三浦俊彦@goo@anthropicworld

・・・・・・・・・
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Re: 問3は の一般化的考察

2008-07-24 09:55:36 | メモ
 掲示板 http://8044.teacup.com/miurat/bbs の中の
http://8044.teacup.com/miurat/bbs/1989
 の続きです。(対象問題は簡略化してあります)

 2つのサイコロがある。一つは普通のサイコロ、もう一つは6つの面すべてが6の目であるサイコロである。その2つのサイコロのうち一つをランダムに選び、振ったところ、6の目が出た。
 さて、次の2つの仮説のうち、どちらが正しそうか。

 仮説① 選ばれたサイコロは普通のサイコロである。
 仮説② 選ばれたサイコロは全面6の目のサイコロである。

 …………………………

 以上の問題を「問題K」と呼びます。……★

 問題Kでは、ふつう、仮説②が仮説①の6倍正しそうだと仮説検定されます。
 「6の目が出た」というデータをEとして、
 P(E|①)=1/6
 P(E|②)=1       より、
 P(②|E)/P(①|E)=(P(E|②)/P(E|①))×(P(②)/P(①))
 =6P(②)/P(①) となるからです。

 ところが、それ以前に、「出題者が問題Kを出そうと意図した」という事実が自ずと判明していることを思い出しましょう。これをデータJとします。
 すると、6の目以外が出た場合には出題が成り立たないので、出題が成立しているということは
 P(E|J)=1 であり、…………▼
当然、Jと矛盾しない任意のXについて P(E|X∧J)=1 ですから、

 P(E|①∧J)=1
 P(E|②∧J)=1
    となります。
    つまり①②の仮説検定をするさいにEの証拠価値がなくなります。

 問われているのは、単なる①と②ではなく、①∧Jと②∧Jのはずです。……◆
 問われなかった事態については解答者の知ったことではなく、あくまで問題Kが問われた場合に解答すればよいのは自明だからです。

 しかし、このような考えは、常識的な確率問題を成立不能にしてしまいます。
 解決策は、主に2通り考えられます。

 1: ★を一般的に解釈する。(=▼の否定)
  問題Kというのは、6の目が出なくても成立したと考えるやり方です。つまり、事態は次のようでもありえたとするのです。
 「振ったところ、3の目が出た。
 さて、次の2つの仮説のうち、どちらが正しそうか。
 仮説① 選ばれたサイコロは普通のサイコロである。
 仮説② 選ばれたサイコロは全面6の目のサイコロである。」
 という問題でもありえた、と考えるのです。それも同じ問題Kなのであると。したがって、問題Kを問おうという出題者の意図Jは、
 P(E|J)=1 を含意しないことになります。これは▼の否定です。

 この方策は、しかし、うまくいきません。問題Kのうちなぜよりによって「6の目が出た」というバージョンに自分が当たったのか、という謎に解答者は直面するからです。6の目以外が出ていれば、問題はつまらぬ愚問となります。なぜよりによって唯一興味深い「6の目バージョン」なのか。
 問いはある狙いをもって出題されるので、解き方のみならず答えによって一義的に定義されるべきでしょう。問題Kのうち「6の目が出た」というバージョンだけが、②の確率をゼロとしない特殊なバージョンなのであり、そのバージョンを使わないと例解できない問題意識があったからこそ、出題者はそのバージョンを採用したのであるはずです。他のバージョンでは、出題意図が実現されないのです。
 やはり問題Kは、「6の目が出た」というバージョンに限定されており、従ってそれを問うJは、Eの実現を確率1で保証するものと考えるべきでしょう。

 2: ◆を否定する。
  つまり問題Kは、問われなくても成立したはず、と考えるのです。
 そうすると、P(E|J)=1だとしても、P(J|E)≪1でかまいません。
 問われているのは、単なる①と②であって、①∧Jと②∧Jではないことになります。あるいは、①∧Eと②∧Eが仮説検定されているのです。
 データは、E∧Jです。(同じことですが、単にJです)

 P(②|E∧J)/P(①|E∧J)=P(②|J)/P(①|J)
 =(P(J|②)/P(J|①))×(P(②)/P(①))=6(P(②)/P(①))

