るるの日記

なんでも書きます

古事記 意地悪な兄・火照命「無くした釣針を返せ」とごねる

2020-12-10 17:34:14 | 日記
火遠理命、海さちをもちて魚釣らすに、かつて一つの魚も得ず。亦其の鉤(つりばり)を海に失ひたまひき

ここに兄火照命、其の鉤を乞ひていはく、【「山さちも己がさちさち、海さちも己がさちさち。今は各さち返さむとおもふ」】といひし時、其の弟火遠理命、答へてのりたまはく
「汝の鉤は魚釣りしに一つの魚も得ずて、遂に海に失ひつ」とのりたまひき

しかれども其の兄強いて乞ひ【徴(はた)りき】。故、其の弟御はかしの十拳剣を破りて、五百鉤(いほはり)を作りて、償(つくの)ひたまへども取らず。亦一千鉤を作りて償ひたまへども受けずて、「猶其の【正本(もと)】の鉤を得む」といひき

★山さちも己がさちさち~
呪詞

★徴りき
無理に徴収する
「よこせ」と責める

★正本(もと)
以前のもの、本来のもの

■火遠理命は、海の獲物を取る道具で魚を釣ったが、まったく一匹も釣れなかったばかりでなく、釣針を海の中になくしてしまった

兄の火照命がその釣針を請求して、
「弓矢も各自の道具、釣針も各自の道具。お互いの道具を元通りに戻そうと思う」と言った時に

弟の火遠理命は「兄さんの釣針は、魚を釣っていたのに一匹の魚も釣れないで、とうとう海の中に無くしてしまいました」と言った

しかし兄は強引に返せと責めた。弟は腰につけていた長剣を壊して五百本の釣針を作り弁償したけれども、兄は受け取らない

さらに千本の釣針を作って弁償したが、これも受け取らないで
「やはり、以前の釣針を返してもらおうと言った」





古事記 山さちびこ火遠理命は、海さちびこの兄火照命の仕事をしたがる

2020-12-10 16:53:38 | 日記
火照命(ほでりのみこと)は【海さちびこ】として、【鰭(はた)の広物、鰭の狭物】を取り

火遠理命(ほおりのみこと)は【山さちびこ】として、【毛のあら物、毛の柔物(にこもの)】を取りたまひき

火遠理命、其の兄火照命に
「各(おのおの)さちを相易(あいか)へて用いむ」といいて三度乞ひたまへども許さざりけりき。しかれども遂に【わづかに】得相易(えあひか)へたまひき

★海さちびこ
※海の獲物をとる男、漁夫
※さち→獲物または獲物をとる道具

★鰭の広物、鰭の狭物(せもの)
大小の魚

★山さちびこ
山の獲物をとる男、狩人

★毛のあら物、毛の柔(にこ)物
※毛の荒い獣と、毛の柔らかい獣
大小各種の獣類

★わづかに
かろうじて、やっと


■火照命(ほてりのみこと)は海の獲物をとる男として、大小さまざまの魚をとり、
火遠理命(ほおりのみこと)は山の獲物をとる男として、大小さまざまの獣を取っておられた

ある時、火遠理命が兄の火照命に、「獲物を取る道具を交換して使いましょう」と三度望んだが、兄は許さなかった。そしてやっと交換することができた



古事記 木花之佐久夜毘売の生んだ子は邇邇芸命の子・神の誓いによる証明あり

2020-12-10 16:11:00 | 日記
♦️天つ神の豊穣霊たる邇邇芸命が、国つ神の娘と結婚して、日向第二代の日継の御子を生むというのがこの聖婚物語の主題

邇邇芸命(大和朝廷)の主権が、薩南にまで及び、土豪隼人の娘との結婚によってその土豪を服従させたという国家的、政治的構成


ここに答へて白さく
【「吾が妊(はら)める子、もし国つ神の子ならば、産む時辛くあらじ。もし天つ神の御子ならば、辛くあらむ」】とまをして、【戸無き八尋殿(やひろどの)】を作りて、其の殿の内に入り、土をもちて塗り塞ぎて、産む時に方(あた)りて、火をもちて其の殿につきて産みき。【其の火の盛に燃ゆる時】に生める子の名は

※【火照命】(ほでりのみこと・【隼人】の阿多君の祖)

※【火須勢理命】(ほすせりのみこと)

