蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

「グラナドス嬢舞踊公演」 朝日会館 (1933.5) 

2024年04月30日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

  

OSAKA
  
  プログラム
  
      第一部

1.セヴィリヤ              ‥‥‥ アルベニス
2.マカレナ人のタンゴ          ‥‥‥ フォレ・イ・デ・アレタ
3.ブレリアス              ‥‥‥ ロメロ  
    アスンシオン・グラナドス舞踊
4.アラベスク 第一番          ‥‥‥ デビュッシー
    ホセー・セラーノピアノ
5.スペインのクラヴェルス        ‥‥‥ ボダロ 
6.開墾地の掟              ‥‥‥ フォレ・イ・デ・アレタ
7.トーニア・フラレシスキータ      ‥‥‥ ヴィヴェス
    アスンシオン・グラナドス舞踊
  
      休憩
  
      第二部
 
8.ワルツ                ‥‥‥ ソール
9.グラナダ               ‥‥‥ アルベニス 
10.アラゴレの歌             ‥‥‥ アルカス
   アスンシオン・グラナドスギター) 
11.アルゼシラの遊戲所(旅行記)     ‥‥‥ テューリナ
   ホセー・セラーノピアノ
12.悲哀の踊り 第十番          ‥‥‥ エレリック・グラナドス 
13.川から見ませ             ‥‥‥ 民謡 
14.デル・チヨコ(ヴァスク地方の民謠踊) ‥‥‥ ベルルイゾ,ホセー・セラーノ
   アスンシオン・グラナドス舞踊
15.スペイン風のセレナーデ        ‥‥‥ ホセー・セラーノ 
   ホセー・セラーノピアノ
16.コルドバ               ‥‥‥ アルベニス 
17.火の踊り(戀は魔術師)        ‥‥‥ デ・ファリア
18.エスパニ・カ-ニ           ‥‥‥ マルキーナ
   アスンシオン・グラナドス舞踊
 
ピアノ:ホセー・マリア・ジル・セラーノ 

  京都
   五月      二日 午後七時
      於 京都市公會堂
  大阪
   五月三・四・五・六日 午後七時
      於 朝日會舘  
  神戸     七・八日 午后七時
      於 舊關西學院講堂    
  
  主催 朝日新聞社會事業團

〔蔵書目録注〕 
 
  下は、プログラムと共にあったチケットである。
  
   
  
 情熱を踊るセニョリータ・麗貌を誇る西班牙の舞姫
 アスンシオン グラナドス孃舞踊公演
Recital by Asuncion GRANADOS
  The Beautiful Spanish Dancer
     and Guitarist
 5月6日 午後7時  
    朝日會館ASAHI-KAIKAN
                        學生券 ¥ 1.00


「ルウス・ペエヂ女史舞踊」 帝国劇場 (1928.10)

2024年02月12日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

  

  昭和三年十月狂言
 繪本筋書
  帝國劇塲 

 昭和三年十月 狂言 (毎日午後三時開演) 

〔晝の部〕 毎晝三時

      鳥居淸忠舞臺裝置
第一 五右衛門葛籠抜 お瀧繼子責 釜淵双級巴 かまがふちふたつともゑ 通し
                   竹本重壽太夫連中 
      鳥居言人舞臺裝置
第二 土産話大和唐土 みやげばなしやまともろこし 一幕 
    上の巻 張良兵書賜 ちょうりょうへいしょのたまもの 一場
         竹本重壽太夫連中
    下の卷 膝栗毛 二場
         (赤坂の段)
         富士松加賀太夫連中
  
〔夜の部〕 毎夜八時半
      
      河竹黙阿彌作
第三 新歌舞伎十八番の内 船辨慶 一幕
              長唄杵屋寒玉社中
第四 ルウス・ペエヂ女史舞踊
        〔演目五日目毎變更〕
    ピアノ演奏 レオニード・コハンスキイ

 
  
 紐育メトロポリタン大歌劇場
 ソロ・ダンサー
   ルウス・ペエヂ女史舞踊團
      出演者
  ルウス・ペエヂ女史
  エドウィン・ストロウブリッヂ氏
  アイリン・アイシャム孃
  エッタ・ムーア孃
     〇
  ピアノ演奏
   レオニード・コハンスキイ氏
     〇
  次の演目中より毎囘八曲或は九曲を擇んで上演、五日目毎に番組全部を變更致します。
  別冊、美しい寫眞二十種入りの「世界的大舞踊家ルウス・ペエヂ女史番組解説」(定價一部金二十五錢)を場内女子案内人が携帯販賣致します。
  
  第四 ルウス・ペエヂ女史舞踊團上演目錄
  
一、 歌劇「アイーダ」中の埃及 えぢぷと 舞踊(ヴェルディ)
二、 歌劇「花嫁交換」中のポルカとフュリアント(スメタアナ) 
三、 歌劇「ラ・ヴィタ・ブレエヴェ」中のセブィリアーナとホータ(ダ・ファイア)
四、 歌劇「金鷄 きんけい 」中の太陽頌歌とタムブリンの踊(リムスキイ=コルサコフ)
五、 歌劇「カルメン」中の居酒屋の場の踊り(ビゼー)
六、 歌劇「椿姫」中のワルツ(ヴェルディ)
七、 歌劇「サムソンとデリラ」中のバッカナアル(サン=サーン)
八、 月明 げつめい に帆を上げて(ツェックウア)
九、 死の影(ムッソルグスキイ) 
一〇、お轉婆娘とラグビー蹴球 しうきう 選手(ルウミス)
一一、ミリタリシムス(プロコフィエフ)
一二、ブルウス(ジャーシュウイン) 
一三、コケット 一八九九年(ジョプラン)
一四、踊子人形(プラウン)
一五、三人の女神(ショパン
一六、雪は踊る(デビュッシイ)
一七、綱渡りの女(スメタアナ)
一八、戯れ(ポッケリーニ)
一九、ワルツ一番及二番(ブラームス) 
二〇、ノクターンとマヅルカ(ショパン
二一、バレーの構成(プロコフィエフ
二二、ピーターパンと胡蝶(ボルディーニ) 
二三、亞米利加印度人の鷲の踊
二四、黄昏 たそがれ (マスネー)
二五、ランデブウポルカ(フォーグリッヒ)
二六、アレグレット(ゴダール)
二七、リマス小父 おぢ さんとトプシイ(ギオン)
二八、ベッキオ・ミヌエット(スガムバーティ)
二九、亞麻色の髪の娘(デビュッシイ) 
三〇、花のワルツ(ストラウス) 
三一、 絕えざる動き(リイス)
三二、赤頭巾と狼(チャイコウスキイ) 
三三、スカーフ・ワルツ(ショパン)
三四、ダイアーナ(モツアルト)
三五、蜂(シューベルト)
三六、女學生のブルウス(ルウミス)
三七、ニュー・オルレアンスの土人の踊 おどり (地方民謠)
三八、希臘 ぎりしや の體育舞踊(グルック)
三九、ガヴォット(ツイブルカ) 
四〇、胡蝶(グリーク)
四一、ミウジック・ホール(ランファン)
四二、オラーフの踊(ピック=マンギアガリ) 
四三、アレグロ・バルバロ(バルトック)
四四、ゴリウォークのケーキ・ウォーク(デビュッシイ)
四五、マーキュリイ(シューベルト) 
四六、空を行く(ブッソーニ)
四七、人造人間のバレー 
四八、ハーレキン(スカルラッティ)
四九、ヴルス・キャプリス(ルビンシュタイン)
五〇、目隠し遊び(リスト)


「高田せい子舞踊の會」 長野市相生座 (1932.10.17)

2023年03月25日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

  

   舞踊界の巨匠
 高田せい子舞踊の會 
      主催 高田舞踊團後援會
      後援 信州文藝協會
   
    時 昭和7年10月17日 夕6時
     長野市 相生座  

   プログラム
    
    第一部

Ą ‥ 陽光を浴びて ‥‥‥‥ バルテルミー曲
                           木邨文子 稻葉初枝  酒井由紀子
                              中村笑子 北村季佐代 平岡斗南夫
                              藤原俊彦 佐藤浩   玉田麟三

B ‥ 香を捧ぐる女 ‥‥‥‥ チャイコフスキー曲
                 高田せい子
        夕暗に仄白く浮き出づる純淨の姿一紫に香の煙は立ち迷ふー靜寂

C ‥ 葡萄     ‥‥‥‥ フリムル曲   
                 稻葉初枝 中村笑子 木邨文子
D ‥ ピチカット  ‥‥‥‥ デリーブ曲    酒井由紀子 北村季佐代 
            
E ‥ 嵐      ‥‥‥‥ ケンピンスキー曲 高田せい子 稻葉初枝

F ‥ 秋      ‥‥‥‥ ビゼー曲     木村文子 稻葉初枝 酒井由紀子 佐藤浩 玉田麟三 中村笑子 北村季佐代 平田斗南夫 藤原俊彦
        
    第二部

Ą ‥ ノクターン ‥‥‥‥ ショパン曲  高田せい子 木村文子 稻葉初枝 
                          酒井由紀子 中村笑子 北村季佐代                    
                               
B ‥ 武人     ‥‥‥‥ サンサーン曲 平田斗南夫 藤原俊彦 佐藤浩
                       玉田麟三

C ‥   幻想〔瀧の白糸〕‥‥‥‥ ドビュッシー曲 高田せい子    
         古い曲藝の女を時代、風俗、國境を超越し一つの動く繪畫として幻想的に舞踊化した新しい試みである。女學生時代に讀んだことのある泉鏡花氏の小説「瀧の白糸」の淡い記憶から題名だけをとったが材は決してこれに據ってはゐないものである。

特番  A ‥ 影を慕ひて ‥‥‥‥ 古賀政男曲  高田せい子
別外    B ‥ 金婚式   ‥‥‥‥ メエリー曲  高田せい子
         先般ラヂオ舞踊講座で女史がAKから全國に放送し好評を博せる新作二つ ‥‥‥‥

 ‥ 戯れ        ‥‥‥‥ ルーベンス曲  中村笑子 木村文子 酒井由紀子
         鄙びた和蘭の風光に溶けつゝたゞ他愛なく戲れる少年少女の如何に心の清きことよ ‥‥‥‥
 ‥ 情怨        ‥‥‥‥ マルケティ曲 高田せい子 平岡斗南夫 佐藤浩 藤原俊彦 玉田麟三

    第三部

A ‥ 虐げらるゝ者に榮光あり ‥‥‥‥ ベートーヴェン曲  高田せい子 平岡斗南夫 藤原俊彦 佐藤浩 玉田麟三  稻葉初枝  中村笑子
 ‥ 支那の幻想       ‥‥‥‥ クライスラー曲  木邨文子

 C ‥ 劒の舞         ‥‥‥‥ ハーバート曲  高田せい子


 ‥ タランテラ       ‥‥‥‥ ズイルカ―曲  木邨文子 稻葉初枝 酒井由紀子  
                        玉田麟三 中村笑子 北村季佐代 平岡斗南夫 藤原俊彦 佐藤浩
    第四部

A ‥ 戯曲舞踊 火刑     ‥‥‥‥ ボロディン ボビー曲  高田せい子 外一同
        未開の原野に生れながら異敎徒の靑年に戀した娘の罪や恐ろし、回々敎の神の御堂に彼女は火刑に處せられて犠牲の苦しみを受けつゝも愛に微笑みつゝ永遠の眠りにつく ‥‥‥‥

    總演出振付   高田せい子
    伴奏指揮    篠原正雄
    配光      北野健輔

紹介 ‥‥‥‥ ■高田せい子女史は本名中村せい子大正三年石川縣立金澤高女を了へて東京音樂學校器樂部に學び帝劇附屬の洋劇部に入り大正十一年から三ヶ年間歐米にて數十回の公演を爲し歐洲藝術家ソサイエティ及びストール會社の専屬藝術家となり昭和四年良人雅夫氏に死別してから原せい子を高田せい子と改名高田舞踊研究所を主宰松竹樂劇部の指導等に當る一方世界風俗の研究等に努力されてゐる。
■音樂指導に當る篠原正雄氏はお馴染の東京ラヂォオーケストラの指揮者である。


「舞踊解説」 石井漠舞踊詩研究所 舞踊公演會 (岡山市公会堂) (1928.5.20)

