまでのは百苦幸は決して筆紙の能く尽し得べき所にあらずして又た尋常人の企及し能はざる所なり、想ふに此間君は其衣食住にも窮せしとあらん、又親戚故旧よりしては其研究を全廃すべしとの注意を受けしこともあらん、而して君も亦た数日自ら長嘆息にのみ耽りおりしとあらん。君が苦幸は独り該器の製造に関してのみならず、三十三年の頃新に東新道町に其製造工場を設置するに当りては、更に製造に要する諸般機械の発明にも其心を苦しましめ、而して漸く今日の現況と成功とを見るに至れるなりと。
 君が発明製造のヴヮイオリンは、決して君が新発明にあらず又た専売特許品にもあらざるも、其多年苦辛の効果は到底他人の能く模造し得る所にあらずして、為に内外国の博覧会には常に優賞を受け、隨つて外人よりも逐次注文を受くるの好況に進みしを以て、勿論我国にても今日にては全く該器の輸入を仰がざることゝなりしといふは実に邦家の為に慶すべきことなり。
 猶曩 さき に新設せし東新道町の工場は、此頃狭隘を感ずるに至れるを以て更に工場の増築を計画し、且つ今後大に米国に向つて輸出を計らんとの準備中なりといふ。
 因に中京音楽院は君が斯道の発達を以て設立せしものなるが、其今後の隆盛は、君が事に熱心なる性情を知れるものゝ等しく共に期して疑はざる所なり。

 上の文は、明治三十八年十一月一日発行の雑誌『関西評論』第六号 発行所名古屋市関西評論社 の人物伝評に掲載されたものである。下は、その雑誌にある広告である。

 


『STEINWAY』 MIKI GAKKITEN (1927)

2017年02月01日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

  

  STEINWAY  

Sole Agent MIKI GAKKITEN OSAKA, KOBE

 A modern Grand Piano - a Steinway - silent, modest- its exterior shining like black diamonds - plain and yet distinguished - a little jewel, - thus it stands before you.
 You lift the top. The plate, iron throughout and cross-stringed, helped Master Henry Engelhard Steinway to achieve his first great success in 1855. A mechanism in scrupulous order and yet bewildering. There is a golden glitter. One divines dormant powers.
 Awakening!! - Gently the pianist`s hands move over the ivory keys. He caresses the Grand, makes it chat, sing - clear as a bell it rings - a world comes to life!
 
 The Grand prances and trembles with subdued force, waits to raise its powerful voice. A sonorous bass not l unlike rumbling thunder gives way to sphereal sounds of sweet treble. Bravely competing with the Orchestra of many and various voices it defies the charge of wind- and string-instruments.
 Perfection! Highest accomplishment of human knowledge!
 The development of our piano has passed through a wearisome state until it became as Grand or as Upright the most popular musical instrument. Step by step its forerunners hard to fight their way through to the primitive hammer piano, as the following pages will divulge in gross outline.
 They were chiefly German Piano Makers who had the greatest share in the rapid development of their trade in the nineteenth century, among then especially : H. E. STEINWAY and his sons who, however, attained their greatest success after they had settled in New York. Their inventions gave the piano manufacture of the whole world the decisive tendency. Since the year 1853 four Steinway-Generations have kept up the new way of manufacturing their pianos and by assiduous efforts have brought it to the perfection of to-day.
 An illustrated booklet entitled “ Steinway Construction ”shows the most important characteristics in the Steinway Grand and Uprights whereby their commanding position has been secured since many decades. The booklet is free of charge at the disposal of interested parties.
 In the year 1867 at the Paris world exhibition - world exhibitions of that kind which rightly merit their name have been few and few and far between, at which all important countries were actually represented by their best accomplishments - Steinway & Sons were distinguished with the first prize, the Gold Medal, from which time the victorious career of the “ Steinway ” was irresistable. More than a quarter of a million Grands and Uprights have left the Steinway factories, in New York as well as in Hamburg and have found buyers in all countries. They are as a comrade indispensable to the most famous pianists, servitable at most Academies of Music and adorning the saloons of large Ocean Steamers.
 Three qualities, before all others, have paved the way for the success of the Grand and Uprights of the firm of Steinway & Sons in all parts of the world : Perfect touch, inimitable volume of tone and unsurpassable durability. In spite of their insignificantly higher prices they are the cheapest piano fortes, if durability and length of service are properly taken into account.
 Even “ Veterans ”of sixty years` age and more, we come across again now and then, have kept their youthful freshness. The Steinway - tone is unvariable ; it does not know any whims and no aging!
 If you cannot find accommodation for a Steinway Concert Grand in your home, you will obtain in our Miniature and Parlour G
rand and Upright Pianos instruments with similar unparalled merits which have decided the pick of international eminent pianists to play exclusively our instruments. These artists are avowed Steinway adherents on the strength of many years' practical experience!
 All Steinway Models, Grands and Uprights indifferent sizes which have been designed on a physical and acoustical basis show the same unattainable advantages. They pay homage to our instruments in superabundant superlatives. Hundred of artists` testimonials - written of their own accord and fully convinced - might guide you when purchasing a piano.
 Even though the distinguished elegance of our regular cases will satisfy every music lover`s taste as their neutral lines will happily match with any kind of furniture, we have abundant experience in executing pianos from own and given designs, in all conceivable kinds of wood and style, and decorated with precious material. Applications for illustrations of previously supplied splendid instruments are invited. You will also find in this booklet illustrations of few Steinway Grand in designs of historical periods.

           Hamburg, December 1927

       

 Vertgrand style “K”Upright     7 1/3 octaves, 2 pedals, hight 132 cm

Baby Grand style “M”   7 1/3 octaves, 2 pedals, length 170 cm

 Living-Room Grand style “O”   7 1/3 octaves, 2 pedals, length 180 cm

 Small Parlour Grand style “A”   7 1/3 octaves, 3 pedals, length 188 cm

Parlour Grand style “B”      7 1/3 octaves, 3 pedals, length 211 cm

 Concert Grand style “C”      7 1/3 octaves, 3 pedals, length 227 cm

Orchester Concert Grand style “D” 7 1/3 octaves, 3 pedals, length 274 cm


「西川ピアノ 西川オルガン」 小野楽器店

2016年03月27日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 
 
 西川ピアノ 西川オルガン 

NISHIKAWA PIANO&ORGAN


  特約代理店 小野楽器店

   東京市銀座尾張町(歌舞伎座通り)
     電話銀座四〇二二番 振替東京六二四八四番
   売店  東京市外蒲田町

  一等賞牌  東京勧業博覧会
  金牌    コロニヤル、テンツーン  ステーリング、 セマラン
  金牌    東京大正博覧会
  名誉大賞牌 神奈川県横浜市勧業共進会
  銀杯    京都全国製品博覧会
  名誉大賞牌 平和記念東京博覧会

     卓越セル 西川ピアノ
    西川オルガン

 ◎西川ピアノ西川オルガンハ創業以来今日ニ至ル四十有余年ニシテ製品ノ確実優秀ナルコトハ普ク音楽家各位ノ賞讃ヲ博シツヽアリ
 ◎西川ピアノ西川オルガンハ米国ニテ有名ナル楽器製造技師「トーマスジーベーカー」氏ヲ聘シ製品ニ大改良ヲ加ヘ益々声価ヲ高ムルニ至レリ
 ◎西川ピアノ西川オルガンハ日本楽器製造株式会社横浜工場ニ於テ製造シ豊富ナル資金ト熟練セル技術者トヲ有シ常ニ多数ノ在庫品アリ何時ニテモ出荷スル事ヲ得
 ◎西川ピアノ西川オルガンハ各地ニ特約店及取次店ヲ有ス
 ◎横浜工場ハ調律師修繕ヲ迅速ス

 西川ピアノ NISHIKAWA PIANO

    

 第壹号形
 七オクテイブ (セルロイド鍵) 総鉄骨 複弦スケール 三弦線 高 四尺二寸 巾 二尺一寸 長 四尺八寸八分 容積五十九オ 重量約八十四貫百匁 (箱入)
 UPRIGHT STYLE 1.
 定価 ¥ 650.00 荷造費 ¥ 36.00

 第参号形
 七.三分ノーオクテイブ (象牙八十八鍵) 総鉄骨 複弦スケール 三弦線 高 四尺三寸六分 巾 二尺一寸 長 五尺八分 容積 六十六オ 重量 約八十四貫五百匁 (箱入)
 UPRIGHT STYLE 3.
 定価 ¥ 800.00 荷造費 ¥ 38.00

 第四号形
 七.三ノ一オクテイブ (象牙八十八鍵) 総鉄骨 複弦スケール 三弦線 高 四尺三寸六分 巾 二尺一寸 長 五尺八分 容積 六十六オ 重量 約九十貫六百匁 (箱入)
 UPRIGHT STYLE 4.
 定価 ¥ 900.00 荷造費 ¥ 40.00

 第五号形
 七.三ノ一オクテイブ (象牙八十八鍵) 総鉄骨 複弦スケール 三弦線 高 四尺七寸 巾 二尺一寸五分 長 五尺三寸四分 容積 八十オ 重量 約九十八貫七百匁 (箱入)
 UPRIGHT STYLE 5.
 定価 ¥ 1,100.00 荷造費 ¥ 41.00

 第六号形
 (黒塗)(マホガニー木地色塗) 七.三ノ一オクテイブ (象牙八十八鍵) 総鉄骨 複弦スケール 三弦線 高 四尺七寸 巾 二尺一寸五分 長 五尺四寸 容積 八十オ 重量 約百貫百匁 (箱入)
 UPRIGHT STYLE 6.
 定価 ¥ 1,200.00 荷造費 ¥ 42.00

   

 自動ピアノ
 七.三ノ一オクテイブ (八十八鍵) 総鉄骨 複弦スケール 三弦線 高 四尺七寸 巾 二尺四寸 長 五尺三寸四分 容積 重量 (箱入)
 AUTO PIANO.
 第一号 製造中止
 第二号 定価 ¥ 1,600.00 荷造費 ¥ 45.00
 第三号 定価 ¥ 1,800.00 荷造費 ¥ 47.00

 グランドピアノ (平台)
 第壹号形 高 三尺三寸 巾 五尺六寸八分 長 五尺一寸
 第貮号形 (第壹号形ニ同ジ)
 第参号形 高 三尺三寸 巾 六尺三分 長 五尺一寸
 GRAND STYLE 1.2.3.
 第一号 定価 ¥ 1,400.00 荷造費 ¥ 45.00
 第二号 定価 ¥ 1,750.00 荷造費 ¥ 50.00
 第三号 定価 ¥ 2,000.00 荷造費 ¥ 52.00

 ピアノ用椅子
 PIANO STOOLS
 第一号     定価 ¥ 27.00 荷造費 ¥ 2.40
 第二号(房付) 定価 ¥ 31.00 荷造費 ¥ 2.40
 第三号(房付) 定価 ¥ 35.00 荷造費 ¥ 2.40
 連弾用     定価 ¥ 40.00 荷造費 ¥ 6.00

 マンドリン、アッタッチメント
 ◎マンドリンアッタッチメントハ優美ナルマンドリンノ音色ヲ発スル特別ノ装置ナリ
 ◎マンドリンアッタッチメントハピアノ定価ノ金貮拾円増ニテ装置スルヲ得
 ◎マンドリンアッタッチメントハ竪型ピアノ各号ニ装置シ得ルモ平台ピアノニハ取付ケルコトヲ得ズ

 御注文電報略号
 イイ … 竪型ピアノ イロ … 平台ピアノ イホ … オルガン イネ … ピアノ用イス イナ … オルガン用イス
 
 リイ … 第壹号  リロ … 第貮号  リホ … 第参号  リヘ … 第四号  リト … 第五号  リチ … 第六号
 リリ … 第七号  リヌ … 第八号  リル … 第九号  リヲ … 第拾号  リワ … 第拾壹号 リカ … 第拾貮号
 リヨ … 第拾参号 リタ … 第拾四号 リレ … 第拾五号 リネ … 第拾六号 リナ … 第拾七号 リム … 第拾八号

 西川オルガン NISHIKAWA ORGAN

  

