斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

古賀市水難の激しい潮流の原因について

2017年08月12日 22時21分51秒 | 水難・ういてまて
砂浜の海中にいた69歳の方が激しい流れに流された原因がほぼ定性的に特定できました。

現場の航空写真と岸からの時間ごとの映像を解析すると、潮汐の影響で、ある特定の時間に激しい沖向きの流れが発生することが推定できます。

次の図は満潮時の海岸の様子を示します。ㇵの字型の突堤の延長線上に存在する半沈水消波ブロックは水面の下にあります。当時は北西の風が吹いていましたから、ㇵの字の内側に向かって吹送流が発生します。消波ブロックは水面の下ですので、流れはきた方向に戻ります。


次の図は干潮時の海岸の様子を示します。ㇵの字型の突堤の延長線上に存在する半沈水消波ブロックは水面の上に姿を現します。当時は北西の風が吹いていましたから、ㇵの字の内側に向かって吹送流が発生しますが、消波ブロックによって跳ね返されます。


次の図は、事故時の予想図です。ㇵの字型の突堤の延長線上に存在する半沈水消波ブロックは天端が波によって水面の上に出たりでなかったりします。当時は北西の風が吹いていましたから、波が来ればㇵの字の内側に向かって吹送流が発生しますが、波がひくときには消波ブロックが帰り道を邪魔します。そのため、海水は逃げ道として突堤と半沈水消波ブロックの間を通ることになりますので、このとき、激しい沖向きの流れが発生することになります。



それまで特に異変がなかった海岸でも、引き潮に伴い、消波ブロックの頭が出始めた瞬間から、強い沖向きの流れがいきなり出ることになります。海水が集中することで、波が侵入するときよりも水位があがって突堤を洗うことになり、子ども二人はこのときに波にのまれたと考えられます。

この説明は定性的であり、9月に水難学会事故調査委員会の現地調査と、水理学に基づいた数値シミュレーションを行った後に、確定の説明をさせていただくことになります。






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離岸流が事故原因になるとき

2017年08月12日 18時00分25秒 | 水難・ういてまて
もちろん離岸流が発生していないとなりませんが、最初から足の届く海岸の海中にいなければ事故の発端になりません。

今回の古賀市で発生した水難で発端は転落入水です。では、なぜ転落に至ったのか、河口流出流や離岸流等の事故の流れが転落に関与したのかどうか判定するのには調査が必要です。

報道機関の皆様はここで視聴者等に誤解が発生しないようにお願いします。

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福岡県古賀市で発生した水難について2

2017年08月12日 17時35分48秒 | 水難・ういてまて
まずは四人ともお亡くなりになりましたこと、たいへん残念でなりません。

現場の状況が少しずつわかってきました。まずお二人のお子さんが突堤先端から海に落ちました。転落入水のタイプIです。ただし後ろから来た海水に流されたタイプIbか波の往復運動であるタイプIcかわかりません。

突堤が斜面になっているので、戻る海水とともに流されるので、これを流されたとひょうげんしているようです。ここまでは河口流出流や離岸流がひきがねになったということではありません。

目撃者情報と年齢から、すぐに水没してしまったと考えられます。それを追ったお二人の大人も後追い沈水、タイプIaですぐに沈んでしまったという目撃者情報です。残念ながら自己保全ができなければ、そのまま浮いてくることができません。

結果としては、「溺水してから流された」という表現が正しいと、これまでの情報では考えられます。

もし、大人の救助能力が高かったとしても、斜面でしかも流れと波がある状況ではお子さんを上陸させるのはかなり難しかったと思います。

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福岡県古賀市で発生した水難について

2017年08月12日 06時47分00秒 | 水難・ういてまて
お二人が亡くなり、さらにお二人が行方不明です。

昨日の日中から報道各社から問い合わせが続いたため、現場の状況を調べてみました。

水難は、水没して窒息により死に至るわけで、どうして水没することになったのか、水難学会はここを調査します。水没は多くは深みで発生します。そうすると深みに入ってしまう原因が重要なポイントで、
① 自分で歩いて深みに入る
② 流れに流されて深みに入る
③ つかまっていた浮き輪等と風に流され深みに至る
の3つにわけられます。

目撃者情報では最初にお子さん二人の姿が見えなくなったということで、①の可能性が大です。流されたという情報もありますが、姿が見えなくなった段階で水没していますので、流されたことで深みに向かうのであれば、しばらく浮いているわけです。

次に、流されたという証言について、現場は花鶴川河口です。満潮はお昼12時前後、干潮は夕方18時頃です。事故の起きた2時頃は満潮から干潮に向かう時間で、河口から沖向きの流れが発生していた可能性があります。これを海浜流系統の離岸流というのかどうかは、専門家に任せるとして、これにのって流された可能性があります。

当時の風は北の風でそれほど強くなかったようです。従って、浮き輪等につかまっていて流されたということでは無さそうです。

いずれにしても、残るお二人の無事を祈っています。水難学会の仲間の消防職員らが、朝から全力で捜索しています。


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