(既レビューの『ひなぎく』『乙女の祈り』『ミネハハ』はここに移行します。『アリス』はどうしたものかな? 『2LDK』は? 『あずみ』は?)
■アメリ■ オープニングから妙なCG多発したりナンセンス漫画ふう人物紹介が羅列されたりした時点で、あぁ『ブリキの太鼓』系かと。わかったわかったと。それなり体勢とらされた空気をあっさり置き去りに、わりと普通ラブロマンス路線に戻っちゃうんだな。でもそれで大正解。こういう微妙路線で笑わしてくれる映画って意外と少ないからね。エレクトラ・コンプレックスが通奏低音になって、自閉の殻を破った先が変則ストーカー世界とは……。イタズラ妖精風の隠密マッチメーカーが自分のこととなると先読みできない流れがどう解決されるのやら。つまりサスペンス映画でもあるんですね。ターゲットの擬似オタク男との接点がなんとも、でもあれってポルノショップにひとりで入ってった時点で直接会う覚悟できてたんだよね? いや、外出中って見越してのことだったっけか、あとで「どんな子だった?」って同僚から間接情報得させるために。ってほんと? 手が込みすぎだが。他の場面もいくらでも深読みできそうで、謎の男がただの修理屋って脱力オチなんぞも端々に効いてて、アメリって笑顔だけはいつもすっかり健全明朗で、お父ちゃん宛絵葉書のイタズラもうまく着地してたようですし、いやいや望遠鏡の中で手を振ってアルバム突っ込んでるシーン一つだけでこの映画マイフェイバリット候補。お母ちゃん激突死のオープニングからは想像できない幸福なフィナーレ、うーん、爽快でしたよ。
■エコール■ ナンセンス系寸前のシュールな閉鎖空間モノときた。物語というか起きてることことごとくに対して極度の説明省略と、少女らの心理描写・生理的描写(初潮とか)の直接的な表現くどくどぶりとのギャップが傑作モードを実現。つまりこう、マクロには説明過少、ミクロには説明過剰で、そのアンバランスどうしのバランスが効果的だったってことかな。メインの子が棺桶で運ばれてきたオープニング、少女らの手足のパーツだけ画面内に蠢いて顔が写らぬまましばらく持続するところでもう吸い込まれちゃいましたよ。白ドレスの少女群がバレエって、いかにもパターンっちゃパターンだけど結果良ければすべて良し、ほんと雰囲気こんなにも完璧でいいのかと。とはいってもメインの子ひとりだけがアジア系って工夫は裏目に出やしなかったかな。しかも北モンゴロイドですらなく見た目ベトナムとかあのあたり? あのムードだったら絶対全員白人でしょう。でなきゃ逆にいろんな人種混ぜる方向に行っとくとか。ま、問題のその子が一番年下って設定、ただでさえアジア系はガキっぽく見えるんで、体の小ささも相俟っておろおろしまくりの新入生っぽさ全開でかえって効いてたかも。めそめそ泣いてるのがあんな似合ってる子もそういないからね。うむ。おっとこらこら、子どもの裸がいっぱいだからって、間違ってもこれを児童ポルノ扱いせんように。観る側の品性いや耐性を試される映画ですな。メンバーを高校生以上に引き上げて逃げおった『ミネハハ』よりも小学校低学年にしっかり焦点据えたこちらに軍配が上がるのは当然でしょう。
■テルマ&ルイーズ■ ガーリームービーじゃなくてオバサンムービーだけんどここでいいや。アホ女二人組のてんやわんやパターンが『ひなぎく』『乙女の祈り』『ゴーストワールド』路線にぴったし嵌ってるのでね。うむ、痛快映画です。そうです、たまには女がこのくらい暴れてくれるエンタメってあるべしです。タンクローリーのおっさんも撃ち殺すのかとハラハラ見てたらさすがにそれはしないのね。微妙に歯止めの利いた暴走ぶり、2人が交互にイニシャティブとって自転車操業で切り抜けていく展開、一方の専制亭主と他方の一見粗暴根は忠実彼氏とのコントラスト、イケメン強盗にひっかかってボロボロのマヌケぶり、強盗をオウム返しで亭主モニター前に口あんぐりの大変貌、どれも寸分の隙ない絶妙のエンタメ展開だが、ただ一つ、えーと名前どっちだっけルイーズかな、あれの過去にやけに同情しまくる熱血掲示の存在はどうも……、「傷ついた可哀想な女なんだぞ」的台詞&介入での予感に水差さないでくだせいよ。