 新参号形
 (保険年限五ヶ年)
 四十九鍵 総二列笛 高 二尺八寸七分 巾 一尺一寸五分 長 二尺三寸八分 容積 十五オ 重量 約十五貫目 (箱入)
 NEW STYLE 3.
 定価 ¥ 80.00 荷造費 ¥ 4.80

 新七号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 七個ストップ附 総二列笛 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ フォーテ (高音部) メロデア.ダルシアナ. フリュート
 高 三尺六寸五分 巾 一尺六寸九分 長 四尺二分 容積 三十六オ 重量 約三十二貫目 (箱入)
 NEW STYLE 7.
 定価 ¥ 180.00 荷造費 ¥ 10.00

    

 第壹号形
 (保険年限三ヶ年)
 三十九鍵 一列笛 高 二尺七寸 巾 一尺一寸五分 長 二尺三寸八分 容積 七オ 重量 約九貫六百匁 (箱入)
 STYLE 1.
 定価 ¥ 45.00 荷造費 ¥ 2.40

 第貮号形
 (保険年限四ヶ年)
  四十九鍵 一列笛 高 二尺七寸 巾 一尺五分 長 二尺八寸四分 容積 七オ 重量 約十二貫百匁 (箱入)
 STYLE 2.
 定価 ¥ 55.00 荷造費 ¥ 2.40

 第四号形
 (保険年限四ヶ年)
  三十九鍵 二列笛(但シ一列ハ最低音部ヲ省ク) 高 二尺七寸 巾 一尺一寸五分 長 二尺三寸八分 容積 六オ 重量 約九貫六百匁 (箱入)
 第参号形及第五号形 (製造中止) 
 STYLE 4.
 定価 ¥ 65.00 荷造費 ¥ 2.80 

 第六号形
 (保険年限五ヶ年)
  四十九鍵 一列笛 高 三尺三寸 巾 一尺二寸七分 長 三尺三寸三分 容積 十五オ 重量 約十七貫目 (箱入) 
 第七号形
 (保険年限六ヶ年)
  四十九鍵 二列笛 (但シ一列ハ最低音部ヲ省ク) 寸法及ビ容積ハ第六号形ニ同ジ
 STYLE 6.
 定価 ¥ 85.00 荷造費 ¥ 5.50
 STYLE 7.
 定価 ¥ 95.00 荷造費 ¥ 5.50

    

 第八号形
 (保険年限七ヶ年)
 六十一鍵 一列笛 高 三尺三寸六分 巾 一尺二寸七分 長 三尺九寸二分 容積 十九オ 重量 約二十一貫目 (箱入)
 第九号形
     (保険年限八ヶ年)
 六十一鍵 二列笛(但シ一列ハ最低音部ヲ省ク) 高 三尺三寸六分 巾 一尺二寸七分 長 四尺 容積 十九オ 重量 約二十一貫目 (箱入)
 STYLE 8.
 定価 ¥ 110.00 荷造費 ¥ 7.00
 STYLE 9.
 定価 ¥ 120.00 荷造費 ¥ 7.00

 第拾号形
 (保険年限九ヶ年)
 六十一鍵 四個ストップ附 二列笛(但シ一列ハ最低音部ヲ省ク) ダイアパーソン. フォーテ. セラフォン. メロデア
 高 四尺四寸 巾 一尺六寸九分 長 四尺二分 容積 三十七オ 重量 約三十二貫目 (箱入)
 第拾壹号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 七個スットプ附 総二列笛 (低音部) ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ. フォーテ (高音部)メロデア. ダルシァナ. フリュート 寸法及容積ハ第拾号形ニ同ジ
 STYLE 10.
 定価 ¥ 150.00 荷造費 ¥ 10.00
 Style 11.
 定価 ¥ 180.00 荷造費 ¥ 11.00

 第拾貮号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 九個ストップ附 総二列笛 両スウヱル附 カプラ及ヴォクスヒューマナー附 
 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ. ベースカプラ
 (高音部)メロデア. ダルシァナ. フリュート. テレブルカプラ. ヴォクスヒューマナー
 高 四尺一寸二分 巾 一尺八寸三分 長 四尺一寸六分 容積 三十八オ 重量 約卅八貫四百匁 (箱入)
 第拾参号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 十一個ストップ附 高音部 三列笛 低音部 二列笛 両スウヱル附 カプラ及ヴォクスヒューマナー附 
 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ. ヴイオラドルス. ベースカプラ
 (高音部)メロデア. ダルシァナ. ヴォクスジュビランテ. フリュート. テレブルカプラ. ヴォクスヒューマナー
 寸法及容積重量ハ第拾貮号形ニ同ジ
 STYLE 12.
 定価 ¥ 200.00 荷造費 ¥ 12.50
 STYLE 13.
 定価 ¥ 250.00 荷造費 ¥ 14.00

 第拾四号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 十一個ストップ附 高音部三列笛 低音部二列笛 両スウヱル附 カプラ及ヴォクスヒューマナー附
 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ. ヴイオラドルス. ベースカプラ
 (高音部)メロデア. ダルシァナ. ヴォクスジュビランテ. フリュート. テレブルカプラ. ヴォクスヒューマナー
 高 四尺二寸四分 巾 二尺一寸 長 四尺四寸一分 容積 四十七オ 重量 約四十四貫四百匁 (箱入)
 STYLE 14.
 定価 ¥ 270.00 荷造費 15.00

     

 第拾五号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 十三個ストップ附 総三列笛 両スウヱル附 カプラ及ヴォクスヒューマナー附
 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ. ヴイオラドルス. サクサフォン. ベースカプラ
 (高音部)メロデア. ダルシァナ. ヴォクスジュビランテ. フリュート. テレブルカプラ. ヴォクスヒューマナー
 高 四尺六寸二分 巾 二尺一寸 長 四尺四寸一分 容積 四十七オ 重量 約四十四貫四百匁 (箱入)
 STYLE 15.
 定価 ¥ 320.00 荷造費 15.00

 第拾六号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 十五個ストップ附 低音部三列笛 高音部四列笛 外ニサブベース附 両スウヱルカプラ及ヴォクスヒューマナー附
 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ. ヴイオラドルス. セロ. サブベース. ベースカプラ
 (高音部)メロデア. ダルシァナ. ヴォクスジュビランテ. フリュート. フリュートドルス. サクサフォン. テレブルカプラ. ヴォクスヒューマナー
 高 四尺五寸七分 巾 二尺三寸 長 四尺三寸四分 容積 五十八オ 重量 約五十三貫目 (箱入)
 STYLE 16.
 定価 ¥ 470.00 荷造費 16.00

 第拾七号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 十六個ストップ附 低音部五列笛 高音部四列笛 外ニサブベース附 但シハープエオリオン二重奏
 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ヴイオラ. ヴイオラドルス. サクサフォン. ハープエオリオン. サッブベース. ベースカプラ
 (高音部)メロデア. ダルシァナ. フリュート. フリュートドルス. サクサフォン. ボルドン. テレブルカプラ. ヴォクスヒューマナー
 高 四尺九寸五分 巾 二尺三寸 長 四尺三寸四分 容積 五十八オ 重量 約五十三貫目 (箱入)
 STYLE 17.
 定価 ¥ 550.00 荷造費 17.00

 第拾八号形
 (保険年限十ヶ年)
 六十一鍵 十七個ストップ附 総五列笛 両スウヱルカプラ及ヴォクスヒューマナー附
 (低音部)ダイアパーソン. ドルス. ボルドン. ヴイオラ. ヴイオラドルス. ハープエオリオン. ベースカプラ
 (高音部)メロデア. ダルシァナ. ボルドン. フリュート. フリュートドルス. ピオロ. ヴォクスヒューマナ. ヴォクスジュビランテ .サクサフォン. テレブルカプラ 但シハープエオリオン二重奏
 高 四尺七寸八分 巾 二尺三寸五分 長 四尺三寸 容積 六十五オ 重量 約五十五貫目 (箱入)
 STYLE 18.
 定価 ¥ 750.00 荷造費 20.00

 オルガン椅子
 ORGAN BENCHES
 
 大形布張椅子 ¥ 14.00
 中形布張椅子   13.00
 小形布張椅子   12.00

 大形普通椅子    5.00
 中形普通椅子    4.70
 小形普通椅子    4.40


「三木 ピアノ オルガン カタログ」 (1932.8)

2014年09月09日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 表紙には、「三木 ピアノ オルガン カタログ」とあり、また「昭和七年 〔一九三二年〕 八月」の日付の書き込みがある。〔下は、その一部。図版など多数省略。〕

 優良国産 
  三木 ピアノ オルガンは……
 
 昭和時代の要求に適合して新しく生れた革命的ピアノ、オルガンであります。
 弊店楽器部開設以来五十年の実験が具体化された理想的ピアノ、オルガンであります。
 より進歩せる技術とより進化せる組織のもとに出来上つた合理的ピアノ、オルガンであります。
 堅牢にして優美廉価にして安全な実用的ピアノ、オルガンであります。

     大阪市東区北久寶寺町四
       三木楽器店

 御注文に際して

 Miki Organ

      

 第壹号形 (三十九鍵 一列笛) マホガニー仕上 
       高サ 二尺六寸 幅 二尺三寸 奥行 九尺一寸 荷造容積 五オ 正味重量 約三貫 荷造重量 約六貫
       正価 金貮拾八円 (荷造費 一円)

 第二号形 (四十九鍵 一列笛) マホガニー仕上
       高サ 二尺七寸五分 幅 二尺八寸五分 奥行 九尺二分 正味重量 約五貫 荷造重量 約九貫
       正価 金四拾八円 (荷造費 一円五拾銭)

 第五号形 (六十一鍵 一列笛) マホガニー仕上
       高サ 三尺三寸三分 幅 三尺一寸八分 奥行 一尺二寸二分 正味重量 約十三貫 荷造重量 約二十一貫
       正価 金八拾五円 (荷造費 五円)

 第六号形 (六十一鍵 高音 中音二列笛) 二個ストップ付 マホガニー仕上
       高サ 三尺四寸 幅 三尺二寸五分 奥行 一尺二寸八分 荷造容積 二十三オ 正味重量 約十四貫 荷造重量 約二十三貫
       正価 金百十円 (荷造 六円)

 第八号形 (六十一鍵 総二列笛) 八個ストップ ボックス ヒューマナー付 マホガニー仕上
       高サ 三尺六寸五分 幅 三尺七寸 奥行 一尺六寸五分 荷造容積 三十九オ 正味重量 約二十二貫 荷造重量 約三十九貫
       正価 金百六拾円 (荷造費 拾円)

 第拾壹号形(六十一鍵 総四列笛) 十三個ストップ付 マホガニー仕上
       高サ 三尺九寸 幅 四尺六寸六分 奥行 二尺五寸 荷造容積 六十七オ 正味重量 約三十八貫 荷造重量 約六十三貫
       正価 金五百五拾円 (荷造費 拾五円)

 Stool

 オルガン用椅子

 ピアノ用椅子

 Miki Piano

      

 竪形新壹号(普及型) 七オクターブ (八十五鍵) 象牙 斜絃式総鉄骨 外廓黒塗
       高 四尺三寸五分 幅 二尺一寸 長 五尺 正量 五十五貫 荷造総量 八十八貫 荷造容積 七十二オ
       正価 金四百五拾円 (荷造費 金参拾円)

 竪形壹号形 七オクターブ (八十五鍵) 象牙 斜絃式総鉄骨 外廓黒塗
       高 四尺三寸五分 幅 二尺一寸 長 五尺 正量 五十五貫 荷造総量 八十八貫 荷造容積 七十二オ
       正価 金五百五拾円 (荷造費 金参拾円)

 竪形新貮号 七オクターブ (八十五鍵) 象牙 斜絃式総鉄骨 外廓黒塗
       高 四尺二寸五分 幅 二尺二寸 長 五尺○五分 重量 六十二貫 荷造重量 九十五貫 荷造容積 七十八オ
       正価 金六百五拾円 (荷造費 金参拾円)

 竪形貮号形 七オクターブ (八十八鍵) 象牙 斜絃式総鉄骨 外廓黒塗
       高 四尺三寸五分 幅 二尺二寸 長 五尺二寸 重量 七十貫 荷造重量 百十貫 荷造容積 八十一オ
       正価 金七百五拾円 (荷造費 金参拾円)

