■ダーウィン・アワード■ POVじゃないけどそれっぽい何というかな、フェイクフェイクドキュメンタリー? いや違うな、とにかくこの「形式」でオムニバスコメディやられちまっちゃ、むせび笑うしかないでしょうよ、ただでさえ自然淘汰には学問的にも入れあげてるこの俺ときちゃ。撮影者の学生が最後もろ全身露出して形式意識がチョイくどかったけど、よしとするか、あの形式を否応なく思い出させる意味で。いずれにせよメインは事故当事者らの馬鹿さ加減なわけで。とくにダイナマイト犬にゃ参りました。自販機男もアッ俺ラモヤリソウ的なだけに笑い事じゃない笑いによじれた。ぶっとびロケットカーがかすんじゃったくらいだわ。惜しかったのはフェラチオドライブだね。ああいう通俗のクソエロ描写は外しといてよ。あれ無い方がよかったよ。あんなん無しでも素で面白過ぎなんだからさ、家族で観られる仕様にしといた方がよくはなかったかい。あとあれもね、調査員コンビの男の方が風呂場で宙吊りになる一種ドタバタシーンとかね。ああいう安いコントはさもしい感じだよ、白けるよ、重ね重ね本体のネタが面白いだけに。制作サイド、本体に自信がないのかなと思っちゃう。まあはっきり言ってあの二人要らんかったのですわ。血を見ると卒倒なんて漫画チックなキャラクター設定も邪魔くさい。あ、撮影者の学生はいた方がいいんであの二人は超控えめ没個性でやってくれたらよかったってことだな。とにかく間抜け人間たちの死にっぷりに専念でやってちょうだいと。まあ死にっぷりっつっても、けっこう当事者に生き残ってもらってたようだな。そりゃ仕方無しか。車盗まれ男の憮然とした証言も、保険詐欺的な意図よりも羞恥心、おのれの間抜けぶりを隠すためのウソって思うだけでそりゃまあ笑えるですからね。死んで報いを受けたとなると逆に嘲笑の向けようがなくなるってもん。いや、だけど自販機男の死に様なんぞしっかり笑えたか。
■LIAR GAME ―再生―■ ほとほと感心するんですよ、ライアーゲームの頭脳度には。この椅子取りゲームも、原作にないトリックを適度に織り交ぜて、原作ファンも(こそ)楽しめる仕上がりになってる。よくぞ考えたもんだ。ただしこの、原作で感じられた不満点、たとえば何でもかんでもアキヤマがイニシャチブとっちゃってて、せっかくのガヤの独立性というかな、多元的な思惑のせめぎ合いが乏しかったところを映像では変更する余地があったのになと。ガヤのボスが目立ってもよかったと思うんだよ、ああいう泥仕合的シチュエーションでは。まあ贅沢な要求かな。つまり全般、不満なし。ヒロインの設定も、ナオちゃんみたいな純善人じゃなくていろいろ猜疑心に苛まれる的人格に設定してくれたのがドラマに深みが出て二重丸。あ、結末はそりゃもっとダークにしてくんないとね。まあ毎度のことだけど。
■スリーデイズ■ わははははは。こりゃいい。面白え。映画はこうでなくちゃ。ビルドゥングスロマンだ。最初はドジとスカタンの連続だったトホホ熟年教授が、殴られようが騙されようがめげずに裏社会ルールに上達してゆく、その一徹さがすげえ。最後はゴミ出しでまんまと警察を出し抜いた知能犯ぶりじゃないか。チンピラを撃ち殺したり焼き殺したりの粗暴犯ぶりとの結果的共存がすげえ。細部突つけば無理だらけでショーモナイ映画なんだが、うむ、たとえばカルテ入れ替えて入院先でことを起こそうなんて御都合主義がやれやれって感じだが、とにかくスピード感がいい。苦心惨憺こそが主題で脱獄成功まで行かないところがリアルだと思っていたら、この映画案外長くてほんとに脱獄させて高飛び成功しちまいやんの。やりすぎだけど、まあこの映画に限ってはよしとしよう。ラスト、「脱獄犯は実は真犯人ではなかった」的裏付けを求める負け惜しみ刑事の表情がなんともいえん。二転三転の展開が映画の醍醐味開けっぴろげてくれました。