2022年07月31日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

 舞踊解説
   石井漠舞踊詩研究所
      舞踊公演會
           
     五月二十日晝二時・夜七時
     内山下 岡山市 公會堂
     主催 郷土社  

  私の舞踊觀    石井漠

 此の一文はコロンビヤシカゴの兩大學、及アメリカの各地で公演した時のプログラムの序言であって、それをまた更に日本語に譯したものである。舞踊を趣味や嗜好の上から單に享樂しやうとする人は多いが、舞踊を眞に生た藝術として觀賞してくれる人は稀だ。私達が歐羅巴の旅行中時に次ぎのやうな奇問を發せられて返事に困った。
 「お前達は日本人でありながら何故歌麿の繪のやうな踊をやらないのか、あの夢のやうに美しい日本踊を‥‥‥」その時私達はいつも次のやうに答へた。
 「私達は日本の古い藝術の複寫を押賣に來たのではありません。又は國產を宣傳するやうな心持で來たのでもありません」そして、その人達には、日本と云ふ國は歐羅巴大陸と同じ地球の上にある事をほんとうに意識する事が出來ないものゝやうに思はれた。それでなければ、日本の若い藝術家だけが全世界の思潮と離れて、超然と昔のまゝでゐられると思ふわけがない。日本の古い藝術の中には確かに立派な、そして優れたものが澤山あるに相違ない。然しそれは、吾々の先祖の爲し遂げた功績であって吾々の「てがら」ではない。それだのに、何故、吾々舞踊藝術家だけが、先祖の遺した餘光にのみ噛り付いてゐなければならないのだらうアラスカの氷山の中から發見された前世紀の怪動物の骨でも見るやうな好奇心から吾々の舞踊を見られるのは心苦しい尠なくも現に生きてゐる人間に對してあまり無惨な注文である。 吾々は過去に生きる前に先づ現在に生きなければならない。
 眞の舞踊は「生」そのものヽ表れであって、歷史習慣の下に置かるべき奴隷ではない。それは他の姉妹藝術と同樣である。ラファエルの繪を巧みに模寫したからと云って、直ちにその人をラファエルと同じ程度の藝術家として許す事が出來るか何うか。      
 吾々は民族的、國民的である前に先づ人間的、人類的でなければならない。    詩は言葉に倚る神への禮讃であると同樣に、眞の舞踊をも單に自分の趣味や嗜好の上に享樂し、私慾を滿すための手段とするならばそれは呪ふべき事である。
 
1.『百鬼夜行』   ‥‥‥ ホールスト曲
 要するに惡鬼どものダンスであります。
2.『賣られて行く奴隷』
           ‥‥‥ ウラヂミール・レビコフ曲
 トルコの女奴隷のやる瀨ない心持を表はしたもの。
3.『セレナータ』  ‥‥‥ モスコウスキイ曲
 モスコウスキイの有名な小夜曲であって、それをそのまゝ、少女向きに舞踊化したもの。
4.『迦摩』     ‥‥‥ ドウビュッシィ曲  
 ドウビュッシィはフランスの大作曲家で、近代音樂の祖父といはれてゐます。今年は丁度樂聖の十年祭だといふので日本でも方々で紀念祭が行はれました。當研究所でも去る三月十八日夜東京朝日講堂で紀念舞踊會をいたしましたが、これはその時に上演した番組の一つであります。
 迦摩は印度敎の愛慾の神で、濕婆天といふ善神の妃に愛の矢を射ったので、濕婆天は怒って迦摩を眼光で射殺したといふ神話があります、佛敎では迦摩を「色慾の餓鬼」と稱してゐます。
5.『胡桃割組曲』  ‥‥‥ チャイコウキイ曲
 この音樂は當時ロシア帝室舞踊團のために特に作られた舞踊曲であって、行進曲、支那の踊、金平糖の精の踊、アラビヤ人、蘆笛の踊、花の圓舞曲等の六曲からなってゐますが、こヽでは             
 ()金平糖の精の踊
 ()支那のお人形(支那の踊)
 ()アラビヤのお話(アラビヤ人)
の三曲を上演いたします。 
6.『食慾をそゝる』  ‥‥‥ 木魚の音にて  
 音樂伴奏音樂から舞音樂舞踊へ過渡して行く一つのプロセス。      
 赤裸々な心になった時の人間の姿 ‥‥‥ それらを第三者の立場から視く ‥‥‥ その氣持の表現。
 東京のあるカフェーの中から發見した舞踊であります。(漠)
  (番外)
)『空は靑雲』 北原白秋作歌 山田耕作作曲 
)『靑年團歌』 相馬御風作歌 山田耕作作曲
 日本靑年團の依賴で特に石井氏が振附したもの。三百萬の日本靑年に普及するのが目的であります。
7.『ペエア・ギュント』
           ‥‥‥ エドワード・グリーク作曲
 グリークの「ペエア・ギュント」の音樂は、北歐の大戯曲家ヘンリック・イプセンの戯曲「ペエアギュント」の初演に際して特に作曲されたもので、グリークの代表的なものであります。今年はイプセン生誕百年祭に當るので當研究所では、去る四月十二日より五日間帝國ホテル演藝場で上演いたし好評を博しました。
(A)「朝」 ‥‥‥
(B)「山の王の洞窟にて」 ‥‥‥
(C)「ソルヴェーヂの歌」 ‥‥‥ 
(D)「オーゼの死」 ‥‥‥
(E)「アニトラの舞」 ‥‥‥ 
(F)「アラビヤ人の天幕」 ‥‥‥
   
 ペエア・ギュントの略筋〔省略〕


『漠のパンフレット』 第四輯 (1930.7)

2020年04月23日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他
  
 
  漠のパンフレット
  第四輯

   表紙

 蒼ざめた男(「生命の叫び」より )  石井漠

 〔以下、掲載順〕

 ◇目次カット「デモンの踊」より  (左)石井榮子(右)笹田芙佐子◇

   グラフィック
 
 ・カリカチュア  石井漠
 ・生命の叫び  (上)「美女達の踊」  研究生 (下)「蒼ざめた男」  石井漠
 ・エチュード  (上・下)研究生
 ・漫畫「山を登る」の印象     田中比佐良畫
 ・(上)ピチカット (上)轟美津子 (左)こわがらせる  石井榮子・轟美津子
 ・バッカナール  石井漠・石井榮子〔上の写真:左から2枚目〕
 ・デモンの踊   五十嵐花子 山川貴久子 岡田俊子  笹田芙佐子 岩田美枝子
 ・食慾をそゝる  五十嵐花子 山川貴久子
 ・(上)石井舞踊研究所新技舎の一部 (下)或るポーズ  笹田芙佐子

   

 寫眞版「エジプトを見る」    石井榮子

   記事

 ・私信             石井漠 
 ・漠は生きる!        水守龜之助
 ・漠の感じ(詩)        堀野正雄
 ・舞踊は好個の戰塲     伊庭孝
 ・手紙             田中比佐良
 ・漫画「グロテスク」      幸内純一
 ・世界の顔           アンナ・パヴロヴァ
 ・子等は踊る          イルマ・ダンカン  

 舞踊詩

   ー 一九三〇年度公演舞踊目録 ー 

 △ 無言詩劇生命の叫び」  
          ‥‥‥ 齋藤佳三
 陰鬱な室に押しこめられた蒼ざめた男。彼は樂園を夢見た。それは彼には許されない世界である。彼は現實を呪ひ、歎願して外の世界へ出ると、反對に室が樂園に變り、彼は陰鬱な世界に取殘される。彼が室に歸ると、室は再び陰鬱に變る。彼を虐む鋭角と、彼を勇気づける無數の手と‥‥‥忽ちすべてが消えて彼は一人となる。彼が倒れて眠りに入ると、五人の人影が白衣を捧げて現れる。それは死だ。拒否 反抗、しかし 勢の力によって白衣が與へられるーと、男は靜かに立上り、光の雨の中に神々しい變容を示す。一同はその風貌に打たれ、驚きの目を瞠 みは る。
 齋藤佳三氏の原作並に作曲になる詩劇、石井漠演出、遠山静雄氏の舞臺装置並に照明、篠原正雄氏の管絃樂指揮によって 六月十六、十七日、日本青年館に於て初演。

 △ 「金魚」 
          ‥‥‥ ランゲ曲

 △ 「グロテスク」 
          ‥‥‥ エドワード・グリーク曲

 △ 「こわらがせる
          ‥‥‥ シューマン曲

 △ 「若きパンとニムフ
          ‥‥‥ 山田耕作曲

 △ 「山を登る
          ‥‥‥ エドワード グリーク曲

 △ 「セレナータ
          ‥‥‥ モスコウスキー曲
      モスコウスキイの有名な小夜曲を、そのまゝ少女向きに舞踊化したもの。

 △ 「食慾をそヽる
          ‥‥‥ 木魚の音にて

 △ 「美しき青きダニーブ河に沿ひて
          ‥‥‥ ヨハン シュトラウス曲

 △ 「歌のない子守歌
          ‥‥‥ ヨハンネス・ブラームス曲

 △  舞踊劇「明闇」
          ‥‥‥ 山田耕作曲
 盲目の笛法師が、撿校の位を得る爲めに京へ上る途中、清水寺の境内で一夜を明さうとする。そこに倒れてゐた破戒僧が目をさまし、眠れる法師の財布を盗み去らうとしたが、途端に倒れて目がつぶれ、反對に法師の目が明く。法師は佛の加護に感謝し僧にその金を惠み與へようとしたが、僧は盲目になったが爲めに始めて出世の悟りを開き清浄なる信仰の心に立ち歸った。これに反して法師は目が開いたことによって却って物慾起り、撿校の位を取らうともせず、無限の苦しみの伴ふ世間へまっしぐらに落ちて行く‥‥‥。

 △ 「エジプトを見る
          ‥‥‥ ドビュッシィ曲
 近代音楽の祖父ドビュッシィの名曲「エジプト人のために」に據る。彼は寫眞的にエジプトの気分を表現したのではなくて、或る異國的な感情をエジプトのテーマによって作曲したものであらう。この音樂に表れた気分をそのまゝに舞踊化したもの。

 △ 「ゴリウォーグのケーキウォーク
          ‥‥‥ ドビュッシィ曲
 ゴリウォーグは怖い顔の螺線人形です。ドビュッシィが「子供のために」作曲したものから、「子供のために」舞踊化したもの。 

 △ 「夢見る
          ‥‥‥ リヒャルト・シュトラウス曲
 夢みる‥‥‥ゆかしい處女の聖純ば樂慾‥‥‥しづかなる抒情的告白‥‥‥。 

 △ 「ピチカット
          ‥‥‥ デリーブ曲
 まろいまろいの象牙の玉が、銀でつゞったきざはしを轉ぶ。それはその昔、オリンプの神々が畫いたイメーヂであると云ふ‥‥‥。

 △ 「ピエロは嘆く
          ‥‥‥ ウエーバー曲
 酒をくまう。歌を歌はう。そしてそれでも淋しいならワルツを踊らう‥‥‥有名な「インビテーション・ツー・ザ・ワルツ」の舞踊化。

 △ 「或る動きの魅惑
          ‥‥‥ 音楽なし
 これは人のからだが奏で得る最高の音樂。人體の中に濳む異常なリズム。これは翼なくして飛ぶ術。神秘の扉を開く鍵。これは純醉な動きそのもの。

 △ 「弓の踊り
          ‥‥‥ ボロディン曲
 東洋の幻を求めて、彼は弓づるを弾いた。藍色の香の煙が踊り踊って、其處に東洋の幻が築き出される。

 △ 「デモンの踊り
          ‥‥‥ ホールスト曲
 地獄の扉が開く時 闇の世界が開く頃、諸々の魔神は歌ふ。諸々の魔物は光と闇の世界を踊る。

 △ 「暴風雨のあと
          ‥‥‥ ショパン曲
 油のやうに重い靜寂。嵐のあとの沈黙。不可抗な大自然の力に支配される人生の姿‥‥‥ショパンの奇しきメロディは人の運命をあやつる。‥‥‥ノクターンの舞踊化である。

 △ 「靑い熖
          ‥‥‥ 山田耕作曲
 靑い光よ! お前は何處へ流れて行く。靑い熖よ!お前は何を踊るのか。ホッと吐息漏らして、ソッと伸びて‥‥‥やがてお前は踊り狂ふ。何處へ行くのか靑い熖。何を踊るのか青い焔。

 △ 「石を持てる男
          ‥‥‥ ベラ・バルトック曲
 野に住む男はかく叫ぶー俺は山を持上げる事が出來る。野に住む男はあざ笑ふーそれどころか、俺は地球を持ち上げる。そして男は哄笑する。原始人の歌、アレッグロ・バルバロ。

 △ 「海洋の幻想
          ‥‥‥ 藤井清水曲
 思ひ出と望みと、熱情と死と、觀喜と悲嘆を胚む海への思慕‥‥‥波の奏でる歌に耳を澄してじっと思ひに沈めば人の心はファンタヂーで一杯になる。

 △ 「憂鬱なる街頭
          ‥‥‥ エリック・サティ曲
 目まぐるしい十字街頭‥‥‥ひょっと置き忘れられたる寂寞、瞬間。

 △ 「觀樂の舞踏」(バッカナール
          ‥‥‥ サン・サーン曲
 ユダヤ人との戰に勝ったパリスティン人共が、王宮の廣間で行ふ酒神祭の觀喜に滿ちた踊。サムソンとデリラの中のバッカナールの樂によるもの。

 研究所のお知らせ

 昭和五年七月一日發行
         東京府市外碑衾町衾二八一八番地
   發行兼編輯印刷人 石井漠
      東京府荏原郡碑衾町衾自由ヶ丘
   發行所 石井漠舞踊研究所

『漠のパンフレット』 第一輯 (1927.7)

