■陰陽師 呪詛返し■ これ、ヨイ! 笑える! 笑いをとろうなんて姿勢これっぽっちも見えないのに(見えないから)笑えちゃう。大真面目な教養ビデオ風解説がなんとも笑えるんだな。いや、呪いの実在を信じてる人がいたら、その人にとっちゃ「フムフム、ふーん、怖ろしいなあ」てことになるんでしょう。ほんの冗談が命に関わっていく第1エピソードの展開なんかほんと「冗談じゃない」の世界で怖いっちゃ怖い。冗談って呪いの正反対なんだがなあ……、って文化現象というより自然現象としての呪いの実在を頭ごなしに前提しちゃったあの生真面目解説と再現映像、俺ら合理派にとっちゃ笑えますって。しかもビジュアル効果がリキ入ってて、色彩も鮮やか。目に楽しいと同時に実在の神社の風景や由来や隠れ陰陽師に関する解説なんぞも勉強になったり。感性と知性両方を満足させてくれる極上ビデオって感じです。とりわけ犬神の話は笑えたよなあ。あと、お母ちゃんが取り憑かれちゃうエピソードの再現、もしかして証言してる本人と同一人物使ってない? モザイク意味ないでしょ。というかあれで「これは全部フィクションですョ」ってシグナル発してるつもりかな? ってモザイクとピー音だらけのこれぞフェイクドキュメンタリーっぽい作りが『女呪霊』思い出させて、このパターンって傑作化する傾向にあるのかな? 適度にドラマっぽいオチなんぞがラストのエピソードには備わっていたりして(彼氏をとられたってのはおまえかい!)、最初のエピソードも間接自殺っぽい何とも意味深な真相(?)らしいし、これ、十分A級な品格を実現できた掘り出し物というべきじゃないでしょうか。正直堪能しました。
■ドラゴンズワールド■ そりゃもう架空のドラゴンと実在の恐竜の一騎討ちって時点でわくわくするよね。ティラノサウルスとのバトルと並行した調査開始部分はなんかワザトラシサばかり先行して「ちょっとな……」って感じだったけど、だんだん調子が出てきたというか、水素が揚力と火炎放射という二つの超能力の鍵を兼ねてるんだというあたりわりと自然な運びでかなり納得です。しかし仮説を一つ思いつくたびに観賞者より一歩遅れたタイミングで「そうか、わかったぞ」的に誘導してゆく古い手法はなんか貧乏たらしいのね。だって「燃料」とくれば水素ってのは簡単な思いつきでしょうよ。もっと専門的めかして誤魔化しながら進んでもよかったんじゃないかね。まあ全体、進化論の大まかな枠組みの通りの解説が進むんで(炎でのディスプレイでメスを呼ぶとかね、ハンディキャップ原理に合致してるし、ドラゴンが実在すればさぞああしただろうなというような)、学術的ドキュメンタリーの装いとして悠々合格点ではないでしょうか。絶滅時のホロ悲しい余韻もいいですね。六百年前のヨーロッパ人に「種の保存」なんて発想はありませんものなあ。のみならずドラゴンサイドからして最後の2頭だってのになんと♂の本能が卵殺しの挙に出て♀愕然!の展開には泣けましたよホント。あそうそう、虎との戦いは、欺瞞と待ちぶせで瞬殺するんじゃなくて、正面からのバトルを見てみたかったなあ。とくにあそこは中国の竹林って想定なんだから、なおさら竜虎両雄のフェアな対決は見せてほしかったですっけ。
■日本のこわい夜 特別篇 本当にあった史上最恐ベスト10■ これは笑えた。あー笑えた。敵の狙いどおりのドツボにはまった。ラスト近くになってカメラアングルが完全フィクションに開き直ってしまう展開にゃ脱帽。タクシーの中の正面アングルはほとんどカタルシスに近いですよ。リアルという建前からフィクションという真相への脱皮がこうも爽快だったとは。しかし件の家から一同引き上げたときの「恐怖はこれだけでは終わらなかった」というナレーションは無いほうがよかったなぁ。あれ無しで自然に繋げちゃったほうがね。私恥ずかしながら、これ始めて観た時点では、ここに出てる芸人さんたち、司会のくりぃむしちゅーをはじめだーれも知らなかったんです。テレビナシ生活を続けていたツケが回ってきたなあ(正確には1人だけ名前は知っていたが顔見て本人だと認識できるほどじゃなかったんで)。だもんで、どうせ架空の芸人で構成したフィクション、てつもりで観ちゃってまして。しかし実在の芸人さんらなんですよね。