■ブラック・スワン■ うーむ。普通にすさまじい。ある意味無難なサイコ映画だねえ。爪だねえ、爪がこわいやね。どこからどこまでが幻覚なんだか、友だちブッ刺したとこが実は自分を刺してたってことでしょ、あれ。あそこまで彼女を壊した元凶は俗物きわまる監督だろうな、普通に考えると。噛まれても仕方ないねえ。引っ掻かれなかっただけ幸運だったね、あの爪の怖さ考えると。あとプレッシャーかけまくりの母親も無罪ではないが。まあ普通に考えない方が面白い世界だろうけどなこういうのは。だいたいブラックになりきる適任ギャルが他にいたっぽいのになぜに一人に集中?てとこが不条理きわまってちゃ、やっぱ普通にしか考えられんよ、監督だよ。もう白黒一人にやらせる時点でナチュラルイジメになってるんじゃしょうがないよ。ほんと思考が普通化せざるをえない知性麻痺映画でしたよ。こういう女子壊れまくり系っていろいろあるようだから、漁ってみようかなと突き動かされたり。これ、ガーリームービー系にほんとは分類しなきゃなのになぜかあえてサイコに分類したくなりますね系か。
■ステイ■ またこれだ……、『トライアングル』といい『-less[レス]』といいサスペンス映画も大変だな。このネタ使えばかなり無理ある非現実シーンやり放題だもんなあ。レパートリー広がるもんなあ。しかもこいつは『トライアングル』とは違って最初っから走馬燈系が見え見え。というか道路から立ち去るあの演出、最初っからおまえら承知してろと。しかしどうかな、いくらなんでもネタバレが最初に来るって構成は。いや、だけど立ち去る人物が確か違ってたので(違ってたよな?俺の記憶違いかな?)、走馬燈の主体を勘違いさせとけばうまくいく、って計算ぽいかな。いやその計算、正しかったかも。たしかに俺はその点騙されてたよ。というか人物の同一性は始まったばっかの時はよく把握してないんだよ、観客って。だから楽しめたよ。こういう、たまたま現場に顔並べた通りすがりさんたちを物語に組み込んじゃう系走馬燈、ははあ、あれだな、あれが真似したな、ってぴんときちゃった。そう、あれです。けっこう俺感動しちゃったJホラー『エロ怖い怪談 第弐之怪 ポルターガイスト』ですよ! あれはホラーだし、霊が見えて困るって話だし、異常現象に違和感なくて、このオチにもうすっかりおなじみの俺も最後まで気づかなかった。だから俺的判定では、後から作った者の強みっちゃそれまでだけど『エロ怖い怪談 第弐之怪 ポルターガイスト』の勝ち。僅差だけどね。走馬燈をもっとリアルに引き延ばしてたしね。こっちも雰囲気はなかなかだったとはいえ、たとえば泣ける度に限るとエロ怖の圧勝ね。ラスト、健康的な周期の生理ってとこが泣けたんですわ、あっちは。こっちも家族恋人全滅ときちゃ半端なく悲しいんだけど、それ普通の悲惨さすぎたし、主人公の身元が観客的に定まらなかった分、感情移入度減少ね。
■パッセンジャーズ■ ああぁ、おいおいまたかよ……、『トライアングル』といい『-less[レス]』といい『ステイ』といいサスペンス映画も大変だな。もうこの系統はたくさんだよ……と言いたいところだがこの映画ばかりはチョイ工夫が見られるぞ。侮れんぞ。この手の走馬燈系では異色だぞ。ある意味ファンタジー系とも言えるしな、全員が同じ走馬燈の中で競演していたとしたら。誰の走馬燈だろう、『ステイ』のときみたいに騙されんぞ、この女かな、この男かな、それにしても押しつけがましいウザったいセラピーだな、過剰投与じゃねえの、こんなん実際にありかよ、と疑いつつ観ていったらあらら……セラピストが実はセラピーを受けていたに等しいという、超々広義でのツンデレ走馬燈。リアリティの無さこそ実はリアルだったという例のあの展開。未練度はある意味『ステイ』を上回るというか、姉さんとのケンカもそうだが仕事一筋の処女が走馬燈の中で初体験してすべてお見通しの背後霊に職業倫理がらみの告白してる物悲しさが何とも言えんいうか、うむ、思い返したときのシミジミ度はこれが一番上。『ステイ』みたいな意味不明系の煙幕張ったり、『トライアングル』的なジャンル誤認に頼ったりせずに直球系だよね、これは。ラストの部屋はきわめて俗っぽいメロドラマ風だが、それがぴったりはまりまくる展開になっているのでOK。やはりこれ、走馬燈系ではたぶん最高の出来。