2020年04月11日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他
   

 漠のパンフレット
  第一輯

 〔口絵4頁:マリィ・ウィクマン、ゴリウォーッグのケーキウォーク等〕

 目次

 ・石井漠君の顔            岡本一平
 ・純舞踊の出現を促す  石井漠

 日本の建築物は、元来が木材で造られるやうに研究されて來た。從って、どこの國でも見ることの出來ないやうな立派な木造建築が殘されたことは事實である。これは吾々の先祖の殘してくれた賜である。といって、生活様式の激變した現今に於ても、あらゆる建築物が、必ず、昔のまゝの木造樣式によらなければならないといふ理由はない。その證據には、丸ビルや海上ビルが、鐵筋コンクリートの洋式材料によったものが帝都の眞中に出來ても、誰も日本人とて、それを造り替へさせやうとする人もない。若しも、九階、十階の大建築物を日本在來の木材によって造らうとする人があっても、反って、危険だからと云ってそれをとめる人があっても、賞める人はまア、今の日本人に一人もあるまいと思って差支へあるまい。
 所が、我が國に於ける舞踊藝術に對する見界だけは實に不思議である。油の繪具で描いた繪だから、これは日本人の繪でないといふ人も今の日本には無いといってよからう。紫式部や近松の文章にある以外の文字や樣式を使ってあるから、これは純粹の日本人の文章ではないと斷定する人もあらうとは思はれない。この外、現在の日本に行はれてゐる姉妹藝術の表現樣式にしても、果して、日本在来の傳統をそのまゝ繼承して滿足して居るものが、果して何があるだらう。然し、それをとがめる人もなければ、不服をいふ人もない現在の日本である。それだのに、舞踊藝術のみが、何故、吾々先祖の遺してくれた、遺光、遺産にのみかじり付いてゐなければならないのだらう。そして、かじり付いて居るこのとのみが正統であって、かじり付いてゐない者がいけないのだらう。異端視されなければならないのだらう。これだけは實に、今の日本に於ける不思議中の不思議だと私は思ふ。
 音樂なども、日本在来の音樂だけでは我慢が出來ずに、借りものながらも、ヨーロッパの樂聖たちによってものせられた純音樂を、新聞社あたりの主催の下に、しかも堂々と日比谷の大衆の面前で演奏される時代になって來た。要するに、純音樂を求める人が日本にも殖えて來たのである。この時にあたって、舞踊としての純粹なものを、要求するといふことも、あながち物好きであるとばかりとられても甚だ心苦しい。日本人の中のたった一人でも、純舞踊に對して眞に要求する人間が、現れたとすれば、單にそれだけでも、日本人として、やがて來るであらう時代の爲に、純舞踊研究の價値が充分に認められるわけである。
 私は、娯樂的舞踊を排斥する者でもなければ、黙劇的な在来の日本舞踊に對して不滿を抱いて居る者でもない。立派に存在價値を認めて居る者である。只私の願ふことは、娯樂舞踊の必要を感じると同じやうに、在來の日本舞踊の存在を認めると同じやうに、純舞踊の必要、及び存在をも認めて貰ひたいのである。同時に、現在の我が國の舞踊家たちも、もうすこしこの方面に對して勇敢であって欲しいと願ふものである。

 ・石井漠君と其藝術          澤田謙
 ・瑞典舞踊及びジャン・ボルラン    岩田豊雄
 ・手紙                谷崎潤一郎 
 ・無音樂舞踊に關する一つのテーゼ   武田忠哉
 ・リトミック運動の現況        小林宗作
 ・烽火上る              水守龜之助
 ・スゥブニール
    日本 秋田雨雀-井上康文-井村生-アメリカ-ドイツ-ポーランド-チェコスロヴァキア-イギリス
 ・新時代的馬脚            天突猿郎
                    隆鬼堂
 ・漠は踊る              武藤翠雲
 ・歐米舞踊の旅            石井小浪
 ・到來物
 ・マリイウィクマンの舞踊       石井漠
  この一文は、私が伯林滞在中に書いたもので、大正十二年八月五日の「サンデイ毎日」に掲載したものである。ウィクマンの舞踊はその後度々見る機會を得たが、ウィクマンに對する第一印象としてこゝに再録する。(昭和二年六月二十日)

 ・詩的感興が人間の頭の中に生れた時、それを言葉や、文字の力をかりて表現すれば詩となり、色彩や線の力をかりて表現すれば繪となり、音を通して表した場合には、音樂となる。そして、この感興を全く肉體の運動の力に依って表現されたもの、即ち眞の舞踊なのである。
                                        ‥‥‥漠の言葉‥‥‥

 ・石井漠氏の「舞踊の本質と其創作法」 永田龍雄
                    志垣寛
                    小松耕輔
                    牛山充
 ・執筆者紹介
 ・作品目録

 石井漠 作品目録

   外國公演中の作品 
 
 表題        種類    作曲者          創作年表

 法悦        舞踊詩   山田耕作         (大正二年東京にて)
 躍動する心     〃     スクリアビン       (大正十三年巴里にて)
 メランコリイ    〃     エドワード グリーク   (大正十一年北野丸船上にて)
 囚はれたる人    劇的舞踊  ラハマニノフ       (大正十一年伯林にて)
 夢みる       舞踊詩   リヒアルト シュトラウス (大正十一年伯林にて)
 淋しき影      〃     山田耕作         (大正十年東京にて)
 夜の行列      劇的舞踊  フランツ リスト     (大正十一年伯林にて)
 マスク       舞踊詩   スクリアビン       (大正十三年紐育にて)〔上の写真:左から2枚目〕
 ソルヴェーヂの歌  〃     エドワード グリーク   (〃)
 若きパンとニムフ  舞踊詩劇  山田耕作         (大正二年東京にて)
 明闇        舞踊劇   山田耕作         (大正二年東京にて)

   歸朝後の作品  大正十四年以後

 表題        種類      作曲者          創作年表

 荒野        舞踊詩     リヒアルト シュトラウス (大正十四年武蔵境にて)
 賣られ行く奴隷   〃       ウラジミール レビコフ  (〃)
 奇妙        〃       スクリアビン       (〃)
 失念        〃       サムエール マイカパー  (大正十五年武蔵境にて)
 グロテスク(振附小浪) 〃     エドワード グリーク   (〃)
 山を登る      〃       〃            (大正十四年武蔵境にて)
 黄昏ゆく山々    〃       〃            (昭和二年武蔵境にて)
 ヘブライのメロデイ 〃       モーリス ラヴェル    (大正十四年武蔵境にて)
 百鬼夜行      舞踏      エドワード ホールスト  (昭和二年武蔵境にて)
 あきらめ      舞踊詩     エドワード グリーク   (大正十四年武蔵境にて)
 ブラームスの子守唄 〃       ヨハンネス ブラームス  (昭和二年武蔵境にて)
 パセティックソナタより 〃     ベートーヴェン      (〃)
 ゴリウォーッグの  子供の爲の舞踊 クロード ドゥビュスイ  (大正十五年武蔵境にて)
 ケーキウォーク
 こわがらせる    〃       シューマン        (〃)
 重大事       〃       〃            (〃)
 鬼ごっこ      〃       〃            (〃)
 習作(1)     無音楽舞踊   銅鑼の音にて       (〃)                     
 習作(2)     〃       〃            (〃) 
 群舞        〃       〃            (〃)
 美しき青きダニューブ河に沿ひて 舞踏 ヨハン シュトラスス  (大正十五年武蔵境にて)
 人間禮讃(四幕)  無言詩劇    小松平五郎        (昭和二年武蔵境にて)
 金魚        子供の爲の舞踊 ランゲ          (大正十五年武蔵境にて)
 海洋の幻想     劇的舞踊    藤井清水         (昭和二年武蔵境にて)
 食慾をそヽる    無音楽舞踊   木魚の音にて       (昭和二年武蔵境にて)

   大正十一年以前の創作にかゝるものは二三を除くの外本表の中に入れてありません。例へば舞踊劇「圓光は人に見えず」「道成寺の幻想」のやうな種類であります。

 ・舞踊の史的展開 
       -昭和二年七月三日於東京朝日講堂公演-

     擬態舞踊

 1、「金魚」 
          ‥‥‥ランゲ曲
      金魚の泳ぎ、その、描寫的な舞踊化ー
 2、「グロテスク
          ‥‥‥ エドワード・グリーク曲
      シェークスピアの「マクベス」に現れて來る三人の妖怪 ‥‥‥ 彼等の持つグロテスクな一面の印象的な舞踊化。随って妖怪それ自身の舞踊ではありません。
      此の舞踊の運動は蟇のそれからそのテーマを暗示されて居ます。即ちそれは「蟇の踊り」とも云ひ得ませう。その意味で一つの擬態舞踊なのであります。

     劇的舞踊
  此の「劇的」といふ意味は必しも所謂ドラマティクではありません、一つの物語とか筋とか、さういふものが運ばれてゐる舞踊、それが此の部に加入されます。

 3、「囚はれたる人
          ‥‥‥ ラハマニノフ曲
      原曲はラハマニノフの「プレリュード」であって、「囚はれたる人」といふ曲名ではありません。
      渡歐の途次、私はベルリンに着くと同時に此の曲に振附して、ヨーロッパ第一回の公演以来、各地に持って廻りました。
      樂想はたしかナポレオン軍のモスクヴァに於ける敗北を表したものでありますが、舞踊の心はナポレオンではありません。
      人間‥‥‥たゞ人間‥‥‥彼は囚はれてゐる‥‥‥失はれた自由‥‥‥人生。
    。なほ此の作品は昨秋日本で封切られたウーファ・フィルム「美と力への道」舞踊篇に加へられて居ります。 
                                             -文藝部-
 4、「こわらがせる
          ‥‥‥ シューマン曲
      樂聖シューマンが子供のために書下した音樂、それのメールヒュン的な舞踊化。
 5、「若きパンとニムフ
          ‥‥‥ 山田耕作曲
      森の保護神パンー
      水の精ニムフー
      性格が全く相異した此のパンとニムフを假りて、蒸し暑く倦怠な眞夏の午後の雰囲気、その舞踊
     
     劇的舞踊と純舞踊との中間にあるもの

 6、「メランコリィ
          ‥‥‥ エドワード グリーク曲
      憂鬱‥‥‥しかしどこまでも北方的な‥‥‥閉された人の心‥‥‥雪空の重たさ、蹲った影‥‥‥
      搖曳する幻像‥‥‥儚く、捕捉しがたい‥‥‥。
     。三木露風氏の詩「荒野」からヒントを得た舞踊詩。
 7、「山を登る
          ‥‥‥ エドワード グリーク曲
      山を登るー
      荒削りの木彫的効果、私は此の作品によって幾分でもそれを出したいと思ひました。

     純舞踊

 8、「法悦
          ‥‥‥ 山田耕作曲
      舞踊詩として私等の處女作りであます。
      大正四年頃、山田耕作氏指揮の下で帝劇に上演した、これはその際の作品の一つであります。
 9、「あきらめ
          ‥‥‥ エドワード グリーク曲
      あきらめ、最早それは言葉を超越した‥‥‥
 10、「マスク
          ‥‥‥ スクリャービン曲
      假面‥‥‥指のない手‥‥‥空洞な併しながら心を覗入る木偶の眼。
      マスクに對したとき感じさせられる不気味な感觸。
 11、「ブラームスの子守歌
          ‥‥‥ ヨハネス ブラームス曲
      子供のためにブラームスが作った三つのインテルメツォの一つ。歌詞を伴はない子守歌。それの舞踊化。
     。よく歌はれてゐる所謂「ブラームスの子守歌」の曲ではありません。

     準無音楽舞踊
  音楽伴奏舞踊から無音楽舞踊へ過渡して行く一つのプロセス。

 12、「食慾をそヽる
          ‥‥‥ 木魚の音にて
      赤裸々な心になった人間の姿‥‥‥それを第三者の立場から覗く‥‥‥その気持の表現。
      新宿のあるカフェーで發見された舞踊。
 番外
 13、舞踏「美しき青きダニーブ河に沿ひて
          ‥‥‥ ヨハン シュトラウス曲
      舞踊ではなくて、舞踏であります。
      ヨハン シュトラウスの代表的圓舞曲、その舞踏化。 

 ・研究發表會豫約會員募集 舞踊研究生募集
 ・編輯後記  (漠)(武田忠哉)

 ・表紙  石井漠の「囚れたる人」〔上の写真:左から1枚目〕

 昭和二年七月一日發行
         東京府下武蔵境
   發行兼編輯人 石井漠
      東京府下武蔵境
   發行所 石井漠舞踊研究所
           文藝部

「デニショウン一座 西洋舞踊」 帝国劇場 (1925.9)

2020年04月09日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

   

  大正十四年九月 狂言 毎夕四時開演 

    第一部

    弘津千代子作 舞臺評論七月號所載 
    鳥居清忠舞臺装置
 第一 新時代劇 吉田御殿 一幕
 第二 世話劇  伊勢音頭戀寝刄 二幕
            長唄音樂師社中
    セレリタス新作 
    薄拙太郎舞臺装置        
         ハイスピード・コメディース
 第三 第二囘 高速度喜劇 五種
            女子洋樂部員

