🔴アンケート
「平成の30冊」朝日新聞社
「集計して発表するから5冊挙げてくれ」というのが来ました。
「え~、30年間分から選べと? ジャンル別じゃないと出来っこないでしょ~。それに回答を個別に公表してくれるシステムでもないようだし~」と思って放っておいたら、締め切り過ぎてから催促が来たので、
とりあえず5冊それなりに考えて書き送りました。
紹介文は、掲載されるのであればもっと練った文章にしたのですが、掲載されるわけでもないようなので、まあこんなところで。
1 涼宮ハルヒの憂鬱 谷川流
学園コメディの体裁をとりながら、しっかり哲学や科学理論を踏まえたハードなSF。今年から角川文庫でシリーズ新装版刊行が始まるが、もはやライトノベルの枠を越えて現代日本文学の代表作となったということだろう。第5巻収録の「エンドレスエイト」のアニメ版は、ハルヒファンを驚愕かつ絶望させた暴走演出がなされ、オタク文化の最凶トラウマとなったが、あの極悪企画のコンセプトをすでに原作者自身が構想していたという事実を、ぜひその目で読んで確認してほしい。
2 リング 鈴木光司
たまたま角川書店刊の本が1位・2位を占めることになるが、他意はない。実際、本当に怖いホラー小説といえば、古今東西これを措いてない。私が心底怖いと感じた作品は、本書ともう一つ、ラース・フォン・トリアーの映画『メランコリア』だけだ。ジャパニーズホラーの底力を全世界に知らしめた記念碑的傑作。
3 グレイシー柔術の秘密 堀辺正史、ターザン山本
見かけは軽い「ザ・プロレス本」の一冊だが、中身は深遠な哲学。格闘家・堀辺正史が、絶妙のソクラテス的話術で格闘文化論を繰り広げる。講道館柔道の実戦性をバーリトゥード(何でもありの異種格闘技戦)で実証してくれたブラジルのグレイシー柔術に、我々日本人は文化的恩恵を被っているのに、日本ではヒール扱いだったのが悲しく、恥ずかしい。本書や近藤隆夫『グレイシー一族の真実』(文春文庫PLUS)によって、グレイシー柔術再評価の日が来ることを切に願う。
4 ジェイムズ・ジョイスの謎を解く 柳瀬尚紀
『ユリシーズ』に対する驚愕の新解釈・発犬伝。第12章の語り手は犬である、と。このような大胆な仮説を堂々と世に問う柳瀬尚紀の自信に敬服。本書のようなベタな実在論的解釈は、日本の学者は思いついても恥ずかしがってあえて口に出さない傾向が強いが、欧米の学界ではごくつまらない学説や思考実験でもみんなで盛り上げて議論する風習がある。本書を呼び水として、日本の学界でも本音の議論が欧米なみに活性化することを期待したい。
5 赤瀬川原平漫画大全 赤瀬川原平
ネオダダ~千円札裁判~超芸術トマソン~老人力……、芸術と日常観察の概念枠組を作り変え続けたパワーの精髄と萌芽が詰まった、不思議きわまる作品集。収録作品はどれも昭和に描かれたものだが、平成の視点でこのように編集されるとすべての作品が生まれ変わり、それぞれの仕方でノスタルジーを裏返したような新しい発見をもたらす。
「平成の30冊」朝日新聞社
「集計して発表するから5冊挙げてくれ」というのが来ました。
「え~、30年間分から選べと? ジャンル別じゃないと出来っこないでしょ~。それに回答を個別に公表してくれるシステムでもないようだし~」と思って放っておいたら、締め切り過ぎてから催促が来たので、
とりあえず5冊それなりに考えて書き送りました。
紹介文は、掲載されるのであればもっと練った文章にしたのですが、掲載されるわけでもないようなので、まあこんなところで。
1 涼宮ハルヒの憂鬱 谷川流
学園コメディの体裁をとりながら、しっかり哲学や科学理論を踏まえたハードなSF。今年から角川文庫でシリーズ新装版刊行が始まるが、もはやライトノベルの枠を越えて現代日本文学の代表作となったということだろう。第5巻収録の「エンドレスエイト」のアニメ版は、ハルヒファンを驚愕かつ絶望させた暴走演出がなされ、オタク文化の最凶トラウマとなったが、あの極悪企画のコンセプトをすでに原作者自身が構想していたという事実を、ぜひその目で読んで確認してほしい。
2 リング 鈴木光司
たまたま角川書店刊の本が1位・2位を占めることになるが、他意はない。実際、本当に怖いホラー小説といえば、古今東西これを措いてない。私が心底怖いと感じた作品は、本書ともう一つ、ラース・フォン・トリアーの映画『メランコリア』だけだ。ジャパニーズホラーの底力を全世界に知らしめた記念碑的傑作。
3 グレイシー柔術の秘密 堀辺正史、ターザン山本
見かけは軽い「ザ・プロレス本」の一冊だが、中身は深遠な哲学。格闘家・堀辺正史が、絶妙のソクラテス的話術で格闘文化論を繰り広げる。講道館柔道の実戦性をバーリトゥード(何でもありの異種格闘技戦)で実証してくれたブラジルのグレイシー柔術に、我々日本人は文化的恩恵を被っているのに、日本ではヒール扱いだったのが悲しく、恥ずかしい。本書や近藤隆夫『グレイシー一族の真実』(文春文庫PLUS)によって、グレイシー柔術再評価の日が来ることを切に願う。
4 ジェイムズ・ジョイスの謎を解く 柳瀬尚紀
『ユリシーズ』に対する驚愕の新解釈・発犬伝。第12章の語り手は犬である、と。このような大胆な仮説を堂々と世に問う柳瀬尚紀の自信に敬服。本書のようなベタな実在論的解釈は、日本の学者は思いついても恥ずかしがってあえて口に出さない傾向が強いが、欧米の学界ではごくつまらない学説や思考実験でもみんなで盛り上げて議論する風習がある。本書を呼び水として、日本の学界でも本音の議論が欧米なみに活性化することを期待したい。
5 赤瀬川原平漫画大全 赤瀬川原平
ネオダダ~千円札裁判~超芸術トマソン~老人力……、芸術と日常観察の概念枠組を作り変え続けたパワーの精髄と萌芽が詰まった、不思議きわまる作品集。収録作品はどれも昭和に描かれたものだが、平成の視点でこのように編集されるとすべての作品が生まれ変わり、それぞれの仕方でノスタルジーを裏返したような新しい発見をもたらす。