■テープ■ ふむ? こういうのはどう評価したものか……? いや、俺は面白かったですよ、そらもちろん。でも俺さえ面白きゃいいってもんでもないわけで。たぶん。前半のあの冗長きわまるグダグダ会話って、やっぱなんとかすべきですよね? わざとやってることはわかるけど、あそこ、もっと意義深いそれ自体で面白げな会話にしといてくれてても、別に全体の趣旨損なうことはないんだからさ。そりゃ久しぶりに会った高校同級生の会話なんて実際あんなもんだろうよ、ああなりがちだろうよ、しかし映画なんだから。あれだけの時間使って「無意味なリアル」やられてもさすがにしんどいよ。いや、女が訪れてからは面白いよ、恋バナだからね、当然のことながら。だからそこまでの部分もああまで抑制する必然性なかったのよ。後半とは直接関係ない猥談とかでもよかったわけだし。むろん前半の希薄度のぶん後半「あれあれっ?」て感じに高密度に感じられたわけだろうが。大した密度でもないのにね。でもほら、「同意のうえだった」って巷のレイプ男の定番的言い訳のまるっきり逆がなぜか展開してくるシュールさ。女としちゃたまったもんじゃないだろうな、愛あるセックスだと信じてたのを男が「レイプしてしまった、本当にすまん」て頑なに謝り始めたりしたら。あの逆修羅場っていうか、それを全体で延々やってくれてもよかったな。男が正しい可能性もほのめかしてさ。あれだと真実は女の側に偏ってる印象なんで。とにかく前半の無意味パートは確かに独特ではあるがクドすぎたし明らかにマイナス。しかしそのマイナスこそが後半を引き立てている可能性も小さくはない。てことも合わせていちおうこの映画、俺の趣味。だけどモ一度言うけどやっぱ前半突っ張らずにサービス精神惜しまんでほしかったね。前半でこそ目立ってたやたらハイな疑似マッチョ動作だけはかろうじて笑えてまァ他にない表現なんで儲けものだったけど。
■ザ・フェイク■ ドッキリカメラにキレて大暴れする俳優。ってので後半もう1ラウンドあってもよかった的展開だが、ま、あそこで止めといて正解かな。キレたふりの逆ドッキリってのが顕わになってればもっと面白かったな。赤の他人の事故になぜか過剰に動転して自分の大切なオーディション放り出しちゃう俳優のお節介ぶりがまず非現実的だが、あれもオーディションの第一関門と考えれば納得がゆく。あと、いくら濡れ衣とはいえ逮捕されることにあんなにおびえて抵抗しなくたっていいじゃないか的な疑問にはそれも演技でした式回答が可能ではあるが、いくらなんでもチョイ無理。あのオチをもってしても、主人公のあの過剰な逃亡ぶりは説明できない。そこが惜しい。オーディション即作品、てこのコンセプトでガチのフェイクドキュメンタリー作れそうだね。
■大誘拐■ 評判いい映画らしいから、韓国版と観比べよっかなと思ってたのよ。そしたらあのツマラナサ。観比べ中止だよ。ちっ。期待させやがって。まあ、おばあちゃんの抑制の効いた演技はまあまあかもだよ。これがありがちなトンデモイケイケババアだったりするとリアリティゼロだったんだが、あのばあさんならかろうじてリアル。とはいえ、どうせ半分以上コメディになってるんだよねこれ。もともとリアリティないし。退屈してる大富豪のばあちゃんが誘拐されてハイになっちゃった、てのは意外とリアルだと言いたいんだろうが。だったら逆にリアリティ加減気にせずにイケイケババアでやってほしかったかな。聞くところでは韓国版はそれっぽいんだけど。いずれにせよあんな全国レベルで、いや国際レベルで話題になっちゃうって設定じゃ、緊張感も集中力もゆるみきっちゃう。それと誘拐犯三人組の個性の乏しさがネックだね。あれなんとかならなかったのかよ。隠れ家に通ってきてたあれ誰だっけ、とにかくあの娘と仲良くなってくあたりの描写で一つ笑わしてくれてたらなあ。ま、しょうがないかな。盛りだくさんの原作を無理矢理映画化した気配ありありだったから。あれでけっこう健闘賞なんだろうな。