    第二部

 第四
 デニショウン一座 西洋舞踊 數種
           洋樂部員
 舞踊
  ルウス・セント・デニス女史
  テッド・ショウン氏
  ドリス・ハンフレー嬢
  アン・ダグラス嬢
  ジオルディー・グレーム嬢
  アーネステイン・デイ嬢
  ポーリン・ロウレンス嬢
  エディス・ジェームス嬢
  ジェーン・シャーマン嬢
  アラ・マルティン嬢
  マリイ・ホウリイ嬢
  グレース・ボルルウス嬢
  ヘエル・ウエーラー嬢
  チャールズ・エイドマン氏
  ジョーヂ・スティーア氏
 ピアノ指揮者
  クリツフォルド・ヴォーアン氏
 舞臺監督
  ビー・セント・デニス氏
 道具主任
  スタンレイ・フレーザー氏
 奥役
  ジューン・ハミルトン・ローローズ女史
 音楽
 指揮  ピアノ クリッフォード・ヴォーアン氏
  ヴァイオリン アント・ポルスキイ氏
      セロ ロプリ・コッコ氏
    フルート ベルホーフ・スキイ氏
 
 第四 デニショウン一座 西洋舞踊
            洋樂部員

 左に二十日迄の番組を列記致します。二十日以後のプログラムはこのうちから御覧に入れます。尚詳しいことは「デニショウン大舞踊團寫眞。解説。番組」と云ふ本が出來ましたから御高覧を願ひます。

『第一番組』 一日から五日迄

 (一)ミュウジック・ヴィジュアリゼーションス(筋肉の波動即ち筋肉の音階で表はした音樂)

 (1)ソナタ・パテテイック(ベートーフェン曲)
 (2)レヴォルーショナリー・エチュード(ショパン曲)
 (3)グリーク・ベール・プラスティック、ツウ・バレー・ミュージック(ダリュッグの歌劇オルフォイスより)
 (4)スケルツォ・ワルツ(イルゲンフリッツ曲)
 (5)ソアリング(シューマン曲)
 (6)ワルツ作品三十三番第十五(ブラーム曲)リーベストラウム(リスト曲)
 (7)ヴアルス・プリマント(マナ・ツッカ曲)

 (二)

 (1)ヴアルス・デレクトアール(ドリゴ曲)
 (2)ラブ・クル シフィールド、音楽のない舞踊
 (3)ダンス・オブ・ゼ・ブラック・エンド・ゴールド・サリ(ストラフトン曲)
 (4)アメリカン・スケッチェス(數曲)

 (三)エイソーワの幻想・アルジェリアの舞踊劇

『第二番組』 六日から十日迄

 (一)海の精(スタウトン曲、デニス女史按舞)
 (二)ソチトル(トルテック民族の古代譚 ものがたり に基く舞踊劇)
 (三)デイヴァーテイスメンツ(本質的に音楽の伴奏の力に賴らざる獨立した藝術としての舞踊數種)
 (四)エヂブティアン・バレー(古代エヂプトの藝術の形式から受けた印象を舞踊化した作品)

『第三番組』 十一日から十五日迄

 (一)ミュウジック・ヴィジュアリゼーションス

 (1)セカンド・アラベスク(ドビッシイ曲)
 (2)エ・ダヂ イオ・パテテイク(ゴダルド曲)
 (3)バルス・カプリス(シャミナード曲)
 (4)アルバム・リーフ・エンド・プレリュード(スクリアビン曲)
 (5)パルス第十四(ショパン曲)
 (6)ワルツ作品三十三第十五(ブラームス曲)
 (7)ボイス・オブ・スプリング(ストラウス曲)

 (二)暁 あかつき の羽毛 はね (南部合衆國に住む印度人の田園傳説による奇怪な舞踊劇)
 (三)デイヴァーテイスメンツ

 (1)ゼ・レーヂエンド・オブ・ピーコック(ロス曲)
 (2)グノッシェンヌ(サテイ曲)
 (3)ダンス・オブ・ゼ・アプ サラセス
 (4)イースト・インディアン・スート(カドマン曲)

 (四)クワドロロ・フラメンコ(西班牙 スペーイン ジプシイの舞踊)

『第四番組』 十六日から二十日迄

 (一)ストラウシアナ(ストラウスの數曲をデニス及ショウン兩氏が振付けた作品、舞臺はヴイエナの公園)
 (二)デイヴァーテイスメンツ

 (1)サーランド・パスティック(シューベルトのワルツ)
 (2)ベーレリナ・リアール
 (3)フラメンコ・ダンセス
 (4)セレナードゥ・ダムール
 (5)ブッブル・ダンス
 (6)ダンス・アメリケーン
 (7)ワルツ・デニショウン

 (三)七つの門のイシュタア(往古バビロニアのアフロディートの神秘的な舞踊劇)

 觀覽料
  (觀覽税金共)

    第一部
 一、二階席  御一名 金六圓
 三階席    御一名 金一圓五十錢
    第二部
 一、二階席  御一名 金四圓
 三階席    御一名 金一圓

  第一部券お買求めの方には第二部をおまけとなし無料觀覽に供します
     外一切不要

 

  上の写真:「七つの門」『国際写真情報』 第四巻 第十二号 掲載のもの。


「デニショウン舞踊詩団 曲目解説」 京都 (1925.10)

2015年01月31日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

  

 RUTH ST. DENIS WITH TED SHAWN DANCERS AND DENISHAWN DANCERS

 デニショウン舞踊詩団 曲目解説 

デニショウン舞踊詩団
 曲目解説

    第一日 (十月十二日)

 第一、ミュウジック・ビジュアライゼーション

 (定義) 純粋なミュウジック・ビジュアライゼーションは、楽曲の韻律的構成を、メロディック構成及び調音的構成を、肉体の動きに移す科学的翻移である。それには楽曲を「解説描出」ひやうとか、踊手に依て考へられる楽曲の中の意味を現さうとか云ふ考へは全然許されない。唯、音楽と舞踊との間に相関的翻移が結ばれ、科学的翻移が施されるのである。
 科学的翻移とは何か。これを分説すれば、
 (一) ビジュアライゼーションに於て八ノートのものは、踊りの動きもそれと同じ長さに踊らねばならぬ。從ってクオター・ノートは八ノート二倍であるから、この時は二倍の長さのムーブメントを以てビジュアライズさる可きである。
 (二) 一つのメロディーは一人の踊りに依てビジュアライズされ、多く連立的音声やテーマを含んでゐる複雑な対立的楽曲は三人亦はそれ以上の踊り手の群団に依てビジュアライズされる。
 (三) 丁度演奏の上に、スタッカトーやレガトーのある様に、肉体の動きの中にもスタッカトーやレガトーがある。
 (四) 次にデイナミックが用ひられる。柔く奏される処は、力を保留して、柔く踊られる可きである。一方又急激な諧音は、烈しい体力を以て踊られねばならぬ。
 (五) メロディーの上り、下りは、舞台を水準としての身体の起伏に依て表はされねばならぬ。音線上のノートの位置を、ポーズの連続に相似させるには、身体の動きは、舞台の上に平たく腹匐ひになった位置から最高の跳躍に至る迄の間の、動きに依て示さる可きである。
 先づかう云った風のものである。
 次にミュウジック・ビジュアライゼーションの第二の形式はーこれにはデニスやショウン達は左程興味をもってゐないービジュアライゼーションには劇的観念を重置するものである。即ちエモーショナルな色彩構造的梗概、韻律的な型、及一般的意味の中に、楽曲と舞踊を関連させる自勝手な舞踊形式を云ふ。
 〔解説〕 数年前、ルウス・セント・デニスは、音楽形式の最高のものたる、交響楽に考へを向けた。そして、それを目に見える舞踊の形式に、一層適正に翻移しやうとした。だが、一人の踊り手では、シンホニーをビジュアライズ(目に見えるやうにする事)するにしても、一個のバイオリンが、それを演奏する程度以上に出ない事が、初めから明であった。
 そこでデニスは「シンコリック・オーケストラ」と云ふ踊手の集団、即ち一人の踊り手が、交響楽の一楽器に当る編成のもとになれる集団を創造した。そして先づシューベルトの「未完成シンホニー」の一奏部をビジュアライズした。これは真の運動のオーケストレーションに対してなせる先駆的努力である。
 この大きな試みに次いでデニスは小曲をとってベートーベンの「ソナタ・バセテイック」を手始めにブラームスの名曲、初期古典作曲家の作品、及び近代に至る迄の諸種の名曲を手にかけたデニスはかくして、楽曲の建築的構造に極く密接に則って、これ迄インタープレテイブ・ダンサーやクラッシック・ダンサーのやって来たよりも一層密接な関連を以て楽譜とを結付けた。一方又 楽曲の情想的内容には、劇的表現を施して、音楽と舞踊との関係を一層密接にした。
 上の性質のものをミュジック・ビジュアライゼーションと云ふ
 一 ソナタ・パセディークー第一奏部(ベートーベン曲)  デニショウン・ダンサーウ
 二 歌劇「オルホイス」の舞踊音楽に依るグリーク・ベエール・プラスティーク(グック曲)  ルウス・セント・デニス女史
 三 ヴアルス・カプリス(シャミナード曲)  ドリス・ハンフレー嬢
 四 レヴオルーショナリー・エチュード(ショパン曲)  テッド・ショウン氏 グレーエム嬢 ヂエームス嬢 シャーマン嬢
 五 高翔(シューマン曲)  ドリス・ハンフレー嬢 ダグラス嬢 ヂエームス嬢 デイ嬢 シャーマン嬢
 六 ワルツ作品三十三番第十五(ブラームス曲)及び愛の夢(リスト曲)  ルウス・セント・デニス女史
 七 ヴアルツ・プリアント(アナ・ツツカ曲)  テッド・ショウン氏 及び総員

 第二、ソーチル  =古代トルテック伝説に拠る舞踊劇=

  音楽   ホーマグ・リュン氏
  振付   テッド・ショウン氏
  舞台意匠 フランシスコ・コルネジョー氏
  衣裳考案 テッド・ショウン氏及コルネジョー氏
       〔役割〕
  テパンカルッイン(トルテック王) テッド・ショウン氏
  ソーチル             ヂオルディ・グレーエム嬢
  ソーチルの父親          チャールズ・ワイドマン氏
  笛吹き男             ヂョォーヂ・スチーアース氏
     乙女、宮廷の踊後子等
  第一場 有史以前のメキシコに於ける或る
  第二場 トルテック王テパルカルチン王宮の内部
       〔梗概〕
 世にも稀なる美酒がマダエイの木からとれると云ふ事を、ソーチルの父 が知った。彼は娘と共にこの発見を齎して トルテック王の御前に伺向する。ソーチルが、王の為めに一曲舞ふ。酒に狂酔したトルテック王は彼女の上に恐ろしい考へを向けたそして、邪魔な父親は、だまされて部屋の外へつれ出された。が併し、突然起った娘の叫び声に、彼は急いでとってかへす。そして一撃のもとにナイフをテパンカルツィンに突つささうとした。が、この時、ソーチルは 優しい女の心から、命を許してやつてくれと父にたのむー。命拾ひをしたトルテック王は恋と感謝の中に、廷臣どもを呼び集めて、ソーチルを彼の最初の妻、トルテック女王に娶る事を證覧せしめる。      

 第三、小品舞踊

 一 天界の女王 マドンナの研究)
 二 グノッシーヌ(サタイ曲) ルウス・セント・デニス女史 テッド・ショウン氏
 三 バッブル・ダンス ウェンク曲) シャーマン嬢 ダグラス嬢 デイ嬢 ローレンス嬢 ヂエームス嬢 グレーエム嬢
 四 バイレリナ・ロール ドリス・ハンフリー嬢
 五 西班牙組曲
  (イ)ショール・プラステイク(西班牙舞踊曲第五グラナドス曲 ルウス・セント・デニス女史
  (ロ)タンゴ(ヂョナス曲)及びエレグリアス(ヴアルヴェルト テッド・ショウン氏
  (ハ)マラゲナ(モスコウスキー曲) ルウス・セント・デニス女史 テッド・ショウン氏
 六 庭園にてイ
  (イ)三人の娘 ダグラス嬢 グレーエム嬢 シャーマン嬢
  (ロ)一人ぼっちのピエロ  チャールズ・ワイドマン氏
  (ハ)ワルツ  グレーエム嬢 ダグラス嬢 シャーマン嬢 ワイドマン氏
 七 ヴアルス・デニショウン(ウェンク曲) ルウス・セント・デニス女史 テッド・ショウン氏 

 第四、エヂプシヤン・バレー  =古代埃及の造形芸術に拠って感示されたる舞踊組曲=

 一 地を耕す者      ルウス・セント・デニス女史 テッド・ショウン氏
 二 ソース神とホーラス神 ワイドマン氏 スチーアース氏
 三 タンボリンを持てる踊 ドリス・ハンフレー嬢 ダグラス嬢 デイ嬢 マルチン嬢 シャーマン嬢
 四 再生の踊       ルウス・セント・デニス女史 テッド・ショウン氏

    第二日 (十月十三日)

 第一、ミュジック・ビジュアライゼーション

 (定義、解説は第一日の分を御参照下さい)