 平台壹号形 七オクターブ三分ノ一 (八十八鍵) 象牙 斜絃式総鉄骨 外廓黒塗
       高 三尺三寸 幅 四尺九寸 長 五尺三寸 重量 七十八貫 荷造重量 百三十貫 荷造容積 七十四オ
       正価 金千参百円 (荷造費 金四拾円)

 平台参号形 七オクターブ三分ノ一 (八十八鍵) 象牙 斜絃式総鉄骨 外廓黒塗 〔上の右〕
       高 三尺三寸 幅 五尺 長 七尺 重量 百五貫 荷造重量 百五十五貫 荷造容積 八十三オ
       正価 金千八百円 (荷造費 金五拾円)

   

 上の写真2枚は、『昭和八年度 音楽教科図書目録』 大阪開成館 にある広告である。

 

 ピアノを御撰定なさる前に 是非御一読を! 
                               附『特許響鳴盤調節装置に就いて』

 驚異と礼讃の標的 三木ピアノ生る

 ピアノは遠く泰西に其端を発したのでありますが爾来我国に於ても完全に普及せられ今日では最早娯楽品としてのみでなく我国民情操教育上必須品として各学校に備へられるは勿論、各家庭、音楽堂等社会のあらゆる階層に普遍的に行き亘り全く実用化され日本化されました。随って最早漫然と外国製品を謳歌するの時代は過ぎましたと同時に其の製作に際しても盲目的模倣の時代は去りました、まして俄仕立の組立ピアノの類に到っては一顧の値もなくなりました。今回三木ピアノ創製に際しまして弊店は深く茲に意を用ひ年来の実際的経験を基礎とし新時代の趨向を見究め多少とも我国民性を打ち込み我気風に適ふ様万全の努力を払ひました。これ真に日本生れのピアノであり正に時代が要求する独創的国産ピアノと云って憚らないのであります。

 一、何故品質優秀なるか?

 浜松市に於ける新工場を総べる専任技師河合小市氏は三木ピアノの生みの母であります。彼の生涯の過半三十余年の長日月の間曾ては日本楽器製造株式会社の技師長であり日夜楽器製造の改良発明に精進し其の天稟の才と入神の技は夙に斯界の至宝としてたゝへられて居ります。近くは広く欧米先進国の実情を調査研究し其の長を採り短を捨て加ふるに現代科学の偉力を如何なく按配する等彼の技能は今や其の最高潮に達したのであります。而して楽器報国の一念に燃ゆる氏が畢生の業として全心血を傾注し遂に此の理想的実質ピアノを創造するに到ったのであります。
 随ってピアノの生命とも云ふべき
    音色の優美   音量の豊富 音律の正確
    音調の持続力  各部の耐久力
 等所謂品質上の必須条件に於て悉く百パーセントの合格率を示してゐる事は当然の帰結であります。

 一、何故価格至廉成るか?
 一、品質と値段の合理的均衡とは?
 一、ピアノを撰定なさるには?

 日本、仏蘭西 特許登録済 ピアノ響鳴盤 サウンドボード 調節装置に就いて

 従来往々ピアノは数年使ふと音色が変る(鳴りが悪くなる)と云ふ批難を耳にしました。それには種々原因もある事ですがピアノの最も肝要部即ち響鳴盤の変化から起る止むない原因がその主なるものであります。
 以下此の響鳴盤の構造と作用の大略を申上げて特許調節装置の要点を御説明申上げ度いと存じます。
 この響鳴盤の用材は「松」です丁度ヴァイオリンの表甲板と同質で其の形式や作用も全く其れと同様であります。
 即ち盤の中央部に高くふくらみを持たせ其の上に駒を取り付け其の駒によって両端をピンで張られた絃を支へて居るので絃の張力(ピアノ一台の絃の張力は約五千貫)の幾部が常に強大な力で駒を通じて響鳴盤を圧して居ります
 併し絃の張力と響鳴盤の弾撥力(ふくらみ)との間には常に程よい均衡が保たれて居るのでありまして絃に與へられた振動は響鳴盤全体に平均且つ完全に響鳴拡大して音を発する仕組みになって居るのであります云はゞ板張の太鼓の様なものでピアノにとっては心臓部であります(俗にピアノの太鼓と呼ばれるのもこれが為です)随って此の響鳴盤の製作用材及工作には少なからぬ注意が払はれるのでありますが特に用材の乾燥について然りとします
 用材は自然乾燥の方法で再び伸縮せぬ程度にまで乾燥した木材(少なくとも十数年)を用ひるのが理想的でありますが湿気の多い我国では実際的にも又経済的にもかゝる用材を用ひる事は至難であります随って人工的最善の方法と設備によって充分乾燥した用材を撰ぶのであります、併しながら月日の経つに随って響鳴盤が多少自然に収縮する一方、強い絃の張力で盤の弾撥力(ふくらみ)が次第に衰へ遂に絃の張力と響鳴盤の弾撥力との間の程よい均衡が保たれなくなり惹いて絃の振動を平均に伝道する働が貧弱になる結果所謂『鳴りの悪いピアノ』になるのであります約言すれば響鳴盤の弾撥力(ふくらみ)が衰退する結果「鳴りが悪くなる」のであります、是れが其の原因の根本的なものと考へられます、そこでこの衰退した響鳴盤の弾撥力(ふくらみ)を何等かの施工によって若返らしめる事が出来れば必ず新しい時と同様の音色に復活する事は自明の理であります
 然るに現在一般ピアノの製作仕組では折角此の理を知りながら如何とも施工の方法がないのであります、幸ひ河合氏は永年ピアノ製作設計に従事する傍ら此の欠点を補ふ装置に就いて専念研究の末遂に他に類例のない独創的装置を発明考案するに到ったのであります、然も此の新らしい考案は独り三木ピアノにのみ装置せられるのでありまして断然他の模倣を許さないのであります
 こゝに始めて「音色の変らぬ」優良国産ピアノが実現したのであります
 発明以来欧米各国の特許出願中でありましたが現在までに日本政府と仏蘭西政府の特許登録済となりました(独逸には既に古くから此れと類似のものが考案せられて居るそうで未だ登録済にはなりません)ので此れを機会に発表する事にいたしました

 日本政府特許第八三六四四号
 仏蘭西政府特許第六九四七八〇号

  三木楽器店 
    大阪市東区北久宝寺町四
    支店 神戸市元町三丁目


『楽器形録定価表』 岩田楽器店 (1931.3)

2014年05月31日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

    昭和六年三月 〔一九三一年〕 
  楽器形録定価表

   

 ・山葉オルガン改正定価表
 ・西川オルガン改正定価表

    

 ・竪形第百号 定価 金五百円 荷造費 金八円 七オクテーブ 鍵盤象牙 黒塗又ハウオールナツト塗 オヴアーストラング針金三本張
        アンダーダムパーアクシヨン 総鉄骨
        高 四尺二寸五分 幅 二尺二寸 長 四尺八寸 重量 五十五貫 荷造重量 六十五貫 荷造容積 七十オ   
 
 山葉ピアノ

     

 ・竪形第一号 定価 金六百五拾円 荷造費 金八円 七オクテーブ 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
        高 四尺二寸 幅 二尺二寸 長 四尺八寸 重量 五十貫 荷造重量 六十五貫 荷造容積 七十オ 
 ・竪形第二号 定価 金八百円 荷造費 金八円 七オクテーブ 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
        高 四尺三寸 幅 二尺二寸五分 長 五尺 重量 五十五貫 荷造重量 七十貫 荷造容積 七十四オ
 ・竪形第三号 定価 金壹千壹百円 荷造費 金八円 七オクテーブ四分ノ一 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
        高 四尺三寸五分 幅 二尺三寸 長 五尺二寸 重量 七十貫 荷造重量 八十貫 荷造容積 八十オ
 ・竪形第四号 定価 金壹千参百円 荷造費 金八円 七オクテーブ四分ノ一 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
        高 四尺三寸三分 幅 二尺三寸 長 五尺二寸 重量 七十五貫 荷造重量 百廿五貫 荷造容積 八十二オ

      

 ・平形第一号A 定価 金壹千四百円 荷造費 金拾五円 七オクテーブ 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
        高 三尺二寸 幅 四尺七寸 長 五尺二寸 重量 七十貫 荷造重量 九十貫 荷造容積 六十五オ 
 ・平形第一号B 定価 金壹千四百円 荷造費 金拾五円 七オクテーブ四分一 鍵盤象牙 総鉄骨 他ノ塗色ハ御注文ニヨリ調製
        高 三尺二寸 幅 四尺八寸五分 長 四尺九寸五分 重量 六十四貫 荷造重量 八十五貫 荷造容積 六十五オ
 ・平形第二号 定価 金壹千七百伍拾円 荷造費 金拾五円 七オクテーブ四分一 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
        高 三尺二寸五分 幅 四尺八寸五分 長 六尺 重量 八十五貫 荷造重量 百貫 荷造容積 七十二オ
 ・平形第三号 定価 金二千二百伍拾円 荷造費 金拾五円 七オクテーブ四分一 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
        高 三尺二寸五分 幅 五尺一寸 長 六尺九寸 重量 百貫 荷造重量 百十貫 荷造容積 八十二オ

  
 
 ・コンサートグランド  定価 金五千円 荷造費 金貮拾円 七オクテーブ四分一 鍵盤象牙 総鉄骨
             高 三尺三寸 幅 五尺一寸五分 長 九尺 重量 百二十貫 荷造重量 百四十五貫 荷造容積 九十二オ
  
 ・自働ピアノ第一号   定価 壹千六百円 荷造費 金拾円 七オクテーブ四分一 八十八ノート 鍵盤象牙 外廓黒塗(木地)
             高 四尺五寸 幅 二尺四寸 長 五尺四寸 重量 八十貫 荷造重量 九十五貫 荷造容積 八十八オ
             自働装置を開きたる図
          
 
 舶来ベヒシユタイン
 

        定価 
        竪台 第九号型 金二千円 〃第八号〃 金二千二百円 〃第七号〃 金二千五百円 〃第六号〃 金三千円
        平台 L型 金三千円 M型 三千三百円 B型 三千八百円 C型 四千三百円 D型 五千五百円 E型 金七千円

 舶来ピアノ
        スタインウエツヒピアノ 二千三百円ヨリ 五千六百五十円迄
        スタインウヱーピアノ  壹千六百五十円以上
        ローセンクラツピアノ  竪形 壹千三百五十円 平台 貮千壹百円
        チンメルマンピアノ   壹千貮百円
   ピアノ荷造に就て 解荷の上は荷造用蒲団及び縄は御返送を願ひます

 西川ピアノ
   
   

   コツテージ(A型)
        定価 金三百八拾円 荷造費 金二拾二円 桂材 黒蝋色仕上
        五オクテーブ・セルロイド・六十一鍵 総鉄骨 垂直スケール 三絃線 
        高 三尺七寸 幅 一尺九寸 長 三尺六寸 重量 四十七貫七百匁 荷造容積 三十七オ

 

 西川ピアノ定価   西川オルガン

       

 ・イースタン   定価 六百伍拾円 荷造費 金三拾八円 胡桃材 ヴアニス仕上 七オクテーブ セルロイド 八十五鍵 総鉄骨 複絃スケール 三絃線
          高 四尺二寸 幅 二尺一寸二分 長 四尺九寸 重量 五十五貫四百匁 総量 八十四貫百匁 荷造容積 六十四オ(函入)
 ・ウエスタン   定価 七百五拾円 荷造費 金三拾八円 マホガニー材 ヴアニス仕上
          七オクテーブ 象牙八十五鍵 総鉄骨 複絃スケール 三絃線
          高 四尺三寸 幅 二尺一寸二分 長 五尺 重量 七十八貫三百匁 総量 壹百四貫八百匁 荷造容積 六十八オ  
 ・ハーブトマン  定価 九百五拾円 荷造費 金四拾円 七オクテーブ四分ノ一(象牙八十八鍵) 総鉄骨 複絃スケール 三絃線
          高 四尺三寸五分 幅 二尺一寸五分 長 五尺二寸五分 重量 六十五貫五百匁 総量 九十七貫五百匁 荷造容積 六十六オ 
 ・ピアネツト第二号 定価 金百二拾円 荷造費 金五円 四十九鍵複絃 低音部巻針 増音器装置 家庭用調律器付
           高 二尺五寸 幅 二尺五寸三分 長 二尺九寸