■マリリンとアインシュタイン■ けっ。クソつまんねー駄作でした。腹立つね、期待しただけに。なんせマリリンモンローがお忍びでアインシュタインを訪ねるってんで、面白くなるぞと思うでしょ全く。現実にもモンローは一番寝たい男はアインシュタイン、と言ってたそうだからね。しっかし女優のネトネトしたしゃべり方がうざったくて生理的にダメだった。野球選手と政治家の絡みもまた要領を得ず。政治家の下腹部パンチはあれいったいどゆ意味? 女優があれで流産でもしたってならそれなりのお話だが、あの血ってどうもそれっぽくないし。ラストの爆発幻想と女優の未練のないグッバイの対照がなかなかスタイリッシュだったが見所はそこだけかな。あ、それと良かったのは女優による特殊相対性理論の「解説」が大変わかりやすかったです。なるほどああいう説明の仕方があるのかと。しかしあれでほんとに正しいんかいな? ま、正しいように感じさせられたんで、ともあれ勉強になりました。
■LIAR GAME ―再生―■ ほとほと感心するんですよ、ライアーゲームの頭脳度には。この椅子取りゲームも、原作にないトリックを適度に織り交ぜて、原作ファンも(こそ)楽しめる仕上がりになってる。よくぞ考えたもんだ。ただしこの、原作で感じられた不満点、たとえば何でもかんでもアキヤマがイニシャチブとっちゃってて、せっかくのガヤの独立性というかな、多元的な思惑のせめぎ合いが乏しかったところを映像では変更する余地があったのになと。ガヤのボスが目立ってもよかったと思うんだよ、ああいう泥仕合的シチュエーションでは。まあ贅沢な要求かな。つまり全般、不満なし。ヒロインの設定も、ナオちゃんみたいな純善人じゃなくていろいろ猜疑心に苛まれる的人格に設定してくれたのがドラマに深みが出て二重丸。あ、結末はそりゃもっとダークにしてくんないとね。まあ毎度のことだけど。
■スリーデイズ■ わははははは。こりゃいい。面白え。映画はこうでなくちゃ。ビルドゥングスロマンだ。最初はドジとスカタンの連続だったトホホ熟年教授が、殴られようが騙されようがめげずに裏社会ルールに上達してゆく、その一徹さがすげえ。最後はゴミ出しでまんまと警察を出し抜いた知能犯ぶりじゃないか。チンピラを撃ち殺したり焼き殺したりの粗暴犯ぶりとの結果的共存がすげえ。細部突つけば無理だらけでショーモナイ映画なんだが、うむ、たとえばカルテ入れ替えて入院先でことを起こそうなんて御都合主義がやれやれって感じだが、とにかくスピード感がいい。苦心惨憺こそが主題で脱獄成功まで行かないところがリアルだと思っていたら、この映画案外長くてほんとに脱獄させて高飛び成功しちまいやんの。やりすぎだけど、まあこの映画に限ってはよしとしよう。ラスト、「脱獄犯は実は真犯人ではなかった」的裏付けを求める負け惜しみ刑事の表情がなんともいえん。二転三転の展開が映画の醍醐味開けっぴろげてくれました。
■ブラック・スワン■ うーむ。普通にすさまじい。ある意味無難なサイコ映画だねえ。爪だねえ、爪がこわいやね。どこからどこまでが幻覚なんだか、友だちブッ刺したとこが実は自分を刺してたってことでしょ、あれ。あそこまで彼女を壊した元凶は俗物きわまる監督だろうな、普通に考えると。噛まれても仕方ないねえ。引っ掻かれなかっただけ幸運だったね、あの爪の怖さ考えると。あとプレッシャーかけまくりの母親も無罪ではないが。まあ普通に考えない方が面白い世界だろうけどなこういうのは。だいたいブラックになりきる適任ギャルが他にいたっぽいのになぜに一人に集中?てとこが不条理きわまってちゃ、やっぱ普通にしか考えられんよ、監督だよ。もう白黒一人にやらせる時点でナチュラルイジメになってるんじゃしょうがないよ。ほんと思考が普通化せざるをえない知性麻痺映画でしたよ。こういう女子壊れまくり系っていろいろあるようだから、漁ってみようかなと突き動かされたり。これ、ガーリームービー系にほんとは分類しなきゃなのになぜかあえてサイコに分類したくなりますね系か。