 一 セカンド・アラベスク(デビュシイ曲)  ダグラス嬢 シャーマン嬢 デイ嬢
 二 アダーヂオ・パセティック(ゴダルド曲) テッド・ショウン氏
 三 スケルツオ・ワルスイル グンフリツ曲  ドリス・ハンフレー嬢
 四 アルバム・リーフとプレリュード、スクリアピン曲 デイ嬢 ワイドマン氏
 五 ドラシャウワルツ ドリス・ハンフレー嬢 デニショウン・ダンサース
 六 ワルツ作品三十三番第十五(ブラームス曲)及び愛の夢(リスト曲) ルウス・セント・デニス女史
 七 春の声(ストラウス曲) ダグラス嬢 グレーエム嬢 シャーマン嬢 デイ嬢 ヂェームス嬢 ワイドマン氏 スチーアース氏 ハンフレー嬢
 (解説) これはフローレンスに在るボチチェリイの名画「プリマベラ」に依って霊示された絵画的小品。

 第二、クワドロ・フラメンコ =西班牙のジプシー・ダンス=

 クワドロ・フラメンコとは、西班牙のアンダルシア地方のコンサート・ホールや、酒場の演奏になくてはならぬジプシーの踊子、歌手、ギター弾きの一団に與へられた名称である。
  音楽 ルイズ・ホースト編曲 テッド・ショウnウン氏が西班牙で集めた生粋西班牙曲の写譜より編曲せる物
  構想及振付 テッド・ショウン氏
 クワドロ・フラメンコ ダグラス嬢 グレーエム嬢 デイ嬢 ドリス・ハンフレー嬢 ワイドマン氏
 花売娘 ヂェームス嬢 シャーマン嬢 ホーリー嬢 コーレンス嬢
 セビラツ兒 スチーアース氏ビー・セント・デニス氏
 ラランダ名有な闘牛師 テッド・ショウン氏
 ラ・マカレナオ(踊り子ー全セビルの偶像) ルウス・セント・デニス女史

  場景
 セビルの町の或カフェーのコンサートホール。
  梗概
 大闘牛日の宵。カフェーの盛りはこれからと云ふ頃。商売に忙がしい花売娘や、ジプシーの姿が見える。
 ラ・マカレナークワドロ・フラメンコの一人である彼女は、綺麗な踊子で名高いセビルの町の、人気者である所からかう呼ばれてゐるのである。この美しいマカレナの唄に、カフェーの常連どもが、すっかり魅惑されてゐる処で幕があく。
 歌が終ると、仲間の踊子達が、各々に踊り出て、ジプシー・ダンスの粋を見せる。
 と、其処へラランダが、闘牛師の装ひ美々しく、揚々と入って來る。皆の者から、プラザ・ド・トロスに於けるその日の彼の午後の勝利を、話してほしいとせがまれる。クワドロ・フラメンコは、踊ったり、歌ったり、いよゝ夜の愉楽のふたをあけるラ・マカレナがカフェーへ戻って來る。
 長い間、彼女に恋してゐたラランダは、申込んだ求婚に対する色よい返事を要求する。
 そして、もし自分の花嫁になってくれるならば、全セビル一番の美しいショールを買ってやうと約束するマカレナは喜んでそれに同意する。ラランダは雀踊して隣のショール店へとんで行く、そして目も覚めるやうな綺麗な織物の一ぱいに入った箱をかゝへて戻って来る。一枚、一枚ひろげて見せる。
 五番目のショールと、一番最後のとが、マカレナの心を奪ったかくして婚約は成立する。満座の男女は、二人の婚約を、典型的なジプシー流で、祝福の歓騰に包んでやる。
 この舞踊は、ジプシーダンスの精髄の集りである。筋はなんでもないものであるが、この中に編み込まれた幾多のジプシ・ーダンスが 鑑賞の眼目である。これまで日本の舞台にも、可成り西班牙舞踊は上せられたが、恐らく今回のこのデニショウンに依って踊られるものが初めて日本にスペイン・ダンスの真髄を紹介するものと云へやう。

 第三、小品舞踊

 一 ヴアルス・ディレクトアール(ドリゴ曲) ルウス・セント・デニス女史 テッド・ショウン氏
 二 虐げられた恋(無音楽舞踊)       デニショウン・ダンサース    
   (解説) 「舞踊は、本質的に見る藝術である。そしてそれ自身完全な、独立的藝術である。それは音楽の伴奏に何等たよる事のない、独立的藝術である。」と云ふ信念のもとに、デニスが創作せるもの。
 三 黒の金のサリの踊 (ストウトン曲) ルウス・セント・デニス女史
   (解説) この舞踊でデニスは、印度の婦人が身飾りの主要品として身に纏ふサリーと云ふ長い織布を用ひる 因みにこのサリーは、もと印度皇女の持物だったものである。
 四 アメリカ・スケッチス
  (イ)雷鳥への祈願 (ジョーン・フィリップ・スーザ曲 テッド・ショウン氏
   (解説) インディアンの雨乞踊り。地べたに雨神の像を描いて、それに聖餐を供へて儀式を挙げる。すると雨が降って来ると云ふ儀式舞踊である。
  (ロ)クレオール・ベル (ゴットシャルク曲) ドリス・ハンフレー嬢
  (ハ)クラップシュッター (イーストウッド・レーン曲) チャールズ・ワイドマン氏
  (ニ)テキサスのホールをめぐりて (レーン曲) アン・ダグラス嬢 テッド・ショウン氏
  (ホ)グリンゴタンゴ (レーン曲) アーネスティン・デイ嬢 テッド・ショウン氏
  (ヘ)布哇島火山の女神ペレーの踊 (ヴォーアン曲) ルース・セントデニス女史
   (解説) 身にまとふ布は火山の溶岩の表徴である。
  (ト)ボストン・ファンシー ― 一八五四 (レーン曲) ローレンス嬢 ワイドマン氏 グレーエム嬢 スチーアース氏 シャーマン嬢 デニス氏 ハンフレー嬢 テッド・ショウン氏
   (解説) 是は今のアメリカのお婆さんどもが、娘時代にはやった、丁度今日のフォックス・トロットキャット・ステップであったスクエーヤ・ダンスの数片である。

 第四、エイソーアの幻想 =アルヂエリア舞踊劇=

  創作及演出 ルウス・セント・デニス女史
  振付    デニス女史 テッド・ショウン氏
  音楽    アール・エス・ストートン氏
  装飾パネル ニノ・ロンヂ氏
  衣裳    パール・ホイラー女史
    ショウン氏が北アフリカで求め来ったアルジェリア特有のもの。
      (役割)
 ウーリーダ(ウーレッドナイル族の娘)  ルウス・セント・デニス女史
 ベン・サーディ(エイソーアとなる若者) テッド・ショウン氏
 青衣の酋長               ジョーヂ・スチーアース氏
 緋衣の酋長               チャールズ・ワイドマン氏
  アトマ(カフェーの店主)       パール・ホイーラー氏
 トウニスより来れる二人の踊子      デイ嬢 ジェームス嬢
 ムール族の踊子             アン・ダグラス嬢
 ビスクラより来れる三人の踊子      グレーエム嬢 シャーマン嬢 ローレンス嬢
 アイシャ                ドリス・ハンフレー嬢
 音楽師、給仕人、其他
  第一場 ビスクラ近郊のシダイオクバの回々教寺院
  第二場 ファトマの家 アルジェリアのカフェー
    〔梗概〕
 或るウーレッド・ナイル族の娘が、一人の貧しい少年を恋してゐた。娘は種族のならはしに従って、アルジェリアのカフェーに売られ、其処で踊を踊って、一族の為めに金を得なければならなかった。娘と少年とは悲しい別れを告げる。少年は、其頃失意のと反動の中に、回々教寺院に入った。そして、一種の宗旨狂になって仕舞って、エイソーアと云ふ苦行僧になった。
 第一場の寺院の場に於て、私達は燥狂の踊を踊る失恋の彼を見る。この踊は、一種の病的興奮を表はさうとして振付けされたものである。踊り狂って、彼は、其場にばったりと倒れて、意識をなくしてしまふ。この失神の間に、彼の少年時代の恋人がマホメット楽園に侍姫として、彼の面前に立つ。女は踊る。そして彼に「ファトマ」と云ふさるアルヂェリアのカフェーに来たれと告げる。
 第二場 ファトマの家。北アフリカの各地の娘が 富めるアラブの娯みとして、此家に大勢集められて来てゐる。娘達は此処で各々に、自族の踊を踊るのである。アラビヤの酋長や、金持連が出入して、珍味やコーヒーが供されてゐる。と、其処へ若いエイソーア(苦行僧)が四圍に、注意を配り乍ら入って来る。恋人を見付ける。そして逃げやうと誘ふ。かくして愛に生きた二人の姿は、ひそかにアラビアの砂漠に消えた。  

   デニショウンの舞踊 

 時日 十月十二日 十月十三日 午後六時開演
 場所 岡崎 市公会堂

  御観覧料
    指定席 五圓
    一等席 参圓
    二等席 貳圓
    紅札席 壹圓

  主催 松竹合名会社


「伊藤道郎舞踊団」公演 大阪・京都 (1931.4-5)

2014年02月21日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

 

 MICHIO Program Dance Performance
 「伊藤道郎舞踊団」公演


   Assiting Artist
   Hazel Wright
   Hjordes Furu
   Ruth MacChesney
   Betty Jordan
   Marjorie Booth
   Betty Phipps
   Teru Izumida
   Zora Leavitt
   Waldeen Falkenstein
   Jeree
   Chares Teske    

  〔昭和6年:1931年〕4月29日 30日 於 朝日会館
                    午後7時
              5月1日 於 京都市公会堂

  

         ー【プログラム】ー

 (1)「エクスリヂアスティック」 … チャイコフスキイ曲 
       ヘエゼル・ライト ヤアデス・フルウ ルス・マクチェスニイ 
       ベテイ・ジョウダン マアジョリイ・プウス ベテイ・フィップス
       テル・泉田 ゾラ・レヴエット ワルデイイン・フォルケンシュタイン
                              (振付 伊藤道郎)
 (2)「前奏曲」作品11 … スクリアビン曲
       ミチオ・イトウ (振付 伊藤道郎)
 (3)「テオドラ」 … フリムル曲
       ヂエレエ(マイルス・マアション)(振付 マイルス・マアション)
 (4)「ソナタ」作品109 … ベエトオヴエン曲
       ワルデイイン・フォルケンシュタイン (振付 ワルデイイン・フォルケンシュタイン)
 (5)「音の流れ」音詩 … 山田耕作曲
       ミチオ・イトウ (振付 伊藤道郎)
 (6)「印度の風神」 … マクドウヱル曲
       チャルス・デスキイ (振付 チャルス・デスキイ)
 (7)「エテュウド」第二 … シュウマン曲
       ルス・マクチェスニイ ヤアデス・フルウ マアジョリイ・プウス
       ベテイ・ジョウダン ワルデイイン・フォルケンシュタイン
                        (振付 伊藤道郎)
 (8)「ワルツ」 … ショパン曲
       ヘエゼル・ライト ミチオ・イトウ (振付 伊藤道郎)
 (9)「オリエンタル」 … イポリトオ・イウアノフ曲
       テル・泉田    (振付 伊藤道郎)
 (10)「パントマイム」 … ペナウ曲
       チヤアルス・テスキイ (振付 チヤアルス・テスキイ)
 (11)「エムパイア・ワルツ」 … グラズノフ曲
       ヂエレエ(マイルス・マアション) (振付 マイルス・マアション)
 (12)「前奏曲」變ロ調 … ショパン曲
       ワルデイイン・フォルケンシュタイン マアジョリイ・プウス
       ルス・マクチェスニイ ヤアデス・フルウ
       ベテイ・ジョウダン ベテイ・フィップス テル・泉田
                        (振付 伊藤道郎)
            【休憩】- (20分)
 (13)「支那俳優の印象」 … ラヴェル曲
       ミチオ・イトウ   (振付 伊藤道郎)
 (14)「舟遊び」 … デビュッシイ曲
       ヤアデス・フルウ ルス・マクチェスニイ マアジョリイ・プウス
       ベテイ・ジョウダン  (振付 伊藤道郎)
 (15)「フレミンコ」 … 作者不詳 
       ヂエレエ(マイルス・マアション)(振付 マイルス・マアション)
 (16)「ハバネラ」 … サラサアテ曲
       ヘエゼル・ライト (振付 伊藤道郎)
 (17)「タンゴ」 … アルベニイズ曲
       ミチオ・イトウ (振付 伊藤道郎)
 (18)「爪哇人」 … ケリイ曲
       ゾラ・レヴェット (振付 伊藤道郎)
 (19)「オルガ・シュラヴオッカの印象」 … フイビッヒ曲
       ヂエレエ(マイルス・マアション)(振付 伊藤道郎)
 (20)「羊飼の娘」 … デビュッシイ曲
       ヘエゼル・ライト (振付 ヘエゼル・ライト)
 (21)「アラベスク」第二 … デビュッシイ曲
       ルス・マクチェスニイ ワルデイイン・フォルケンシュタイン
       ミチオ・イトウ (振付 伊藤道郎)
 (22)「原始的律動」 … 
       チヤアルス・テスキイ (振付 チヤアルス・テスキイ)
 (23)「南へ」 … ミッドルトン曲
       ヘエゼル・ライト (振付 ヘエゼル・ライト)
 (24)「ピヂカット」 … デリイブ曲
       ミチオ・イトウ (振付 伊藤道郎)