それ知ってる普通の観賞者は、そりゃだまされますわな、本人たちがいつものノリで掛け合いやってればね。超常現象のレベルも歯止めが利いてて、リプレイでも「ほんとに? うむ、よーく見れば……、いや、やっぱないない」的リアリティ出すのに全般大成功だったんじゃないでしょうか。押し入れから水ドバーーも全然やりすぎ感ありませんでした。持ってきかたがうまかったんですな。しかし考えてみりゃバラエティ番組ってものそのものがあらかじめシナリオ決めてるフィクションてのが普通ってことですわな、それとスタジオの客やカメラマンが倒れる展開にゃ感心しましたよ。ああいう人たちも演出に一役買ってる俳優なんだって論理に改めて気づかされましたし。そういや何度か「脚本(ホン)」に言及してたよね、芸人さんら。テレビの中の人物を生の人物と勘違いさせる天然モキュメンタリーを人為的に対象化した系。とわかっちゃいるんですが、しかし率直に言ってここに出てる芸人さんたち、全員好きになりましたです私。女性芸人2人だったかな、だまされてたってことでラスト泣いてたけど、たしかに「敵をだますにはまず味方から」戦略は説得的だが、あの2人の泣き自体も演技かもしんないよね。ほんと、どこからどこまでリアルなんだかフィクションなんだか。
■ほんとにあった! 呪いのビデオ THE MOVIE■ あらららほんとだ、映画でやる意味ないっすわ。もともとのビデオシリーズとおんなじじゃないですか、雰囲気も作りも。細かいとこは忘れちゃったんで、ま、映画である意味なかったってことで。考えてみりゃたしかに、スケールでかくしちゃっちゃあリアル路線からハズレるので、ま、呪いのビデオシリーズが劇場版向きじゃなかったってことで。
■ほんとにあった! 呪いのビデオ THE MOVIE2■ ああ、こっちは映画でやった意味大ありかも。なかなか良くできてましたよ、途中からあれよあれよとドラマ展開になるのも『日本のこわい夜~特別篇 本当にあった史上最恐ベスト10』ほど唐突じゃないわりに、それゆえにほんのり笑えました。投稿者が当事者化してゆくのはこのテの素材としては理想的な展開とはいえ、ああいうあからさま系に引きつけないほうがよかったような気も。プロレス的オカルトアングル、というかマナーの見本としてアマゾンのレビューを『のぞき学原論』に引用しましたが、興味持って本体観た甲斐ありました。そうですか、明日美さんってああいう子でしたか。なるほど微妙なラインですね~。
■劇団ひとりの匠探訪記■ えと、匠は2人とも本物なんだよね。3人目の「笑いの匠」だけが本人のフィクションを演じていたってことですよね、「途中からフィクションです」ってそういう意味だよね。しかし砲丸作りの匠のパートで、オリンピック話のたびになんかふざけたコラージュの「イメージ写真」が出てきたり、本物の匠に対して失礼でないかね(それともあの匠もウソ? いやホンモンですよねぇ……)。あとほら、悪魔が出てきた直後におろし金カンカン鳴らしながら走られた日にゃあせっかくの匠の作品を……、とハラハラしましてね私。別の品に取っ替えて使ってんだろうけど、いやぁリアルモードで見続けてしまった私が悪いんです、ええ。あんま笑えなかったのが不満だけど、しかし今考えてみると構成はきわめてよく出来てましたな。スタジオでの進行役の女性のリアクションが微妙に変で、劇団ひとりの表情も曰くありげなのが、後半に種明かしされていく。削除部分ではそういう展開が、なぁるほど、て仕組み。笑えなかったけど、笑うべき展開であることはわかる。うーん、いや、どう考えても現実に笑えなかった俺が悪いなあ。あれは笑えるべき演出ですよ、やっぱ。落ち着いた女性ナレーションと劇団ひとりの空転ドタバタとの落差が今考えると大いに笑えます。ラストの心中は完全なフィクション性をはっきりさせちゃったけど、ああしなかったほうがよかったんだがな。てわけで、どーせならリアルタイムで笑わせてほしかった的不満が残るにせよ、二度目には思い切り笑えるに違いない的印象ゆえに、高得点付けときます。(そもそも笑えなくてもあの「痛まし苦笑ムード」は得点源に違いない……)