■ステイ■ またこれだ……、『トライアングル』といい『-less[レス]』といいサスペンス映画も大変だな。このネタ使えばかなり無理ある非現実シーンやり放題だもんなあ。レパートリー広がるもんなあ。しかもこいつは『トライアングル』とは違って最初っから走馬燈系が見え見え。というか道路から立ち去るあの演出、最初っからおまえら承知してろと。しかしどうかな、いくらなんでもネタバレが最初に来るって構成は。いや、だけど立ち去る人物が確か違ってたので(違ってたよな?俺の記憶違いかな?)、走馬燈の主体を勘違いさせとけばうまくいく、って計算ぽいかな。いやその計算、正しかったかも。たしかに俺はその点騙されてたよ。というか人物の同一性は始まったばっかの時はよく把握してないんだよ、観客って。だから楽しめたよ。こういう、たまたま現場に顔並べた通りすがりさんたちを物語に組み込んじゃう系走馬燈、ははあ、あれだな、あれが真似したな、ってぴんときちゃった。そう、あれです。けっこう俺感動しちゃったJホラー『エロ怖い怪談 第弐之怪 ポルターガイスト』ですよ! あれはホラーだし、霊が見えて困るって話だし、異常現象に違和感なくて、このオチにもうすっかりおなじみの俺も最後まで気づかなかった。だから俺的判定では、後から作った者の強みっちゃそれまでだけど『エロ怖い怪談 第弐之怪 ポルターガイスト』の勝ち。僅差だけどね。走馬燈をもっとリアルに引き延ばしてたしね。こっちも雰囲気はなかなかだったとはいえ、たとえば泣ける度に限るとエロ怖の圧勝ね。ラスト、健康的な周期の生理ってとこが泣けたんですわ、あっちは。こっちも家族恋人全滅ときちゃ半端なく悲しいんだけど、それ普通の悲惨さすぎたし、主人公の身元が観客的に定まらなかった分、感情移入度減少ね。
■パッセンジャーズ■ ああぁ、おいおいまたかよ……、『トライアングル』といい『-less[レス]』といい『ステイ』といいサスペンス映画も大変だな。もうこの系統はたくさんだよ……と言いたいところだがこの映画ばかりはチョイ工夫が見られるぞ。侮れんぞ。この手の走馬燈系では異色だぞ。ある意味ファンタジー系とも言えるしな、全員が同じ走馬燈の中で競演していたとしたら。誰の走馬燈だろう、『ステイ』のときみたいに騙されんぞ、この女かな、この男かな、それにしても押しつけがましいウザったいセラピーだな、過剰投与じゃねえの、こんなん実際にありかよ、と疑いつつ観ていったらあらら……セラピストが実はセラピーを受けていたに等しいという、超々広義でのツンデレ走馬燈。リアリティの無さこそ実はリアルだったという例のあの展開。未練度はある意味『ステイ』を上回るというか、姉さんとのケンカもそうだが仕事一筋の処女が走馬燈の中で初体験してすべてお見通しの背後霊に職業倫理がらみの告白してる物悲しさが何とも言えんいうか、うむ、思い返したときのシミジミ度はこれが一番上。『ステイ』みたいな意味不明系の煙幕張ったり、『トライアングル』的なジャンル誤認に頼ったりせずに直球系だよね、これは。ラストの部屋はきわめて俗っぽいメロドラマ風だが、それがぴったりはまりまくる展開になっているのでOK。やはりこれ、走馬燈系ではたぶん最高の出来。
■テープ■ ふむ? こういうのはどう評価したものか……? いや、俺は面白かったですよ、そらもちろん。でも俺さえ面白きゃいいってもんでもないわけで。たぶん。前半のあの冗長きわまるグダグダ会話って、やっぱなんとかすべきですよね? わざとやってることはわかるけど、あそこ、もっと意義深いそれ自体で面白げな会話にしといてくれてても、別に全体の趣旨損なうことはないんだからさ。そりゃ久しぶりに会った高校同級生の会話なんて実際あんなもんだろうよ、ああなりがちだろうよ、しかし映画なんだから。あれだけの時間使って「無意味なリアル」やられてもさすがにしんどいよ。いや、女が訪れてからは面白いよ、恋バナだからね、当然のことながら。だからそこまでの部分もああまで抑制する必然性なかったのよ。後半とは直接関係ない猥談とかでもよかったわけだし。むろん前半の希薄度のぶん後半「あれあれっ?」