ラストもしっかり駆け寄っちゃうしさ、ほんと俺たちに明日はない的爽快一斉射撃を妨害する気かとやきもきしっぱだったよ。でもまあ無事空中飛行できたんでめでたしめでたし。テキサスでよほどのことがあったらしいトラウマ話はついに明かさずじまいって、もちろんそれ正解。はっちゃけたアクションの連続と曰くありげなバックグラウンドの対照が型通りの模範的深みを作ってくれたわけで。しかしさんざんしなを作ってたんまりたかっておいて肝心なときに「触らないで!」みたいな最悪女、いるよなぁ。俺も結構腹立たしい思いさせられたからあの射殺されたナンパ男とタンクローリー爆破されたオッサンには心から同情するね。しかしテルマ&ルイーズの弾けぶりがそんな腹立ちを爽快感で見事上書きしてくれっぱなしで。この系統がこんな面白いんならこりゃ『モンスター』とかも観とかなきゃだな。モンスター映画の一分類にわざわざガーリームービー新設したのは∀x(ガールズx⊃モンスターx)って見立てゆえだからね。
■ゴーストワールド■ まわりの喧噪尻目に仏頂面で悪態つきながら闊歩するギャル2人見たとき「なんや、『ひなぎく』の亜流ですかい……」と褪めかけたのだったが、うーん、別方向に面白展開じゃないですか。『ひなぎく』と違って2人が非対称的なのが新味ですわい。ダメ指数の高いメガネの子がメインなのはいい選択だけど、首尾よく適応していくモひとりの子のディテールもそれなりにほしかった気が。まあメガネ娘ひとりだけで十分楽しめたけど。自宅でメガネ外すとしっかり正統ブスなのがまた好感持てたり。芸術少女がオタクおやじに惹かれるってのはハナシとしちゃ大ありで、双方の気づきと体勢がズレまくってるのもリアルすぎてほんともう。留学話で絵の先生が最後一転して冷たくなっちゃったのは納得いかないけど、妄想世界に吸い込まれてゆくラストにとっちゃああいう流れでいいのかもな。コメディと幻想が入り交じった、オブジェ論や現代アート論も聴けてお得な映画でした。
■ヴァージン・スーサイズ■ やった後は「あ~めんどくせ」って置き去りにしちゃうイケメン君のあの態度、リアリズムです。全般、女子に比べて男子の描き方がおざなりだったせいか(戦略的おざなりってわけだが)あのリアリズムは突出的に光ってましたな。あのへんわかってないとこがお嬢ちゃんの悲劇いうか、しかしまぁこの異性のわがまま本能わかってない度では『テルマ&ルイーズ』のレイプ未遂男とどっこいやな。本来ならおっかちゃんを殺す展開が絶対妥当なのに、そ、『乙女の祈り』のおっかちゃんのほうが全然感じいい人なのにあの無惨だったわけだしな。でもここでは娘らだけで心中というストイックな大団円。男子の回顧録構成なので遺された彼氏候補たちの受けたトラウマを想像させて(だから戦略的おざなりね)そこから娘らの傷ましさを浮かび上がらせる巧妙な仕掛け。体を張って街路樹を守るシーンは表情アップでほしかったかな、失われる者への共感って寓意をわずかでも主張するつもりだったら。並木通りから何から終始映像そのものは綺麗綺麗に撮りきってくれた反面、いかんせんこの女優俺パスだワ。眼窩上突起がどうも。スパイダーマンのときよりゃ印象マシとはいえ……、まぁあのくらいがリアリズムってことにしとこうか。って全員自殺はシュールリアリズムでしょうがよ。
■ピクニックatハンギング・ロック■ むかし『ビリティス』って映画観たときに「ああ、こうじゃなくてさ、もぉう……」と苛々したときの理想形がここにあったって感じかな。映像美の模範。空と岩肌の描写がすごい。少女らの神秘的なムードも陶酔モノ。デブス1人残して三人が唐突に憑かれたように岩陰に歩いてっちゃうところの微妙にスローモーなシーンはなんかすっげーわ。鳥肌が立つ。みんなの時計が12時で止まった微妙なホラーっぽさもゾクゾクっだし、ラストの投身自殺死体もうつ伏せ映像マニア垂涎の最高傑作級。ただ疑問はまず音楽かな。パンフルートのメインはいいとして、なんかときどき俗っぽいサスペンス調やドラマチック調になるのね。あれいただけない。白ける。この映画にこそフランシス・レイのメロディがほしかった。それとモひとつ疑問は、2人のうち1人の男が憑かれたように行方不明少女を探し回るのだが、あれって余計では? 