   ピアノ  … レイモンド・サクシイ 舞台装置 … 伊藤熹朔
   舞台装置 … ラルフ・カッチ    衣裳   … 同
   照明   … ラルフ・カッチ

 

 ●ミチオ・イトウ来る -(外アメリカ第一流舞踊家一行十五名)-

    日本が有する唯一の世界的大舞踊家

 過般サカロフ夫妻の来朝更にこの日本が有する唯一の世界的大舞踊家が海外に於ける廿余年の研鑽による全収穫を挙げての貴重は本邦に於ける舞踊芸術やうやく本格的運動に入れる今日大いなる悦びといはなければならない。切に愛好家諸賢の御来観を俟つ。
 海外に飛躍すること廿余年、日本が有する唯一の世界的大舞踊家として声望欧米両大陸に隆々たるミチオ・イトウー帰朝を伝へらるゝこと一再ならず、その折ごとに素晴らしい期待をかけられつゝ種々の支障に妨げられて帰朝不可能であったミチオ・イトウーがいよゝ嵐のごときセンセエション裡に華々しく帰朝する。
 ミチオ・イトウが故イサドラ・ダンカン、アルヘンテイナ、ルイス・セント・デニス、ルス・ペイヂとともにアメリカ在住の五大舞踊家として謳はれつゝあるは既にいふまでもない。
 彼の「舞踊生活」は一九一〇年独逸ダルクロオゼのもとにおけるダルクロオゼ修業に始まる。こゝにおける研鑽はロンドンに渡って忽ち酬ゐられた「ピヂカット」にアンナ・パヴロアを驚嘆せしめてより彼は直ちに明星として迎へられたのである。彼のため特にダンス・ドラマ「鷹の井戸」を書贈ったウイリアム・バトラア・イエエツのごときは彼の渡米に当って「彼が再びロンドンに帰るまで欧洲のあらゆる芸術はたゞ茫然として佇立するのみであらう。」とまで云ってゐる。-アメリカーアメリカにおけるあらゆる都市で彼の作品発表公演が開かれなかったところは莫い。彼はこゝに堂々世界第一流舞踊家の列に伍するに至ったのである。
 最近の彼の最も大きな仕事、ハリウッド・ボウルにおける「プリンス・イゴオル」(登場人員百廿五人)パサディナ・ロオズ・ボウルにおける「光のペエヂエント」(東條人員二百五十人) はさすがのアメリカ人を驚嘆せしめたー
 彼は今回の帰朝には愛妻であるヘエゼル・ライトを始め彼の門下たるアメリカ舞踊家十五名を伴ってゐるがこれら何れも獨舞家として欧米にその名を知らるゝ人々である。            


「高木徳子のトーダンス」 (1915)

2012年11月23日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

   

 左の写真;

  帰朝して帝国劇場の「夢幻的バレー」に出演した大正四年〔一九一五年〕と思われる。なお、同じ写真で同じ矢吹高尚堂製の別の絵葉書には、「高木徳子のダンス」とある。

 右の写真:

  高木夫人のダンスぶり

  高木陳平夫人徳子の君は八年以前渡米し、ダンスを学んで其の技堂奥に入り、爾来米国各地に於て得意の技を演じ、到る所で大喝采を博しつゝありしが、先頃久々にて帰朝し、二月早々帝国劇場にあらはれました。-(上)高木氏夫妻。-(下)は夫人のトーダンス。

  上の写真と解説は、大正四年三月一日発行の『淑女画報』 三月号 第四巻 第三号 の口絵のものである。なお、目次では、「問題の婦人 (高木夫人 〔高木徳子〕 のトーダンス)」となっている。
  
  

 表情ダンス(高木徳子夫人演)

 右の写真:

  (上)スペインダンス『オペラトラビヤタ』の一節。
  (右)コントラルトー独唱のスタイル。
  (左)ギリシア古典舞踊『オペラジオコンダ』の一節。

 左の写真:

  (上)ロシア古典舞踊『霊島』の一節。
  (右)スペインダンス『オペラトラビヤタ』の一節。
  (左)指頭舞踊 トーダンス 『待焦れたる恋人の足音を聞いて』
 ー高木夫人は数年間米国に於てダンスを学んで其の技神に入れる斯界の名手であります。

  上の写真と解説は、大正四年七月廿四日印刷納本 の『淑女画報』 第四巻 第八号 の口絵のものである。 

   

 高木徳子の舞台振(其一)〔左〕   高木徳子の舞台振(其二)〔中〕  在米当時の高木徳子の舞姿〔右〕 

   オッチヨコチヨイ出世物語 
    爪先ダンスの名人高木徳子の半世  
                      金惠比壽

 ▲新派劇の開祖川上音二郎の前身がオツケペケペーの大道飴屋であつた如く、近頃爪先ダンスと称して一種特異のダンスを以て大モテ囃されて居る高木徳子なども亦御座敷育ちの芸人ではない。其の前身は何を隠さう、猫ぢやゝのオツチヨコチヨイ踊を売物にした極めて貧弱な旅芸人であつた。頃は明治四十年の春、北米はピッツバーグ市の郊外に花見の客を当て込んだ茶店が沢山出来たが、其中に一軒日本人ばかりの風変わりの珈琲店があつた。店員は僅に三名、其中二人の男は台所に立ち働き、専ら、客に応接のボーイを務めて居たのは未だうら若い日本の美人であつた。其身には裾模様の振袖を着け、目も覚えるような金絲の刺繍の幅広の帯を胸高に結んだ日本ムスメの粧ひが、珍しき物好きの米人には余程お気に召したものと見えて開店当日よりの大入大繁昌。初めの中は好奇心で見て居た他の茶店のものも漸 ようや く其繁昌を嫉む程に盛つたものだ。その三人の日本人とは誰あらう、男の中の一人は、神田小川町の宝石商金石舎の伜の高木陳平君で、他の一人は芝桜田本郷町の料理店今庄の森秋藏君。二人は共に金の降る亜米利加に一攫千金の夢を握みに出懸けたのだ。そしてこの店の弗箱 どるばこ とも看板娘とも言可き女こそ今日爪先ダンスの一人芸に一代の花を咲かせた高木徳子さん。良人 をつと 陳平君に嫁して僅に十五日、新婚の夢も碌々見る暇もなく、良人と共に母国を去つた、まだいぢらしい花嫁さんであつた。海山越えて幾千里、金の成る木を探しに出かけて来た程の三人の懐がいかにうら淋しかつたかは言ふまでもない。最初 はじめ の内は、男どもはお定 さだま りの料理屋の皿洗ひや硝子拭きなどに雇はれ、花嫁の徳子さんも仲働きに住み込んで互 たがひ の口を糊 ぬら しては居たものゝ、何時まで人に使はれて居たのでは金の生 な る木に廻り会へる筈もない。三人寄れば文殊の智慧、あれかこれかと儲け仕事の詮索に、不図思ひついたのが花見客を当て込みの珈琲店。それには幸ひ徳子さんが嫁入り支度をソックリ持つて来たので、パット綺麗な日本ムスメを囮鳥 おとり に、鼻の長い米国のお客を釣らうと言ふのが其魂胆であつた。
 
 ▲案の如 じやう 、三人の計画は図星に当つて、店のお客は毎日々々降つて湧く程の勢ひ。其上、夜になると、彼方 あつち 此方 こつち の家庭から来て呉れろと言ふ物好きな客も却々 なかゝ 少ないので、流行 はや る程に、稼ぐ程に、三人の懐は陽気と共に大分暖くなつた。とは言へ、世の中は三日見ぬ間のさくら哉。花の盛りも漸 やうや く過ぎて、一片 ひとひら 二片散 さ り初 そ めた頃から客足も稀になつた。元より少し許りの金が蓄 たま つたにしろ何時まで座食 ゐぐひ が出来るものではない。又も、三人が集つて善後策の相談を始めたが却々名案が浮ばない。互に顔を見合せて困りぬいて居た時、丁度東京で言へば浅草と謂ふやうな同市の演芸場から『日本の服装で日本の踊りをやつて呉れぬか』と言ふ相談を受けた。渡りに船と喜んだのは二人の男『どうか出演 で て呉れまいか』と徳子さんも頼まれて見れば厭だとは言へない、『否 いや だ』と言へば三人の口が乾上 ひあが る。幼さい時に習ひ覚えた芸が一時の口すぎ。二人の男も木戸番なり下足番なりに雇はれる約束で愈々演芸場へ出る事になつたが、それには何んとか芸名がなければ可笑しい。処が、先年、娘道成寺で名を売つた坂東玉三郎が米国で夭折したばかりでまだ、人々の頭に記憶されて居るのを幸に、無断襲名に及んで、二代目坂東玉三郎で看板をあげたのだ。 

 ▲コツテリした西洋人の踊に交つて、あつさりした日本ムスメの手踊は、非常に評判がよかつた。三人の懐合も再び春に戻つてポカゝして来たが、困つた事には根が素人の悲しさに踊の数を知らない。暫時は珈琲店を出して居た時、マーテインと言ふ人から習つた小唄などを突き交 ま ぜてお茶を濁して居たものゝ、これとて長く客を継 つな ぐ訳には行かない、又々、三人額 ひたひ を鳩 あつ めて何か目先きの変つた踊もがなといろいろ詮索した揚句が、猫ヂヤゝのオツチヨコチヨイ踊に定まつた。何しろマダム、バタフライを日本唯一の芸術として喜んで居る毛唐人の眼に、日本人が見 みて は莫迦らしい猫ぢやゝの素人踊が頗る御意に叶たのも無理はない。毎日毎晩大入満員の好景気小屋主も大喜びなら、三人も非常に優遇されたものだ。
 
 ▲猫ぢやゝの踊が呼物になつて市中到る所二代目坂東玉三郎の名がパット拡まつた。煽 あふ り立つ人気を見ては三人も黙つて蟲を殺して居られやう筈がない。何時までも人の懐ばかり肥して居るのもつまらないと言ふところから徳子を座頭に戴いて彼方此処の場末を興 う 行つて歩いたが、何れも大入満員の大景気。其時、田舎廻りの坂東玉三郎をして今日の高木徳子たらしめた一人の婦人が現はれた。
 
 ▲それは紐育 にゆよーく に住む、貴族の未亡人で、マダム、デビレラーと謂 い ふ、スペインダンスの名手であつた。この人が徳子のよちゝした腰付のオツチヨコチヨイ踊の足調子に莫迦 ばか に惚れ込み、一つ仕込んで見たならば物にならうと言ふので『教へてやるから、内弟子に来てかどうか』と言ふ先生の方からの勧誘だ。徳子も、考へて見れば何時 いつ までも猫ぢやゝでをさまつて居る譯には行かない。何とか将来の方針を立てねばならぬと窃 ひそか に思つて居た矢先、之れが幸ひと早速承諾して内弟子になつた、其間二人の男は又元の皿洗ひや、蜜柑もぎとなつて徳子の芸の上達を楽しみに待つて居た。

 ▲かくして徳子は二年の間、みつしりとスペインダンスに魂を打ち込み其傍 かたは ら唄をマダム、マツキユウムについて習つてゐた。其中に編み出したのが、未だ米国にも否 いな 世界のダンスと云ふダンスの中にも見た事のない徳子独特の爪先ダンスであつた。
 
 ▲今は最早他人の芸名を無断で借用する必要もない爪先きダンスの高木徳子で立派に通るやうになつた。デビレラーは鼻高々で徳子の爪先ダンスを紐育の上流の晩餐会や、公開の席上で紹介したので、オッチョコチョイ以上に人気を博し、交際社会の花形役者になつた。其後デビレラーは屡々 しばしば 徳子独特の爪先ダンスを自慢気に公開する毎に少からざる報酬を得たので、最早、師に報 むく ゐる丈けの事は勤めたので、此上は、一日も早く良人 をつと の陳平と森秋藏の二人と心を合せて大に働かうと考へて居た矢先き、二人の男からも『もう大抵いゝ加減の頃ぢやないかと』と言はれたので愈々師匠デビレラーの膝下を放れて単独で公演する事になつた。処が、公演の資金がないので、拠 よんどころ なく良人の陳平が情を具して実家の金石舎へ資金の調達を依頼した。実家でも伜夫婦の運が開ける事だからと言ふので早速金を送つたので、三人は其金を資本に紐育を手始めに興行して見たが、既に徳子の名を知つて居るものは勿論、其名を知らないものまでが世の評判に浮かされて押し寄せて来たので実家から借りた資金などは忽ちの中に取り戻してしまつた。其間に徳子は更に又サラコと言ふダンスの名手について教を仰ぎ、愈々全く茲に独立の技芸を築きあげたので多年辛苦を共にした森秋藏と別れ、夫婦手を携へて米国から英国、仏蘭西と到る所に人気を博し、九年振りでなつかしい実家に帰つたのである。そして帝国劇場に於て、只、一回の公演で、早くも日本一の名誉を荷つたのが高木徳さんの半世、先づはオッチョコチョイノチョイ。