 しかし、この方策でうまく処理するためには、問われなかったかもしれない膨大な問題Kのうち、あえて出題者によって問われた例外的なものになぜ解答者は出くわしたのか、という謎を解決せねばなりませんね。
 そのためには、この問題が出題されたのは「偶然」だった、と仮定せねばなりません。必然だったとすれば、また「問われているのは①∧Jと②∧Jの仮説検定」ということに逆戻りしてしまいますから。
 問題Kの外部(現実世界)では、おそらく考えられるべくして考えられているので、問題Kの発生は偶然ではないでしょう。私たちは、この問題を、はじめから問われるべき問題として話題にしています。
 しかし、問題Kの内部(フィクション世界)では、問われたのは偶然ということでよさそうです。サイコロを現に見ているキャラは(問題Kの外にいる私たちは見ていない)、問題を予期していなかったのに、問われたのです。問われるからにはEが実現していなければならない問題だったが、そもそも問われるかどうかは彼にとって未知だったのです。
 つまり、問題に答える役柄は、問題Kを出された解答者ではなく、問題Kの世界の中の仮想的解答者に割り当てられている、ということです。現実世界の中の解答者は、仮想的解答者になりきって、その立場から答えねばならないのです。

 『論理学入門』pp.136-9 (「中国人or日本人」の問題) もご参照ください。
 現実のあなたではなく、問題の設定の中の解答者になりきって答えるべし、ですね。

基礎演習2007

2007-12-09 22:50:47 | メモ
 ■これまでの発表に関連して、考えるべきこと(例)


6/18  子どもの虐待

  人間はどこまで動物か?
  戦争、暴力、性犯罪などの社会悪の防止策に進化論をどう応用できるか?
  養子、人工授精、代理母、等が家族制度に及ぼす影響について
      →世代差

6/25  生まれか育ちか

  定数としての遺伝子と変数としての環境との相互影響
  環境としての文化が提示する、多様な遺伝子への多様なチャンス
  フェミニズム運動の効果的な実践とは?
      →性差・個体差

7/2  シンメトリー

  適応度指標としての身体的シンメトリーの意義の変化
  文化的社会において適応度指標となるシンメトリーとは?
  遺伝的(繁殖的)成功と文化的(経済的)成功のズレについて
      →個体差

7/9   血液型

  血液型性格判断の進化論的根拠と、統計的結果とのズレについて
  進化論による理屈づけの限界について
  血液型以外の潜在的性質について、説得的な進化論的議論は可能か
      →民族差・地域差

10/15 ウイルス

  敵対者というより環境としての病原菌、パラサイト
  環境としての○○(異性、情報、……)
  ウイルスと遺伝子との相互作用(環境と遺伝子との相互作用)
      →地域差・時代差


 ■これまでの発表に関連して、考えるべきこと(例②)


11/12 男女の脳と同性愛

  性指向性と性自認とは、どの程度相関関係があるのか?
  同性愛を伴わない場合、肉体的性と性自認とが食い違うとはどういうことか?
  間質第三核、前交進などの性差は、どの程度後天的なものか?
      【→性同一性障害を認定することと男女平等の関係】

11/19 売春婦の戦略

  自由売春の法的取締りは可能か?(売春を違法とする根拠は?)
  「精子競争」は、人間の場合、どのくらいの時間差まで有効なのか?
  「強い精子」に勝つ精子を持つ男は、文明社会の勝者と一致するか?
      【→売春の動機の変化と売春防止法の関係】

11/26 美の起源

  環境としてのパラサイト・捕食者がそれぞれどのような淘汰圧をもたらすか?
  女の美意識と男の美意識の相違の進化論的意義
  なぜ他の動物と違って、人間は♀が外見を飾るのか?
      【→現代人の感覚における「美」と「健康」の相関関係】

12/3  地球外文明(ETC)

  地球型環境→生命、生命→知性、知性→科学文明 の各ステップの蓋然性は?
  地球が唯一の文明だというのは、コペルニクス原理と矛盾しないか?
  帰納的論証に対して正しいアナロジーで反論するには?
      【→宇宙科学・生物学と社会科学とをつなぐ学際的学問としてのETC論】


 ■これまでの発表に関連して、考えるべきこと(例③)