■ファンタスマゴリア 闇に封印された映像コレクション■ どう分類していいのか……、最初に、映像だけ通して観ちまったじゃないか。どーしてくれんの。トークといっしょに観ないとわけわからんよあれは。よい意味でのワケワカラナサじゃなくて、「何ひとりよがりやってんだ」的にわかったようなわからなさ。だからひたすらつまんなかったです。ま、後からトークをまとめて見直してみたけど、初期設定でいっしょに再生されるようにしといてほしかったよ、このDVD仕様はまったくもう。アブストラクトな映像ばっかなので、背景を想像して「得体の知れない曰くありげな恐怖」に自足したい人向けかな。私ァそれじゃ駄目な方なんで。トークといっしょに由来とか聞きながら、ブルーフィルムとか懐かしい単語に触れながらしっかり観ればそれなりに情緒も感じられたかも。もっかい観る気力はないっす。てわけで初めて観る人は、初期設定を変更して映像とトークを交互に、つまり会場の時間の流れに沿って観てください。その上で「面白かった」かどうか教えていただければ幸いです。
■陰陽師 実録! 百鬼封滅■ うーん、これはどうかな……。『陰陽師 呪詛返し』が面白かったんでこれも期待して観たのだけど、ああいう真面目くさった教養ドキュメンタリー風味がなくて、ただ密着取材しました風。それにこっちの陰陽師はただ怒鳴るばっかで人間として格調低い。悪霊に怒鳴るのはいいとして相談者がしらふの時も怒鳴り散らしてどうすんの。あんた自信に余裕がないって自己暴露してるようなもん。それに悪霊に取り憑かれた相談者のインタビューも下手なんだなあ。あとひどいのは、画面全面ボカシってどうゆう心がけですかね。顔モザイクでしょう、普通。前半は顔モザで丁寧に追ってたけど、途中から相談者もしくは陰陽師の顔が映るシーンは全面ボカシに移行かよ。ひでーなあ。手抜きもいいとこじゃん。ただ一つよかったのは、洋子さんだっけ、相談者3人のうちの女性ね。ボカシ越しにも美形じゃないことはわかってたけど、最後の最強怨霊を追い出すシーンで、目隠しされたんでボカシが取れるのね。それで口もとが素で見えて、はっきりブスだってわかったとたん私勃起しました。やっぱさんざん隠されてたものが見えると何であれノゾキ中枢が刺激されるのだなあ。
■実録心霊シリーズ 撮影現場 心霊ファイル 劇映画「隙魔 すきま」の撮影現場より■ メイキング映像で一個作っちゃいました系。ふむ、効率いいね。……って全然面白くないでしょうが。でもマ、いい加減にオカルト映画作ると呪われちゃうよ、って虚構的教訓を本気で訴えかけるコンセプトはありだと思いました。霊の姿がもっとボンヤリしてれば普通にリアルっぽく観られて点数伸びたんだがな。だってそれしかアピールするとこなかったでしょう。
■我々は有吉を訴える 謎のヒッチハイク全記録■ お笑いを目的とした企画らしいが、演出が雑かつ演技が低レベルすぎて失笑すら誘発されない。ほぼ同じコンセプトで作られた『劇団ひとりの匠探訪記』より5ランクくらい落ちますねぇこれは。だいたいダメでしょう、主人公は有吉なんだから、ろくに顔も写らない無名の取材ディレクターのほうが目立ってちゃ。最初の車ん中で赤ちゃんが泣き出したとき(1歳半って言ってたけどそれにしちゃ赤ん坊すぎ。そもそも心配だったら後部座席でしっかり抱いてろよ、ほったらかしといてオタオタしてんじゃねっつのよ)「肉人間やるからですよ」なんて執拗に有吉を責めるわけだ、声だけのディレクターが隣で。ウザイったらアリャシねえ、大体てめーが「肉人間やってあげたら」って提案したんだろーが。有吉を悪者に見せようという演出が空回りしてディレクターのリキミがダサイ見え方しまくってのっけからダメダメ。泊めてもらった家でもねぇ、皆さん総出ではじめから待機してるのミエミエだし、しょせんお笑いだからってドキュメンタリー仕立てでやってんならもっとリアルに工夫しようよ。お笑い舐めんでほしいよ。しかし返す返すもディレクターがなぁ。そのつどブツクサ文句言ってないで、有吉がウソついたらてめえで素早く訂正しろよ、あと蕎麦代くらいさっさと裏で払っとけや。たかが何百円かでチョイ悪のイメージってショボすぎ。有吉が「電波少年のスタッフはやりやすかったんだがなあ」みたいに呟いただけで「今なんて言いました?」