三浦俊彦@goo@anthropicworld

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2007/6/26

1999-01-02 02:56:23 | こんにちの文化
■ひなぎく Sedmikrasky 1966年 チェコスロバキア
 監督: Vera Chytilov ヴェラ・ヒティロヴァ 1929~

 場面や音が唐突に変化したり、ことさらにスタイリッシュな映像処理がなされたり、モノクロとカラーのシーンが入り乱れたりと、シンボリックなコラージュ表現に終始することで、間接的メッセージが含まれていることを半ば直接的に露呈している。いわゆる確信犯的な映画である。冷たい政治機構を象徴する歯車や、冒頭と末尾の戦闘シーンが、政治的メッセージの存在を念押し的駄目押し的に強調して、ストーリーも有意味な会話もない映画そのものとの表面的矛盾を際立たせている。

 二人の援交少女のメチャクチャな破壊的行動は、エネルギーのみありあまって目標を見失った当時の東欧の自由化運動を風刺しているようにも感じられる。体制批判というより、反体制的運動の無定見に女性監督ヴェラ・ヒティロヴァは苛立っているかのようだ。

 『ひなぎく』以降、「ダメ女二人組」を主人公にした映画がいくつか作られており(『テルマ&ルイーズ』『ゴーストワールド』など)、その系統の原型とも言える。中でも、ピーター・ジャクソン監督の『乙女の祈り』(1994年,ニュージーランド)は実話にもとづいたリアリズムが『ひなぎく』とは対照的だが、夢と現実が交差するような表現法は相通じるものがあり、社会派女の子映画として比較鑑賞の価値はあろう。

 参考までに、他の文脈でのこの映画の解説は
 http://green.ap.teacup.com/miurat/479.html
 授業・研究等とは関係のない暫定的個人的メモは
 http://green.ap.teacup.com/miurat/541.html