三浦俊彦@goo@anthropicworld

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改訂版 可能世界の哲学・論理パラドクス

2017-05-04 14:07:00 | アドホック日記
 最近の拙著に対する、ウェブでの低評価レビューについてコメントしたいと思います。
 つねづね、世評はありのままに参考にさせていただき、低評価に反駁することはせぬ私ですが(もちろんステマなどもせぬ程度の潔癖さも持ち合わせていますが)、なぜか最近立て続けに、明らかに「不当である」と感じざるをえないレビューが増えたので、ちょっと一言いいたくなりました。
 (誤解なきよう。事実に反しない低評価は歓迎です。読者の指摘で拙著の誤りを修正したことは2度や3度ではないので)
 文庫本に対する期待と、本の属性とが、読者目線でズレていた可能性はあります。読者のレベルを高く設定する信頼癖が私にあることは認めざるをえないので(『多宇宙と輪廻転生』7章2節のタイトルをごらんください)、「難しい」系の批判は甘んじて受け止めますが、最近目立つ次の2系統には困惑してしまうんですね。

 ・勘違い、見間違い
 ・ないものねだり

 「罪」の軽いものから順に3つ挙げます。

■例1『論理パラドクス』について

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 解答・解説に「◯◯問題(その問題以前に出題された問題)を解いた人なら解説は不要だろう」とだけ書かれていて、解答・解説のない問題があるが
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 ↑どの問題のことでしょう。
 考えられるのは
 ▽問11「必ず正解の出る質問」ですが、解答(正解)は明記してあるので、レビューは間違い。
 解説に準ずる記載もあります。
 (あと、レビュアーには失礼ながら――、まったく同じ文法的パターンの問として連続5つ目なので(念押し・ダメ押しの確認問題なので)、前の4つの解説を読んできた人にとっては、ほんとに「解説は不要」のはずなんです。……
 たしかに、通読ではなく問ごとに拾い読みする人にとっては前の問いへ遡るのは面倒でしょうね。読者に一定以上の知的労働を強いてしまっていることは申し訳なく思いますが。)
 
 候補としてはもうひとつ、
 ▽問81「ニューカム問題」も解答を2行のみで済まていますが、問82においてセットで解説する旨の記載があるので、該当しませんね。

■例2『改訂版 可能世界の哲学』について
 ↓こういうの困るんです。

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 可能世界論であるのに、アリストテレスに触れられていない。
 分析哲学であるのに、ヴィトゲンシュタインに触れられていない。
 論理学であるのに、ゲーデル、理論負荷性に触れられていない。
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 ↑
 アリストテレスにも、ウィトゲンシュタインにも触れていますよ。可能世界論に必要な限りで、名前を挙げてね。
 それとも、アリストテレス、ウィトゲンシュタインにそれぞれ一章をあてろという意味でしょうか。可能世界の哲学で彼らをルイス、クリプキ並みに扱うのはいくらなんでも無理というものです。
 あと、論理学と理論負荷性とはどういう関係が?
 論理学で理論負荷性を論じなければならないとしたらあらゆる話題を論じなければ済まなくなりそう。それと、理論負荷性を特殊例として含む「相対主義」にはそれなりのページを費やしてあります。
 ゲーデルに関しては、本書のテーマにとっては明示不要の存在。(固有名詞はテーマ関連度の順に採用せざるをえないので)。ただし、不完全性定理の中核となる対角線論法は、一般形を含めて本書第22節で要領よく解説したつもりです。
 勘違いとないものねだりを両方備えたレビューと言わざるをえません。たしかに索引がないので、固有名詞めあての人には不満かもしれず、読み落としも責められないにしても、「触れてない」と早とちりを公言するのはやめてほしいものですね。

 「このレビューは参考になりましたか? いいえ」を私、思わずポチしましたよ。(それはステマにはなりませんよね)
 10年くらい前に『ほんとにあった! 呪いのビデオ THE MOVIE2』「明日美ちゃんカワイイ」に「はい」をポチして以来2度目です。
 (しかし最近、「いいえ」は表示しない方式に変わったんでしょうか。商品と同じくレビューへの評価も透明化すべきでは?)

■例3『論理パラドクス』について
 これは一番イライラさせられるタイプ。
 「原文通りでない引用」を含むものです。
 書店レビューではなくツイッターから各所に流れたもののようですが、これです。↓

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 論理パラドクスって本で「この家のネズミを全部殺してください(A)、でもこの家の中でネズミを殺しては駄目です(B)」っていう命令があったんだよね
わたしの答えは「ネズミを外に誘き出して根絶」だったんだけど正解は「AとBをどちらも真にするためには最初からネズミがいなければいい」だって

  そういうこと言うから論理嫌いになる人増えるんじゃないんですかね。学校でもやらないのにこんなばかな本があるから!
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 ↑この後もしばらく本書否定のツイートが続きます。
 問23「矛盾した命令」ですね。
 引用は正確にお願いします! 
 本書記載の命令はこうです。(p.60)
 「この家の中のネズミはすべて殺してください。ただし、この家の中のネズミは決して殺してはなりません」
 「家の中で」とは書いてないんですよね。
 語句の上で完全な矛盾に見えるので、なぞなぞではなく論理の問題になるのです。レビュアーの引用では、そもそも文面が矛盾になってませんね。(記憶に基づいて、「常識的な形に」改変してしまったのでしょう)
 初期設定が「非常識な文面」だと拒絶反応が起こるのはわかりますが、
 やはり論理の本なので、テニヲハまでしっかり読んでほしいのですよ。とくに公に伝える場合は……
 ちなみにこの問題の解答は、学校でもやってほしい重要な論理学の定理で、
 本文で法令の例を挙げたとおり、
 「いかなるAもB」
 「いかなるAもnotB」
 は、矛盾ではないのです。
 例3のレビュアーはかなり若い人のようで、せっかく『論理パラドクス』を読み始めてくれた有望な若年層が、ちょっとした誤解で拙著から遠ざかってしまう光景は、思い描くになかなか悲しいものがありますね。……

 やれやれ……。
 こんな記事を書くのに時間を食ってしまった。連休中にたんまり宿題があるというのに。

 700円であれだけの内容を提供させていただいて、不当な低評価を流されるとは、ストレスはたまるし執筆も楽な仕事じゃありません。
 ちなみに現在は、人間原理による「エンドレスエイト」の芸術哲学を執筆中です。ほぼ全体像が出来上がりました。新発見(たぶん)も含む超自信作ですが、萌えと哲学をガチに融合させたので、かなり的外れな苦情が両サイドから予想されます……。不当な低評価のために届くところに届かなくなってしまうのもまずいので、風土の観測(長門有希なみの気の長い静観)にしばらく時を費やした方が賢明なようですね。
 (最後にふたたび誤解なきよう! 客観的事実に反しない低評価は大歓迎です!)