て突っかかるこたあないだろう。存在感も親近感もほぼゼロのクセしてディレクターがウザったすぎて、後半の暴力全開なんかどうでもいいって感じ。演出がこれほどダメなら演技で挽回してるかってぇと正反対で、とほほ、ラスト、安田が出てきたときの三つ巴の餓鬼のケンカんときも有吉ぁ吹き出しやがってるし。吹くなよ、プロだろが。横向いて隠したつもりか? この作品のとりえはただ一つ、「猿岩石時代のユーラシア横断も裏はこれと同じようなものだったのか?」的想像を誘発するという性格でしょうか。間テクスト的モキュメンタリーってか。あとあれよ、「特典映像」には唖然よ。なんの芸もない笑えもしない素人演劇以前。どゆつもり? せっかくDVD売っても芸人の評価を下げるだけじゃないかと心配になってしまいました。
■ドラゴンズワールド■ そりゃもう架空のドラゴンと実在の恐竜の一騎討ちって時点でわくわくするよね。ティラノサウルスとのバトルと並行した調査開始部分はなんかワザトラシサばかり先行して「ちょっとな……」って感じだったけど、だんだん調子が出てきたというか、水素が揚力と火炎放射という二つの超能力の鍵を兼ねてるんだというあたりわりと自然な運びでかなり納得です。しかし仮説を一つ思いつくたびに観賞者より一歩遅れたタイミングで「そうか、わかったぞ」的に誘導してゆく古い手法はなんか貧乏たらしいのね。だって「燃料」とくれば水素ってのは簡単な思いつきでしょうよ。もっと専門的めかして誤魔化しながら進んでもよかったんじゃないかね。まあ全体、進化論の大まかな枠組みの通りの解説が進むんで(炎でのディスプレイでメスを呼ぶとかね、ハンディキャップ原理に合致してるし、ドラゴンが実在すればさぞああしただろうなというような)、学術的ドキュメンタリーの装いとして悠々合格点ではないでしょうか。絶滅時のホロ悲しい余韻もいいですね。六百年前のヨーロッパ人に「種の保存」なんて発想はありませんものなあ。のみならずドラゴンサイドからして最後の2頭だってのになんと♂の本能が卵殺しの挙に出て♀愕然!の展開には泣けましたよホント。あそうそう、虎との戦いは、欺瞞と待ちぶせで瞬殺するんじゃなくて、正面からのバトルを見てみたかったなあ。とくにあそこは中国の竹林って想定なんだから、なおさら竜虎両雄のフェアな対決は見せてほしかったですっけ。
■日本のこわい夜 特別篇 本当にあった史上最恐ベスト10■ これは笑えた。あー笑えた。敵の狙いどおりのドツボにはまった。ラスト近くになってカメラアングルが完全フィクションに開き直ってしまう展開にゃ脱帽。タクシーの中の正面アングルはほとんどカタルシスに近いですよ。リアルという建前からフィクションという真相への脱皮がこうも爽快だったとは。しかし件の家から一同引き上げたときの「恐怖はこれだけでは終わらなかった」というナレーションは無いほうがよかったなぁ。あれ無しで自然に繋げちゃったほうがね。私恥ずかしながら、これ始めて観た時点では、ここに出てる芸人さんたち、司会のくりぃむしちゅーをはじめだーれも知らなかったんです。テレビナシ生活を続けていたツケが回ってきたなあ(正確には1人だけ名前は知っていたが顔見て本人だと認識できるほどじゃなかったんで)。だもんで、どうせ架空の芸人で構成したフィクション、てつもりで観ちゃってまして。しかし実在の芸人さんらなんですよね。それ知ってる普通の観賞者は、そりゃだまされますわな、本人たちがいつものノリで掛け合いやってればね。超常現象のレベルも歯止めが利いてて、リプレイでも「ほんとに? うむ、よーく見れば……、いや、やっぱないない」的リアリティ出すのに全般大成功だったんじゃないでしょうか。押し入れから水ドバーーも全然やりすぎ感ありませんでした。持ってきかたがうまかったんですな。しかし考えてみりゃバラエティ番組ってものそのものがあらかじめシナリオ決めてるフィクションてのが普通ってことですわな、それとスタジオの客やカメラマンが倒れる展開にゃ感心しましたよ。ああいう人たちも演出に一役買ってる俳優なんだって論理に改めて気づかされましたし。そういや何度か「脚本(ホン)」に言及してたよね、芸人さんら。テレビの中の人物を生の人物と勘違いさせる天然モキュメンタリーを人為的に対象化した系。とわかっちゃいるんですが、しかし率直に言ってここに出てる芸人さんたち、全員好きになりましたです私。女性芸人2人だったかな、だまされてたってことでラスト泣いてたけど、たしかに「敵をだますにはまず味方から」戦略は説得的だが、あの2人の泣き自体も演技かもしんないよね。ほんと、どこからどこまでリアルなんだかフィクションなんだか。
