るるの日記

なんでも書きます

古事記 火遠理命、海の国で三年暮らす

2020-12-11 09:06:02 | 日記
豊玉毘売、奇(あや)しと思ひて、出(い)で見て、【見感(みめ)でて】【目合(まぐあい)】して、其の父にまをしていはく、「我が門に麗しき人有り」とまをしき

海の神自ら出て見て
「この人は天津日高(あまつひこ)の御子、【虚空津日高(そらつひこ)】ぞ」といひて、即ち内に率入(いい)りて、【みちの皮】の【畳八重】を敷き、【きぬ】畳八重を其の上に敷き、其の上に坐(いま)せて、【百取(ももとり)の机代】の物を具(そな)へ、【御饗為(みあへし)】て、其の女(むすめ)を婚(あ)はしめまつりき。故、三年(みとせ)に至るまで其の国に住みたまひき

★見感(みめ)でて
見て気に入る

★目合(まぐあひ)
互いに目配せして情を通じる

★虚空津日高
日の御子

★みちの皮
あしか。海獣。皮は珍重された

★畳八重
敷物、折り重ねて用いることが多いのでタタミという

★きぬ
あらく織った粗製の絹

★百取りの机代
多くの結納品

★御饗為(みあへし)て
もてなしの食事
婚姻の儀式の一つ


■豊玉毘売は不思議に思って、門の外に出て見て、たちまち火遠理命の容姿にほれぼれして、互いに目配せして心を通じ合わせてから、その父の神に「私どもの門のところに、美しい男がいます」と申し上げた

そこで海の神はみずから門の外に出て見て「こな人は天津日高の御子の虚空津日高でいらっしゃるぞ」と言って、すぐに宮殿の中に連れて、あしかの皮の敷物を何枚も重ねて敷き、絹の敷物を何枚もその上に敷き、その上に火遠理命を座らせて、たくさんの結納品を揃え、御馳走をした上で、その娘の豊玉毘売を結婚させた

こうして火遠理命は三年、海神の国に豊玉毘売と一緒に過ごした

古事記 火遠理命、豊玉毘売の器に玉をくっつける

2020-12-11 08:19:46 | 日記
火遠理命(ほをりのみこと)、その婢(まかたち)を見て「水を得まく欲し」と乞ひたまひき。婢、水を酌みて、玉器に入れて貢進(たてまつ)りき

ここに水飲まさずて、御頸の玉を解きて口に含みて、其の玉器に唾き入れたまひき。その玉器につきて、婢玉を得離たず。故、玉つける任(まにま)に豊玉毘売に進(たてまつ)りき

其の玉を見て、婢に問ひていはく
「もし人、門の外に有りや」といへば、答へてまをさく「人有りて我が井の上の香木の上に坐す。甚(いと)麗しき壮夫(おとこ)にます。【我が王(きみ)】に益(ま)して甚貴(たふと)し。其の人水を乞はす故に水を奉れば水を飲まさずて、この玉を唾き入れたまひき。これ得離たず。故、入れし任に将(も)ち来て献(たてまつ)りぬ」とまをしき

★我が王(きみ)
海神

■火遠理命(ほをりのみこと)は、その侍女を見て「水がほしい」と所望した。侍女はすぐに水を汲み、立派な器に入れて差し上げた

それを受け取った火遠理命は、水を飲まないで首飾りの玉を外して口に含み、その立派な器に吐き入れた。その玉は器にくっついて侍女は、その玉を引き離すことができない

仕方なく玉をつけたままの器を、豊玉毘売に差し上げた。豊玉毘売はその玉を見て、侍女に「もしかしたら、誰か門の外にいるのではありませんか」と尋ねたので侍女は

「人がいまして、私どもの泉のほとりの桂の木に登っております。まことに美しい男性です。我が君の海の神さま以上にとても立派な方です。その方が水を所望されたので、水を差し上げたところ、水を飲まないでこの玉を吐き入れました。ところがどうしても引き離すことができません。それで入れたまま持ってきて差し上げた次第です」と申し上げた