憑かれるのは少女らだけでいいじゃん。『ヴァージン・スーサイズ』みたく男どもはチョロチョロっと背景に使っときゃいいのに。あといっしょにいなくなった先生ってどうゆう人だったのか思い出せんのよ。最初っからストーリーわかってたら注意して観てたんだけどね。せめて下半身半出しシーンとやらは報告ですまさずジカ撮しでお願いしたかったなぁ。たぶんおばあさん先生だからかなりの壮観だったはずだぞ。ところであれとかあれとかの台詞から読みとれってのは、憑かれてないほうの男が自殺少女の兄さんだろって? そういう因縁って逆効果というか、むしろ何もかも藪の中って世界なので。男ふたりの奮闘に時間かけすぎ。この種の映画の場合、ガールズ色に徹したほうがよかったに決まってます。それといい音楽といい、映像美が微妙にもったいなかったなあ。
■火星の女■ 『夢野久作の少女地獄』って原題をなぜ撤回しちゃったかね。地獄ってほどのおどろおどろしさはないことは確かだけど、ああゆう痛すぎる中絶するくらいなら産婆さんとこから逃げてこんでください、が第一地獄的風景。抱擁焼身自殺シーンはホントに燃えてておいおい、が第二地獄的風景。全編あれだけコケにされちゃ当然校長を殺すんだろうと普通思うよね。だけど違うと。追っかけ回したわりにはなんもしないと、ふ~ん。路面電車の追撃シーンなんぞ一応うまく悪夢的に撮ってたのになあ。そことかラストの風船見上げる直前あたりとか、校長のドタバタ喜劇風動作が洗練されない誇張ぶりでいちいち失笑的面白さだっただけに、第一ほら、せっかく女乞食の脳髄黒焼き食わされた以上どうにかなってほしかったなと。ただ食わされましたってだけじゃさ。アップもなかったし言葉だけじゃさ。なんかちぐはぐかつ不徹底で終わっちゃったのはしょせんは、ちうかさすがは「10分に一度濡れ場があればあとは何やってもいいと言われてた」(監督談)のジャンルですかな。しかしなんだな、ほとほと溜息、『ヴァージン・スーサイズ』や『ピクニックatハンギング・ロック』観た後じゃ日本のガールズムービーってきったないねぇ。って日活ロマンポルノでエントリーしちゃアンフェアか。改めて『下妻物語』あたりで比べなきゃかな。
■アメリ■ オープニングから妙なCG多発したりナンセンス漫画ふう人物紹介が羅列されたりした時点で、あぁ『ブリキの太鼓』系かと。わかったわかったと。それなり体勢とらされた空気をあっさり置き去りに、わりと普通ラブロマンス路線に戻っちゃうんだな。でもそれで大正解。こういう微妙路線で笑わしてくれる映画って意外と少ないからね。エレクトラ・コンプレックスが通奏低音になって、自閉の殻を破った先が変則ストーカー世界とは……。イタズラ妖精風の隠密マッチメーカーが自分のこととなると先読みできない流れがどう解決されるのやら。つまりサスペンス映画でもあるんですね。ターゲットの擬似オタク男との接点がなんとも、でもあれってポルノショップにひとりで入ってった時点で直接会う覚悟できてたんだよね? いや、外出中って見越してのことだったっけか、あとで「どんな子だった?」って同僚から間接情報得させるために。ってほんと? 手が込みすぎだが。他の場面もいくらでも深読みできそうで、謎の男がただの修理屋って脱力オチなんぞも端々に効いてて、アメリって笑顔だけはいつもすっかり健全明朗で、お父ちゃん宛絵葉書のイタズラもうまく着地してたようですし、いやいや望遠鏡の中で手を振ってアルバム突っ込んでるシーン一つだけでこの映画マイフェイバリット候補。お母ちゃん激突死のオープニングからは想像できない幸福なフィナーレ、うーん、爽快でしたよ。