12/10 オスの三毛ネコの謎

  優性遺伝子・劣性遺伝子(対立関係)と、対立しない遺伝子の相関関係との区別
  三毛ネコでない両親から障害以外で三毛ネコが生まれる原因は? その確率は?
  人間の場合に三毛に相当する性質にはどういうものがあるか?
     【♂と♀による表現型の違い】

1/7 破局

  浮気する割合は夫のほうが多いのに、離婚の原因は妻の浮気のほうが多い。なぜ?
  離婚原因としての〈性交の拒否〉と、夫婦間レイプの立件可能性との関係は?
  離婚原因としての〈経済力の欠如〉〈非情・虐待〉は夫についてだけ調査。なぜ?
     【調査結果の偏りと、調査対象の偏り。それぞれの理由】

1/21 女性はなぜやせたいのか

  ダイエットで妊娠のタイミングをいかにして・どの程度調節できるのか
  避妊の方法が多種多様に与えられている現代社会で、ダイエットの避妊上の意義は?
  妊娠の可能性を減らす「内気」「慎重」「羞恥」とダイエット気質との相関関係は?
            【マスメディアの影響か、避妊の生物学的本能か】

1/28 増え続けるセクシャル・ハラスメント

  セクハラ認定による人権保護と男女平等の理念との矛盾をどう解決するか?
  女から男へのセクハラの認定と「据え膳食わぬは男の恥」的常識との関係は?
  セクハラの心理的要因(男女共通)と生物学的要因(男女固有)の区別
            【定義と分類のうちで最も妥当なものは?】


 ………………………………………………………………………………………………
社会的 6/18子どもの虐待  6/25生まれか育ちか  11/19売春婦の戦略  1/7 破局  1/28 増え続けるセクシャル・ハラスメント
心理的 11/26美の起源  1/21 女性はなぜやせたいのか
生理的 11/12男女の脳と同性愛  7/9血液型  7/2  シンメトリー
生物学的 12/10 オスの三毛ネコの謎
環境的 10/15 ウイルス  12/3地球外文明(ETC)

たまには勤務校のPRも

2007-07-22 14:46:10 | メモ
いま私は「人文学部国際社会学科」というところに属しておりますが、来年度から、改組に伴いここ↓に移ることになります。
http://fantasy-as-antifantasy.net/gca/gca_top.htm
(↑このサイトは、まだ大学の公式HPからはリンクしておりません)
(適宜更新。他にデザイン、陶芸など科目数はもう少し増える予定)

もちろん現体制下の在学生とは、現・学科所属教員として卒業までお付き合いすることになります。

霊体仮説とゾンビ仮説(再々修正版)

2006-03-25 20:36:16 | メモ
F**、**Fについては、拙論
http://members.jcom.home.ne.jp/miurat/sizen-sentaku.pdf
の6節,7節を参照してください。

●〈ゾンビ仮説〉が心の哲学を不安に陥れるのに、
  〈霊体仮説〉はそうでもないのはなぜだろうか?


…………………………………………………………………………
 F**は、私が意識であるというのが所与で(P(C)=1)、それが脳として具体化したかどうかが調べられ、「脳として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。
 **Fは反対に、私が脳であるというのが所与で(P(B)=1)、それが意識として具体化したかどうかが調べられ、「意識として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。

霊体仮説……「私並みの意識が、脳状態に匹敵する物理系のないところにも生じうる」
ゾンビ仮説……「私並みの脳状態が、意識を伴わずして生じうる」

A「私は具体化している」
B「私は脳である」
C「私は意識である」

 とする。A、B、Cは概念的命題であり、
  AとBの両立の蓋然性は、具体化した脳の存在密度に依存する。
  AとCの両立の蓋然性は、具体化した意識の存在密度に依存する。

 さて、いま、A&B&Cが観察データとして得られた。二つの観察例F**、**Fという観察例として解釈する。
 前者では、「私」を「たまたま脳に宿った意識」と解し、「では他の意識も脳に宿るのか?」と問う。後者では、私を「たまたま意識を持った脳」と解し、「では他の脳も意識を宿すか?」と問う。

 F**  私が意識であるというのが所与で(P(C)=1)、それが脳として具体化したかどうかが調べられ、「脳として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。
 **F  私が脳であるというのが所与で(P(B)=1)、それが意識として具体化したかどうかが調べられ、「意識として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。