 ・ピアノ椅子

 山葉オルガン

     

 ・第百号   定価 貮拾七円 荷造費 金二円 マホガニー塗 三十九鍵 一列笛
        高 二尺五寸一分 幅 一尺六寸 長 二尺三寸一分 重量 四貫匁 荷造重量 九貫 荷造容積 六七オ   
 ・第百○二号 定価 六拾円 改正 金五拾五円 荷造費 金二円四拾銭 四十九鍵 一列笛 保険四年
        高 二尺六寸八分 幅 一尺一寸 長 二尺八寸二分 重量 五貫五百匁 荷造重量 十貫五百匁 荷造容積 七オ
 ・第百○三号 定価 八拾円 改正 金七拾円 荷造費 金四円五拾銭 四十九鍵 総二列笛 保険五年
        高 二尺八寸九分 幅 一尺四寸 長 二尺八寸六分 重量 六貫五百匁 荷造重量 十一貫二百匁 荷造容積 十五オ
 ・第三○○号 定価 九拾円 荷造費 金六円 ライト・マホガニー塗 六十一鍵 一列笛 保険六年
        高 三尺三寸八分 幅 一尺二寸七分 長 三尺二寸五分 重量 十一貫 荷造重量 二十貫五百匁 荷造容積 二十一オ

 ・第一号   定価 四拾五円 改正 金四拾円 荷造費 金二円四拾銭 三十九鍵 一列笛 保険三年
        高 二尺七寸 幅 一尺二寸三分 長 二尺三寸二七分 重量 五貫 荷造重量 十貫 荷造容積 七オ   
 ・第四号   定価 八拾五円 改正 金七拾五円 荷造費 金五円五拾銭 四十九鍵 一列笛 保険五年
        高 三尺二寸五分 幅 一尺二寸五分 長 二尺七寸 重量 九貫 荷造重量 十六貫五百匁 荷造容積 十八オ
 ・第五号   定価 百貮拾円 改正 金百○五円 荷造費 金七円 六十一鍵二列笛 (最低音部 一列笛) 保険八年
        高 三尺三寸八分 幅 一尺二寸七分 長 三尺二寸五分 重量 十一貫 荷造重量 二十貫五百匁 荷造容積 二十一オ
 ・第六号   定価 百五拾円 改正 金百参拾五円 荷造費 金拾円 六十一鍵 保険九年 四箇ストツプ附二列笛 但最低音部ハ一列
        高 三尺四寸八分 幅 一尺四寸六分 長 三尺九寸五分 重量 十五貫 荷造重量 三十貫 荷造容積 二十七オ
 ・第七号   定価 百八拾円 改正 金百六拾円 荷造費 金拾壹円 六十一鍵 保険十年 七箇ストツプ附 総二列笛
        高 三尺三寸七分 幅 一尺七寸四分 長 三尺七寸四分 重量 十九貫百匁 荷造重量 三十六貫七百匁 荷造容積 三十三オ (Cスケール金拾五円増シ)
 ・第八号   定価 金貮百円 改正 金百八拾円 荷造費 金拾貮円五拾銭 六十一鍵 保険十年 九箇ストツプ附 高音三列笛 低温二列笛
        高 三尺五寸八分 幅 一尺八寸三分 長 四尺一寸三分 重量 二十二貫 荷造重量 三十九貫 荷造容積 三十九オ  (スケールハ十五円増シ)   
 ・第九号   定価 金参百円 改正 金貮百八拾円 荷造費 金拾五円 六十一鍵 保険十年 十一箇ストツプ附総二列笛
        高 三尺七寸五分 幅 一尺九寸二分 長 四尺五寸五分 重量 二十八貫 荷造重量 四十七貫五百匁 荷造容積 四十八オ (Cスケール十五円増シ)
 ・第十号   定価 金参百五拾円 改正 金参百貮拾円 荷造費 金拾六円 六十一鍵 保険十年 十一箇ストツプ附 高音三列笛 低音四列笛
        高 四尺七寸六分 幅 二尺四寸 長 四尺五寸一分 重量 二十九貫五百匁 荷造重量 五十一貫 荷造容積 五十オ  (スケールハ十五円増)   
 ・第十一号  定価 金七百五拾円 改正 金七百円 荷造費 金貮拾五円 六十一鍵 保険十年 十三箇ストツプ附総四列笛
        高 三尺九寸 幅 二尺五寸 長 四尺六寸六分 重量 三十八貫 荷造重量 六十三貫 荷造容積 六十五オ (本号ハC『スケール』)

 ・デスクオルガン 
        定価 金二百参拾円 荷造費 金拾六円 総二列 六十一鍵 保険十年 ストツプ六箇 オルガントシテ使用ノ図

        
        
        机高サ 二尺五寸五分 総高サ 三尺一寸五分 広サ  三尺五寸八分 深サ  二尺四寸 
        正味重量 二十四貫 荷造重量 四十五貫 荷造容積 三十九オ

 ・オルガン椅子

   
 
 ・鈴木マンドリン

  マンドリン
         定価
  八十一号  一〇〇〇〔十円〕
  八十二号  一三〇〇
  七〇〇号   七五〇
  七〇一号  一三五〇
  二  号  一五〇〇
  七〇二号  一七〇〇
  三  号  一九〇〇
  七〇三号  二一〇〇
  四  号  二五〇〇
  五  号  二九〇〇
  六  号  三六〇〇
  七〇四号  五〇〇〇
  七  号  五五〇〇
  八  号  六〇〇〇
  九  号  六五〇〇

  フラット マンドリン

  六一〇号   七〇〇〔七円〕
  二  号  一二〇〇
  三  号  一三五〇
  四  号  一六〇〇

 ・鈴木バイオリン

  八百号     四○○〔四円〕
  九百号     六〇〇
  W一号     八〇〇
  W二号    一〇五〇〔十円五十銭〕
  W三号    一二五〇 
  W四号    一六〇〇
  W五号    二〇〇〇
  五 号    二四〇〇
  六 号    二九〇〇
  七号     三六〇〇
  八号     四三〇〇
  九号     五〇〇〇
  児童用
   (弓付)   三五〇

  バイオリン

  鈴木梅雄作  一〇〇、〇〇〔百円〕
           二〇〇、〇〇
           三〇〇、〇〇
  鈴木政吉作  五〇〇、〇〇
           七〇〇、〇〇
          一〇〇〇、〇〇

 ・鈴木バイオリン弓

  バイオリン弓
         定価
  号外     七〇〔七十銭〕
  六一 号  一〇〇
  六二 号  一四〇
  六三 号  一八〇
  六四 号  二三〇
  六五 号  二八〇
  三  号  二八〇
  一一九号  三三〇
  四  号  三九〇
  五  号  五〇〇
  六  号  五八〇
  七  号  七二〇
  八  号 一〇〇〇
  十  号 一四五〇

     

 ・ビオラ

  ビオラ

  一  号 二五〇〇
  二  号 三五〇〇
  三  号 四五〇〇

  鈴木梅雄作
      一〇〇、〇〇
      二〇〇、〇〇
      三〇〇、〇〇
  鈴木政吉作
      五〇〇、〇〇
      七〇〇、〇〇
     一〇〇〇、〇〇

  ビオラ弓
       定価
  一  号  三九〇〔三円九十銭〕
  二  号  五〇〇
  三  号  六七〇

  ビオラ箱
  
  一  号  九〇〇〔九円〕
  二  号 一一〇〇
 
 ・セロ
       定価
  号外   六〇〇〇〔六十円〕
  一号   八五〇〇
  ニ号  一〇〇〇〇
  三号  一二〇〇〇

  鈴木梅雄作
      二〇〇、〇〇
      三〇〇、〇〇
  鈴木政吉作
      五〇〇、〇〇
      七〇〇、〇〇
     一〇〇〇、〇〇

  セロ弓

  一七五号 三〇〇〔三円〕
  一七六号 三七〇
  一七七号 五一〇
  一  号 五一〇
  二  号 七五〇
  三  号 九五〇

  セロ箱

  一  号 五〇〇〇〔五十円〕
  二  号 六〇〇〇

 ・ギター
        定価
  六二〇号  一七〇〇〔十七円〕
  一  号  二六〇〇
  六三一号  二八〇〇
  二  号  三〇〇〇
  六七一号  三〇〇〇
  六三二号  三二〇〇
  三  号  四六〇〇
  六三三号  四八〇〇
  六四一号  五八〇〇
  六四七号  六三〇〇
  六四四号  八〇〇〇
  六四五号  八六〇〇
  六四六号  九二〇〇


 ・新型バイオリン箱
 ・マンドリン箱
 ・クラリネット
 ・コルネツト、アルト
 ・バリトン
 ・コントラバス
 ・ヘリコンバス
 ・テナー、トロンボーン
 ・トロンペツト、フレンチホルン
 ・フリユート、サクソホーン
 ・タンバリン、ビユーグル、ピツコロ、オボー、バズーン
 ・大太鼓
 ・小太鼓
 ・シンバル、カスタネツト、トライアングル
 ・チンパニー、ニツケル竪笛
 ・信号ラツパ、メトロノーム、譜面台ニツケル

 

 ・エンホニコン

   十六穴 金三円五十銭 金二円七十銭
   二十穴 金二円八十銭 金五円 金七円

  換リード

   十六穴 金壹円三十銭 金壹円五十銭
   二十穴 金壹円八十銭

  卓上ピアノ

   B形 廿九鍵 金五円五十銭
   C形 〃   金六円
   D形 〃   金六円五十銭

  子供ピアノ

   金四十五銭
   金壹円九十銭
   金二円三十銭
  
  ベビーオルガン 金十八円 同 卓上金七円

  シロホン(木琴)

  チユーブフォーン

  

 ・蓄音器、ハーモニカ、明清楽器、和楽器、三絃、尺八、薩摩琵琶、筑前琵琶
 ・琴

 下は、裏表紙の記載である。

 営業品目

  山葉ピアノ 山葉オルガン 舶来ピアノ 鈴木絃楽器 楽隊楽器 ハーモニカ 蓄音器 明清楽器 日本楽器 琴三絃 楽書楽譜
   附属一切
     ピアノ調律オルガン修繕

 三重県津市大門町
   岩田楽器店


「バイオリン王 鈴木政吉翁発明苦心談 (二)」 (1940.5)

2014年05月26日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 バイオリン王 鈴木政吉翁発明苦心談 (二)

 