■ほんとにあった! 呪いのビデオ THE MOVIE■ あらららほんとだ、映画でやる意味ないっすわ。もともとのビデオシリーズとおんなじじゃないですか、雰囲気も作りも。細かいとこは忘れちゃったんで、ま、映画である意味なかったってことで。考えてみりゃたしかに、スケールでかくしちゃっちゃあリアル路線からハズレるので、ま、呪いのビデオシリーズが劇場版向きじゃなかったってことで。
■ほんとにあった! 呪いのビデオ THE MOVIE2■ ああ、こっちは映画でやった意味大ありかも。なかなか良くできてましたよ、途中からあれよあれよとドラマ展開になるのも『日本のこわい夜~特別篇 本当にあった史上最恐ベスト10』ほど唐突じゃないわりに、それゆえにほんのり笑えました。投稿者が当事者化してゆくのはこのテの素材としては理想的な展開とはいえ、ああいうあからさま系に引きつけないほうがよかったような気も。プロレス的オカルトアングル、というかマナーの見本としてアマゾンのレビューを『のぞき学原論』に引用しましたが、興味持って本体観た甲斐ありました。そうですか、明日美さんってああいう子でしたか。なるほど微妙なラインですね~。
■劇団ひとりの匠探訪記■ えと、匠は2人とも本物なんだよね。3人目の「笑いの匠」だけが本人のフィクションを演じていたってことですよね、「途中からフィクションです」ってそういう意味だよね。しかし砲丸作りの匠のパートで、オリンピック話のたびになんかふざけたコラージュの「イメージ写真」が出てきたり、本物の匠に対して失礼でないかね(それともあの匠もウソ? いやホンモンですよねぇ……)。あとほら、悪魔が出てきた直後におろし金カンカン鳴らしながら走られた日にゃあせっかくの匠の作品を……、とハラハラしましてね私。別の品に取っ替えて使ってんだろうけど、いやぁリアルモードで見続けてしまった私が悪いんです、ええ。あんま笑えなかったのが不満だけど、しかし今考えてみると構成はきわめてよく出来てましたな。スタジオでの進行役の女性のリアクションが微妙に変で、劇団ひとりの表情も曰くありげなのが、後半に種明かしされていく。削除部分ではそういう展開が、なぁるほど、て仕組み。笑えなかったけど、笑うべき展開であることはわかる。うーん、いや、どう考えても現実に笑えなかった俺が悪いなあ。あれは笑えるべき演出ですよ、やっぱ。落ち着いた女性ナレーションと劇団ひとりの空転ドタバタとの落差が今考えると大いに笑えます。ラストの心中は完全なフィクション性をはっきりさせちゃったけど、ああしなかったほうがよかったんだがな。てわけで、どーせならリアルタイムで笑わせてほしかった的不満が残るにせよ、二度目には思い切り笑えるに違いない的印象ゆえに、高得点付けときます。(そもそも笑えなくてもあの「痛まし苦笑ムード」は得点源に違いない……)
■ファンタスマゴリア 闇に封印された映像コレクション■ どう分類していいのか……、最初に、映像だけ通して観ちまったじゃないか。どーしてくれんの。トークといっしょに観ないとわけわからんよあれは。よい意味でのワケワカラナサじゃなくて、「何ひとりよがりやってんだ」的にわかったようなわからなさ。だからひたすらつまんなかったです。ま、後からトークをまとめて見直してみたけど、初期設定でいっしょに再生されるようにしといてほしかったよ、このDVD仕様はまったくもう。アブストラクトな映像ばっかなので、背景を想像して「得体の知れない曰くありげな恐怖」に自足したい人向けかな。私ァそれじゃ駄目な方なんで。トークといっしょに由来とか聞きながら、ブルーフィルムとか懐かしい単語に触れながらしっかり観ればそれなりに情緒も感じられたかも。もっかい観る気力はないっす。てわけで初めて観る人は、初期設定を変更して映像とトークを交互に、つまり会場の時間の流れに沿って観てください。その上で「面白かった」かどうか教えていただければ幸いです。