■エコール■ ナンセンス系寸前のシュールな閉鎖空間モノときた。物語というか起きてることことごとくに対して極度の説明省略と、少女らの心理描写・生理的描写(初潮とか)の直接的な表現くどくどぶりとのギャップが傑作モードを実現。つまりこう、マクロには説明過少、ミクロには説明過剰で、そのアンバランスどうしのバランスが効果的だったってことかな。メインの子が棺桶で運ばれてきたオープニング、少女らの手足のパーツだけ画面内に蠢いて顔が写らぬまましばらく持続するところでもう吸い込まれちゃいましたよ。白ドレスの少女群がバレエって、いかにもパターンっちゃパターンだけど結果良ければすべて良し、ほんと雰囲気こんなにも完璧でいいのかと。とはいってもメインの子ひとりだけがアジア系って工夫は裏目に出やしなかったかな。しかも北モンゴロイドですらなく見た目ベトナムとかあのあたり? あのムードだったら絶対全員白人でしょう。でなきゃ逆にいろんな人種混ぜる方向に行っとくとか。ま、問題のその子が一番年下って設定、ただでさえアジア系はガキっぽく見えるんで、体の小ささも相俟っておろおろしまくりの新入生っぽさ全開でかえって効いてたかも。めそめそ泣いてるのがあんな似合ってる子もそういないからね。うむ。おっとこらこら、子どもの裸がいっぱいだからって、間違ってもこれを児童ポルノ扱いせんように。観る側の品性いや耐性を試される映画ですな。メンバーを高校生以上に引き上げて逃げおった『ミネハハ』よりも小学校低学年にしっかり焦点据えたこちらに軍配が上がるのは当然でしょう。
■テルマ&ルイーズ■ ガーリームービーじゃなくてオバサンムービーだけんどここでいいや。アホ女二人組のてんやわんやパターンが『ひなぎく』『乙女の祈り』『ゴーストワールド』路線にぴったし嵌ってるのでね。うむ、痛快映画です。そうです、たまには女がこのくらい暴れてくれるエンタメってあるべしです。タンクローリーのおっさんも撃ち殺すのかとハラハラ見てたらさすがにそれはしないのね。微妙に歯止めの利いた暴走ぶり、2人が交互にイニシャティブとって自転車操業で切り抜けていく展開、一方の専制亭主と他方の一見粗暴根は忠実彼氏とのコントラスト、イケメン強盗にひっかかってボロボロのマヌケぶり、強盗をオウム返しで亭主モニター前に口あんぐりの大変貌、どれも寸分の隙ない絶妙のエンタメ展開だが、ただ一つ、えーと名前どっちだっけルイーズかな、あれの過去にやけに同情しまくる熱血掲示の存在はどうも……、「傷ついた可哀想な女なんだぞ」的台詞&介入での予感に水差さないでくだせいよ。ラストもしっかり駆け寄っちゃうしさ、ほんと俺たちに明日はない的爽快一斉射撃を妨害する気かとやきもきしっぱだったよ。でもまあ無事空中飛行できたんでめでたしめでたし。テキサスでよほどのことがあったらしいトラウマ話はついに明かさずじまいって、もちろんそれ正解。はっちゃけたアクションの連続と曰くありげなバックグラウンドの対照が型通りの模範的深みを作ってくれたわけで。しかしさんざんしなを作ってたんまりたかっておいて肝心なときに「触らないで!」みたいな最悪女、いるよなぁ。俺も結構腹立たしい思いさせられたからあの射殺されたナンパ男とタンクローリー爆破されたオッサンには心から同情するね。しかしテルマ&ルイーズの弾けぶりがそんな腹立ちを爽快感で見事上書きしてくれっぱなしで。この系統がこんな面白いんならこりゃ『モンスター』とかも観とかなきゃだな。モンスター映画の一分類にわざわざガーリームービー新設したのは∀x(ガールズx⊃モンスターx)って見立てゆえだからね。
■ゴーストワールド■ まわりの喧噪尻目に仏頂面で悪態つきながら闊歩するギャル2人見たとき「なんや、『ひなぎく』の亜流ですかい……」と褪めかけたのだったが、うーん、別方向に面白展開じゃないですか。『ひなぎく』と違って2人が非対称的なのが新味ですわい。ダメ指数の高いメガネの子がメインなのはいい選択だけど、首尾よく適応していくモひとりの子のディテールもそれなりにほしかった気が。まあメガネ娘ひとりだけで十分楽しめたけど。自宅でメガネ外すとしっかり正統ブスなのがまた好感持てたり。芸術少女がオタクおやじに惹かれるってのはハナシとしちゃ大ありで、双方の気づきと体勢がズレまくってるのもリアルすぎてほんともう。留学話で絵の先生が最後一転して冷たくなっちゃったのは納得いかないけど、妄想世界に吸い込まれてゆくラストにとっちゃああいう流れでいいのかもな。コメディと幻想が入り交じった、オブジェ論や現代アート論も聴けてお得な映画でした。