 前述のやうな関係から蓄音器のサウンドボックスにサイイン〔済韻〕することゝとなりました。喧噪な雑音とツンゝ突き射さる様な金属音は、聴取者の誰もが一様に嫌悪する処ですが、これも理論上除去し得るものと考へて、ビクター、ポリドール、コロムビア等五個許りを買ふて研究致しました。先づゼラルミンがカバーの為め押へ付けられると音が妨げられることを発見し、カバーの金属細胞の配列が、ゼラルミンの起す音響に最も適合する様に外側からゼラルミンとカバーの調和を取りゼラルミンが鋭敏に働く様にすれば、初めて雑音なしになるものと考へて、その変化を起させ様と努力した結果、音は分離しピンゝと耳を射る様な音は圓く滑らかになり肉声が現はれる様になりました。
 尺八にサイインを施すことを研究するに、尺八は上部の吸口は竹が軟く下方に行くに従って硬くなってゐますが、低音は波動が大きくなるに従って力は弱くなる訳であります。尺八の根が軟くないと低音にはよくない訳でありますから、呂の音が出し難いことになっています。これは軟くあるべき尺八の根が硬いからで根が軟くなる様なサイインすれば、竹の質に調和がとれるから、音の諧調を得ると同時に半分の力で妙音が出るから大変楽であります。
 サイインの原理は以上の様なものでありますが、その方法は?と云ひますと、先づバイオリンならば糸の振動を多くすることに依って音が出るのでありますから、振動を多くするーこれには経験上振動の硬軟をも識別して調和し得る様にするーこれは経験であって理論でないので完全な表現、説明は至難でありますが、簡単に云へば、凡ての楽器は各々その美音を発する理想的な釣合を有してゐるものであります。然し凡べての新楽器は全部この微妙な釣合が保たれてゐらず、丁度自動車にブレーキをかけて走行するやうなものであります。サイインは各々の楽器の特性に応じてその釣合を取り、以てブレーキを取り除いた理想的な状態に置くのであります。
 これを少しく専門的に申し上げれば、素晴らしく弾込まれた天下の名楽器を、音響的見地から詳細に調べますと、百年二百年弾き込まれたバイオリン等は、それを音波写真を撮って調べれば凡ての音、即ち高周波並に低周波に対してオクターブ倍音を完全に出す事が、その音色を著しく清澄明朗にして、真に美音として何人の肯定する名バイオリンとなります。
 之の実際につき先年航空研究所の小幡博士〔小幡重一〕に依って実験して頂きました。先づ私の自作のバイオリン(サイインの施していない新品)の音波写真を撮りましたが、その波状型は二百年も弾込まれた名器、ストラデイバリー作のバイオリン並にグワルネリユース作の名器とは全く異った型を示しました。
 そこで同一バイオリンにサイインをして再び音波写真を撮りましたところ、前の新らしい時の波状型と全く異って、二百年も弾込まれた天下の名器と殆んど同一の波状型を呈し、計算的に調べましても全くオクターブ倍音が完全になって、私が考へてゐた成果を如実に目で見る事が出来ましたので真に嬉しく感じました。
 結局学理的に一口に云へば、楽器全体の音響に必要、又適合せる細胞組織の状態に、その機体を置き、正確なる倍音の発声を完全にすることが“サイイン”であると云ふことが申されます。又例を尺八にとりますと、尺八は吹く楽器でありますから、空気の圧力を応用して行ふといふ風に、物の性質を変へるのであります。尺八でも五十年、百年と長期に亘り吹込んだものは非常に妙音を発しますが、サイインは短期間にこれと同様の効果を合理的に収めやうといふ処にその特色があり、事実尺八でもサイイン後二三ケ月吹けば、五十年百年吹込んだものより却って優秀なものであります。
 都市衛生の立場から騒音防止の眼目の一つになっている、喧噪極まるラヂオのラッパをサイインに依って除去し、さらでだに苛立つ都会人の神経に安息を與へることを研究してゐます。即ちラッパの中心にあるゼラルミンを調整して騒音強音を除き、恰も放送者が聴取者の側にある如く湯を呑む音迄聞える様に仕度いと思ってをります。なほ駅で汽車の出発や到着を知らせるラッパ放送も同様でありますので、此の方も改良して一般乗客の便宜を計リたい念願であります。(終)

 ◇鈴木政吉翁壽像建立

 鈴木政吉翁は先年七十七歳の壽齢を迎へられ尚矍鑠として身心共に壮者を凌ぐ意気を以て楽器の研究に終始せられてゐるが、翁が楽器製造を志してより苦闘五十余年、遂に楽器王として普く世界に覇を唱へられてゐるその偉大なる功績を永遠に顕彰すべく、侯爵徳川義親氏、子爵近衛秀麿氏、子爵鍋島直和氏、男爵大倉喜七郎氏、大岩勇夫氏、下出義雄氏初め朝野の貴紳、音楽関係者発起となり、“壽像建立会”を組織された。壽像は元帝展審査員長谷川義起氏の手にて、翁の半身二倍大のものを製作、知多郡大府町字横根山鈴木バイオリン大府工場内に、割栗石及混凝土を基礎に、淡路産花崗岩を以て台座として建立されるもので、竣工は今年十月の予定である。

 上の文と写真は、『勧業』 五月号 名古屋市役所内 名古屋勧業協会 昭和十五年 〔一九四〇年〕 五月一日発行 第廿七巻第五号 掲載のものである。
 
 ※〔 〕内は、蔵書目録による補足。

 下は、『音楽グラフ』 七月号 第四巻 第七号 大正十五年七月一日発行 の 楽界彙報 にある記事とその写真である。

 ○鈴木政吉翁新作提琴披露会

 翁は明治二十年以来提琴の製作に刻苦し勵精よく内外の需要を充たして国産の伸張に努められた功労に依り曩に緑綬褒章を下賜されたのは世間周知の事実である、然るに大正十年の暮独逸に留学した令息鎭一氏が不思議の因縁から彼の地で手に入れたクレモナ派の名匠ガルネリウスの作品を携て昨年五月帰朝した、翁は是を手にして深くも其技巧に驚嘆し妙音に感服すると共に自分も何とかして斯る名品を作り後世に遺したいものだと茲に堅く志を決して爾来寝食を忘れ只管其研究に没頭して遂に大に発明する所があつた、乃ち最近の作数個を携へて上京されたので徳川義親侯と小山作之助氏とが肝煎で六月三日夕六時から華族会館で其披露を兼ね諸先生の批評を乞ふことになつた当日出席の人々は幸田延子、安藤幸子、頼母木駒子近衛秀麿、ケーニヒ、多久寅、ス末吉雄二、杉山長谷夫、多忠壳、田中英太郎、村上直次郎、鈴木米次郎、山田源一郎、田邊尚雄、平野主水、佐藤清吉諸氏外新進の提琴家を合せて四十名、七時食堂を開き席上徳川侯爵の挨拶あり晩餐後別室に鈴木翁は創業以来四十年間の歴史と製作上の辛苦に就て事細に説話された、終つて鎭一氏は四個(中に古銘器一個を交ぜて)の提琴を一二三四と列べた順に弾奏個々に就ての忌憚なき批評を来賓に求められたが四個殆ど同一の特級品で中に多少の差違があつてもその差違は寧ろそれゞの特色とも見るべきもので優劣の語を以て区別することは出来ない但強ひて云へば新品は古器に比して幾分か若い音色を持つて居るやうにも思はれる位るのことで一同感嘆し翁の成功を賞讃して止まなかつた、それから尚暫くの間来賓は思ひゝに新古を弾き較べて頻に鑑賞に耽つて居られたが十時前後に何れも大満足の体で退散された。
 挿図は鈴木鎭一氏が珍蔵さるゝガルネリウスの特製提琴(特価壹萬圓以上)を寫したものである。

 


「山葉ピアノ」 日本楽器製造株式会社 (1937.12)

2013年08月01日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 山葉ピアノ  昭和十二年度

 ・山葉ピアノに就いて

 ・山葉ピアノの出来るまで

 ・山葉ピアノ “100”竪型
 ・山葉ピアノ “150”竪型
 ・山葉ピアノ “1” 竪型
 ・山葉ピアノ “179”及“180”竪型
 ・山葉ピアノ “2” 竪型
 ・山葉ピアノ “252”竪型 
 ・山葉ピアノ “277”竪型
 ・山葉ピアノ “279”竪型
 ・山葉ピアノ “300”竪型
 ・山葉ピアノ “3” 竪型
 ・山葉ピアノ “4” 竪型
 ・山葉ピアノ みくに型
 ・山葉ピアノ みゆき型

    

 ・山葉ピアノ 富士型 〔上左〕

  
  七オクテーヴ四分ノ一(八十八鍵) ブラックオールナット楠杢象嵌
  高サ 四尺四寸五分 間口 五尺二寸 奥行 二尺三寸 重量 七十六貫 荷造重量 百十五貫 荷造容積 九十四才

 
  
 ・山葉ピアノ 抽出式二重鍵盤竪型(専売特許第九九八七九号) 〔上中〕

  特徴
  ◇二段の鍵盤より成り上段に主鍵盤と下段に小鍵盤とがあって小鍵盤は抽出式となって容易に抽出して使用し得られ不要の場合は押込んで置かれます
  ◇主鍵盤のみとして使用する場合は普通のピアノと何等異る所なく全然同一であります
  ◇小鍵盤は小型に出来て居てお子様或は指の短い方でも容易にオクテーブを奏し得る如き鍵盤になって居ますからピアノとして演奏上充分の効果を挙げる事が出来ます
  ◇小鍵盤のタッチは極めて軽くお子様の力に相当して居り而も之に依て生ずる音響的効果は普通のピアノと全然同一であります。
  ◇小鍵盤の位置が低くなって居ます為お子様方が弾かれる場合正しい姿勢で演奏できると同時にペダルも容易に使用できます
  ◇大人の方とお子様方と同時に弾かれる場合は前者は主鍵盤に後者は小鍵盤に向って演奏し各々指や腕の動作に何等支障なく而も効果的に演奏する事が出来ますから教授用としても最適品であります
  ◇お値段は御註文の型、塗、内容に応じて御見積申上げます

  
 ・山葉ピアノ 折込式竪型(専売特許第九九五九〇号) 〔上右〕

  特徴
  ◇近代建築様式に適しアパートメント等の小室にも備へ得る様其の容積等極めて経済的に縮小しまして折込んだ場合は演奏の場合に比較して奥行が普通のピアノより約一尺狭くなります
  ◇外郭はマホガニー材木地塗額板は楓の玉杢を使用し体裁佳良にして室内家具と良く調和します
  ◇容積小なる為めピアノの移動運搬等の場合に扱ひよく至極便利であります
  ◇抽手を抽き鍵盤及棚板の部分を回転せしむる車により自働的にペダルの前の扉と中額板とが昇降して極めて容易に使用出来ます
  ◇タッチは極めて軽快にして音色は冴え音量豊富であります
  ◇お値段は御註文の型、塗、内容に応じて御見積申上げます

  
 ・山葉自働ピアノ
 ・山葉ピアノ “12”平台(ミジェット式)
 ・山葉ピアノ “15”平台
 ・山葉ピアノ “20”平台
 ・山葉ピアノ “30”平台
 ・山葉ピアノ “2” 平台
 ・山葉ピアノ “3” 平台

     

 ・山葉ピアノ ルイ十六世型 平台 〔上左〕

  七オクテーヴ(八十八鍵) アンチックマホガニー塗
  高サ 三尺二寸五分 間口 五尺一寸 奥行 六尺九寸 重量 百貫 荷造重量 百四十五貫 荷造容積 百才

 ・山葉ピアノ セミ・コンサート・グランド
 ・山葉ピアノ フル・コンサート・グランド 〔上中〕

  七オクテーヴ四分ノ一(八十八鍵) 黒塗(各種木地塗御註文ニ依リ製作)
  高サ 三尺三寸 間口 五尺一寸五分 奥行 九尺 重量 百五十貫 荷造重量 二百四十貫 荷造容積 百二十六才

 
 ・山葉ピアノ ルイ型コンサート・グランド 〔上右〕

  七オクテーヴ四分ノ一(八十八鍵) アンチックマホガニー塗
  高サ 三尺三寸 間口 五尺一寸五分 奥行 九尺 重量 百五十貫 荷造重量 二百四十貫 荷造容積 百二十六才     

 ・山葉ピアノ用椅子

 (昭和十二年 〔一九三七年〕 十二月印刷)
 
 ・山葉ピアノ正価表 昭和十三年 〔一九三八年〕 三月、山葉ピアノ椅子正価表 昭和十三年三月

  


「我社の現況」 日本楽器製造株式会社 (1935.9)

2013年08月01日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 我社の現況  日本楽器製造株式会社 浜松市

 日本楽器製造株式会社要覧

 一、本社及工場
 二、支店及出張所
 
 〔図や写真〕

  

 ・販売機関分布図 〔上左〕
 ・日本楽器製造株式会社 本社及本工場
 ・横浜分工場
 ・東京支店、大阪支店
 ・九州支店、東京支店神楽坂売店、大阪支店高松販売店
 ・横浜出張所、浜松出張所、名古屋出張所
 ・神戸出張所、台湾出張所、京城出張所
 ・山葉洋行大連支店、山葉洋行浪速町売店、山葉洋行奉天出張所、山葉洋行新京出張所 〔上右〕

 三、資本金
 四、従業員
 五、営業種目

 〔図や写真〕

 