■陰陽師 実録! 百鬼封滅■ うーん、これはどうかな……。『陰陽師 呪詛返し』が面白かったんでこれも期待して観たのだけど、ああいう真面目くさった教養ドキュメンタリー風味がなくて、ただ密着取材しました風。それにこっちの陰陽師はただ怒鳴るばっかで人間として格調低い。悪霊に怒鳴るのはいいとして相談者がしらふの時も怒鳴り散らしてどうすんの。あんた自信に余裕がないって自己暴露してるようなもん。それに悪霊に取り憑かれた相談者のインタビューも下手なんだなあ。あとひどいのは、画面全面ボカシってどうゆう心がけですかね。顔モザイクでしょう、普通。前半は顔モザで丁寧に追ってたけど、途中から相談者もしくは陰陽師の顔が映るシーンは全面ボカシに移行かよ。ひでーなあ。手抜きもいいとこじゃん。ただ一つよかったのは、洋子さんだっけ、相談者3人のうちの女性ね。ボカシ越しにも美形じゃないことはわかってたけど、最後の最強怨霊を追い出すシーンで、目隠しされたんでボカシが取れるのね。それで口もとが素で見えて、はっきりブスだってわかったとたん私勃起しました。やっぱさんざん隠されてたものが見えると何であれノゾキ中枢が刺激されるのだなあ。
■実録心霊シリーズ 撮影現場 心霊ファイル 劇映画「隙魔 すきま」の撮影現場より■ メイキング映像で一個作っちゃいました系。ふむ、効率いいね。……って全然面白くないでしょうが。でもマ、いい加減にオカルト映画作ると呪われちゃうよ、って虚構的教訓を本気で訴えかけるコンセプトはありだと思いました。霊の姿がもっとボンヤリしてれば普通にリアルっぽく観られて点数伸びたんだがな。だってそれしかアピールするとこなかったでしょう。
■我々は有吉を訴える 謎のヒッチハイク全記録■ お笑いを目的とした企画らしいが、演出が雑かつ演技が低レベルすぎて失笑すら誘発されない。ほぼ同じコンセプトで作られた『劇団ひとりの匠探訪記』より5ランクくらい落ちますねぇこれは。だいたいダメでしょう、主人公は有吉なんだから、ろくに顔も写らない無名の取材ディレクターのほうが目立ってちゃ。最初の車ん中で赤ちゃんが泣き出したとき(1歳半って言ってたけどそれにしちゃ赤ん坊すぎ。そもそも心配だったら後部座席でしっかり抱いてろよ、ほったらかしといてオタオタしてんじゃねっつのよ)「肉人間やるからですよ」なんて執拗に有吉を責めるわけだ、声だけのディレクターが隣で。ウザイったらアリャシねえ、大体てめーが「肉人間やってあげたら」って提案したんだろーが。有吉を悪者に見せようという演出が空回りしてディレクターのリキミがダサイ見え方しまくってのっけからダメダメ。泊めてもらった家でもねぇ、皆さん総出ではじめから待機してるのミエミエだし、しょせんお笑いだからってドキュメンタリー仕立てでやってんならもっとリアルに工夫しようよ。お笑い舐めんでほしいよ。しかし返す返すもディレクターがなぁ。そのつどブツクサ文句言ってないで、有吉がウソついたらてめえで素早く訂正しろよ、あと蕎麦代くらいさっさと裏で払っとけや。たかが何百円かでチョイ悪のイメージってショボすぎ。有吉が「電波少年のスタッフはやりやすかったんだがなあ」みたいに呟いただけで「今なんて言いました?」て突っかかるこたあないだろう。存在感も親近感もほぼゼロのクセしてディレクターがウザったすぎて、後半の暴力全開なんかどうでもいいって感じ。演出がこれほどダメなら演技で挽回してるかってぇと正反対で、とほほ、ラスト、安田が出てきたときの三つ巴の餓鬼のケンカんときも有吉ぁ吹き出しやがってるし。吹くなよ、プロだろが。横向いて隠したつもりか? この作品のとりえはただ一つ、「猿岩石時代のユーラシア横断も裏はこれと同じようなものだったのか?」的想像を誘発するという性格でしょうか。間テクスト的モキュメンタリーってか。あとあれよ、「特典映像」には唖然よ。なんの芸もない笑えもしない素人演劇以前。どゆつもり? せっかくDVD売っても芸人の評価を下げるだけじゃないかと心配になってしまいました。