古事記 豊玉毘売の侍女、麗しい男・火遠理命に出逢う

2020-12-10 19:05:58 | 日記
教(おしえ)の随(まにま)に少し行でますに、つぶさに其の言の如くなりしかば、即ち其の香木に登りて坐(いま)しき。ここに海の神の女・【豊玉毘売】の【従婢(まかたち)】、【玉器(たまもひ)】を持ちて水を酌まむとする時、井に【光(かげ)有り】。仰ぎ見れば【麗しき】壮夫(おとこ)有り。甚異奇(いとあや)しとおもひき

★豊玉毘売(とよたまひめ)
とよ→美称
たま→魂
神霊の依りつく姫

★従婢(まかたち)
貴人に仕える女

★玉器(たまもひ
たま→美称
もひ→飲料水を入れる器

★光(かげ)有り
水などに映った姿
日の神の子孫としての光輝く姿が泉に映った

★麗(うるは)しき
整った美しさ
気高く立派な美しさ

■教えに従い少し行くと、何から何までその言葉の通りだったので、すぐにその桂の木に登って待っていた。すると海の神の娘の豊玉毘売の侍女が立派な器を持って現れ、水を汲もうとすると、泉に光輝く人の姿が映っている。驚いて上を見ると、美しい男がいるので、たいへん不思議に思った




古事記 塩椎神の議(はかり) 神の役割分担

2020-12-10 18:33:41 | 日記
塩椎神「我、汝命(いましみこと)の為に善き議(はかり)を作(な)さむ」といひて、【无間勝間(まなしかつま)】の小船を造り、其の船に載せて教へていはく
「我、其の船を押し流さばややしまにいでませ。【味(うま)し御路(みち)】有らむ。其の道に乗りていでまさば、【魚鱗(いろこ)の如造れる宮室(みや)】それ【綿津見神】の宮ぞ。其の神の御門に到りましなば、傍(かたへ)井の上(へ)に【ゆつ香木(かつら)】有らむ。故、其の木の上に坐(いま)さば、其の海(わた)の神の女(むすめ)見て相議(あひはか)らむぞ」といひき

★无間勝間(まなしかつま)
まなし→目無し
かつま→竹籠
固く編んで隙間がない竹籠

★味し御路
よい海路、よい潮路

★魚鱗(いろこ)の如造れる宮室
宮殿が並ぶ壮大な有り様

★綿津見神(わたつみのかみ)
海の神

★ゆつ香木(かつら)
※ゆつ→神聖
かつら→桂
神の降臨する神聖な桂の木
これに登ることによってその身分を示す

■塩椎神は、「私があなたのために、よい策を献じましょう」と言って、すぐに竹で固く編んだ、隙間のない小船を造り、その船に火遠理命を乗せて
「私がこの船を押し流したら、しばらくそのまま行きなさい。きっとよい潮路があります。そのままその潮路に乗っていれば、魚の鱗のように棟を並べて造った御殿がありますが、それが綿津見神の宮殿です。その神の宮の御門に着くと、かたわらの泉のほとりに神聖な桂の木があります。その木に登っていれば、海の神の娘があなたを見て相談にのってくれるでしょう」と教えた


古事記 塩椎神

2020-12-10 17:55:05 | 日記
弟(いろど)泣き患(うれ)へて海辺に居ましし時、【塩椎神(しほつちのかみ)】来て問ひていはく「何(いかに)ぞ【虚空津日高(そらつひこ)】の泣き患へたまふ所由(ゆえ)は」
といへば
答へてのりたまはく
「我、兄(いろせ)と鉤(つりばり)を易(か)へて、其の鉤を失ひつ。ここに其の鉤を乞ふ故に、多くの鉤を償へども受けずて、『猶基の本の鉤を得む』といふ。故、泣き患へるぞ」とのりたまひき

★塩椎神(しほつちのかみ)
海の塩を司る神

★虚空津日高(そらつひこ)
陸上の獲物を取る山幸彦が、陸から見える空【天津日高の天は高天原をさす宗教的観念】