■2002年11月
石橋オーナーが「大和ハウス工業は創業以来、赤字になったことがない。1回くらい赤字にしてもかまへんぞ」と言った
私は耳を疑った
オーナーは尊敬する松下幸之助氏の「赤字は社会悪」という言葉を信奉し、ずっと実践してきたからだ
■大和ハウス工業の損失額。全部ウミを出すと2100億円に達すると分かった。小手先で処理していては時機を失う。2003年3月期で一括処理すると腹をくくった
■2003年2月21日、石橋オーナーが亡くなった
「社葬はするな。1日たりとも仕事を止めてほしくないんや」、生前にオーナーは言っていた
22日、オーナーの棺を納めた車は能登を出て、滋賀のロイヤルホテル、奈良、大阪の事業所、工場、研究所などを回り、創業の地である大阪市浪速区日本橋を経由し、北区の本社ビルに到着した。役員100人が整列してお迎えした
告別式の翌日、本社ビル15階のオーナーの部屋に入った。大きな遺影に向かって私は「一発でやらせてください。2度と赤字にはいたしません。必ずV字回復を成し遂げます」と報告した
■4月30日、2003年3月期の連結最終損益が910億円の赤字になると発表した
特別損失2100億円を一括処理し、創業以来初の赤字に転落した
含み損を数年に分けて処理するのは、重荷を背負い経営を続けるようなもの。配当が減り、賞与も伸びないとなれば、株主も従業員も将来の夢がもてない
5月1日
720円で始まった大和ハウス工業の株価は、714円まで値を下げた。そこで株価が反転した。前日比35円高で引け
5月2日
777円の高額をつけた
営業利益は出ている。負の遺産を一掃したことで、業績回復に弾みがつくと市場は評価してくれた