 ■ F**のもとで
 対立仮説は、
 K「脳と意識は独立である」
 L「脳は意識の必要条件である」
      Lのもとで  A&C→A&B  P(C→B|A)=1
 共通する補助前提として
  P(A)=a  P(B)=b  P(C)=1
    P(A&B|K)≒0  脳レベルの複雑組織は希少だという観測事実による。
    P(A&B|L)=P(A)=a
    ∵ P(A|L)≧P(A&B|L)≧P(A&C|L)
                (LとA,B,Cとは独立)

 P(A&B&C|K)≒0 P(A&B&C|L)=a ……①
 ここから、P(L|A&B&C)/P(K|A&B&C)
=P(L)/P(K)× P(A&B&C|L)/(A&B&C|K)
 ①をあてはめると
 P(L|A&B&C)/P(K|A&B&C)≫P(L)/P(K)
          ただし、a≫0の場合。

 よって、事前確率と事後確率の変化を見ると、データA&B&Cにより、KよりもLのほうが格段に信頼度を増した、となる。

 ~Lは、脳なき意識の存在を主張する「霊体仮説」である。これが上の議論で反証されたことになる。
 真空に意識が灯ることもある、といった極端な霊体の存在を主張するのが霊体仮説の一種であるのはもちろんのこと、健康な覚醒した脳のレベルの物理的機能が働いていないところにも意識が出現しうる、とするのが霊体仮説である。後者の弱い意味での霊体仮説すら、真である確率がきわめて低い。そのことが、「私は脳を持つ」という観察データにより確証できたことになる。

 ■ **Fのもとで
  対立仮説は、
 K「脳と意識は独立である」
 J「意識は脳の必要条件である」
   Jのもとで  A&B→A&C  P(B→C|A)=1
  共通する補助前提として
  P(A)=a  P(B)=1  P(C)=c
   P(A&C|K)=acについては、意識の存在密度は観測できないため、未知。
   P(A&C|J)=P(A)=a
   ∵ P(A|L)≧P(A&C|J)≧P(A&B|J)
          (JとA,B,Cとは独立)

 P(A&B&C|K)=ac  P(A&B&C|J)=a
                            ……②
 ここから、P(J|A&B&C)/P(K|A&B&C)
=P(J)/P(K)× P(A&B&C|J)/(A&B&C|K)
 ②をあてはめると
 P(J|A&B&C)/P(K|A&B&C)=1/c×P(J)/P(K)
 ところで、改めて考えてみると観測選択効果により、
    P(C|A)=1
 つまり、P(A&C)=P(A)=a
 AとCが独立なら、P(A&C)=P(A)P(C)=ac=a
  c=1

 よって、事前確率から事後確率への変化はない。データA&B&Cにより、KとJの信頼度の比は変わらない。

 ~Jは、意識なき脳の存在を主張する「ゾンビ仮説」である。これが上の仮説検定で生き残ったことになる。
 脳が物理的機能を果たしていない場合に意識がないことは当然として(これはLで主張されている)、脳が私とそっくりの物理的機能を果たしている脳を持つ人に意識がないことがありうるとするのがゾンビ仮説である。「私は意識を持つ」ことを「観察」したからといって、ゾンビ仮説は、唯物論や他の二元論に比べて、反証されない。せいぜいこのことが、「私は意識を持つ」という観察データ(実はアプリオリな事実)により言えることである。

…………………………………………………………………………
(この部分に関する質疑応答は、掲示板
 http://8044.teacup.com/miurat/bbs
 の、3月 6日(月)00時45分58秒以降をご覧ください。)

霊体仮説とゾンビ仮説(再修正版)

2006-03-18 00:13:03 | メモ
F**、**Fについては、拙論
http://members.jcom.home.ne.jp/miurat/sizen-sentaku.pdf
の6節,7節を参照してください。

●〈ゾンビ仮説〉が心の哲学を不安に陥れるのに、
  〈霊体仮説〉はそうでもないのはなぜだろうか?