 上の写真と文は、いずれも大正四年十月一日発行の『女の世界』 十月号 第壹巻 第六号にあるもの。左2枚は口絵のもの、右1枚は上文中にあるもの。

    

  世界的バライチー  高木徳子
 絵葉書 三枚壹組 金拾銭
  神戸湊川
    聚楽館

 
 大正五年の絵葉書と思われる。

  

 上左:鉛筆書きで「永井徳子」とある絵葉書のもの。
 上右:説明なしの絵葉書のもの。


「サカロフ夫妻舞踊公演」 東京・関西・名古屋 (1934.9-10)

2011年04月22日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

 表紙には、「世界的舞踊詩人・法悦の舞踊 クロチルド アレキサンダア サカロフ夫妻〔CLOTILDE ET ALEXANDRE SAKHAROFF〕舞踊公演 〔昭和九年:一九三四年〕9月23・25・26・27・29日 毎夕7時 日比谷公会堂」とある。22.3センチ、二つ折れ。 

 

 上演番組 (九月二十九日)

 第一部

1.ガボット      ‥‥ (バッハ曲)      ‥‥ アレクサンドル・サカロフ
2.陰鬱な踊り    ‥‥ (トウリナ曲)     ‥‥ クロチルド・サカロフ
3.宮廷の孔雀舞  ‥‥ (タープラン曲)    ‥‥ アレクサンドル・サカロフ
4.庭の少女     ‥‥ (モンポウ曲)     ‥‥ クロチルド・サカロフ
5.ゴヤに拠りて 第二番 ‥‥ (シヤブリエ曲) ‥‥ アレクサンドル・サカロフ

 第二部

1.プレリユウドとフウガ    ‥‥ (バッハ曲)      ‥‥ クロチルド・サカロフ 
                                     アレクサンドル・サカロフ
2.ソナチーヌ         ‥‥ (ラヴエル曲)     ‥‥ 
                                 ピアノ演奏 ウラドオ・ペルルムツテル
3.夏の果て         ‥‥ (シュトミツト曲)    ‥‥ クロチルド・サカロフ
4.ゴリウオツグのケーク・ウオーク  ‥‥ (ドビユツシイ曲)   ‥‥ アレクサンドル・サカロフ
5.春の詩          ‥‥ (クルグ-タンスマン曲) ‥‥ クロチルド・サカロフ

 第三部

1.サン・セバスチアンの殉教  ‥‥ (ドビツスイ曲)   ‥‥ アレクサンドル・サカロフ
2.デルフの舞姫         ‥‥ (ドビツスイ曲)   ‥‥ クロチルド・サカロフ
3.ゴヤに拠りて 第一番    ‥‥ (サラサーテ曲)   ‥‥ アレクサンドル・サカロフ
4.黒人の唄           ‥‥ (ギオン曲)      ‥‥ クロチルド・サカロフ
5.ノクターン           ‥‥ (シヨパン曲) ‥‥ ピアノ演奏 ウラドオ・ペルルムツテル
  ポロネーズ
6.ダンス             ‥‥ (バツハ曲)     ‥‥ アレクサンドル・サカロフ
                                     クロチルド・サカロフ

                                    衣装考案 アレクサンドル・サカロフ
  小野ピアノ店提供‥‥ホルゲールピアノ使用

 

 この写真は、サカロフ夫人〔Clotilde Sakharoff〕を表紙とした『週刊朝日』である。39センチ、38頁。
 その表紙には、「THE ASAHI WEEKLY EDITION 週刊朝日 第二十六巻 第十四号 (通巻第七百十三号) 昭和九年九月二十三日(日曜日)発行」などとある。
 この号の二三頁には、次の枠に囲まれた記載がある。

サカロフ夫妻来演    

 先年来朝してその高雅にして気品ある舞踊によりわれらを恍惚たらしめた夫妻の再来朝である。 
 その神技によつて快よき興奮を與へられる日もまた近い。
 (本紙表紙はサカロフ夫人の美しきポーズ)

 十月 三日 於京都市公会堂
 十月十二日 於神戸旧関西学院講堂
 十月 五日 於朝日会館
     七日
     八日 
     十日
 十月十八日 於名古屋市公会堂

 

 表紙には、「アレキサンダア クロチルド サカロフ 〔ALEXANDRE CLOTILDE SAKHAROFF〕 舞踊大公演 10月5・7・8・10日=大阪 朝日会館 ・ 10月3日=京都 華頂会館 10月12日=神戸 旧関学講堂 ・ 10月18日=名古屋 公会堂 毎夕7時 主催 朝日新聞社会事業団」とあり、上写真右には、「大風水害義捐金募集」ともある。26.6センチ、二つ折れ。

     

 第一番組 (京都 十月三日 大阪 十月五日・十日 神戸 十月十二日 名古屋 十月十八日)

     第一部
 1.メフイスト・ワルツ ‥‥ (リスト曲) ピヤノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 2.アプロヂツトへの祈祷 ‥‥ (ソウゲ曲) クロチルド・サカロフ
 3.サアカス幻想曲 ‥‥ (クライスラア曲) アレクサンドル・サカロフ
 4.陰鬱な踊り ‥‥ (トウリナ曲) クロチルド・サカロフ
 5.ゴヤに拠りて第二番 ‥‥ (シヤプリエ曲) アレクサンドル・サカロフ
 6.水の戯れ ‥‥ (ラヴエル曲) ピアノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 7.プレリユウドとフウガ(バツハ曲) クロチルドとアレクサンドル・サカロフ

     第ニ部
 1.奇妙なブウレ ‥‥ (シヤプリエ曲) アレクサンドル・サカロフ
 2.春の詩  ‥‥ (クルグ曲) クロチルド・サカロフ
 3.サン・セバスチヤンの殉教 (ドビツスイ曲) アレクサンドル・サカロフ
 4.夏の果て ‥‥ (シユミツト曲) クロチルド・サカロフ
 5.蝶 ‥‥ (シヨパン曲) アレクサンドル・サカロフ

     第三部
 1.浪の上にて ‥‥ (シユミツト曲) クロチルド・サカロフ
 2.プレリユウド ‥‥ (バツハ曲) アレクサンドル・サカロフ
 3.庭の少女 ‥‥ (モンポウ曲) クロチルド・サカロフ
 4.レスギンスカ ‥‥ (リアプノフ曲) ピアノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 5.ダンス ‥‥ (バツハ曲) クロチルドとアレクサンドル・サカロフ

 第二番組 (大阪 十月七日)

     第一部
 1.メフイスト・ワルツ ‥‥ (リスト曲) ピヤノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 2.浪の上にて ‥‥ (シュミット曲) クロチルド・サカロフ
 3.宮廷の孔雀舞 ‥‥ (クウプランークライスラア曲) アレクサンドル・サカロフ
 4.ワルツ ‥‥ (ショパン曲) クロチルド・サカロフ
 5.水の戯れ ‥‥ (ラヴヱル曲) ピアノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 6.プレリュウドとフウガ ‥‥ (バッハ曲) クロチルドとアレクサンドル・サカロフ

     第ニ部
 1.アプロヂツト ‥‥ (ソウゲ曲) クロチルド・サカロフ
 2.ゴヤに拠りて第二番  ‥‥ (シヤブリエ曲) アレクサンドル・サカロフ
 3.陰鬱な踊り ‥‥ (トゥリナ曲) クロチルド・サカロフ
 4.奇妙なブウレ ‥‥ (シヤブリエ曲) アレクサンドル・サカロフ
 5.春の詩 ‥‥ (クルグ曲) クロチルド・サカロフ

     第三部
 1.サアカス幻想曲 ‥‥ (クライスラア曲) アレクサンドル・サカロフ
 2.庭の少女 ‥‥ (モンポウ曲) クロチルド・サカロフ
 3.サン・セバスチアンの殉教 ‥‥ (ドビツスイ曲) アレクサンドル・サカロフ
 4.レスギンスカ ‥‥ (リアプノフ曲) ピアノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 5.ダンス ‥‥ (バツハ曲) クロチルドとアレクサンドル・サカロフ

 第三番組 (大阪 十月八日)

     第一部
 1.水の戯れ ‥‥ (ラヴエル曲) ピヤノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 2.デルフの舞姫 ‥‥ (ドビツスイ曲) クロチルド・サカロフ
 3.プレリュウド ‥‥ (バッハ曲) アレクサンドル・サカロフ
 4.浪の上んて ‥‥ (シュミット曲) クロチルド・サカロフ
 5.ゴヤに拠りて 第二番 ‥‥ (シヤブリエ曲) アレクサンドル・サカロフ
 6.プレリュウドとフウガ ‥‥ (バッハ曲) クロチルドとアレクサンドル・サカロフ

     第ニ部
 1.陰鬱な踊り ‥‥ (トゥリナ曲) クロチルド・サカロフ
 2.サアカス幻想曲  ‥‥ (クライスラ曲) アレクサンドル・サカロフ
 3.アプロヂツトへの祈願 ‥‥ (ソウゲ曲) クロチルド・サカロフ
 4.奇妙なブウレ ‥‥ (シヤブリエ曲) アレクサンドル・サカロフ
 5.春の詩 ‥‥ (クルグ曲) クロチルド・サカロフ

     第三部
 1.サン・セバスチアンの殉教 ‥‥ (ドビツスイ曲) アレクサンドル・サカロフ
 2.夏の果て ‥‥ (シュミット曲) クロチルド・サカロフ
 3.蝶 ‥‥ (ショパン曲) アレクサンドル・サカロフ
 4.庭の少女 ‥‥ (モンポウ曲) クロチルド・サカロフ
 5.レスギンスカ ‥‥ (リアプノフ曲) ピアノ独奏 ウラドオ・ペルルムツテル
 6.ダンス ‥‥ (バッハ曲) クロチルドとアレクサンドル・サカロフ

     ピアノ ウラドオ・ペルルムツテル


「サカロフ夫妻舞踊公演」 京都・大阪・東京 (1931.2)

2011年04月22日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

 表紙には、「クロチルド及びアレキサンダア サカロフ 〔CLOTILDE ET ALEXANDRE SAKHAROFF〕 夫妻舞踊大公演」とある。26.2センチ、6頁〔写真1頁〕。

 

 〔昭和六年:一九三一年〕「午後七時 於 朝日会館 主催 朝日新聞社会事業団」で、大阪公演が二月十五日・十六日・廿ニ日・廿三日で、京都公演が十三日である。

    

  大阪公演第一夜、第二夜 
   名古屋公演

   プログラム

      第一部

 1.「エアー」        … ピエル・ライトリンゲル独奏   … グルック曲
 2.「曲馬団の幻想」     … アレキサンダア・サカロフ    … フレスコバルデイ曲
 3.「黄昏に寄する讃歌」   … クロイチルド・サカロフ     … ヴヰエルモオ曲
 4.「ギター」        … アレキサンダア・サカロフ    … モスコウスキイ曲
 5.「完き幸福」       … クロチルド・サカロフ      … シュウマン曲
 6.a)「エチュウド」     … マアセル・カヴォ独弾      … ショパン曲
   b)「愛の夢」       … マアセル・カヴォ独弾      … リスト曲
 7.「舞曲」         … サカロフ夫妻          … バッハ曲
 8.a)「変奏曲」       … ピエル・ライトリンゲル独奏   … タルテイニ=クライスラア曲
   b)「円舞曲」       … ピエル・ライトリンゲル独奏   … ブラアムス曲
 9.「ガヴォット」      … アレキサンダア・サカロフ    … バッハ曲
 10.「春の歌」        … クロチルド・サカロフ      … クルッグ曲

      休憩十五分

      第二部

 1.a)「グラナダ」      … マアセル・カヴォ独弾      … アルベニツ曲
   b)「将軍ラヴアン」    … マアセル・カヴォ独弾      … デプシイ曲
 2.「牧童」         … クロチルド・サカロフ      … デプシイ曲
 3.「パヴアヌ・ロワイヤール … アレキサンダア・サカロフ    … クウプラン=クライスラア曲
 4.「デルフェの踊子」    … クロチルド・サカロフ      … デプシイ曲
 5.「ゴリイウォグのケエク・ウォウク アレクサンダア・サカロフ  … デブシイ曲
 6.「黒人の歌」(アメリカの印象)  クロチルド・サカロフ    … ギヨン曲
 7.「ゴヤに寄す」      … アレキサンダア・サカロフ    … サラサアテ曲
 8.a)「亜麻髪の娘」     … ピエル・ライトリンゲル独奏   … デブシイ曲
   b)「蜜蜂」        … ピエル・ライトリンゲル独奏   … シュベルト曲
 9.「浪漫的円舞曲」     … サカロフ夫妻          … ショパン曲 