■ヴァージン・スーサイズ■ やった後は「あ~めんどくせ」って置き去りにしちゃうイケメン君のあの態度、リアリズムです。全般、女子に比べて男子の描き方がおざなりだったせいか(戦略的おざなりってわけだが)あのリアリズムは突出的に光ってましたな。あのへんわかってないとこがお嬢ちゃんの悲劇いうか、しかしまぁこの異性のわがまま本能わかってない度では『テルマ&ルイーズ』のレイプ未遂男とどっこいやな。本来ならおっかちゃんを殺す展開が絶対妥当なのに、そ、『乙女の祈り』のおっかちゃんのほうが全然感じいい人なのにあの無惨だったわけだしな。でもここでは娘らだけで心中というストイックな大団円。男子の回顧録構成なので遺された彼氏候補たちの受けたトラウマを想像させて(だから戦略的おざなりね)そこから娘らの傷ましさを浮かび上がらせる巧妙な仕掛け。体を張って街路樹を守るシーンは表情アップでほしかったかな、失われる者への共感って寓意をわずかでも主張するつもりだったら。並木通りから何から終始映像そのものは綺麗綺麗に撮りきってくれた反面、いかんせんこの女優俺パスだワ。眼窩上突起がどうも。スパイダーマンのときよりゃ印象マシとはいえ……、まぁあのくらいがリアリズムってことにしとこうか。って全員自殺はシュールリアリズムでしょうがよ。
■ピクニックatハンギング・ロック■ むかし『ビリティス』って映画観たときに「ああ、こうじゃなくてさ、もぉう……」と苛々したときの理想形がここにあったって感じかな。映像美の模範。空と岩肌の描写がすごい。少女らの神秘的なムードも陶酔モノ。デブス1人残して三人が唐突に憑かれたように岩陰に歩いてっちゃうところの微妙にスローモーなシーンはなんかすっげーわ。鳥肌が立つ。みんなの時計が12時で止まった微妙なホラーっぽさもゾクゾクっだし、ラストの投身自殺死体もうつ伏せ映像マニア垂涎の最高傑作級。ただ疑問はまず音楽かな。パンフルートのメインはいいとして、なんかときどき俗っぽいサスペンス調やドラマチック調になるのね。あれいただけない。白ける。この映画にこそフランシス・レイのメロディがほしかった。それとモひとつ疑問は、2人のうち1人の男が憑かれたように行方不明少女を探し回るのだが、あれって余計では? 憑かれるのは少女らだけでいいじゃん。『ヴァージン・スーサイズ』みたく男どもはチョロチョロっと背景に使っときゃいいのに。あといっしょにいなくなった先生ってどうゆう人だったのか思い出せんのよ。最初っからストーリーわかってたら注意して観てたんだけどね。せめて下半身半出しシーンとやらは報告ですまさずジカ撮しでお願いしたかったなぁ。たぶんおばあさん先生だからかなりの壮観だったはずだぞ。ところであれとかあれとかの台詞から読みとれってのは、憑かれてないほうの男が自殺少女の兄さんだろって? そういう因縁って逆効果というか、むしろ何もかも藪の中って世界なので。男ふたりの奮闘に時間かけすぎ。この種の映画の場合、ガールズ色に徹したほうがよかったに決まってます。それといい音楽といい、映像美が微妙にもったいなかったなあ。
■火星の女■ 『夢野久作の少女地獄』って原題をなぜ撤回しちゃったかね。地獄ってほどのおどろおどろしさはないことは確かだけど、ああゆう痛すぎる中絶するくらいなら産婆さんとこから逃げてこんでください、が第一地獄的風景。抱擁焼身自殺シーンはホントに燃えてておいおい、が第二地獄的風景。全編あれだけコケにされちゃ当然校長を殺すんだろうと普通思うよね。だけど違うと。追っかけ回したわりにはなんもしないと、ふ~ん。路面電車の追撃シーンなんぞ一応うまく悪夢的に撮ってたのになあ。そことかラストの風船見上げる直前あたりとか、校長のドタバタ喜劇風動作が洗練されない誇張ぶりでいちいち失笑的面白さだっただけに、第一ほら、せっかく女乞食の脳髄黒焼き食わされた以上どうにかなってほしかったなと。ただ食わされましたってだけじゃさ。アップもなかったし言葉だけじゃさ。なんかちぐはぐかつ不徹底で終わっちゃったのはしょせんは、ちうかさすがは「10分に一度濡れ場があればあとは何やってもいいと言われてた」(監督談)のジャンルですかな。しかしなんだな、ほとほと溜息、『ヴァージン・スーサイズ』や『ピクニックatハンギング・ロック』観た後じゃ日本のガールズムービーってきったないねぇ。って日活ロマンポルノでエントリーしちゃアンフェアか。改めて『下妻物語』あたりで比べなきゃかな。