※【火遠理命】(ほをりのみこと)
亦の名は天津日高日子穂穂手見命
(あまつひこひこほほでみのみこと

★吾が妊める子~辛くあらむ
佐久夜毘売の誓生(うけいうみ)の言葉

★戸無き八尋殿(やひろどの)
戸のない広い御殿
産殿

★其の火の盛に燃ゆる時に
この句は三柱全部にかかる
火の勢いの進む三段階の中から三柱が現れた

★火照命(ほでりのみこと)
※火が明るく照った時に生まれた神
※穂照命→邇邇芸命が稲穂の霊格であったように、三柱の子のホも稲の穂が原義
★隼人(はやと)
はやひととも読む
※南九州に住んだ部族
※阿多隼人・日向隼人・大隅隼人・薩摩隼人などがある
※大和朝廷からは異民族視されていた
※阿多隼人は鹿児島県川辺郡・加世田市・日置郡にわたって支配した

★火須勢理命(ほすせりのみこと)
※火が燃え進む時に生まれた神
※穂の実りが進むが原義

★火遠理命(ほをりのみこと)
※火勢いが弱まった時に生まれた神
※稲穂が折れたわむほどに実る意

別名・天津日高日子穂穂手見命
(あまつひこひこほほでみのみこと)
※ほほで→炎が出る
※み→稲穂を出す霊

■佐久夜毘売は答えて
「私が身ごもった子が、もし国つ神の子であるならば、出産の時、その子は無事でないでしょう。もし天つ神の御子ならば、無事に生まれるでしょう」と誓生(うけいうみ)の言葉を申して、出入口のない広い産殿を造って、その御殿にこもり、それを土ですっかり塗り塞いで、出産の時は火をその産殿につけて子を生んだ

火が盛んに燃える時に生んだこの名は
火照命
火須勢理命
火遠理命
別名・天津日高日子穂穂手見命
である



古事記 妻・木花之佐久夜毘売妊娠、邇邇芸命は私の子ではないと疑う

2020-12-10 14:58:01 | 日記
木花之佐久夜毘売まいでて白さく
「妾(あ)は妊身(はら)めるを、今産(こう)む時にいどみ、この天つ神の御子は、私に産むべきにあらねば請(まお)す」とまをしき

ここに詔りたまはく
「佐久夜毘売、一宿に(ひとよ)にや妊(はら)める。これ我が子に非(あら)じ。必ず国つ神の子ならむ」とのりたまひき

■ある日、木花之佐久夜毘売が邇邇芸命の前に参って
「私は身重になりましたが、今出産の時期に際して、この天つ神の御子は、こっそり生むべきではありませんので、指図を仰ぎたくて御報告申し上げます」と申し上げた

邇邇芸命は
「佐久夜毘売よ、たった一夜の交わりで身重になったのか。これは私の子ではありまい。きっと国つ神の子に相違なかろう」と言われた

古事記 大山津見神の呪詛

2020-12-10 14:28:27 | 日記
大山津見神、石長比売を返したまひしによりて大(いた)く恥ぢ、白し送りて言わく
「我が女二並べて立て奉りし由は、石長比売を使はしては、天つ神の御子の命は、雪ふり風吹くとも、恒に石の如くして、【常石(ときは)に堅石(かきは)】に動(ゆる)がず坐せ
亦木花之佐久夜比売を使はしては、木の花の栄ゆるが如栄え坐せと、【うけひて貢進(たてまつ)りき】かくて石長比売を返さしめて、独り木花之佐久夜毘売を留めたまひき。故、天つ神の御子の御寿(みいのち)は、木の花の【あまひのみ坐さむ】」といひき。故、これをもちて今に至るまで、【天皇命等(すめらのみことたち)の御命長からざるなり】

★常石(ときは)堅石(かきは)に
※ときは→常に変わらぬ岩
※かきは→堅い岩
※ともに永久に変わらないことの比喩

★うけひて貢進(たてまつ)りき
ある事柄の実現を祈願する

★あまひのみ坐さむ
はかなく、もろい

★天皇命(すめらのみこと)等の御命長からざるなり
※歴代天皇の寿命が長久でないのは、大山津見神の呪言によるということで、天皇の寿命の本縁を説明するとともに、神代が終わり人代が始まることを暗示している


■大山津見神は、邇邇芸命が石長比売を返してきたことをひどく恥じて、「私の娘二人を一緒に差し上げた理由は、石長比売を差し上げたのは、天つ神の御子の命は、雪が降り風が吹いても、いつも石のように永久に不変で不動にいらっしゃいませ

木花之佐久夜毘売を差し上げたのは、木の花がはなやかに咲くようにお栄えなさいませ、と誓約(うけい)をして献上したのです

ところが、このように石長比売を返させられて、木花之佐久夜毘売のみをお留めになりました

ですから天つ神の御子の寿命は、木の花のように、はかなくいらっしゃることでしょう」と申し送った

このことによって、今日に至るまで歴代の天皇の寿命は長久ではないのである