 ・(山葉平台ピアノ組立工場) 
 山葉ピアノ  一ケ年生産能力  五・〇〇〇台  山葉ルイ型コンサート・グランド・ピアノ  正価 九千五百円
 ・(山葉オルガン組立工場)  
 山葉オルガン 一ケ年生産能力 二〇・〇〇〇台  山葉オルガン十一号 正価 壹千壹百円
 ・我国最初の  国産 山葉パイプオルガン
   東京聖テモテ教会備付 二段鍵盤 (五オクテーブ) ストップ 十四個 パイプ 四百五十九本 ペダル 三十二本
   チューブ・ニユーマチツク・アクション 電動送風装置
 ・(電気楽器研究室)
 新電気楽器 マグナオルガン マグナオルガン
 ・山葉アコーデオン
 ・蝶印ハーモニカ
 ・飛行機用プロペラ―
 ・家具木工品
   (当社木工部製造ノ貴族院議席)
 ・山葉べニア板
 ・輸出入統計図表
 
 六、沿革及事業

 

 (山葉翁及創立当時の工場)

 明治二十年七月当社の創立者たりし故山葉寅楠は我国にオルガンを製造するものなく之が供給を悉く舶来品に仰げるを遺憾としてオルガンの製造に着手し翌年三月山葉オルガン製造所を起せしが後明治三十年九月日本楽器製造株式会社を創立し之に其事業を継承せしめたり。
 創立当初に於ける資本金は拾万円にして当時はオルガンの製造を主とし、年産頗僅に拾万円に過ぎざりしも明治三十二年に至りピアノ製造の研究に着手し翌年八月には文部省農商務省より製品の御買上を受くるに至り、明治三十五年御用始には更に宮内省より平台山葉ピアノ一台の納入の恩命を受く、明治三十六年第五回内国勧業博覧会に於ては当会社のオルガンピアノ陳列場は畏くも
 両陛下の御休憩所に充てらるゝの光栄に浴し且つ出品物に対しては夫々最高の賞牌を授与せられたり。明治三十八年四月米国聖路易万国大博覧会に出品のオルガンピアノに対して名誉賞牌を受領す。是れ国産楽器の海外に於て賞牌を受領せる初なり。爾来内国各地の博覧会及共進会に於て常に最高賞牌を受領し品質の優秀を広く江湖に認めらる。
 当会社は更に品質の完璧を期する為め、数次に渉り多数の技師を海外に派遣して研究に資し、又大正十五年一月世界一の定評ある独逸ベヒシタインピアノ製造工場より技芸抜群なる技師を招聘し満四ヶ年間本社工場に於て製品の改良と工場技術員の養成に当らしめたり。之に依り製品の品質は更に一段の進境を示し今や独米の最優秀品に比して全然遜色なしとの世評を受くるに至れり、此間にありて当会社はオルガンに就いて大に改良研究に努力し、其品質及価格に於て遥に舶来品を凌駕し完全に輸入を防遏し、更に余力を以て、ピアノと共に多量の海外輸出をなすに至れり。尚教会楽に必要欠くべからざるパイプ・オルガンが従来輸入に俟つ外なく、従って非常に高価にして之が普及を甚だしく阻害せしも、当社は昭和六年決然之が製造を企図し遂に此の至難とされた大事業を成就し我国最初のパイプ・オルガンを完成したるは、常に楽器報国を念とする当社の欣快に堪えざる処なり。昭和十年には当社の独創的設計研究に成る新電気楽器マグナオルガンの製造に成功し、楽器界の新境地を開拓し、一方山葉アコーデオンの製造を創始し、その斬新なるデザインと優秀なる品質とを以て江湖に見え、忽ちその絶讃を獲得せり。
 〔以下省略〕

 七、役員 

 〔下は、裏の見返し(左)と裏表紙(右)〕

  

 

 ピアノは山葉 山は冨士

     本社及工場 松市 日本楽器製造株式会社

 拝啓毎々御引立を蒙り奉拝謝候先般は弊 へピアノ調律方被仰付難有奉存候 月 日拜趨 技師は永年弊工場にて修業仕り技術優秀に候間定めし御満足被遊候儀と存上候へ共弊社は飽迄責任を以て御眷顧に可酬努力罷在候次第に付萬一作業又は品質上御気付の點御座候はゞ何卒無御腹蔵御申聞の程奉願上候 敬具
  昭和 年 月 日
   松市
    日本楽器製造株式会社
           研究課


「山葉オルガン」 日本楽器製造株式会社 (昭和初期)

2013年05月31日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 
 YAMAHA ORGAN 山葉オルガン

 (日本楽器製造株式会社浜松本社工場全景)

 オルガン用椅子

  板張椅子

  布張椅子

            

 第壹号 三十九鍵 一列笛 (保険三ヶ年) 
      高 二尺七寸 広 二尺七寸 深 一尺二寸三分 重量 五貫 荷造重量 十貫 荷造容積 七オ 定価 金四拾五円 荷造費 金弐円四拾円
 新製 第百貮号   四十九鍵 一列笛 (保険四ヶ年) 
      高 二尺六寸八分 広 二尺八寸二分 深 一尺一寸 重量 五貫五百目 荷造重量 十貫五百目 荷造容積 七オ 定価 金六拾円 荷造費 金貮円四拾円
 新製 第百参号 四十九鍵 総二列笛 (保険五ヶ年) 
      高 二尺八寸九分 広 二尺八寸六分 深 一尺四寸 重量 六貫五百目 荷造重量 十一貫二百目 荷造容積 十五オ 定価 金八拾円 荷造費 金四円五拾円
 第四号   四十九鍵 一列笛 (保険五ヶ年) 
      高 三尺二寸五分 広 二尺七寸 深 一尺二寸二分 重量 九貫 荷造重量 十六貫五百目 荷造容積 十八オ 定価 金八拾五円 荷造費 金五円五拾銭
 第五号 六十一鍵二列笛 (最低音部 一列笛)(保険八ヶ年) 
      高 三尺三寸八分 広 三尺二寸五部 深 一尺二寸七分 重量 十一貫 荷造重量 二十貫五百目 荷造容積 二十一オ 定価 金百二拾円 荷造費 金七円
 第六号   六十一鍵 (保険九ヶ年) 四箇ストップ附 高音中音部二列笛 最低音部一列笛 
      高 三尺四寸八分 広 三尺九寸五分 深 一尺四寸六分 重量 十五貫 荷造重量 三十貫 荷造容積 二十七オ 定価 金百五拾円 荷造費 金拾円
 第七号 六十一鍵 (保険五ヶ年) 七箇ストップ附 総二列笛  
      高 三尺三寸三分 広 三尺七寸四分 深 一尺七寸四分 重量 十九貫百目 荷造重量 卅六貫七百目 荷造容積 三十三オ 定価 金百八拾円「Cスケールは十五円増」 荷造費 金拾壹円 
 第八号   六十一鍵 (保険十ヶ年) 九箇ストップ附 高音中音部三列笛 低音部二列笛 
      高 三尺五寸八分 広 四尺一寸三分 深 一尺八寸三分 重量 二十二貫 荷造重量 三十九貫 荷造容積 三十九オ 定価 金貮百円 荷造費 金拾貮円五拾銭
 第九号 六十一鍵 (保険十ヶ年) 十一箇ストップ附総二列笛
      高 三尺七寸五分 広 四尺五寸五分 深 一尺九寸二分 重量 二十八貫 荷造重量 四十七貫五百目 荷造容積 四十八オ 
定価 金参百円 荷造費 金拾五円
 第拾号   六十一鍵 (保険十ヶ年) 十一箇ストップ附 高音部三列笛低音部四列笛 
      高 四尺七寸六分 広 四尺五寸一分 深 二尺四  重量 廿九貫五百目 荷造重量 五十一貫 荷造容積 五十オ 定価 金参百五拾円 荷造費 金拾六円
 第拾壹号 六十一鍵 (保険十ヶ年) 十三箇ストップ附総四列笛  
      高 三尺九寸 広 四尺六寸六分 深 二尺五寸 重量 三十八貫 荷造重量 六十三貫 荷造容積 六十五オ (本号ハCスケール) 定価 金七百五拾円 荷造費 金貮拾五円
 第二十八号 六十一鍵 (保険十ヶ年) 九箇ストップ附 高中音部三列笛 低音分二列笛 
      高 三尺六寸 広 三尺八寸六分 深 一尺八寸三分 重量 二十二貫 荷造重量 三十九貫 荷造容積 三十九オ 定価 金貮百五拾円 荷造費 金拾貮円五拾銭

 山葉オルガン

 御註文に就て


「山葉オルガン」 日本楽器製造株式会社 (1937.10)

2013年02月06日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

 山葉オルガン

    御家庭の団欒と
    御子様の情操教育の為に……

 ◇山葉オルガンの普及

 最近オルガンの普及は誠に驚くべき程で全国を通じて既に三十数万台に達してをります。その内弊社の製造にか々る山葉オルガンは九割以上を占め而も最近は全く舶来品を圧倒して盛に海外に迄輸出し到る処名実共に世界優秀品「山葉」の声価を掲げ非常なる好評を博するに至りました。

 ◇山葉オルガンは何故こんなに売れるか
 ◇弊社のサービス
 ◇御注意
 ◇調律と修繕に就て

         

 山葉オルガン  音階速習器附 第百号

  実用新案 一七五、四一四 一七六、八一二 
        マホガニー塗
  三十九鍵 一列笛
    高サ 七十六糎(二尺五寸一分) 間口 七十一糎(二尺三寸三分) 奥行 三十三糎(一尺六分)
    重量 十五瓩(四貫) 荷造重量 三十瓩(八貫) 荷造容積 〇、一七立方米(六才)  
       (保険三ケ年

 音階速習器装置

 調から調、調と調子がどんなに変っても之に伴ってどの鍵 キー がとなりレとなるかといふ様なドレミファ音階の位置の変化がすぐ解り難かしい調子の曲でも容易に演奏することが出来ます。

 山葉オルガン 第百五拾号

       マホガニー塗
  四十九鍵 一列笛
    高サ 七十六糎(二尺五寸一分) 間口 八十五糎(二尺八寸) 奥行 二十七糎(九寸一分)
    重量 十六瓩百二十五瓦(四貫三百匁) 荷造重量 三十三瓩五百瓦(九貫) 荷造容積 〇、二〇立方米(七才) 
       (保険三ケ年)   

 山葉オルガン 音階速習器附 第貮百号

  実用新案 一七六、八一二 一七四、四一四 
        マホガニー塗
  四十九鍵 一列笛
    高サ 八十一糎(二尺六寸八分) 間口 八十六糎(二尺八寸五分) 奥行 二十八糎(九寸三分)
    重量 二十三瓩二百五十瓦(六貫二百匁) 荷造重量 四十一瓩六百二十五瓦(十一貫一百匁) 荷造容積 〇、二〇立方米(七才)
       (保険四ケ年) 

 山葉オルガン 第貮百五拾号

  実用新案 一七五、四一四
        マホガニー塗
  四十九鍵 一列笛
    高サ 八十一糎(二尺六寸八分) 間口 八十六糎(二尺八寸五分) 奥行 二十八糎(九寸三分)
    重量 廿四瓩三百七十五(六貫五百匁) 荷造重量 四十二瓩七百五十瓦(十一貫四百匁) 荷造容積 〇、二〇立方米(七才)
       (保険四ケ年

           

 山葉オルガン 第四号

  実用新案 一七五、四一四
        マホガニー塗
  四十九鍵 一列笛
    高サ 一米(三尺二寸九分) 間口 八十二糎(二尺七寸) 奥行 三十七糎(一尺二寸二分)
    重量 三十三瓩七百五十瓦(九貫) 荷造重量 六十一瓩八百七十五瓦(十六貫五百匁) 荷造容積 〇、五〇立方米(十八才)
       (保険五ケ年)  

 山葉オルガン 第四百五拾号

  実用新案 一七五、四一四
        ブラウン・マホガニー塗
  四十九鍵 総二列笛
    高サ 九十一糎(三尺) 間口 八十三糎(二尺七寸三分) 奥行 三十八糎(一尺二寸五分)
    重量 三十五瓩六百二十五瓦(九貫五百匁) 荷造重量 七十瓩百二十五瓦(十八貫七百匁) 荷造容積 〇、四四立方米(十六才)
       (保険五ケ年)  