 大阪公演第三夜、第四夜 
     京都公演

    プログラム

      第一部

 1.「サラバンド舞踏曲」   … ピエル・ライトリンゲル独奏   … ムウレ=ダンドロー曲
 2.「春」          … クロチルド・サカロフ      … ミロー曲
 3.「ギター」        … アレキサンダア・サカロフ    … モスコウスキー曲
 4.「円舞曲」        … クロチルド・サカロフ      … ショパン曲
 5.「成上がり貴族のメヌエット」 … アレキサンダア・サカロフ  … リュリー曲
 6.a)「子守歌」       … マアセル・カヴォ独弾      … ショパン曲
   b)「円舞曲」       … マアセル・カヴォ独弾      … ショパン曲
 7.「舞曲」         … サカロフ夫妻          … バッハ曲
 8.a)「プレリュードとアレグロ」 … ピエル・ライトリンゲル独奏 … プニアニー=クライスラア曲
   b)「モーマン・ミュジカル」  … ピエル・ライトリンゲル独奏 … シュウベルト曲
 9.「月の光」        … アレキサンダア・サカロフ    … デブシイ曲
 10.「春の歌」        … クロチルド・サカロフ      … クルッグ曲

      休憩十五分

      第二部

 1.「プレリュードとフーゲ」 … アレキサンダア・サカロフ    … バッハ曲
 2.「火の鳥」の子守唄    … クロチルド・サカロフ      … ストラウインスキー曲
 3.「ゴリイウォグのケエク・ウォウク」 アレクサンダア・サカロフ … デブシイ曲
 4.「黒人の歌」(アメリカの印象)  クロチルド・サカロフ    … ギヨン曲
 5.「ゴヤに寄す」      … アレキサンダア・サカロフ    … サラサアテ曲
 6.a)「支那の太鼓」     … ピエル・ライトリンゲル独奏   … クライスラア曲
   b)「リゴドン舞曲」    … ピエル・ライトリンゲル独奏   … フランクウル=クライスラア曲
 7.「赤い円舞曲」      … サカロフ夫妻          … ショパン曲

 

 表紙には、「アンナパヴロワ追悼記念 サカロフ夫妻訣別舞踊公演番組 昭和六年二月十七・十八日両日(毎夕七時開演) 第一演目二月十七日 日比谷公会堂」とある。19センチ。

 

 第一演目 二月十七日(火)上演


  第一部

 1 エア(グルツク曲) … 提琴独奏 ピエエル・ライトリンジエル氏
 2 小さき羊飼ひ(ドビツスイ曲) … クロチルド・サカロフ夫人
 3 ギタア(モスコウスキイ曲) … アレグザンドル・サカロフ氏
 4 完き幸福(シユウマン曲) … クロチルド・サカロフ夫人
 5 ガヴオツト(バツハ曲) … アレグザンドル・サカロフ氏
 6 a 子守唄(シヨパン曲) … 洋楽独奏 マルセル・ガヴオ氏
   b ワルツ(シヨパン曲)
 7 ダンス(バツハ曲) … クロチルド・サカロフ夫人
               アレグザンドル・サカロフ氏
 8 a ヴアリエエシヨン(タルチニ=クライスラ作曲) 提琴独奏 ピエエル・ライトリンジエル氏
   b ワルツ(ブラアムス曲)
 9 月の光(ドビツスイ曲) … アレグザンドル・サカロフ氏
 10 春の光(クルグ曲) … クロチルド・サカロフ夫人

  十五分休憩

  第二部

 1 a ヴイリアネスカ(グラナドス曲) 洋琴独奏 マルセル・ガヴオ氏
   b ラヴイヌ将軍 … 風変りな(ドビツスイ曲)
 2 成上り者のミユニエツト(リユリ曲) … アレグザンドル・サカロフ氏
 3 デルフの舞姫(ドビツスイ曲) … クロチルド・サカロフ夫人
 4 ゴリウオグのケイク・ウオオク(ドビツスイ曲) … アレグザンドル・サカロフ氏
 5 黒人の歌=アメリカの印象(グイオン曲) … クロチルド・サカロフ夫人
 6 ゴヤに拠りて(サラサアテ曲) … アレグザンドル・サカロフ氏
 7 a 亜麻色の髪を持てる少女(ドビツスイ曲) 提琴独奏 ピエエル・ライトリンジエル氏
   b 蜜蜂(シユウベルト曲)
 8 ロマンチツクなワルツ(シヨパン曲)
      アンナ・パヴロワ夫人の霊に捧ぐ … クロチルド・サカロフ夫人
                        アレグザンドル・サカロフ氏

     衣裳考案 アレグザンドル・サカロフ氏
     衣裳製作 巴里ポオル・ポアレ商会

            エラアル・ピアノ使用
            銀座 小野楽器店


『デニショウン大舞踊団演目解説』 宝塚大劇場 (1925.10)

2011年04月22日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

 表紙〔ドリス・ハンフレー嬢:Doris Humphrey〕には、「デニショウン大舞踊団演目解説 (宝塚グラフ第拾五号) 宝塚少女歌劇団発行」とある。奥付には、「大正十四年〔一九二五年〕十月二日発行、著作権 宝塚少女歌劇団、発行所 阪神急行電鉄株式会社」などとある。22.2センチ、写真8頁(24葉)・記事目次と本文など計36頁・英文演目解説8頁ほかである。
 
 下は、記事目次。

 一 デニショウン大舞踊団を迎ふ 
 ニ ラス・セント・デニスとその舞踊観に就て (寺川信) 
 三 デニショウン大舞踊団一行 
 四 デニショウン大舞踊団演目 
   第一回(十月二日ー四日) 
   第二回(十月五日ー七日) 
   第三回(十月八日ー十日) 
   第四回(十月十一日)

 下は、「デニショウン大舞踊団を迎えて」の一部。

 デニショウンといふ名称はルウス〔ルース〕・セント・デニス〔Ruth St. Denis〕女史のデニス 、夫君テッド・ショウン〔ショーン〕〔Ted Shawn〕氏のショウンとを組合わせた比翼名前で、両氏が一九一六年結婚記念として舞踊学校を創立した際、校名としてはじめて冠したのであります。

 デニスは言ひます。「今や舞踊はルネサンス時代にある。古きものから新しきものへいろヘの創作が生まれてゆくと思ふが、私は、私の国アメリカにアメリカ人としての本当の創作をしてゆきたい

 舞踊は私にとつて半ば宗教である。もしさうでないならば最早や私は踊れません。

 下は、そのプログラム〔細目・解説・梗概など省略〕
 
 Program         演目

     

No.1. (2th.-4th. Oct.)   第一回(十月二日ー四日)

 1.Music Visualizations      一 ミュウジック・ビジュアリゼイション
 2.Cuadro Flamenco      二 クワドロ・フラメンコ ースペインのジプシー・ダンスー
 3. Divertissements        三 小品舞踊
 4.The Vision of the Aissoua  四 エイソーアの幻想 ーアルヂエリア舞踊劇ー

No.2. (5th.-7th. Oct.)   第二回(十月五日ー七日)

 1.The Spirit of the Sea     一 海の精  ー舞踊詩ー
 2.The Feather of the Dawn   ニ 黎明の獵鳥 〔上左〕
 3.Divertissements        三 小品舞踊
 4.Straussiana           四 ストラウシアナ
 5.Ishtar of the Seven Gates  五 七つの門のイシユター ー恋と創造の女神、バビロンのアフロダイトの神秘なる舞踊ー 〔上中〕 

No.3. (8th.-10th. Oct.)   第三回(十月八日ー十日)

 1.Music Visualizations      一 ミユウジック・ビユジアリゼイション
 2. Xochitl              二 ソーチル ートルテツクの太古の口碑に基づける舞踊劇ー
 3.Divertissements        三 小品舞踊
 4.Egyptian Ballet         四 エヂプシヤン・バレー ー古代のエヂプト芸術に刺激されて生れ出た数種の舞踊ー 〔上右〕 

No.4. (11th)         第四回(十月十一日) 
                    
                    前三回の演目中から好評であつたものを選択上演致します。


 ◎ 表紙には、「デニショウン大舞踊団 宝塚公演演目 (〔大正十四年:一九二五年〕十月五日=七日 夕七時開演) 於宝塚大劇場」とあり、表紙裏ではさらに「第二回公演演目 (十月五日=七日)」ともある。二つ折り、横17センチ。
 下は、その演目。

 1、海の精(舞踊詩)
   セント・デニス 〔Ruth St. Denis〕女史 ハンフレー 〔Dorisu Humphrey〕嬢 デイ嬢
   ダグラス嬢 シヤーマン嬢 ジエームス嬢
   テツド・シヨウン〔Ted Shawn〕氏
 2、黎明の獵鳥(ブエブロー牧歌)
   テツド・シヨウン氏 デイ嬢 ローレンス嬢 外総員
 3、小品舞踊
   一、ギャーランド・プラスティーク及びシューベルトのワルツ
      セント・デニス女史
   二、セレナード・ダムーア
      ハンフレー嬢
   三、フラメンコ・ダンス及び四人の踊
      テツド・シヨウン氏 ワイドマン氏
      デイ嬢 グレーエム嬢
   四、孔雀物語(ロス曲)
      セント・デニス嬢
   五、ヴルス作品第十四番(ショパン曲)
      ダグラス嬢 グレーエム嬢
   六、パウアーン
      ホーロース嬢 スチーアース氏
   七、ダンス・アメリケン(テンド・モウレイ曲)
      ワイドマン氏
   八、アプラセスの踊
      ダグラス嬢 シヤーマン嬢 ジエームス嬢
   九、東方印度人ノーチ(カドマン曲)
      セント・デニス女史
  4、ストラウシナ
   一、ウインナの森の誘ひ
      デニシヨウン・ダンサース
   二、あひびき(ポルカ・マズルカ)
      セント・デニス女史
   三、伯爵夫人と軽騎兵(マズルカ)
      セン・トデニス女史 テツド・シヨウン氏
   四、オペラから来た踊子(ポルカ)
      ハンフレー嬢
   五、三人の軽騎兵(ラデツキイ行進曲)
   六、ウインナの夜(ワルツ)
      総員
 5、七つの門のイシュター(神秘的舞踊劇)
      セント・デニス女史 ハンフレー嬢
      テツド・ショウン氏 ワイドマン氏 外総員

 また、末尾に、次の広告文がある。

 奇麗な写真十数葉、わかり易い説明、デニショウン舞踊団演目解説(特価卅銭)は、好舞踊家の必読書であります。 場内売店へ‥‥‥‥

 ※ 文中の写真は、本書に掲載のもの。


『デニショウン大舞踊団』 帝国劇場 (1925.9)

2011年04月22日 | ダンス デニショーン、サカロフ夫妻他

 表紙には、「デニショウン大舞踊団  写真・解説・演目 帝国劇場」などとあり、奥付には「大正十四年九月一日発行」などとある。22.2センチ、写真8頁・解説 演目 62頁・英文プログラム10頁。
 
 記事目次〔細目など省略〕

 一 デニショウンの舞踊芸術
 ニ デニショウン大舞踊団一行
 三 デニショウン大舞踊団演目

 下は、そのプログラム〔細目・解説・梗概など省略〕
 
 Program         演目

       

No.1. (1th.-5th. Sept.)  第一回(九月一日ー五日)

 Ⅰ.Music Visualizations     一 ミュウジック・ビジュアライゼーション
 Ⅱ.Divertissements       ニ 小品舞踊
 Ⅲ.The Vision of the Aissoua 三 エイソーアの幻想 =アルヂェリア舞踊劇= 〔上の写真:左から1枚目〕

  

No.2. (6th.-10th. Sept.)  第二回(九月六日ー十日)

 Ⅰ.The Spirit of the Sea   一 海の精  =舞踊詩= 〔2枚目〕
 Ⅱ.Xochitl            ニ ソーチル =古代トルテック伝説に拠る舞踊劇=
 Ⅲ.Divertissements      三 小品舞踊
 Ⅳ.Egyptian Ballet         四 エヂプシャン・バレー =古代埃及の造形芸術に拠って感示されたる舞踊組曲=

No.3. (11th.-15th. Sept.) 第三回(九月十一日ー十五日)

 Ⅰ.Music Visualizations     一 ミュウジック・ビジュアライゼーションス
 Ⅱ.The Feather of the Dawn  ニ 暁の羽毛 =ブエブロー牧歌=
 Ⅲ. Divertissement        三 小品舞踊
 Ⅳ. Cuadro Flamenco       四 クワドロ・フラメンコ =西班牙のジプシー・ダンス= 〔3枚目〕  

No.4. (16st.-20th. Sept.)  第四回(九月十六日ー二十日)

 Ⅰ.Straussiana           一 ストラウシアナ
 Ⅱ.Divertissement         ニ 小品舞踊
 Ⅲ.Ishtar of the Seven Gates  三 七つの門のイシユター =バビロニアのアフロダイト(恋と創生の女神)の神秘的舞踊=
 Ⅳ. Egyptian Ballet

No.5. (21st.-25th. Sept.)  第五回(九月廿一日ー廿五日)

                 前四回の演目中から好評であつたものを選択上演致します。

 ※ 文中の写真は、当時のブロマイド絵葉書より。