て感じに高密度に感じられたわけだろうが。大した密度でもないのにね。でもほら、「同意のうえだった」って巷のレイプ男の定番的言い訳のまるっきり逆がなぜか展開してくるシュールさ。女としちゃたまったもんじゃないだろうな、愛あるセックスだと信じてたのを男が「レイプしてしまった、本当にすまん」て頑なに謝り始めたりしたら。あの逆修羅場っていうか、それを全体で延々やってくれてもよかったな。男が正しい可能性もほのめかしてさ。あれだと真実は女の側に偏ってる印象なんで。とにかく前半の無意味パートは確かに独特ではあるがクドすぎたし明らかにマイナス。しかしそのマイナスこそが後半を引き立てている可能性も小さくはない。てことも合わせていちおうこの映画、俺の趣味。だけどモ一度言うけどやっぱ前半突っ張らずにサービス精神惜しまんでほしかったね。前半でこそ目立ってたやたらハイな疑似マッチョ動作だけはかろうじて笑えてまァ他にない表現なんで儲けものだったけど。
■ザ・フェイク■ ドッキリカメラにキレて大暴れする俳優。ってので後半もう1ラウンドあってもよかった的展開だが、ま、あそこで止めといて正解かな。キレたふりの逆ドッキリってのが顕わになってればもっと面白かったな。赤の他人の事故になぜか過剰に動転して自分の大切なオーディション放り出しちゃう俳優のお節介ぶりがまず非現実的だが、あれもオーディションの第一関門と考えれば納得がゆく。あと、いくら濡れ衣とはいえ逮捕されることにあんなにおびえて抵抗しなくたっていいじゃないか的な疑問にはそれも演技でした式回答が可能ではあるが、いくらなんでもチョイ無理。あのオチをもってしても、主人公のあの過剰な逃亡ぶりは説明できない。そこが惜しい。オーディション即作品、てこのコンセプトでガチのフェイクドキュメンタリー作れそうだね。
■大誘拐■ 評判いい映画らしいから、韓国版と観比べよっかなと思ってたのよ。そしたらあのツマラナサ。観比べ中止だよ。ちっ。期待させやがって。まあ、おばあちゃんの抑制の効いた演技はまあまあかもだよ。これがありがちなトンデモイケイケババアだったりするとリアリティゼロだったんだが、あのばあさんならかろうじてリアル。とはいえ、どうせ半分以上コメディになってるんだよねこれ。もともとリアリティないし。退屈してる大富豪のばあちゃんが誘拐されてハイになっちゃった、てのは意外とリアルだと言いたいんだろうが。だったら逆にリアリティ加減気にせずにイケイケババアでやってほしかったかな。聞くところでは韓国版はそれっぽいんだけど。いずれにせよあんな全国レベルで、いや国際レベルで話題になっちゃうって設定じゃ、緊張感も集中力もゆるみきっちゃう。それと誘拐犯三人組の個性の乏しさがネックだね。あれなんとかならなかったのかよ。隠れ家に通ってきてたあれ誰だっけ、とにかくあの娘と仲良くなってくあたりの描写で一つ笑わしてくれてたらなあ。ま、しょうがないかな。盛りだくさんの原作を無理矢理映画化した気配ありありだったから。あれでけっこう健闘賞なんだろうな。
■マリリンとアインシュタイン■ けっ。クソつまんねー駄作でした。腹立つね、期待しただけに。なんせマリリンモンローがお忍びでアインシュタインを訪ねるってんで、面白くなるぞと思うでしょ全く。現実にもモンローは一番寝たい男はアインシュタイン、と言ってたそうだからね。しっかし女優のネトネトしたしゃべり方がうざったくて生理的にダメだった。野球選手と政治家の絡みもまた要領を得ず。政治家の下腹部パンチはあれいったいどゆ意味? 女優があれで流産でもしたってならそれなりのお話だが、あの血ってどうもそれっぽくないし。ラストの爆発幻想と女優の未練のないグッバイの対照がなかなかスタイリッシュだったが見所はそこだけかな。あ、それと良かったのは女優による特殊相対性理論の「解説」が大変わかりやすかったです。なるほどああいう説明の仕方があるのかと。しかしあれでほんとに正しいんかいな? ま、正しいように感じさせられたんで、ともあれ勉強になりました。