 山葉オルガン 第参百号

  実用新案 一七五、四一四
        マホガニー塗
  六十一鍵 一列笛
    高サ 一米三糎(三尺四寸) 間口 九十六糎(三尺一寸六分) 奥行 三十八糎(一尺二寸七分)
    重量 四十一瓩二百五十瓦(十一貫) 荷造重量 七十六瓩八百七十五瓦(二十貫五百匁) 荷造容積 〇、五八立方米(二十一才)
       (保険六ケ年)  

 山葉オルガン 第五号

  実用新案 一七五、四一四
        ダーク・ウォルナット塗
  六十一鍵 二列笛 低音部一列笛
    高サ 一米四糎(三尺四寸二分) 間口 九十六糎(三尺一寸八分) 奥行 三十八糎(一尺二寸七分)
    重量 四十二瓩七百五十瓦(十一貫百匁) 荷造重量 七十八瓩七百五十瓦(二十一貫) 荷造容積 〇、五八立方米(二十一才)
       (保険八ケ年)  

 山葉オルガン 第六号

  実用新案 一七五、四一四
        マホガニー塗
  六十一鍵 四箇ストップ附
   (低音部) 一列笛 デイアバーソン(八呎律)
   (高音部) 二列笛 フリュート(四呎律) メロデイア(八呎律)
   (全通機) フォルテ(強音栓) ニースエル(強音膝杆)
    高サ 一米六糎(三尺四寸九分) 間口 一米十八糎(三尺九寸一分) 奥行 四十五糎(一尺四寸七分)
    重量 六十瓩(十六貫) 荷造重量 百十二瓩五百瓦(三十貫) 荷造容積 〇、七五立方米(二十七才)
       (保険九ケ年

           

 山葉オルガン 第七百号
       
        ライトマホガニー塗
  六十一鍵 五箇ストップ附
   (低音部) 二列笛 ヴイオラ(四呎律) デイアパーソン(八呎律)
   (高音部) 二列笛 フリュート(四呎律) メロデイア(八呎律)
   (全通機) フォルテ(強音栓) ニースエル(強音膝杆)
    高サ 一米一糎(三尺三寸二分) 間口 一米十三糎(三尺七尺二分) 奥行 五十二糎(一尺七寸)
    重量 七十一瓩二百五十瓦(十九貫) 荷造重量 百三十五瓩(三十六貫) 荷造容積 〇、八九立方米(三十二才)
       (保険十ケ年

 山葉オルガン 第七号

        オーク塗
  六十一鍵 七箇ストップ附
   (低音部) 二列笛 ヴイオラ(四呎律) デイアパーソン(八呎律) ダルシアナ(四呎律)
   (高音部) 二列笛 フリュート(四呎律) メロデイア(八呎律) クララベラ(八呎律)
   (全通機) フォルテ(強音栓) ニースエル(強音膝杆)
    高サ 一米一糎(三尺三寸三分) 間口 一米十三糎(三尺七尺四分) 奥行 五十三糎(一尺七寸四分)
    重量 七十二瓩(十九貫二百匁) 荷造重量 百五十瓩(四十貫) 荷造容積 〇、九二立方米(三十三才)
      (Cスケールは十五円増)
       (保険十ケ年

 山葉オルガン 第八号

        マホガニー塗
  六十一鍵 九箇ストップ附
   (低音部) 二列笛 ヴイオラ(四呎律) ヴイオラ、ドルチェ(四呎律) デイアパーソン(八呎律) ダルシアナ(四呎律)
   (高音部) 三列笛 フリュート(四呎律) メロデイア(八呎律) セレスト(八呎律) クララベラ(八呎律)
   (全通機) フォルテ(強音栓) ニースエル(強音膝杆) フルオルガン(全音栓膝杆)
    高サ 一米八糎(三尺五寸八分) 間口 一米二十五糎(四尺一寸三分) 奥行 五十五糎(一尺八寸三分)
    重量 八十二瓩五百瓦(二十二貫) 荷造重量 百六十一瓩二百五十瓦(四十三貫) 荷造容積 一、九〇立方米(三十九才)
      (Cスケールは十五円増)
       (保険十ケ年

 山葉オルガン 第貮拾八号

        オーク塗
  六十一鍵 九箇ストップ附
   (低音部) 二列笛 ヴイオラ(四呎律) ヴイオラドルチェ(四呎律) デイアパーソン(八呎律) ダルシアナ(八呎律)
   (高音部) 三列笛 フリュート(四呎律) メロデイア(八呎律) セレスト(八呎律) クララベラ(八呎律)
   (全通機) フォルテ(強音栓) ニースエル(強音膝杆) フルオルガン(全音栓膝杆)
    高サ 一米九糎(三尺六寸) 間口 一米十七糎(三尺八寸六分) 奥行 五十五糎(一尺八寸三分)
    重量 八十二瓩五百瓦(二十二貫) 荷造重量 百六十一瓩二百五十瓦(四十三貫) 荷造容積 一、九〇立方米(三十九才)
                (保険十ケ年)        

 山葉オルガン 第九号

        マホガニー塗
  六十一鍵 十一箇ストップ附
   (低音部) 二列笛 ヴイオラ(四呎律) ヴイオラドルチェ(四呎律) デイアパーソン(八呎律) ダルシアナ(四呎律)
             ベースカップラー(下八音連鎖栓)
   (高音部) 二列笛 フリュート(四呎律) メロデイア(八呎律) クララベラ(八呎律) トレプルカップラー(上八音連鎖栓)
   (全通機) フォルテ(強音栓) ヴォックス、ヒュマーナ(震音栓) ニースエル(強音膝杆) フルオルガン(全音栓膝杆)
    高サ 一米十四糎(三尺七寸五分) 間口 一米三十七糎(四尺五寸二分) 奥行 五十八糎(一尺九寸二分)
    重量 百五瓩(二十八貫) 荷造重量 百九十一瓩二百五十瓦(五十一貫) 荷造容積 一、三四立方米(四十八才)
      (Cスケールは十五円増)
       (保険十ケ年

   

 山葉オルガン 第拾号

  意匠登録 六三、九九四
        ウォルナット塗艶消
  六十一鍵 十一箇ストップ附
   (低音部) 四列笛 エオリアンハープ(二列笛)(二呎律) ヴイオラ(四呎律) デイアパーソン(八呎律) 
             ダルシアナ(八呎律) ベースカップラー(下八音連鎖栓)
   (高音部) 三列笛 フリュート(四呎律) メロデイア(八呎律) セレスト(八呎律) クララベラ(八呎律) 
             トレプルカップラー(上八音連鎖栓)
   (全通機) ヴォックス、ヒュマーナ(震音栓) ニースエル(強音膝杆) フルオルガン(全音栓膝杆)
    高サ 一米十五糎(三尺八寸) 間口 一米三十三糎(四尺三寸九分) 奥行 六十四糎(二尺一寸)
    重量 百二十三瓩百二十五瓦(二十九貫五百匁) 荷造重量 二百十瓩(五十六貫) 荷造容積 一、三九立方米(五十才)
      (Cスケールは十五円増)
       (保険十ケ年

 山葉オルガン 第拾壹号 

        オーク塗 
  六十一鍵 十九箇ストップ附
   (低音部)五列笛 
     ディアパーソン(八呎律)ホーン、エコー(八呎律)ブールドン(十六呎律)ヴィオラ(四呎律)ヴィオラ、ドルチェ(四呎律)
     エオリアン、ハープ(二呎律)サブベース(十六呎律)バース、フォルテ
   (高音部) 六列笛
     メロデイア(八呎律)ホール、フリュート(八呎律)クラリネット(十六呎律)フリュート(四呎律)オボー(八呎律)
     ヴオックスセレステイス(八呎律)シャルマイ(八呎律)ミュゼット(三十二呎律)トレブル、フォルテ
   (全通機)
     ヴォックス、ヒュマーナ(震音栓)オクテーヴ、カップラー(上八音連鎖栓)ニースエル(低音部強音膝杆)
     ニースエル(高音部強音膝杆)フルオルガン(全音栓膝杆)
    高サ 一米二十七糎(四尺二寸) 間口 一米四十五糎(四尺八寸) 奥行 七十三糎(二尺四寸) 重量 百五十瓩(四十貫)
    荷造重量 二百八十一瓩二百五十瓦(七十五貫) 荷造容積 一、八五立方米(六十六才)
   (保険十ケ年

         

 山葉純正調オルガン

    理学博士 田中正平先生発明 純正調オルガン

 本オルガンは曩に博士が独逸留学中に考案され時のカイゼル・ウイルヘルム二世の後援下に試演会を開催して独逸学界に一大センセーションを起した程の世界的大発明で、爾来永く世に埋れて居りましたが、此度博士が之を我が楽界に提示さるゝ事になりましたので弊社は楽界の為め此の困難な仕事を進んで引受け、多大の犠牲を忍び弊社の最高の技術と最新の研究施設とを傾けて之を完成したのであります。従来の和音の不協和な、自然の音律を歪めた、不純な機械的中間音からなる不完全な平均率の音楽に飽き足らず、進んで完全、清澄、明朗なる純正調音楽の研究を志す方々に取っては世界唯一の楽器であります。
 詳細は須永克己先生の「純正調の問題」(月刊楽譜自昭和六年十月号至昭和七年五月号)を御覧願ひます。 

 山葉ペダルオルガン

  六十一鍵 Cスケール 二段鍵盤 十七ストップ附
    ペタルベース(三十鍵)二列
    オクテーブカップラー、ペダルカップラー上下二様竝に上下鍵盤カップラーヴォックスヒューマナー附
   (高音部) 九列笛
     ハープエオリアン、ピッコロ、フリュート、サクソフォン、セロ
   (低音部) 八列笛
     ストップドディアバーソン、オープンディアパーソン、プールドン、ディアパーソン、ダルシアナ、プリンシパル
   (全通機)
     グレート、オクテーブカップラー スニエル、ツー、グレート ペダル、ツー、グレート ペダル、ツー、スエル
     スエル、オクテーブ、カップラー ヴォックス、ヒュマーナ
     高サ 一米三十六糎(四尺五寸) 間口 八十八糎(二尺九寸) 奥行 一米五十五糎(五尺一寸) 
     重量 二百五十一瓩二百五十瓦(六十七貫)
             (モーター附

 電気楽器 マグナ・オルガン

  「コンソール
          ワルナット塗
    五オクテーブ(六十一鍵)象牙鍵盤
    十五箇ストップ付
     (低音部)
       コルネットエコー(二呎律)エオリアンハープ(二呎律)ヴオラドルチェ(四呎律)ダルシアナ(八呎律)
       ダイアパーソン(八呎律)ブールドン(十六呎律)
     (高音部)
       フリュート(四呎律)オーボー(八呎律)メロデイア(八呎律)ヴォックスセレステ(八呎律)サリショナル(八呎律)
       クラリネット(十六呎律)
     (全通機)
       エコー、トレモロ、スヰッチ
        高サ 一米十五糎(三尺八寸) 間口 一米三十二糎(四尺三寸五分) 奥行 六十七糎(二尺二寸)
        重量 百九十八瓩七百五十瓦(五十三貫)
  「スピーカー
        高サ 一米二十一糎(四尺) 間口 一米三十糎(四尺三寸) 奥行 七十九糎(二尺六寸)
        重量 百二十瓩(三十二貫) 

 マグナ・オルガン

 マグナ、オルガンは当社電気楽器研究室の研究になる製品の一でコンソール、送風装置、ラウンドスピーカーより成りコンソール内には機械的振動瓣マイクロフォン、アムプリファイヤ等があり、振動瓣の振動を電気的にピックアップして増幅すると同時音質を種々に変化し比較的小規模で厖大なパイプオルガンと同一効果を有する音色と音量とを齎す楽器界の一大新機軸である。
 マグナ、オルガンはその原理並に設計極めて合理的にして、その音色、音量共に極めて優秀で、之が変化変成到って自由、且つ奏法甚だ簡単で従来の此の種の欧米製品に比較するに数段の進歩を示し幾多の特徴と利点を有して居る。

     東京日比谷公会堂に於けるサンサーンス百年祭演奏会に使用され好評を博す(昭和十年十二月十日)

     

 山葉パイプオルガン (聖テモテ教会納入)