…………………………………………………………………………
 F**は、私が意識であるというのが所与で(P(C)=1)、それが脳として具体化したかどうかが調べられ、「脳として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。
 **Fは反対に、私が脳であるというのが所与で(P(B)=1)、それが意識として具体化したかどうかが調べられ、「意識として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。

霊体仮説……「私並みの意識が、脳状態に匹敵する物理系のないところにも生じうる」
ゾンビ仮説……「私並みの脳状態が、意識を伴わずして生じうる」

A「私は具体化している」
B「私は脳である」
C「私は意識である」

 とする。A、B、Cは概念的命題であり、
  AとBの両立の蓋然性は、具体化した脳の存在密度に依存する。
  AとCの両立の蓋然性は、具体化した意識の存在密度に依存する。

 さて、いま、A&B&Cが観察データとして得られた。二つの観察例F**、**Fという観察例として解釈する。
 前者では、「私」を「たまたま脳に宿った意識」と解し、「では他の意識も脳に宿るのか?」と問う。後者では、私を「たまたま意識を持った脳」と解し、「では他の脳も意識を宿すか?」と問う。

 F**  私が意識であるというのが所与で(P(C)=1)、それが脳として具体化したかどうかが調べられ、「脳として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。
 **F  私が脳であるというのが所与で(P(B)=1)、それが意識として具体化したかどうかが調べられ、「意識として具体化した」というデータが得られた(A&B&C)、という場合。

 ■ F**のもとで
 対立仮説は、
 K「脳と意識は独立である」
 L「脳は意識の必要条件である」
             A&C→A&B   P(C→B|A)=1
 共通する補助前提として
  P(A)=a  P(B)=b  P(C)=1
       P(A&B)≒0 脳レベルの複雑組織は希少だという観測事実による。

 P(A&B&C|K)≒0  P(A&B&C|L)=a  ……①
 ここから、P(L|A&B&C)/P(K|A&B&C)
=P(L)/P(K)× P(A&B&C|L)/(A&B&C|K)
 ①をあてはめると
 P(L|A&B&C)/P(K|A&B&C)≫P(L)/P(K)
          ただし、a≫0の場合。

 よって、事前確率と事後確率の変化を見ると、データA&B&Cにより、KよりもLのほうが格段に信頼度を増した、となる。

 ~Lは、脳なき意識の存在を主張する「霊体仮説」である。これが上の議論で反証されたことになる。
 真空に意識が灯ることもある、といった極端な霊体の存在を主張するのが霊体仮説の一種であるのはもちろんのこと、健康な覚醒した脳のレベルの物理的機能が働いていないところにも意識が出現しうる、とするのが霊体仮説である。後者の弱い意味での霊体仮説すら、真である確率がきわめて低い。そのことが、「私は脳を持つ」という観察データにより確証できたことになる。

 ■ **Fのもとで
  対立仮説は、
 K「脳と意識は独立である」
 J「意識は脳の必要条件である」    A&B→A&C  P(B→C|A)=1
  共通する補助前提として
  P(A)=a  P(B)=1  P(C)=c
      P(A&C)=acについては、意識の存在密度は観測できないため、未知。

 P(A&B&C|K)=ac  P(A&B&C|J)=a  ……②
 ここから、P(J|A&B&C)/P(K|A&B&C)
=P(J)/P(K)× P(A&B&C|J)/(A&B&C|K)
 ②をあてはめると
 P(J|A&B&C)/P(K|A&B&C)=1/c×P(J)/P(K)
 ところで、改めて考えてみると観測選択効果により、P(C|A)=1
 つまり、P(A&C)=P(A)=a
 AとCが独立なら、P(A&C)=P(A)P(C)=ac=a
  c=1

 よって、事前確率から事後確率への変化はない。データA&B&Cにより、KとJの信頼度の比は変わらない。

 ~Jは、意識なき脳の存在を主張する「ゾンビ仮説」である。これが上の仮説検定で生き残ったことになる。
 脳が物理的機能を果たしていない場合に意識がないことは当然として(これはLで主張されている)、脳が私とそっくりの物理的機能を果たしている脳を持つ人に意識がないことがありうるとするのがゾンビ仮説である。「私は意識を持つ」ことを「観察」したからといって、ゾンビ仮説は、唯物論や他の二元論に比べて、反証されない。せいぜいこのことが、「私は意識を持つ」という観察データ(実はアプリオリな事実)により言えることである。

…………………………………………………………………………
(この部分に関する質疑応答は、掲示板
 http://8044.teacup.com/miurat/bbs
 の、3月 6日(月)00時45分58秒以降をご覧ください。)