  一、二段鍵盤Cスケール六十一鍵 上段スエル 下段グレート
  二、ペダル鍵盤三十二鍵
  三、ストップ (引出式)
   (グレート・オルガン)
     オプンダイアパーソン 八呎 金属管 六十一本 
     ダルシアナ 八呎 金属管 六十一本 
     ストップド・ダイアパーソン 八呎 六十一本
   (スエル・オルガン)
     オーボー 八呎 金属管 六十一本
     サリショナル 金属管 六十一本
     フリュート 四呎 木管 六十一本
     ヴォックス・アンジェリカ 八呎 金属管 六十一本
   (ペダルオルガン)
     プールドン 十六呎 木管 三十二本
   (カップラー)
     スエル・ツー・グレート
     スエル・スーパーオクテーブ
     スエル・サブオクテーブ
     スエル・ツー・ペダル
  四、ペダルムーブメント・バランスド・スエル・ペダル
     バランスド・クレスチエンド・ペダル
  五、チューブ・ニューマチックアクション
  六、四分ノ三馬力モーター直結三相、交流、一四〇〇回転ブローワー

  代価は御下命により御見積申上げます。

 山葉パイプオルガン (公教神学校納入)

  二段鍵盤 五オクターブ ストップ 十一本 パイプ木管 七十三本 金属管 百八十三本 計 二百五十六本
  ペダル 三十二本 エレクトラ、ニューマチック、アクション 電動送風装置
      代価は御下命により御見積申上げます。

 山葉パイプオルガン (東京音楽学校納入)

  二段鍵盤 五オクターブ ストップ 十六本 パイプ本管 二百二十七本 金属管 三百五十四本 計 五百八十一本
  ペダル 三十二本 エレクトラ、ニューマチック、アクション 電動送風装置
      代価は御下命により御見積申上げます。

        

 山葉オルガン用椅子

 山葉オルガン用椅子

 山葉オルガン正価表 昭和十三年三月

 山葉オルガン椅子正価表 昭和十三年三月


『マグナオルガンの御紹介』 日本楽器製造株式会社 (1935.10)

2013年02月05日 | 楽器目録 昭和 日本楽器、楽器製作者

  新電気楽器
 マグナオルガンの御紹介
              日本楽器製造株式会社

  

  特許第一〇八六六四号 
  同 第一一〇〇六八号 
  同 第一一一二一六号
 「マグナオルガン」は
 日本楽器製造株式会社の発明製作に係る新電気楽器であります。
 輓近欧米各国に於ては競って新しい電気楽器を研究して居る趨勢でありますが、従来試みられた電気楽器中音源として真空管発振装置又は類似装置を用ふるものは、使用の際に生ずる熱のために電気抵抗或は電気容量等が変化して音階に狂ひを生じ、演奏不能になるとか、同時に複音を出す事が出来ぬとか、色々の不便があり、又音源として機械的振動体を使用するものも構造複雑で音色の変化に乏しいとか、何れも一長一短で未完成の域を脱せざる有様であります。弊社は先年来此の研究に没頭して居りました所、幸に優秀なる電気楽器「マグナオルガン」を創作致し、今回初めて博く世上に発表する事となりました。茲に好楽家各位に御紹介申上げ、尚一層の改良に対する各位の御教示を仰ぐ次第であります。

  昭和十年 〔一九三五年〕 十月
                  浜松市 日本楽器製造株式会社  

 一、「マグナ・オルガン」は高価なるパイプ・オルガンに匹敵するのみならず、更に夫れ以上に独特の華麗なる音色を有する電気楽器であります。

 「マグナ・オルガン」はコンソールと拡声機とから成って居て、電気装置は全部此のコンソールの中に装置されてありましてパイプ・オルガンに見る様なパイプの如きものは全くなく、その機能は全然電気的であります。
 演奏方法は一般のオルガン奏法と全然同一で、フリュート、絃、ダイヤパーソン、リードに属する各種の音がストップの操作一つで自由に奏し得られます。而も従来の電気楽器に起った様な使用中の音階の狂ひとか、複音の演奏不可能と云ふ様な不便なく、パイプ・オルガンと同様に自由に複音が奏し得られ且つスエル・ペダルによる音の抑揚はパイプ・オルガンより遥かに楽に出来ます。
 音色は従来の楽器では聞き得なかった、独特の美しさを持って居り、従ってその楽音は従来普通のオルガンによって表現出来なかった作曲に対する新しい解釈を可能ならしめるでありませう。
 「マグナ・オルガン」の大きさは竪型ピアノよりも小さく、運搬に便利で取付が容易で、而もその機能は高価なるパイプ・オルガンに匹敵し、電気の消費量は家庭用電燈三燈分位で、維持費は極く少額で足ります。
 以上の様な特徴を有する新電気楽器「マグナ・オルガン」は真に楽界未曾有の画期的発明品であると信じます。

       

  「マグナ・オルガン」のコンソール

    五オクテーヴ(六十一鍵)象牙鍵盤 ウォルナット塗  高サ 3.80尺 間口 4.35尺 奥行 2.20尺 重量 53貫

   

  「マグナ・オルガン」の拡声機

    ウォルナット塗 間口 4.30尺 重量 32貫 高サ 4.00尺 奥行 2.60尺

 二、「マグナ・オルガン」 は凡ゆる音色を自由に表現する事が出来ます。

 「マグナオルガン」の演奏方法を述べるに先だって、之が製作の原理の大体を御了解願ふ必要があります。
 一八七三年に不世出の音響学者ヘルムホルツは「総ての楽音は之を分析すると基音と陪音とから成り立ってゐる」と云ふ事を明かにし、更に又同時に「同じ基音と陪音とから成立してゐる音の中にもフリュートの音又はクラリネットの音と云ふ様に各種の音の存在する事は、音の種類に依って基音に対する陪音の強さの割合が異るからである」と云ふ事を證明しました。
 此の説を逆に考へると「或る楽器の音、例へばクラリネットの音を分析し、其の中に含まれて居る基音と陪音の割合を知り得れば、其の割合に従って基音と陪音とを別々に作り、之を混合すればクラリネットを用ひずともクラリネットと少しも違はぬ音が合成出来る」と云ふ事が言へます。
 然し何分にも今迄は音を定量的に分析する事と又陪音を人工的に作る事が六ヶ敷かった為に音の合成も出来ずにゐたが、最近に至り精密電気機械の出現によって今迄の困難は征服される様になりました。弊社では音響記録分析装置其の他の精巧なる機械を使用して研究した結果、弊社の所有する特許第一〇八六六四号、第一一〇〇六八号、第一一一二一六号に依って保護せらるヽ独特なる方法に基いて、「マグナ・オルガン」を案出し簡単な電気装置によって容易に基音及陪音を合成して自由にパイプなしでパイプの音を出したり、絃なしで絃の音を出したり希望の音色を表現する事が出来ます。

     

 三、「マグナ・オルガン」 は普通オルガンの演奏家には容易に演奏し得られます。

 「マグナ・オルガン」の鍵盤を押へれば、その内部に音階の順序に排列してある機械的振動瓣が振動して空気の波が出来ます。之を独特なる電気装置によって電流に変へ、ケーブルによってスピーカーに連結し、スピーカーから発音せしめるのであります。夫故スピーカーは如何なる場所でもその部屋に最も適した場所に据え付け得られます。
 鍵盤は普通のパイプ・オルガンと同様に出来て居て、標準型は一段鍵盤ですが、二段でも三段でにでも製作し得られます。
 ストップはパイプ・オルガンと全然同じでストップを下げれば、ストップに明記された音が出て、上げれば止まります。
 標準型に於てはストップが十六個あってそのストップにより各々違った音色が出ます。

   

 四、「マグナ・オルガン」 は自由に強弱音が得られます。

 「マグナ・オルガン」の最も著しい特徴として先づそのスエル・ペダルの機能と効果を挙げる事が出来ます。
 従来のパイプ・オルガンではスエル・ボックスのシャッターを徐々に開閉する方法か若しくは鳴らすべきパイプの数を増減して音の強弱を加減して居りますが、之の方法では一定の範囲の制限を受けたり且つ階段的にしか出来ません。けれども「マグナ・オルガン」に於ては右側のペタル即ちスエル・ペダルをふめば電気装置の抵抗を加減出来る様になって居て人の耳では聞き得ない程度の弱い音から非常に大きな音迄自由に而も円滑に出す事が出来ます。又音の最大限は増幅機と拡声機を拡大する事によって如何様にでも増加し得られます。
 従って家庭其他小室の演奏は勿論の事学校、公会堂、野外等の如き如何に広大なる場所でも夫れゞの場合に応じ適当な強さの音が出し得られます。
 左側のペタルはパイプ・オルガンのクレスチェンド・ペタルと同じ効果を持って居りまして、これを踏めばフルオルガンの効果が得られます。
 是等の機能により従来のパイプ・オルガンでは奏し得なかった様な音楽的表現が出来、従って音楽の解釈に於て新生面が開かれるものと信じて居ります。

 五、「マグナ・オルガン」 はエコー・オルガン(こだま)が簡単に表現し得られます。

 普通のオルガンでは音の遠近感を音の強弱のみによって表して居りましたが「マグナ・オルガン」に於ては音の強弱以外にスピーカーを数個所に離して据付けて次第に遠くのスピーカーから近くのスピーカーへ切り換へる事によって実際的に音の遠近感を出す事が出来ます。
 又スピーカーを二個使用して一個はステージの正面に、一個は聴衆席の背面に据付けて只単にストップの切り換へだけでパイプ・オルガンに於ては巨大の費用の掛るエコー・オルガンの效果が得られます。
 この特徴だけを以てしても此の楽器は画期的であり、充分に価値のある新楽器であると称し得られると存じます。

 六、「マグナ・オルガン」 は パイプ・オルガンに比し殆んど調律の要を認めません。

 「マグナ・オルガン」の音源となるものは厳密に調律した小型振動瓣或は笛の如き機械的振動体でありますからパイプ・オルガンの様に湿度や温度による調律の狂ひは殆んどありません。又音源として機械的振動瓣を使用して居りますから電源の電圧や周波数によって調子が変ったり、音色が変る様な事は絶対にありません。

 七、「マグナ・オルガン」 の備付けは至って簡単であります。

  a. 据付は極く簡単で、電燈の受口へソケットを挿し込むだけで取付けられ、音の調子は電源の電圧、サイクル数其他に無関係でありますので、何れの土地でも使用出来ます。
  b. 場所を取らない事
   竪型ピアノよりも小型で且つ重さは一人で押し動かし得る程度であります。
  c. 容易に移動し得る事
   パイプ・オルガンは一旦備付け後移動する事は非常に困難でありますが、「マグナ・オルガン」は何時でも何処でも容易に移動する事が出来ます。

 八、「マグナ・オルガン」 の楽界に於ける新分野の開拓。

 「マグナ・オルガン」の音は近代的明朗さを持って居りますので、宗教音楽は勿論の事軽妙華麗な音楽も奏し得られ、且つ音の抑揚も自由に、普通オルガンで奏し得なかった色々な表現が為し得られ、作曲家竝に音楽家に音楽に対する新しい解釈を與へるものと信じます。
 且つ音は電気装置によって非常に大きな音を出し得られますから従来のリード・オルガン、グランド・ピアノ其他では音量の不足する様な
    学校、大会堂、野外演奏、演奏会、軍隊
 等に於て用ひらるヽ事は勿論其他利用の道は無限で音楽に対する新分野を開拓するものと信じます。

 九、尚「マグナ・オルガン」は次の如き諸設備に直に利用が出来ます。

  A.「パブリック・アドレス・システム」(高級講演拡声設備
    高級講演拡声設備は、大会堂に於ては是非必要な時代となりましたにも拘らず、之が設備費丈けでも数百円を要する為めに未だ普及されないで居りますが、此の「マグナ・オルガン」は最高級の電気増幅機・拡声機・送話器等を具備して居りますので、楽器の裏側の扉を開いて送話器を取り出す丈で、至って簡単に、一分間も掛らないで、直ちに優秀な高級講演拡声装置として利用する事が出来、演説、号令等を拡声して大衆に聴せる事が出来ます。
 更らに若干の装置を附加すれば、
  B.高級電気蓄音機
  C.ラジオ
 として至って簡単に而も最高級の効果を発揮せしむる事が出来ます。